インフィニット・ストラトス 〜マネージャーですが何か?〜   作:通りすがる傭兵

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これで書き溜めすっからかんじゃーい!


原作持ってないから時系列めちゃくちゃかもしれません、ご了承ください。


第14話

 

 

 

 

「部屋の変更、ですか」

「はい、デュノア君も来たので、織斑君と箒さん、石狩君と本音さんとの相部屋も解消です」

 

放課後、男子3人は放送で呼び出され、なんの話だろうと話をしながら職員室に向かうと、部屋の変更について、と前置きして話が始まった。

 

「俺は誰となるんです、成政とですか?」

「織斑君はデュノア君とです。男子同士」

「あの、山田先生、僕は......」

 

失礼を承知で話を遮って。成政が自分の事を聞くと、悲痛な面持ちで成政に向き直る山田先生。

 

「残念ながら、石狩君はまた女子と相部屋です」

「おう......」

「すみません!部屋が余ってなくて」

「いいですってば、だから頭上げてくださいって!」

「ですけど......私、教師なのに」

「教師だってできないこともありますって!」

「でも、私は」

 

ウルウルと涙目、しかも上目遣いで成政を見てくる山田先生、成政がなだめても自分を責め続けて泣く一歩手前までやって来てしまい、

 

「貴様ら教師に向かって何をしている」

「織斑先生、これにはそれなりに深いわけ、がああああ!」

 

そろそろ教育委員会に体罰で訴えられないだろうか、と思ってしまう成政だった。

 

「そもそも政府が裏技で私に教員免許を取らせたのだ、期待するな」

「千冬姉とんでもないこと言わなかったか?!」

 

 

 

 

 

「で、相部屋がお前と」

「......私は2人目の男子と聞いてたのだが」

「僕が2人目です!」

「そうか」

 

荷物の運び込みもすみ、本棚に本を並べ始めた頃、ランニングから帰って来たらしいラウラとばったり出会った成政。ラウラがシャワーで汗を流したところで、部屋の取り決めを決めようという流れになったのだが、

 

「じゃあ、服はここから......」

「制服と下着とランニング用の服だけ、一段で十分だ」

「本は」

「教科書だけだ。他にはない」

「その段ボールは」

「レーションだ。食うか」

「貰う」

 

部屋の隅に山積みされた段ボールから無機質なアルミ包装のレーションを投げるラウラ。成政はそれを暫く見つめ、無表情のままラウラの肩に手を置くと、

 

「自己紹介頼める?聞いてなくて」

「む、そんな事か。ドイツ特殊部隊、シュヴァルツェア・ハーゼ所属、ラウラ ボーデヴィッヒ少佐だ」

 

小柄ながらも様になっている敬礼を見せられたが、成政にとってはどうでもいい。

 

「軍人て事は訓練とか面白いことしてるよねというか軍属の訓練とかむっちゃ興味あるし聞かせてくれるかな大丈夫大丈夫守秘義務とかあると思うけど口は堅いしどうせ喋ってもバレないからほら全部話してよプロの意見なんてそうそう聞けないし特殊部隊って事はレベルの高い訓練してるんでしょねえ教えて!」

 

 

 

 

「なあ、ボーデヴィッヒさんが燃えつきた様に真っ白なんだけど、誰か知らない?」

「昨日はいい話が聞けたなー」

「おい成政」

 

 

 

 

 

「銃の扱いが得意と聞いたので、デュノア君も交えてミーティングです。僕の銃も届いたし」

「えっと、よろしく、ね」

「おう、よろしくなシャルル!」

 

今日は親交を深めることも兼ねて男子3人で訓練となった。近接オンリーな一夏が模擬戦であっさりシャルルに沈められた所で、反省会も兼ねてのミーティングが始まる。

 

「射撃武器のない白式に乗ってるから当然だとは思うけど、一夏は射撃武器の特性を理解してないね」

「そうか?それなりには勉強してるし、セシリアとかにも聞いてるんだけどな」

「聞くのと実践するのじゃ全然違うよ。僕のライフルを貸すから、撃ってみて」

「わかった」

 

貸し出したアサルトを受け取り、マトに向かって構える一夏。4月にやったことをしっかりと覚えていたらしく、2、3シャルルが注意しただけでしっかりとした構えになっていた。

 

「じゃあ、石狩君もやってみようか」

「了解。来てくれ、『虎徹』」

 

初めて呼び出す装備なので、しっかりと名前を呼ぶ。一瞬後には、成政の手に大ぶりなライフルが握られていた。

 

「これは、また随分と古い銃を使うんだね」

「慣れてる銃の型をそのまま大きくしてくれって頼んだんだ」

 

本当はストックも木製が良かったんだけどな、と独り言を漏らす成政。

シャルルが驚いたのも無理はない。

成政がわざわざ作ってもらったのは、第二次大戦以前や当時に使われている様な、古い作動方式のボルトアクションライフルだったからだ。

 

1発撃つ度に、ボルトを引き、薬莢を出す必要のあるこの機構の銃は、ISでは全く使われないと言ってもおかしくない。

ボルトアクションライフル自体が消えたわけではないが、使われているのは猟銃であったり、命中精度の高さを求める特殊部隊であり、弾丸をばら撒く事を求めるIS競技では、姿を消している。つまる所時代遅れの三流兵器、と言うわけだ。

 

 

 

オマケだが、この銃は蔵王工業製である。

 

 

 

閑話休題(話を戻そう)

何故こんな武器を使うかとシャルルが尋ねれば、

 

「使い慣れてる、としか」

 

シャルルは人の趣味嗜好にとやかく口を出すタイプでもないので、私情は傍に置いて指導に入った。

 

「ライフル、ってことで良いんだよね。だったら狙うときはもっと脇を締めて、半身になるようにして。あと腕も伸ばして......」

 

 

 

 

「やっぱ餅は餅屋、だな。ありがとシャルル。参考になったよ」

「も、餅は.......?」

「専門的な事は専門家に聞け、という事。にわかよりもその道のプロに聞いた方が100倍為になる、って事。日本のことわざだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

練習後ロッカーで着替えている時、成政は一夏に声をかけた。シャルルはさっさと着替えて出て行ってしまったので、2人きりだ。

 

「なあ、一夏。デュノアについて話がある」

「ん、シャルルのことか。何だ?」

「実はだな......」

 

続きを言いかけて、途中で言っていいものかと口をつぐむ。

 

「何だよ、変なことでも誰にも言わねえって」

「......そうか。なら言おう」

 

成政は決意を改める様に大きく深呼吸をしてから、言葉を続けた。

 

「実は僕、デュノアが、女じゃないかと思ってるんだ」

「......えっ?」

「冗談でも何でもない、真剣な話なんだ」

 

呆気にとられる一夏を置いて、話を続ける成政。その内容は、少々突飛なものではあったものの、筋の通ったものだった。

 

「まず1つ目、デュノアは何故僕たちと着替えない?男子同士裸を見せ合っても何の問題もないだろう」

「それは、純粋に恥ずかしいとかじゃないのか?育ちがセシリアみたいに特殊だったりするかもしれないだろ」

「2つ目、歩き方が少し変だ。若干内股気味で、走る時も歩幅が小さい。

まるでスカートでも履いてたみたいに見えるんだ」

「それは......」

「3つ目、体格が男子らしくない。

高校生ともなれば、いくら小柄でもどっちにせよらしくなってくる。だが、シャルルにはそれがない。素晴らしく不自然だ」

「......」

「4つ目、体の筋肉だ。

屋上で昼休み、一緒に昼食を食べた時、ワザとらしく背中を叩いたろう。

体つきを調べる目的でやったが、触って見れば、あの体格と比べて筋肉がなさすぎる。

 

最後に、ニュースになっていない。

僕でもあんなに騒がれたんだ、日本の外で見つかっても速報くらい入る、不自然すぎだ。

あくまで僕の意見だが、シャルルが男子でない理由を挙げるとすればこんな所だ」

 

1つ1つ指を立てながら証拠を列挙していく成政に対して、最初は反論を試みていたものの押し黙ってしまった一夏。

それに追い打ちをかけるような一言を、成政は告げた。

 

「僕は、今すぐにこれを織斑先生に報告すべきだと思っている」

「っ、それは!」

「ああ、シャルルが本当に男か調べて、白黒はっきりさせる。たとえ専用機があろうと、教師陣には勝てないだろう」

「そういうことじゃなくて!」

「なんだ」

「つまり、シャルルを......」

最悪の結果を予想してか言い澱む一夏に対して、成政は容赦はしなかった。

 

「シャルル・デュノアは限りなく黒に近いグレーだ。どこかの国が送り込んだスパイの可能性も十分にあり得る。殺されるなり誘拐されるなりしても知らんぞ」

「ゆ、誘拐?!」

「あり得るんだよ。一夏はもっと自分について考えるべきだ。

今の自分が、世界で2人しかいない男性IS操縦者、という事実をな」

 

モルモットにされて、解剖されてもおかしくなかったんだぞ。

 

一瞬別人と勘違いするほどまでに、冷え切った声で成政はそう告げる。

その気迫に飲み込まれたかのように、思わず一歩後ずさりする一夏、その目を逸らそうともせず、真っ直ぐに見たままに続ける。

 

「死にたくなければさっさとデュノアを調べてもらえ。僕だって担当選手が死ぬのを見るのは嫌だからな」

「俺はっ、俺はっ......」

「よく考えろよ、自分が、何をすべきか」

 

そう立ち尽くしたままの一夏に告げ、更衣室を去ろうとする。

まさに扉が閉まろうとしたその時、奥から小さな、だが芯のある声が届く。

 

「それでも、俺は、シャルルを信じたい」

 

 

成政はそれに応えることなく、扉を閉め、去っていった。

 

「全く、これだからお人好しは嫌いなんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『よく考えろ』

 

先程告げられたその一言が、頭にこびりついて離れない。

「でも、俺はシャルルを信じるって決めたんだ」

 

朴念仁だとか唐変木だとか言われているが、一夏は人間観察自体が不得意なわけでなく、単純に恋愛感情について疎いだけなのだ。

時間をかけねば人の内面、悩みに気づけない成政と違い、一夏はすぐに気がついた、否気付いてしまったのだ。

 

「あんなに辛そうな顔をしてたら、ほっとけないだろうがっ!」

 

時折、シャルルが会話の端に見せる、その影に。

他の皆は気付いてすらいない。だが、一夏だけは気付いてしまった。楽しそうに笑う、シャルルの影、歪みに。

お人好しな一夏は、見て見ぬ振りなどできない、どんな事であろうとも、ぶつかっていく事しかしない。

 

「でも、俺に何ができるってんだ......」

 

ISの展開にも手間取り、生身でも剣道の勘も取り戻せていない。もしシャルルが映画のようなスパイだったら、到底勝ち目はない。

かといって政治的に権力があるわけでもない。姉がいくら元世界最強とはいえ、発言力は高が知れているし、何より頼りたくなかった。

 

 

「何か、何か無いか......」

 

歩きながら、ヒントになりそうな物を片っ端から思い浮かべていく一夏。

この時ばかりはISの授業内容、その専門知識の無さに、自分に対する苛立ちを隠せず、拳を握り締める。

 

「みんなを守る、そう決めたのに、なんてザマだよ、織斑一夏」

 

やり場のない怒りを閉じ込めたまま、自室へ歩みを進める一夏。

 

 

 

 

分かれ道は、もう、すぐそこまで。

 


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