インフィニット・ストラトス 〜マネージャーですが何か?〜   作:通りすがる傭兵

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今回は何故か筆が乗らず、微妙です。

読みにくくてごめんなさい。


第13話

 

 

 

「......お嫁に行けない、ぐすっ」

「ははははは、冗談きついんじゃない一夏くーん、お前は男だろう?」

「このっ......お前のせいで!」

「いやそうだったなごめんごめん、今の一夏くんは、一夏 ちゃん だもんなー」

「後で絶対に殴ってやる」

 

クラス代表戦から3日後、1組ではコミカルな事が繰り広げられていた。

 

「おりむーにあってるー」

「織斑くんまさか女装似合うなんてやばい私死んじゃうかもあははは!」

「これはこれでアリですわね」

「ひゃははは、一夏ザマァ!本当に似合ってるわよあっはっは!」

「やめろ......見ないでくれ.....」

 

罰ゲームで一夏が女装して今日1日過ごす事になっているのである。

まだSHRの始まらない時間だが、珍しくクラス全員と2組の生徒まで一夏の女装姿を拝みに来ている。

そうなったのは、有耶無耶になってしまったクラス代表戦をやり直そうと誰かが言い出したものの、沈んだ空気で雰囲気もままならないと、

 

「罰ゲームで負けた方が食らうって事にしない?あられもない写真とか」

「「「「やろう!織斑君!」」」」

「なんでさ!?」

 

モチベーションを上げるために成政が言い出した罰ゲームでの結果だ。当然の如く一夏は敗北、罰ゲーム決定となった。

公平を期す為罰ゲームはくじ引き方式で1、2組が1人づつ書いたものを集め、負けた一夏に引かせたところ、

 

「女装(男装で) by成政」

「何してくれてんだよ成政ぁ!」

「ヘーキヘーキ、僕もやったから」

「そういう問題じゃないわ!」

 

こうなったわけである。

そんな時に役に立つであろう織斑先生は朝イチで買収したのでとやかく言われることも無かったりする。

 

 

 

「はーい、皆さんおはようございます」

「「「「おはよーございます!」」」」

「今日もみなさん元気ですねー。今日の休みは......」

「先生、一夏が休みです」

流れるように嘘を吐く成政。山田先生には情報は何も言っていないので、徹底的に誤魔化すつもりらしい。

 

「そうですか、分かりました。あんな事があった後ですし、当然ですよね」

「ちょっ、先生!」

「大丈夫です、何があっても、ちゃんと接しますから。そうよねみんな!」

「「「おう!」」」

 

意義を申し立てようとした一夏の声を、さらに大きな声で上書きし、消す。アイデアの光る相川のファインプレーだ。

なんだかんだでノリのいい1組、こう言った無茶振りにもしっかりと反応してくれる気のいい奴らの集まりである。

 

「......どういう、ことだ?」

 

ただし、一部を除き。

 

 

 

 

「そうそう、1組に新しい仲間が入る事になりました、みなさん暖かく接してあげてくださいね。入って来てください」

 

やいのやいのと盛り上がっていたところに、思いっきり爆弾が投下される。それまでの歓声が嘘のように静まりかえり、ドアの開く音だけが響く。

織斑先生に連れられて、入って来た転校生2人。

1人は金髪に中性的な顔立ち。

もう1人は、小柄で銀髪、そして鋭い目つきに眼帯が目を引く。

ただ、問題なのは、

 

「お.....」

「「「「男だーっ!?」」」

 

金髪の方がズボンを履く、男子だった事。

 

 

狂喜乱舞した1組の面子を抑えるのにはさしものブリュンヒルデも無理があったのか、静かになるのに5分ほどかかった。

40人が密閉空間で大声で叫べば、女子とは言えどもそれなりの音量になるわけで、当然の如くそれは鼓膜にも影響がでるわけで、

 

「ぐう、耳が、頭がぁ......」

 

壁際と窓で声が跳ね返るせいで人一倍大きい被害を被る羽目になった成政は、

 

「........、.................」

「な、何も聞こえない」

 

金髪男子の転校生の自己紹介を聞き逃し、

 

「.......が、.........」

「え、もう一回言ってくれる?」

「.........!」

「へぶっ!?」

訳も分からないまま銀髪の方にも理不尽なビンタを喰らう事になり、

 

「ふ、不幸だ......」

 

踏んだり蹴ったりの1日をスタートする羽目になった。自業自得だ、とのちに箒は語っていたが。

 

 

 

 

「おーい、なりなり〜」

「その声はのんちゃんか、どうしたの?」

「えっと〜、更衣室と逆方向だから、気になっちゃって〜」

 

次の授業はIS実技。みんなが着替えに更衣室に向かう中、成政だけが逆方向に歩いていた。

 

「急がば回れ、ってね?」

「んー?どういう事」

「これから起きそうな出来事を予想しただけ」

 

階段あるしついてきてくれる、と本音を誘ってワザと遠回りな道を行く。

男子の転校生とくれば、他クラスに情報が伝わらない筈がないし、人混みに囲まれれば走れない成政では足留めを喰らい遅刻必至、成政は進んで出席簿で叩かれに行くような馬鹿ではないのだ。案の定というべきか、遅刻ギリギリだった男子2人に対して、

 

「5分前行動は基本だろうに、はぁ」

「なんでお前はこんなに早いんだよ!」

「頭を使うんだよ、頭を」

「ははは、こんな日もあるよ織斑くん」

 

こんな無駄口を叩くくらいに余裕を持って行動していた。マネージャーは選手よりも素早い行動が求められる故、状況判断は大事なのだ。

 

 

 

 

 

2時間分ぶち抜きで行われるIS実技、その始めのデモンストレーションで、副担の山田先生がセシリアと鈴を軽くあしらっている中、いつもの3人は、

 

「2対1であそこまで立ち回れるとか、流石代表候補生、と言いたいね」

「ああ、射撃も正確、鈴の近接にも適確に反応しているし、すごい腕だ」

「千冬姉はアレを剣一本で潜り抜けて、しかも世界一、なんだよな」

「山田先生のメインが銃撃だからって参考にならないわけじゃない、しっかり見とけよ一夏」

「ああ、千冬姉より強くなるんだ、これくらい」

「......おい、男子ども。山田先生のナニを見ている」

「「何も見てないですよ」」

「貴様ら何故敬語なのだ!」

 

こんなおふざけもはさみながらだが、戦闘の分析は欠かさない。

元は付くが代表候補生、いつもの頼りなさと違い、現役代表候補生2人に引けを取らない苛烈な戦闘を繰り広げる山田先生。

そして、それを見逃すほど成政は馬鹿ではない。日本トップクラスの実力持ちの戦い、まだまだ初心者な1年にとっては学べる部分は多い。

 

(録画しとこ。にしても山田先生の胸って大きいよなぁ)

(分かる。結構エロいんだよなぁ)

(一夏は巨乳好きか?)

(......否定はしない)

(その手の本があったから、後で貸そう)

(すまん、恩にきる。毎日くたくたで最近できてないんだ)

(箒に見つかったらヤバイから、頑張れよ)

 

その舞台裏でこんな卑猥な会話が繰り広げられてたりするのだが、健全な男子高校生としては当然の事である。

《ナニが出来ていないとかそう言う質問はお控えください》

 

 

 

「では、実技を行う、出席順に! 専用機持ちのところへ並べ」

「「「「はい!」」」

「まあそうなるよね」

 

自由に、といえば公平にばらける訳もないので先回りして釘をさす織斑先生。この1組の扱いにも慣れてきた、という事だろう。

一応学園の打鉄を専用機としてもらっている成政も専用機持ち扱いとなる。

 

「1組の石狩です、よろしく」

「よろしくね。2人目の男子さん」

 

今日は1、2組合同の実技、というわけで2組生徒が振り分けられた成政。挨拶も済ませ、いざ実践、かと思いきや、

 

「みんな知っている事だけど、ISについて改めて言っておきたい」

 

そもそもISとは、と語り出す成政。兵器を扱う以上当然の事な訳なのだが、そんなの聞き飽きた、と聞き流そうとする生徒も多い。

 

「まあ、口で言っても分からないし、実践してみましょうか」

 

打鉄を右腕だけ部分展開、手慣れた様子で近接ブレード『葵』を取り出す。そして、

 

「これが打鉄初期装備の近接ブレード『葵』な訳ですが、ちゃんと切れます、こんな風に」

 

さも当然のように自分の左腕を斬りつける成政。若干気の抜けていた生徒たちの目に、鮮血の赤が映る。

 

「軽く撫で斬りしただけでコレです。もし人間相手にISがこれを全力で振れば、まあ軽く真っ二つです」

 

次にコレがISで使うアサルトライフルと同じ弾丸で撃たれた人のビデオですが、と明らかにヤバそうな動画を流し出そうとするので、

 

「乙女にトラウマを植え付けるな馬鹿者」

「いっだああ!」

 

それを見つけた担任に出席簿で制裁を喰らっていた。

先ほどの光景でも十分にトラウマが植え付けられ、次の日からサイコパス呼ばわりされる羽目になったのだが、成政は何故なのかさっぱり理解しなかった。

 

「いや、口で言っても伝わらないし」

「誰だって貴様のようにグロ耐性があるわけでは無いのだ」

 

 

「コツは、体の延長線上だと考える事。自分の体の様に、となると専用機持ちの様に日頃から扱ってないといけないしね。例をあげると.......ウィンタースポーツとかかな。スキーとかスノボとかだったら分かりやすいかな」

「あ、わかりやすいかも」

 

教え方は普通に上手かった模様。

 

 

授業開始からしばらくの事、成政が打鉄を降りて一人一人のアドバイスを書きながら指導をしていると、後ろから声をかけられた。

 

「ねえ、ちょっといいかな」

「えっと.....2組の人?」

「ええ、ちょっと。転校してきた......ラウラさん、だっけ」

「えっと......どっち?」

「......銀髪の子、なんだけど、私達に全然教える様子も見えなくて、困ってるのよ」

 

こっち見てるんだしなんとかしてよ、と言うその金髪の子が示す方向を見れば、

 

「......」

 

腕を組み、無言でこちらを睨みつけるラウラの姿が。親の仇と言わんばかりに殺気マシマシで睨みつけるラウラだが、成政は殺気を感じた事もなく、ましてや名も知らぬ赤の他人、

 

「じゃあ纏めて教えるよ、ISに乗って歩いてみて」

「わかった、ありがとう」

 

気にする様子もなくおーいみんなー、と同じグループのみんなを呼びに行ったらしいその子の背中を見送る。

その様子もずっと眺めていた銀髪少女の視線を気にして、やりづらさを感じて背中を向け、皆の指導に戻る。

(なんでこっち睨んでくるんだろ)

 

しばらくの間、視線が気になって集中できなかった成政だった。

 

 

 

 

 

「なあ、銀髪の子がコッチ睨んで集中できなかったんだけど」

「いきなり自分の腕を斬りつける奴が目の前にいる方が集中できないわ!」

「腕は大丈夫なのか成政、結構酷い傷に見えるけど」

「薄皮一枚だろう。かすり傷だ」

 

時は流れて昼休み、たまには弁当にしようぜ、と言う一夏の一言により各々がおかずやご飯ものを持ち込んで屋上での食事となった。

 

「薄皮一枚、初めてじゃ無いし加減分かってるよ」

「何回もやってるのかよ......」

「か、変わった人だね」

「変人と馬鹿は違いますよデュノアさん」

 

平気平気、と包帯を巻いた左腕を振ってみせる成政に対して、オロオロとする一夏。

「おい馬鹿、傷に触ったらどうするんだ!頭もまだ完治してるわけじゃ無いんだし」

「これでも身体は丈夫なんだ、気にすんな一夏」

「そうは言ってもなぁ......」

「木刀で頭を2回も叩いてピンピンしてるんだ。問題ない」

「おい箒」

「......しまった、ノーカウント。私はまだ1回しか叩いてない」

「それはそれで問題じゃないかなぁ」

 

男子という事で一夏が誘った金髪ことシャルルのツッコミが華麗にスルーされるが、

 

「まあ細けえこたあいいんだよ。シャルル君出汁巻食べる?」

「ワショク?食べたことないし貰おうかな」

「まいどー、300円」

「お金取るの?!」

「グラム当たりだから」

「ぼったくりじゃないか!」

 

まあ、そのうち慣れるだろう。

 

「所で君、スポーツは?」

「えっ、えっと」

「石狩成政。2人目と言ったほうがいいかもしれないね」

「こちらこそよろしく。シャルル・デュノアだよ」

成政が差し伸べた手を自然に握り返し、握手を交わす。一部それを面白くない目で見ているものがいたが、成政は気付かないフリをする事にした。

 

「スポーツは、特にやってないかな。あ、でも水泳は得意だったよ」

「ふーむ、そうか、成る程」

「えっ、何?」

「いや、つまらない事」

 

ひらひらと手を振ってオーバーなリアクションをして見せる成政。彼は純日本人なのだが、家族と旅行で外国を飛び回っていたためか若干日本人らしくないリアクションをとったりする。

 

「細かい事気にしたらダメだって、もっと気楽にいこうよはっはっは」

「そ、そうかな、ははは」

「成政ってこんなキャラだったっけな?」

「......気にするな一夏、何時ものことだ」

 

シャルルの背中をバシバシ叩いて笑う成政、そのあまりにらしくない仕草に首をかしげる一夏。

 

「あんなこと普通しないよなぁ」

「一夏さん、サンドウィッチを作ったんですの」

「......ああ、ありがとなセシリア」

 

考え事で上の空だった一夏は、特に深く考えることもなくセシリアのサンドウィッチに噛り付いた。

 

 

 

やはりというべきか評判通りというべきか、イギリスの料理が不味かった、と保健室でのちに一夏は語ったそうだ。

 

 

 

 

 

 

「......」

 

昼休み、成政の目が途中から笑っていなかった事は、箒だけが気付いていた。

 

「何か、ある様だな」

「どうにもあの転校生、きな臭いなぁ」


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