インフィニット・ストラトス 〜マネージャーですが何か?〜   作:通りすがる傭兵

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スマホ投稿だと誤字脱字が酷いww

......もっと気をつけよ。

UA8000!

......原作を揃えるべきだろうか?


第10話

 

 

「結局来なかったな、成政」

「ええ、大丈夫でしょうか......」

「ところであの、箒だっけ?そっちは」

「来てるには来てるけど、話しかけようとしても逃げちまうし、どうにもならないよ。2時間目にはもう帰っちまったし」

 

昼休み、一夏、セシリア、鈴の3人は食堂に集まっていた。クラス代表戦が近い今、一夏と鈴が頻繁に会っていると八百長を疑われるのでよろしくはないのだが、場合が場合なのだ、仕方がないと織斑先生も黙認してくれている。

 

「こんな時は、時間が解決してくれるのを祈るしかありませんわ」

 

一歩引いた立場にあるセシリアからは消極的な意見が、

 

「いっそのこと無理やり2人きりにすればいいじゃない。腹を割って話せば解決するわよ」

 

当事者である鈴からは強気な意見が出るものの、

 

「こんな事初めてだし、下手に拗らせたら嫌だよ。ギクシャクしたまま練習もしたくないし」

 

結局、決めかねたまま様子見、という事になってしまう。進展しない状況に苛立つが、まだ時間はある、と一夏は自分に言い聞かせた。

 

「ところで一夏、成政ってどんな奴なのよ。話だけ聞いてたんじゃわかんなくて」

「......よく知らずにあんなことが言えましたわね」

「あの時は色々とあったのよ」

 

察しなさいよ、と言いながらラーメンをすする自由な鈴をみて溜息をつくセシリア。

 

「貴女はもう少し、いや、何でもないですわ」

 

世の中には言わないほうがいいこともある、ということだ。

 

「で、成政のことだろ。俺も1ヶ月前にあったばかりだし、セシリアもまだ2、3回会っただけだろ?あんまり言えることはないぞ」

「それでも構わないわ。ちゃんとけじめはつけなきゃ行けない、でしょ」

「そうだな、まずは」

「あの、一夏さん......ケジメって何ですの?」

 

そういや、日本に住んでいた鈴はともかく、セシリアはイギリス人だったな、と若干忘れていた一夏だった。普段があんなに日本人よろしく流暢に話していれば当然とも言えるが。

 

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

 

 

 

「......とまあ、こういう奴なんだ」

 

一夏が一通り話すと、鈴は頭を抱えてしまい、セシリアは何か考え事を始めた。

特に当たり障りのない、要点だけを抜き出して説明したものだったはずだけど、と慌てて、

 

「なんか俺変なことでも言ったか、気を悪くしたんなら」

「いや、そういう事じゃないんだけど、ね。

自分に嫌気がさして、あー、なんてこと言っちゃったかな」

「選手からドロップアウトしていたのですか、道理で......」

 

 

仲良く溜息をつく2人を見て、怒っているわけではないと一旦胸をなでおろす一夏。

そこに、

 

「隣失礼するよ」

「ああ、別にいいけ、って成政?!」

「何だ、鳩が豆鉄砲でも食らったような顔でもして」

 

一夏の隣に座ったのは、先程まで話題に上がっていた成政だ。身体中に湿布だったり包帯だったりを巻いているが、元気に歩いているあたり、無事なようだ。しかも、

 

「まさしくその通りだな、写真でも撮っておけば良かったな」

「箒まで、お前、どうして怪我してるんだ!」

 

箒まで同じように包帯に湿布となると、ただ事ではない。おまけに顔に大きな青あざまで付いているとなると大ごとだ。何があったかと2人に質問すれば、

 

「「()()()()()()()()()()(だ)」」

 

そうシンプルな回答が返ってきただけで、2人は多くを語らない。

しかし、流れるように向かい合って座るあたり、しっかりと仲直りできているようだが、

 

「ちょ、殴り合ったってどういう事だよ。しかも箒の顔に青あざまで作って、おい!」

 

日替わりのコロッケ定食を食べようとしていた成政に詰め寄り、問いただす。

一夏はこういった雰囲気を察せない。だからこそ友人からは唐変木だのフラグブレイカーだの呼ばれていたりするのだが、それはそれ、これはこれ、だ。

 

「これは、まあ、アレだ。2人だけの秘密にしたいんだが、ダメか?」

「ダメに決まってるだろ、俺が納得できない。ちゃんと理由を聞かせてくれ」

「そうですわよ。うら若き乙女の顔に傷など、本来はあってはならない事です、理由をお聞かせ願えるかしら?」

「そーよそーよ、2人だけなんて水臭いじゃない。混ぜなさいよ!」

 

残り2人が敵になってしまっては、成政は話すしかない。最後の助け、と箒にアイコンタクトを送っても、勝手にしろと言わんばかりに無視される。

仕方ないと溜息を付いて、彼は口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い部屋の中、1時間目は何とか行けたものの、体調を崩したと嘘をついて部屋に引きこもっていた箒。

何かをブツブツと呟くばかりで、はたから見れば精神異常者にも見えただろう。髪もボサボサで、寝不足で隈もつき、制服もシワだらけ、といったいでたちが、それに拍車をかける。

 

「よお、モッピーちゃん。元気か」

 

織斑先生を説き伏せてマスターキーを借りて来た成政が、無断で入って来た。一瞬顔を上げた箒だが、また俯いて何かをブツブツと呟く。

頭に巻かれた白い包帯が痛々しいものの、至って元気な成政は、笑いながらいつも通りに、箒に声をかける。

 

「体調崩したんだってな。体が資本なんだから、体調管理はしっかりとね」

「......」

「着替えたほうがいいんじゃないか?制服がシワになるだろ」

「......」

「あーあー、木刀がこんなところに。ものは大事に扱わないと」

「......」

「はろー、もしもーし?」

「......」

「ねえ、聞いてるモッピーちゃーん。ねえってば、おーい」

 

しつこい位に語りかける成政に帰って来たのは、枕がひとつ。ぽすり、と軽い音を立てて成政の体にあたり、床に落ちる。

 

「もう、放って置いてくれ。私に、構わなくていいから」

「とは言われましても、選手のメンタルケアも、マネージャーの仕事なわけなんだが」

「いいから出ていけ!」

 

よほど近づかれたくないのか、手当たり次第に近くの物を投げつける箒。

それをものともせず、ゆっくりとだが成政は歩みを進める。そして、

 

「......甘ったれんなクソ後輩が!」

 

胸元を掴んで、思いっきり右ストレートを顔面に叩き込む。素人丸出しの、腕の力だけで振るうパンチだが、女子の体を吹き飛ばすには十分だ。箒の体が壁に当たってすごい音を立てるが、今は授業中で全員が出払っている、誰も来ることはない。

 

「どうせ、お前は、合わせる顔がないだの、全部自分のせいだから、だの考えてるんだろ。

んなこたぁ2年前に嫌ってほど知ってるんだよ!あん時みたいに素直に謝れば良かったがな、こうウジウジしてるなんて、見てられん!

 

それに、一夏や、他のやつにでも慰めてもらうつもりだったか?箒は悪くないから、って。

でもなぁ、今回のは純粋に、お前が悪い。元凶の凰にも責任が無いわけじゃない、が。お前は暴力でそれに答えるという、最悪なことをした。文句があるなら、言ってみやがれ!」

 

だらりとした箒の胸ぐらを掴んで立ち上がらせ、そのまま殴り続ける成政。顔、腹と場所を問わず何回も殴りつける。

はたから見れば、ただの暴力、八つ当たりだ。それは成政もしっかりと理解はしている。

 

「こんなうじうじした箒を、僕は見たくないんだよ!だから、あの時みたいに、全力でかかって来やがれ!」

「......しだって」

「なんだ?」

「私だって、こんなことしたくなかった、けど!」

 

今まで、動かなかった箒が、動く。

顔狙いのパンチをガードし、返す刀で成政にボディブローを叩き込む。

 

「頭に血が上ってたのもある。慣れない環境でストレスもあった、でも、それ以上に、自分の尊敬する人を馬鹿にされて、黙っていられるか!」

 

今までの仕返しと言わんばかりにカウンターを打ち込む。足の弱い成政が倒れて、立ち上がるたびに何度も、何度も、殴りつける。

気がつけば、言葉を交わしあいながら、ノーガードで殴り合っていた。

とあるロマン妖怪がいたら、こんな言葉を漏らしたに違いない。どこの少年漫画かよ、と。

 

「そういう時に何で木刀を使うんだよ!」

「知らん!近くにあっただけだ!」

「ちゃんと道具は片付けろ!」

「防犯用だ!」

「せめて警棒にしろ!もしくは竹刀!」

「次からはそうさせてもらおう!」

「マネージャーを尊敬すんな、選手にしろ!織斑先生とかいるじゃないか!」

「尊敬しているとも!それ以上に、今の私を作ったのは成政さんだ、するなという方がおかしい!」

「そうか、ありがとう!」

「当然のことだ!それに成政さんは自己評価が低すぎる、もっと周りを見ろ!」

「ちゃんと見てるが!それであの評価だ!」

「だったら先輩の目は節穴だ!」

「しっつれいな!僕の視力は両目2.0だぞ!」

「視力の事をいってるんじゃなぁい!」

 

 

「今日朝イチでなんで鈴のとこ行かなかった!ちゃんと謝れ、なんですぐしなかった引きこもりめ!」

「そう簡単に割り切れるほど、私はっ、単純じゃないんだ!それに部屋を知らん!」

「んなもん自分で調べろ、ズボラ!」

「ズボラではない、料理洗濯掃除、全部できるぞ!」

「箒の味噌汁はしょっぱ過ぎるんだよ!」

 

 

 

「滅びろたけのこ派!」

「たけのここそ至高だ!箒こそ間違っているんだ!きのこなんてなくなればいい!」

「うるさい!あの軸のクッキーが私は好きなんだ!たけのこは食べた後口がパサつくから嫌いだ!」

「たけのこの方がチョコ多いし美味しいじゃないか!」

「全体で見れば同じだ!」

「そいつは詭弁だ!明◯に騙されてる!」

「そもそもきのこもたけのこも◯治だ!」

 

何故か会話はどんどん関係ない方へずれていき、

 

「うるひゃい!私は、私はなぁ、まだ、1割くらいしか力をらしてはいないのら」

「ほう、そーか、ぼくは、まだ、はぁ、はぁ、5ぱーせんとくらいしか、だしてないし」

「わたしのほんきは、せんぱいよりもすごいのだぞ、ほらぁ!」

「うぐぅ、まだまだ、いける!ぼくのほんきをくらえ!」

「わたしのほんきはな、こんな、ものでは、ない、の、だ」

「そ、うか、ぼくも、おなじ、だ」

 

力を使い果たし、青あざ血まみれで床にパタリと倒れこむ両者。顔は腫れて、身体中がボコボコだが、対照的に心は晴れ渡っている。

 

「......わたし、なんでなやんでたんだっけ?」

「わすれた。とりあえみんなにあやまれよ」

「わかった」

 

殴ったり殴られ過ぎたりして頭が働かないのか、微妙にしたったらずな2人だが、互いの言ってることくらいは理解できる。

悲鳴をあげる体に鞭打ち、立て掛けた杖を支えにし立ち上がる。そして、箒に手を伸ばす。

 

「ほら、いこうぜ」

「ああ」

 

迷いなくその手をとり、お互いに肩を貸し合う。そのまま、お互いを支えあいながら、教室に行くため、皆に謝りに行くため、2人は進んだ。

中休みだったので箒の様子を見にきて、2人のひどい姿を見てしまった山田先生が気絶するというオチを挟んで、の事だったが。

 

 

「まあ、通りすがった織斑先生が、山田先生ごと保健室に放り込んで今に至るんだけどな」

「......すまん、全然わからん」

「要するに、悩んでる時は」

 

何が何だかサッパリだ、と混乱する一夏におもむろに箒が拳を突きつけると、

 

「この手に限る」

「いやその理屈はおかしい」

「「......ご馳走さまでした」」

 

何故かキャラを無くしたセシリアのツッコミで気まずくなった空気から逃げるように食器を片付け出す2人。一夏達も食べ終わっており、一緒に食器を片付け人もまばらになって来たテーブルに戻る。昼休みもまだある事だし、雑談には丁度いいと怪我人コンビに気を使ってか、セシリアが引き留めたのだ。

 

「鈴、少しいいか?」

「なに?いいわよ」

 

先に来ても席に座らず立っていた箒が座ろうとした鈴にそう言い、空間の開いた通路のようなところで向き合う。そして、

 

「あの時は!本っっっっっっ当に済まなかった!」

 

思い切り土下座した。

日本に住んでいた事もある鈴だが、土下座の存在は知っていたかもしれないが見たことはない。それは日本でも例外ではなく、周りにいた人達がざわめく。

あたふたとする鈴に対して、土下座を敢行し続ける箒。そんな光景を横目にしながら、

 

「......いやぁ、土下座とはね」

 

箒はやることなす事極端だな、と 溜息をつきながらやれやれと首を傾げていた。

 

「あだだだだ!なんで痛いぎゃああああ!」

「お前な、怪我人だって自覚あるのかよ」

 

 


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