少し過去話、ここで話さないとしばらく出ませんからね
統一歴 1925 3月某日
「〈G〉号戦車、前へ!!」
試験用不整地を行く鋼鉄の塊。分厚い装甲に男性の象徴の主砲。男なら悦びさえ覚える騒音をまき散らしながら進み始めたそれは、紛れもなく戦車だ。
(僕が乗ってたのよりはるかに大きい……なにより「8センチ砲」ってなあ……ホンマに動くんかい)
それも皇国で、否、現状世界で最も強力な戦車だった。
その車長用ハッチからビシッ!っと腕を伸ばし、
小柄でかなり隠れてしまっているが、最近戦車兵用に採用されたダークグリーンの野戦服――標識から階級章、その他特技章が一切無いので仮装のようなものだがーー に帝国がかつて採用していたべレータイプの黒い野戦帽(ちなみに元の帝国において公式には使用が禁じられている)を身に着けている。最近では少なくなった伊達モノの戦車乗り、といった感じだ。
その振る舞いは本職ではないが、完全な
最近の陸軍なぞ広報に彼女らを利用しているから、一昔前に比べて目くじら立てる人間はいないのだが。
そして顔は小顔でどこか得意げだ。ふふーんと言いそうで、カワイイ
戦車が進み、傾斜地に差し掛かる。初動の成功から巡航速度に移る……そのとき、機体の後部から明らかに嫌な音がした。
直後に、女性の悲鳴
「ッハッハッハー! 皆さぁん! カワイイ僕の戦車がヤバいです!!」
「輿水先生!エンジンのふちょーですか!」
周囲も異変に気付く。
ドライバーも気がついたのか、徐々にエンジンの回転を落とした。
消火器とホースを抱えた何人かが取り囲む。その中には、
不調からか急停止した戦車。次は車体下部から、ピキンピキンという甲高い金属音が響く。……どうやらサスペンションもおかしくなったようだ。
停止を確認すると何人かの技術士官が機関部にとりつき、確認を始めた。どうやら消火器の必要はないらしい。深刻な――生きるの死ぬのの問題はないらしかった。福田は消火器を持ったまま立ちつくした。
「先生ぇ!エンジンがイカれてます!」
「でもサスはまだ壊れてません! これは成功です!」
なんとまあ、楽しそうに。福田は思った。
戦車の周囲に集まり、技術的な問題を話し合う一団。白衣姿の民間人から作業服をきた技術将校まで、その中には件の『先生』も含まれていた。
漏れ聞こえる内容そのものは小難しい。どうやらエンジンの固定方法について議論しているようだった。かつて(短期とはいえ)戦車将校としての教育を受けた福田でさえ理解しがたいものだった。しかし傍目にはまるで、子供がよく飛ぶ紙飛行機について言い合うような風があった。
本当に、楽しそうなのだ。自分も入りたいと思うほどに。
それが、この戦車についてでなければ。
*** *** ***
皇国 陸軍富士試験場
やたらめったら平野に工場と住宅地を作りまくった現在の皇国では車両試験の行える平野は少ない。防諜上の必要とやたらと権利に喧しい臣民が増えているからだ。いっそ北海道にまでいけばよさそうだが、今度は機材を運ぶのにえらく手間がかかってしまう。次世代の機械化部隊を研究、育成するには工場からも近く、人の移動にもそれなりに便利な場所に、できるなら学校から研究施設まで一遍に作ってしまった方が都合がいい。
そういうわけで、この富士山麓の演習場が選ばれた。
装備や人員の大規模化によって手狭になった各地の試験場を集め、機械化学校や教導隊、実験部隊を寄せ集めたここは、開発と教育の一大セクションとなる予定だ。もう暫くすれば戦車学校の移転が完了し、正式に「富士機甲学校」として動き出す。
そんな所に福田がいるのは、けして彼が元戦車将校だから、ではない。彼が国際問題研究所なる怪しげな機関に入ったことの副作用のようなものだ。
後半につづく
厚い皮より速い脚、話を進めるよ
誤字脱字と前後の矛盾は後日改定(言い訳)
「8センチ砲」とかいうロマン(´・ω・`)
得意げでカワイイ(重要)輿水先生=大胆なパロは架空戦記の特権
済まない(´・ω・`)
戦車兵福田の時点で多少はね、デレマスタグはどうしよう。完全な本人ではないし