東方英雄章~【妖怪と人間と】   作:秦喜将

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この作品には以下の成分が含まれます。


・作者はバカ
・痛々しいまでの中二病&中二発言
・大した文章力(ダメな意味)
・妄想は自由だ!


以上の要素が含まれます。苦手な方はブラウザバック推奨です。
それでは、死力を尽くして頑張ります。


開口
序章 再会……そして


『いつか……いつか私が、あなた様の縛りを…世界の拘束から解き放ってみせます!どうか…どうかその時は…』

 

少女は涙で顔を濡らしながら、自身に背を向けている一人の少年に叫び、悲願する。

 

『フフ、お前が言うと本当にそうなりそうな気がするよ。そうだな、もしもアレ(・・)を俺から断ち切ってくれたなら、その時は……お前の望みを何でも一つ叶えよう』

 

そう言って少年は少女の方へ振り向き、安心させるように笑い掛ける。

少女は涙を拭い、少年の顔を見て、愛らしい子供の笑みを向ける。

少女の笑みと共に、少年は青い粒子となって消えていく。

 

『いつの日か……私が、必ずや成し遂げてみせます!』

 

 

※※※

 

 

そこは、緑が生い茂る草原と、煌めく太陽の日差しで一寸の濁りもない小川。

その付近に佇む小さな家。

家の庭には小さなベンチがあり、色とりどりの花々が咲き乱れている。

そのベンチに一人少年が腰を下ろす。その少年は日本人をイメージさせる黒髪と、アメジストの様な透き通った紫色の瞳を持つ。本を片手に足を組みその上にメモ帳を置いて本の内容を口にしながら鉛筆でスラスラと書いていく。

 

「古来より人は人ならざる者達を恐れる。妖怪・神・悪魔・幽霊等、人は自分たちの知識・理解の及ばない存在達を忌み嫌い、拒絶してきた。それは無理もない事だろう。それは仕方のない事だろう。人は、全世界の食物連鎖の頂点であり、また最下位の存在なのだから」

 

本の内容を書き終え、少年はそっと本とメモ帳を閉じさらに独り言を呟く。

 

「人が自身の理解を超えている存在を畏れ、恐怖するのは当然の事だ。なにしろ相手は自分がどれだけ逆立ちしようとも全くの意味を為さない怪物なのだから」

 

そう言うと少年は立ち上がり、小川の方へ歩き出す。

その道中も、少年は独り言を続ける。

 

「特に人は妖怪を恐れる。どんな妖怪であれその力は通常の人間の数倍は上をいくからだ。故に人は、身体的な力ではなく知力と底なしの欲望をもってこれを打破してきた。その果てに得られるものが、互いの絶滅だと知る由も無く……」

 

独り言を呟いている間に、少年は小川へとたどり着いた。

そしてゆっくりと腰を降ろし、ぼ~っと小川を見つめる。

しばしの間何も言わずにいた少年は、また独り言を呟き始めた――しかし今度は、誰も居ない筈なのに、まるでそこに居る誰か(・・)に語り掛けるように。

 

「妖怪達や神々、悪魔は人間が欲深く浅ましい生き物だと言うけど、俺にはそうとは思えない。人は数十年という短い時の中でしか生きていけないのだから、『あれをしたい』『これをしたい』と思うのは当然だと俺は考えている。それに人間は貧弱だから他者より欲深いくらい許してやって欲しいんだけどさ……そうは思わない?」

 

「さあ、私に聞かれましても何とも言えません。そもそも私は人間ではないので……」

 

「そりゃあごもっともで」

 

少年はゆっくりと声の方へ振り返ると、そこには導師風の服を着た九つの尻尾が生えた金髪の女性が立っていた。

 

「初めまして、私の名は八雲藍(やくもらん)と申します。(ゆかり)様の命によりお迎えにあがりました。『氷鉋乖離(ひがのかいり)』殿」

 

そう言って、八雲藍と名乗った女性は深々と頭を下げた。

その仕草は誰が見ても優雅であり可憐なものだった。

 

 

「八雲…………ん?八雲って、もしかして紫の親族なのか?!」

 

「親族というより、私は紫様の式神です…」

 

藍は乖離の問に淡々と答え、乖離も「へぇ」と相槌を打つ。

しばしの沈黙が続き、先に沈黙を破ったのは乖離だった。

 

「えっと、藍さん?俺を迎えに来たって言っていたが、俺は紫から何も聞いていないぞ?もしかして、誘拐を迎えに来たってオブラートに包んだの?」

 

「私の事は藍とお呼びください。しかし、どうゆうことですか?紫様からは既にそちらに連絡はしてあると聞いたのですが…?」

 

またもや沈黙が続き、お互い困ったような笑みを浮かべた。

乖離は少し考え込むように腕を組み、首を右左へコクコクと傾ける。

そして何かを決めたように、バッっと立ち上がる。

 

「よし!じゃあ藍、紫の所に案内してもらっていいかな?どうせ紫のことだし、ただ雑談がしたいとか、暇だからなんて理由じゃないだろうし」

 

「よろしいのですか?」

 

「ああ、構わないさ。きっと何か重大な事で相談でもしたいんじゃないかな?」

 

「大正解です」と、藍は内心で乖離に拍手を送るが、決して悟られぬよう表情には出さない。

 

「では、こちらへお入りください」

 

そう言うと、藍の隣に空間の裂け目が現れた。

その中には沢山の『目』があり、ずっとこちらを凝視してくるのだ。

並の人間なら数分で発狂するであろうその裂け目、『スキマ』に少年は何の戸惑いも無く入っていった。

 

 

 

※※※

 

side乖離

 

 

 

藍に誘われ、俺はある大きな屋敷の庭に立っていた。藍曰く『マヨヒガ』と言う住まいだとか…。

周りには綺麗に整えられた砂利と観葉植物たちが並んでいる。俺はこういうものには結構素人だが、かなり丁寧に手入れされているのは分かる。

なんて事を考えている間に、俺は客間に案内され、藍からお茶と茶菓子を頂いていた。

 

「この茶菓子美味いなぁ~、どこのだろう?」

 

「それは人里から買ってきた物ですね」

 

「人里?それはどこにあるんだ?」

 

「それついては紫様からご説明があるかと…」

 

藍はそう言って何も答えてくれない。しかし、俺を呼び出した張本人である紫は何をしているのだろうか?かれこれ10分は待たされている。

これが外であったのならまだ分からなくもないが、さすがに客を待たせるのは頂けないな…俺だからいいけど。

なんて思いながらお茶を啜っていると、襖が開き足まで届きそうな金髪の美女が入ってきた。

紫を基本としたフリルのついたドレスを着ていて、その佇まいと仕草からは、恐らく特殊な趣味を持つ男以外の男性全員を魅了するような妖艶さがみてとれた。

俺があっけにとられていると、女性は心底嬉しそうに顔を赤らめて俺に語りかける。

 

「お久しぶりですわ、乖離様……私の事を憶えていらっしゃいますか?」

 

憶えているも何も、こんな美女など俺の知り合いには居ないんだが……しかし、俺もそこまで鈍感ではない。俺を前にどこかそわそわしているところとか、感じ取れる妖力は明らかにかつての比ではないが、その質で誰なのか判別できる。

それに、『あの日』からなにも変わっていないところを見れば、おのずと理解できる。

そう、彼女こそ………

 

「紫……だろ?随分と綺麗になったじゃないか…一瞬誰かと思ったぞ?」

 

「フフ、ありがとうございます。ああ、こうしてあなた様と再会できて、心から嬉しく思います」

 

そう言って紫は俺の前に座り、深く深く頭を下げる。

所謂土下座だ。

 

「そして、今日はお忙しい中わざわざ私の我儘に付き合っていただき、感謝の言葉しか上げられません」

 

「はは、忙しかった訳ではないが、突然の事だったから少々驚いたかな?」

 

「先程藍から聞きましたわ、乖離様宛に送った手紙が、手違いでそちらに届いていなかったと……誠に申し訳ございません」

 

「いやさあ、別にそれはいいんだけど……そろそろ顔上げてくれない?さっきから藍の目が点になってるし、俺もなんだかやり辛いし」

 

そう、先程から紫は俺に頭を下げたままなのだ。その勢で藍は『どういうこっちゃ!』って顔してるし、何よりこのなんとも言い難い空気に俺が耐えられない。

 

「しかし、私にはこうするしか謝罪と感謝の念を表現出来ません」

 

「だからさ、俺は別にいいんだって!それにお前がそんなだと本題に入れないだろ?」

 

「――ッ!!」

 

紫は一瞬ビクッっと肩を震わせ、ゆっくり頭を上げた。

 

「やはり、気付いておられたのですね……」

 

「まあな………お前が雑談なんかで俺を呼ぶ訳ないしな。………で?建て前はどうでもいいから、要件だけ話せ」

 

少し威圧的になってしまったが、大丈夫だろう。

紫は小さく深呼吸をして、俺にかつての『約定』を投げ掛ける

 

「あの日、乖離様は私と約束してくださいました。世界の拘束からあなた様を開放すれば、私の願いを何でも一つ叶えてくださると……」

 

「そうだな……そんで案の定お前は俺を開放してみせた。だから俺がお前の望みを承諾するのは道理だな。いやはや、これじゃどっちが『救われた』か分からないな」

 

「乖離様がどう思われているかは存じませんが、『救われた』のは私です。この事実だけは、私の『境界を操る程度の能力』をもってしても覆りません。っと、話がそれてしまいました。私の願いの前に、その願いに関係する世界の話をしてもよろしいでしょうか?」

 

俺は首を縦に振る。

 

少女説明中~☆

 

紫は俺に自身のこれまでの人生の話をしてくれた。話の内容は俺と別れたあの日以降の事であった。紫は自身の能力で『幻想郷』と呼ばれる忘れ去られた者達が集う世界を創ったのだとか、その世界を維持する上で必要不可欠な結界『博麗大結界』の話、そして幻想郷は妖怪も神も人間も存在している。その為、抑止力となる存在、『博麗の巫女』の事を、事細かく説明してくれた。

 

「なるほどね、幻想郷か……紫、お前もなかなか酔狂な世界を創ったものだな、よもや忘れられた者達、『表』で否定された存在を『裏』に誘うなんてさ!」

 

「幻想郷は全てを受け入れます。故に、表の世界で生きられなくなった妖怪や神、それと人間も私達は受け入れています」

 

「そうか……そんでさ、結局のところお前の望みってなんなのさ?」

 

紫は再度深呼吸をして、俺の目を見ながら自身の望みを告げる。

 

「私の願いは…………乖離様に、私達の幻想郷で生きて欲しい……これだけです」

 

「…………三つ聞かせてくれ」

 

「なんなりと……」

 

「一つ目、その幻想卿にはお前以上の力を持った妖怪もしくは神はどのくらい存在する?」

 

「片手で数えられる程です」

 

「二つ目、その世界に金銭感覚はあるのか?」

 

「もちろん存在いたしますわ。お望みとあらば、乖離様の財産をこちらの金に変換致しますが?」

 

「ああ、そう?それならお願いしようかな?最後の質問次第でな……?」

 

突如その場に重苦しい空気が充満する。紫は眉を顰め、俺がどんな事を聞いて来るか警戒しているとみてとれる。どうやらさっきまで一切口を開いていない藍からも鋭い視線を感じる。そして俺は、最後の問を口にする。

 

「幻想郷は……楽しいか?」

 

俺の最後の質問に、二人は鳩が豆鉄砲食らったような顔をした。

だが直ぐに紫が笑い始め、藍は呆れたように苦笑いを浮かべた。

 

「アハハハハハッッ!!お腹がっ、お腹が痛いwww」

 

「ん~俺そんなに笑われるような事言ったか?」

 

「フフフ、申し訳ありませんわ乖離様、あまりにも可笑しくて、それでいてとても嬉しかったものですから」

 

そう言って紫は目元の涙を拭いて、俺に向き直った。

 

「先程の質問ですが、お答えいたしますわ……幻想郷は、決して乖離様を退屈させませんわ。きっと、毎日が面白可笑しくなるはずですよ」

 

「そうか、それなら安心したよ」

 

どうやら向こうの世界は、面白可笑しい事で溢れているようだ。それなら俺も助かるってものだ。誰が好き好んで退屈な世界に行くだろうか……

そうして俺は紫に導かれ、人生初の、世界の裏側『幻想郷』に幻想入りを果たすのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 




如何だったでしょうか?自分として出来るだけ難し過ぎず簡単過ぎずを構成させたつもりです。

感想等、評価等バンバン送ってくれると嬉しいです!!(モチベ的に)

次回はお馴染みあの二人を出します!(多分次回から他作品ネタが出ます。何がとは言わないが…)

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