東方英雄章~【妖怪と人間と】   作:秦喜将

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テストが終わった~~


そしてぬえ関係の方が出せなかった……

ではどうぞ!


十三話 うんたら問答と忘れ物

Side乖離

 

 

 

レミリアさん達を誘って皆で宴会を楽しんでいる俺と愉快な仲間たち。

皆あちらこちらで色々な会話を楽しんでいる。見ていてなんだか和む光景だ。

 

かく言う俺は、膝の上にフランドールを乗せている。そしてちょくちょく彼女の所望する料理を俺が後ろから彼女の口に運んでいる。一応念の為に言っておくが、これは決して故意ではない。彼女たっての希望なのだ。

 

『お兄様のお膝の上に座りたいわ!』とのことだ。

 

俺としても別に断る理由なども無い訳だし、構わないだろう。

ただ、一つだけ問題があるとしたのなら……さっきから紫と藍に妹紅から凄く凝視されている気がする。もはや紫に至っては軽い殺意すら感じる程に……。スゲー怖いです今の状況。

 

「お兄様、次はあのチェリーが食べたいわ!」

 

どうやらこのお嬢ちゃん、次はチェリーがご所望のようだ。

 

「あいよ~」

 

俺は近くの皿にあったさくらんぼ(チェリー)を能力で右手に転移させ、それをフランドールの口元に持って行き、フランドールはパクンとチェリーを頬張る。

 

「おいしい~」

 

「そりゃようござんした」

 

異変の時はあまり考えていなかったが、こうしてみるとフランドールはやはり見掛け通りの子供なのだという事が理解できる。こうして膝の上に座らせている間も、嬉しそうに羽をパタパタとはためかせている。そして時折見せる無邪気な笑顔もあいまって、より一層彼女が(精神的に)子供なのだということがわかる。

そう言えば、この子は一体何歳なんだろうか?非常に気になる。

 

「なあフランドール」

 

「フランでいいわ!なあにお兄様?」

 

「フランってさ、何歳なの?見た目からして十代成りたてっぽいけど」

 

「495歳よ?」

 

おかしいな……俺の耳がイカレてしまったのだろうか、今495歳と聞こえた気がするのだが……。もう一度聞いてみよう。

 

「もっかい聞くけど、フランは今何歳?」

 

「だから495歳よ?」

 

うん、どうやら俺の耳は本格的にヤラれちまったようだ。こんな少女が三桁代など天地がひっくり返ってもありえないことだからな………。

 

「冗談だろ?………冗談だよな?」

 

俺の取った行動は、もはや現実逃避と相違なかった。何せこんな小さな少女が、見た目も中身も子供のフランが俺より年上だなんて、色んな意味で認めたくなかったのだから。

 

「本当よ?因みに、お姉様は私より五つ上で500歳なのよ!」

 

止めの一撃ありがとうフラン。おかげでもう何もかもがどうでもよくなりそうだ。

 

 

しかし、フランだけでなくレミリアさんまで俺より年上だったのには驚いた。幼いながらも礼儀を弁えたいい子だと思っていたのだが、やはり人は見掛けに寄らないということだろうか。いや、この場合は人ではなく妖怪か?まあどちらでもよいが。それと、もう一つ気になったことが俺の中にはあった。フランといいレミリアさんといい、姉妹であるのなら一体彼女等は何の妖怪なのだろうか。

 

「そういえばさ、フランとレミリアさんは姉妹なんだろ?二人は何の妖怪なわけ?」

 

「妖怪などと一緒にしないでくれるかしら、私達は高貴で気高い吸血鬼よ?そこら辺の雑魚どもと一緒にされるのは不愉快よ」

 

「何を偉そうに言っているのよこのカリチュマ吸血鬼」

 

「うるさいわよ霊夢!」

 

霊夢の容赦ないツッコミにレミリアさんは顔を赤くして霊夢に突っかかっていく。

それとカリチュマとはなんぞや?

 

しかし吸血鬼か……西洋で広く知られている古典的な妖怪……いや、悪魔と言った方がいいだろうか。鋭く強靭な爪は鉄をも引き裂き、単純な腕力も他の妖怪達とは一線を画すほどに強く、人の目では追えないほど俊敏な動きをするのだとか。

そして最もよく知られている特徴は、その名の通り人間を襲い、その鋭利な牙で血を吸う悪魔。一説には血を吸われた人間は彼等の眷属と成り果てるのだとか……。

 

「ん?じゃあフランやレミリアさんも人間の血を吸ったことがあるのか?」

 

「ええ、そりゃもちろんあるわよ?って、痛い痛い痛い!放して霊夢!」

 

レミリアさんは霊夢に組み伏せられながら俺の問に答えてくれた。可哀想ではあるが、そんな姿じゃなかったら拍手してたかもしれないな……。

ていうかいつの間に組み伏せられたんだろう……。

 

「お兄様お兄様!私も一回だけあるわ!」

 

フランは意気揚々と俺を見上げて答えた。可愛らしい限りの笑顔ではあるが、言ってることがアレな勢でなんとも言い難い。だがやはり、吸血鬼は人間の血を食料にしているのか。だとするのなら、彼女等の月の血の摂取量はどうくらいなのだろうか。

 

俺が考え事に耽っていると軽く肩を叩かれ、叩かれた方を見やると妹紅が何かを聞きたそうな顔をしていた。

 

「あのさ乖離、私が言うのもあれだけど、乖離って妖怪とか怖くないのか?」

 

「……いや、普通に怖いけど?」

 

「「「え?」」」

 

俺の返答が意外だったのか、妹紅は驚いたよに目を見開いていた。それは妹紅だけではなく、もう一方の隣に座っていた紫や藍も妹紅と同じような顔をし、お酒を飲む手を止めているほどだった。そんなに俺の返答が意外だったのだろうか。

 

「乖離様は妖怪が怖いのですか?」

 

「そりゃもちろん怖いさ、俺人間だし」

 

「い、意外です……。てっきり乖離殿は妖怪に恐怖心など感じないものだとばかり」

 

「俺は神様か何かか?」

 

しかし藍の言うことも分からないわけではない。何せ俺が彼女等に取って来た態度は妖怪を恐れていないかのような素振りしか見せていなかったのだから。

 

「で、では乖離様は私や藍……乖離様の膝の上に座っているフランドールやレミリアの事も怖いと思われているのですか?」

 

「ま、そうなるかな?……つっても、怖いからといってビクビクなんてしないけどさ」

 

確かに俺は人間、妖怪は怖いものだ。しかしだからといってそれを恐れ恐怖し、畏怖するかと問われれば、答えは否だ。

確かに妖怪は怖い……だが―――

 

「……所詮はただ怖いだけの存在だろ?なら何も問題ないじゃないか。その怖さに絶望した訳でもあるまいし」

 

それだけ言って俺は麦茶を一気に飲み込んだ。紫達は目を点にしているが、別にそんなになる程のことでもない気がする。レミリアさんに限っては『アホが何か言ってるわ』みたいな顔しているし、レミリアさんみたくそんな感じでいいと思う。

 

「お兄様は私の事怖い?」

 

「怖いよ?でも、ある意味では怖くないな」

 

「どういうこと?」

 

「だってフランは怖いというよりかは、見掛け相応のカワイイ女の子じゃん」

 

「ホント!?ありがとうお兄様!」

 

フランは俺の返答がさぞ嬉しかったのか、羽をいままで以上にパタパタとはためかせ始めた。俺は別に大した事を言った憶えはないのだが、フランが嬉しいのならそれでいいだろう。

 

「じゃあさ、乖離は不老不死をどう思う?」

 

妖怪の次は不老不死と来た……。適当に流すことは可能だが、妹紅の真剣な表情を見るにそれは得策ではないだろう。しかし不老不死と来たか…。これは妖怪云々より少々厄介かもしれない。……でもまあ―――

 

「生き続けるだけの存在―――以上!」

 

「え、そんだけなの!?」

 

「そんだけだよ」

 

妹紅は俺の返答が意外だったのか、真剣だった顔が拍子抜けたような顔に変わった。その後も、気持ち悪くないのか?・気味が悪くないのか?・化け物とは思わないのか?などと色々聞いてきたが、俺はその全てを『NO!』と答えてやった。ハッキリ言って不老不死など死なずに生き続けるだけの存在であって、それ以外はその他の者達と大差は無い。―――ただ、一つだけ挙げるのなら……永遠の別れを知る事になるといったとこだろうか。

 

「なんか、乖離って凄いな……。不老不死をなんとも思わないなんてさ」

 

妹紅はどこか安心したように小さく呟き、お酒を猪口に注ぎ一息に飲み干した。

妹紅は不老不死であり、きっと俺の想像以上に長い時の中を生きてきたのだろう。―――であれば、アレ(・・)を告げても問題ないだろうか……。

 

「なあ妹紅、不老不死は辛いか?」

 

妹紅は「当然だ」と答えた。その表情は言葉通り悲しそうな、そして苦しそうな表情だった。

不老不死は辛い……ならば、大丈夫だろう。

 

「そうか……俺はそうでもなかったけどな(・・・・・・・・・・・・・)

 

「そうかい。――――え、今乖離何て言った?!」

 

妹紅は最初こそ流すように答えたが、少し間を置いて俺の言った意味を理解したのか、血相を画いて聞き返してきた。

 

「だから、俺はそうでもなかったぞ?」

 

「待て待て待て!え?………そ、それって……もしや、乖離は―――」

 

「そうさ、お前の想像通り―――俺は不老不死だよ……元、だけどね?だから不老不死に対して気持ち悪いだとか、気味が悪いだとか、化け物なんて思ったことは無いよ」

 

俺は目を瞑り、少し恰好付けて臭いセリフを言ってみた。我ながら結構恥ずかしい。

俺は目を開けて妹紅を見てみると、驚いた事に妹紅は目からポロポロと涙を零して泣いていた。俺は何か妹紅を泣かせてしまう事を言っただろうか……。自称ではあるが一応紳士として見過ごせない状況だ。

 

「お、おい何で泣いてんだよ妹紅!」

 

俺は少し焦りながらも妹紅を慰めるように声を掛けるが、一向に泣き止む気配がない。だが、妹紅は泣きながらも俺の問いかけにだけは答えてくれた。

 

「う、ぅぅ………あいつら以外……にも理解者が居たんだと思うと……嬉しくて………同時に悲しくなって………う、ぁぁぁぁ」

 

ヤバいヤバいヤバい!泣き止ませるはずが更に悪化させてしまった。それだけではなく、女の子を泣かせてしまった勢で周りの視線がものすごく痛い。精神的にも、ある意味物理的にも……。俺と妹紅の話を終始聞いていたメンバーは仕方ないといった顔で見守ってくれていることはある種の救いといえるだろう。

 

俺が戸惑い、焦っていると紫が助け舟を出してくれた―――

 

「乖離様、そこの壊れた不死人は放っておいて宴会を楽しみましょう」

 

と、思ったがまったく違った。紫は無情にもここで妹紅を切り捨てろと言うのか……。俺も俺で大概だが、流石にそれは酷くないだろうか。まったく、いつから紫はこんな酷い子に育ってしまったのだろうか。

だが予想外にも紫の言葉が効いたのか、妹紅は泣き止み怒りの表情へ変わって紫に突っかかる。

 

「はぁ!?誰が壊れてるって!」

 

「それはあなたよ妹紅」

 

俺を挟んで紫と妹紅はギャーギャーと喚き合う。正直うるさいことこの上ないが、妹紅が泣き止んでくれたのはよかった。もしかしたら、これは紫の計算の内だったのかもしれないな。後で礼を言っておくとしよう。

 

 

 

 

そんなやりとりがあり、それなりに宴会を楽しんでいると不意に俺は忘れ物をしたのを思い出した。

 

「フラン、少し退いてくれるか?俺忘れ物を取りに戻らないといけないから」

 

「えーー、お兄様と離れたくないわ!」

 

「直ぐに戻るからさ、ね?」

 

俺がそう言うとフランは渋々と言った表情で俺の膝から退いてくれた。俺はフランの頭を優しく撫で、感謝の言葉を述べた後走って家の方へ向かった。

 

 

 

※※※

 

 

走って約十分といったところだろうか。本来なら一、二時間掛かる距離だが、少し無理をして自然エネルギーを全身強化と脚力強化に回した為、思ったより早く自宅に戻ることが出来た。因みに、全身強化をせず脚力強化のみを使用した場合、体が(主に脚)が耐えられず、骨折もしくは筋肉の破裂を起こしてしまう。

 

まあ、そんなことはさて置き何故俺が家に戻ってきたかというと、前途の通り忘れ物をしてしまったからだ。本当に今更な事ではあるんだがな……。

 

「えっと、あれはどこにやったかな~っと」

 

俺は今自室にて、とある一冊の本を探していたのだ。それこそが宴会から抜け出してまできた忘れ物だ。俺が探している本は、俗にいう魔導書と呼ばれるものである。俺は別に要らないのでゴミに出そうかと思っていたが、丁度宴会ということもありこの幻想郷には魔理沙という魔法使いが居るのだから、プレゼントしようと思っていたのだ。ゴミをプレゼントするなんて最低かと思われるかもしれないが、念の為に言っておこう。―――これは俺からすればただのゴミだが、俺ではない別の者達。そう、魔導士や魔法使い、魔術師からしてみればとんでもないお宝なのだ。

 

それは何故かって?―――今俺が探している魔導書は……世に高名な大魔術師・魔術王ソロモンの所有物だったのだから。

 

おそらくだが、魔道世界においてソロモンの名を知らない者は居ないのではないだろうかとすら思える。

まあ、その話は追々するとして今はその魔導書を見つけなければならない。だが、あちらこちらを探しても全く見つからない。俺の自室はほぼ書斎の様になってしまっている為、既に数百冊の本を置いてある。

 

「困ったな、マジであの本どこにやったっけな~」

 

俺は困り果てて諦めようとしていた。プレゼントはまた今度でいいかな?なんて思ったりもしたが、直ぐにその思考を放棄する。男に二言は無いのだから。

だが本当にどうしたものか……このままではフランにどやされるのは間違いないだろう。

 

そうして俺が悩んでいると、机の引き出しからコンコンと音がしてた。何だろうと思い、机の引き出しを引くと、その引き出しから紫が出てきた。

どこから出とるんじゃこいつは……。

 

「どったの紫?」

 

俺の問いかけが聞こえていないのか、紫は俺を他所に本で埋め尽くされた部屋中を見渡していた。俺は敢えてそれ以上何も言わず、紫がこちらに気付くのを待っていると、漸く俺に気付き慌てて引き出し(正確にはスキマ)から出てきた。

 

「も、申し訳ありません乖離様。乖離様に部屋があまりにも綺麗だったのでつい見惚れてました」

 

「この惨状を見てそんなセリフが吐けるお前を誇りに思うよ」

 

「ありがたきお言葉ですわ」

 

残念だが紫、俺はお前を褒めてないからな?むしろ嫌味を言ったくらいだ。

 

「んで、どうしたんだ?」

 

「帰りが遅いと思いましたので、何をなされているのかを確認に参りました」

 

「なるほどね、そうかそうか。悪いがもう少し遅れそうだと皆に伝えてくれ。俺は探し物で忙しいんだ」

 

「何を探しておられるのですか?」

 

「魔導書」

 

俺はそれだけ告げて魔導書探しに戻った。しかし、マジで見つからない。俺はわりと綺麗好きだから使った物はちゃんと元あった場所に片付けている。だというのにまったく見つからないとはどういう事だろうか。

なかなかお目当ての魔導書が見つからずイライラが増してきた俺に紫が声を掛けてきた。というかまだ居たのか……。

 

「か、乖離様……その魔導書とはどういった魔導書なのですか?」

 

「ん?……ああ、魔術王ソロモンが所有していたと伝えられている物だが、それがどうかしたのか?」

 

俺がそう答えると、紫は何故か額に冷や汗を搔いていた。それだけではなく、妙に顔が引きつっている。紫はオズオズといった調子でスキマを開き、そこから一冊の本を取り出した。そしてその本というのは、先程から俺が探していた魔導書であったのだ。

 

「紫……それは何だ………?」

 

俺が静かに問いかけると、紫の顔はみるみる内に青ざめ始めた。もしや紫は俺の部屋かた魔導書をクスねていたのだろうか。いや、紫に限ってそれは無いだろう。まあそれはともかくとして、今は急いで宴会に戻らなくてはならない。

 

「何でお前がそれを持っているかは知らないが、取り敢えず今は宴会に戻るぞ!」

 

俺は玄関へと急いで向かい、靴を履いて博麗神社へ向けて走り出そうとしたが、再度紫が俺の前に現れた。

 

「お待ちください乖離様、博麗神社には私のスキマを使って向かいましょう」

 

そうか、その手があったか。何故俺は紫のスキマという便利な移動手段があるということを失念していたのだろう。紫に頼めばあの悪趣味な階段を上らずに済んだというのに……。まあ、今更悔やんでも後の祭りだ。今は折角の誘いに乗っかるとしよう。

 

「ああ、それじゃあ頼むよ」

 

「はい。ではこちらへどうぞ」

 

紫はそう言って少し大きめのスキマを開いてくれた。毎度思うことだが、このスキマの中の目玉達はどうにかならないのだろうか……気味が悪いとまでは言わないが、少々気が引ける。

 

なんてことを思いながら、俺は再度宴会場こと博麗神社へと戻ったのだ。




最近文字数が毎度のこと6000を超えてしまうのは何故でしょう……

次回こそ、ぬえ関係の方が出せる筈です。(保障は出来ない)

そして宴会がなかなか終わらない。
多分後二~三話程続くかもしれません。


次回もお楽しみに!!

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