東方英雄章~【妖怪と人間と】   作:秦喜将

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今話で主人公の能力が出てきます。


二話 弾幕ごっことスペルカード…そして

Side紫

 

 

 

乖離様と魔理沙が弾幕ごっこを始めて数分が経とうとしている。

魔理沙は箒に跨り空中で弾幕をばら撒いている。一方乖離様は空を飛ぶことなく、地上で魔理沙の弾幕を回避している。先程からずっとこの戦況が続いている。

 

「クソッ!なんで当たらないんだぜ!」

 

魔理沙は自分の弾幕がことごとく回避されているのに随分ご立腹のようね。まあそれは無理もないわね、相手が空を飛んでいるならまだしも、回避に重力という制限が付いている地上であこまで涼しい顔して避けられていては、流石の私もイライラしてアレ(・・)を使うでしょうし。でもまあ、重力という制限が付いている中であれだけ回避し続けられるのだから、流石は乖離様ね。

 

「ああ!もうっ!こうなったら!」

 

「ちょっ、魔理沙?!」

 

霊夢の制止も虚しく、魔理沙はポケットの中からミニ八卦炉を取り出し、それを乖離様に向けた。

 

「くらえ!必殺【恋符・マスタースパーク】」

 

突如、魔理沙が構えたミニ八卦炉から極太の光のレーザーが放たれた。その速度ないままでの弾幕の数倍で乖離様に接近する。どうやら乖離様も突然の事で虚を突かれたように反応が遅れた。

 

「ッ!!」

 

魔理沙の放った極太の光のレーザーは乖離様を吞み込み大きな爆発音と砂煙を巻き起こした。しかし、少しやりすぎじゃないかしら?

 

「魔理沙!いくらなんでもやり過ぎよ、相手は初心者なのよ?」

 

「あ、悪いぜ……ちょっと頭に血が上り過ぎた」

 

「まったく!それより早く見つけ出して治療しないと」

 

「ふう、今のは危なかったな!」

 

霊夢が乖離様を探しに行こうとした突如、乖離様はまるで何もなかったかのように砂煙の中から現れた。

 

「「え?」」

 

「ん、何だその幽霊でも出たみたいな顔は?」

 

「な、何でアレをまともに受けて無傷なんだぜ!おかしいだろ?!」

 

魔理沙の言う事はごもっともだ。確かに魔理沙のマスタースパークは乖離様に直撃した。しかし当の本人は何事も無かったかのような顔をしている。それに、きっと魔理沙の強さを知っている者達なら、今の魔理沙と同じ顔を反応をするでしょうね……今の霊夢みたいに……。

 

「一体どうなってるのあなた?何で魔理沙のマスパをもろに受けて傷一つ無いのよ?」

 

「ん?ああ、それはだな、こいつを使ったからな」

 

そう言うと、乖離様の周りに金色の粒子が集まり、何かの着物の形に変わった。

 

「な、なんだぜこれ?」

 

「これは【天の羽衣】と言って、ありとあらゆる衝撃を無効化する防御アイテムなんだ!これでさっきのレーザーを防いだった訳さ」

 

「なるほど」といった顔で霊夢と魔理沙は相槌と打つ。

 

「でもさっきのは本当に危なかったな!一瞬こいつでも防ぎきれないかもって思ったからなぁ~。そんな事は滅多になかったし、堪んねぇなオイ!」

 

乖離様はとても楽しそうに笑っていた。こんな顔をして笑った乖離様を見るのは一体何千年振りだったかしらね。

 

「それよりさ、魔理沙のさっきのは何だったんだ?」

 

「ああ、あれはスペルカードよ!」

 

「スペルカード?」

 

 

 

少女説明中~☆

 

 

 

 

「なるほどね、弾幕ごっことスペルカードルール……相手に魅せる為の決闘方法か……戦いは戦いでも、物理も然り、精神戦でもあるのか」

 

「そういうこと。どう?気に入ったかしら?」

 

「ああ、なかなかに面白いな!よし魔理沙、さっきの続きだ!今度は俺の力の一端を見せてやるよ!」

 

「ああ!それじゃあいくぜ!」

 

どうやらまだ続けるらしいわね。でも乖離様は楽しそうでもあるし、止めるのは無粋というものかしら……――ん?今「俺の力の一端を見せてやるよ!」って言ってなかったかしら?いえ、絶対言ったわよね?!

 

「ちょっとお待ちください乖離様!」

 

「ん?どうした紫?」

 

「まさか、あの能力(・・・・)を使われるおつもりですか?」

 

「安心しろ紫、アレ(・・)は使わない。そもそも、あんなの使ったら世界の危機でしょ?」

 

「そ、そうですか……ならいいのですが………」

 

よかった。万が一にでも乖離様があの能力(・・・・)を使用するとなると、幻想郷どころか、月や冥界、果ては地獄にまで影響を及ぼしかねない。

私はほっと胸を撫で下ろす。

 

「お待たせ魔理沙、さっきの続きを始めようか!」

 

そう言って乖離様は魔理沙の方に走っていった。

魔理沙は既に空中で待機しており、いつでも再開可能といわんばかりに八卦炉を構えていた。

一方乖離様は、左腕が紅い稲妻を帯びており、その紅い稲妻が一点に収束して柄が黒く、刀身が紫色の刀を顕現させていた。

一体いつあの刀を出したのかしら?

 

「魔理沙、お前の好きなタイミングでスペカを使ってくれて構わないぞ?俺はそのことごとくを打ち払うからさ!」

 

「言ったな?なら今度は手加減無しだぜ!」

 

どうやら魔理沙はもう乖離様を初心者としては見ていないみたいね。これからは完全にいつもの弾幕ごっこになるかしら。

ふとそんな事を考えていると、再度霊夢が私に尋ねて来た。

 

「ねえ紫、乖離さんは能力持ちなの?まったくそんな気配はしないのだけれど……それに、霊力も感じないところをみると、そもそも本当に乖離さんは人間なの?」

 

「そうね、乖離様はどうみても人間ではないわね……今戦っている姿を見ると尚更ね………」

 

今現在乖離様は魔理沙の放つ弾幕もスペカも一つ残らず斬り伏せていっている。あんなのは最早人間ではない。私でも放たれる弾幕とスペカ全てを防ぐなんて不可能だもの。

 

「でもね霊夢、乖離様は人間よ?その()ではなく、その『在り方』は紛れもなく人間なのよ……」

 

「何よその在り方って?」

 

「それは私からは言えないわね……本人に直接聞いてみるといいわよ?それと、能力についてだけど、乖離様は間違いなく能力持ちよ?」

 

「どんな能力なの?」

 

「『根低から全てを覆す程度の能力』よ」

 

「………は?」

 

霊夢は目を点にして間の抜けた声をあげた。まあそれも無理もない事でしょうね、言葉で言われた程度では理解できないものなのだから。

 

「まあ、能力名を聞いただけじゃ理解できないでしょうから、解りやすいようにいうなら、『万象変換能力』って感じかしら?」

 

「なにそれ?」

 

「要は、あらゆる事象、事柄を自分の自由な方向へひっくり返すものとでも思ってなさい」

 

そう、乖離様の能力はありとあらゆる現象・状況・状態を、自分にとって幸になる方向に自由変換するもの。それが例え、私の『境界を操る程度の能力』であっても例外ではない。

 

「ちょっと待ちなさいよ!なにそのチート能力!意味解んないんだけど!?」

 

「私も最初聞いた時は『なにその出鱈目能力!?!?』って思ったわ。でも、乖離様曰く『俺の能力にそんな万能性なんて無いぞ?そりゃ聞いただけならチートかもしれないけど、実際は半端なく燃費の悪い能力だぞ?』って言ってたわよ?」

 

「そ、そうなの?」

 

「ええ、乖離様が言うには、根底から覆すといっても等価交換みたいになるから大した役に立たないそうよ?」

 

「ふ~ん……無償で能力は使えないって感じなのね」

 

「そういう事ね……ただ、充分な対価を支払う事ができれば、幻想郷の一つや二つは簡単に消し飛ぶでしょうね」

 

「洒落にならない冗談はやめなさいよ……」

 

霊夢はジト目で私を見る。確かにそんな事になったらこちらとしては堪ったものではないわね……。でも―――

 

「乖離様の本来の能力(・・・・)を以ってすれば、冗談抜きで可能なんでしょうけどね……」

 

「まって紫………それはどういう意味……?」

 

いつになく霊夢は私を真剣な目で睨みつけてくる。どうやらここは素直に話した方が面倒事にならずに済みそうね……。

 

「さっきあなたに話した『根底から全てを覆す程度の能力』はね、乖離様本来の能力の副産物なのよ?」

 

「は?能力の副産物?」

 

「そう、あの方の本当の能力はね……『原災を起こす能力』よ………もはやそれは『程度』を付けることすらおこがましい程の、絶対的な崩壊能力」

 

「原災……ッ!!紫、まさかそれって……!」

 

「察しがいいわね霊夢……そう、あの方の能力は……原初の地球の姿を呼び起こす能力」

 

原災………私もアレ(・・)を初めて見た時は心の底から恐怖した。あんなものがこの世に存在していたなんて、無茶苦茶だと思ったぐらいよ……。あの方の振るう原災の力には境界すら存在せず、そこにあるのはただただ絶対的な絶望でしかないのだから……。

 

「そう……本当に、出鱈目な人なのね……」

 

「そうね……」

 

私と霊夢の間にしばしの沈黙が流れた後、私は二人の弾幕ごっこに意識を戻した。

既に魔理沙のスペカは残り一枚、その一方で乖離様は無傷のまま刀を構えて余裕の笑みを浮かべていた。

 

「それで最後か魔理沙?思ったより強かったから、結構時間掛かったな!」

 

「ハァハァ……なんだぜそれ?嫌味かよ」

 

「そんなことはないさ……俺は本当に魔理沙が凄いと思ったんだよ」

 

「そうかい!ならこいつで、本当に最後だぜ!【魔砲・ファイナルスパーク】」

 

現段階の魔理沙が持つ最大火力の一撃。それはあのマスパを大きく上回っており、私でさえ防ぐより回避を選ぶほどの火力を持つ。しかし乖離様は刀を仕舞い、一枚の布のようなものを取り出し――――

 

「ハハッ!跳ね返せひ〇りマント!」

 

〇らりマントとやらで魔理沙の最大火力を打ち返してしまった。

んなアホな……

 

「嘘だろっ?!」

 

魔理沙は自分の最大火力を跳ね返され驚いた表情と声を発していた。

しかし、その時だった―――

 

「紫様、乖離殿、家の輸送が完了―――え?」

 

仕事から戻った藍がスキマから出てきて、跳ね返されたファイナルスパークの射線上に立ってしまった。

 

「危ない!藍!」

 

「藍!逃げなさい!」

 

霊夢は猛スピードで藍を救出に向かおうとしているが、恐らく間に合わない。

私もスキマを開いて藍を救出しようとした。しかし、間に合う筈もない。

一瞬思考が停止しそうになったその時――

乖離様が藍の下に立っており、天の羽衣を藍に被せた。

 

「乖離殿っ!!」

 

藍の叫びが聞こえたと同時に私と霊夢、魔理沙の視界から真っ白な光とともに二人の姿が消えた。

その直後広大な爆発音と共に黒い煙が上がった。




まさかの主人公死亡!?Σ(・□・;)

なんてこったい!!

次回、最終回……っと思っていたのかぁ?

次回はいち早く意外なあの子が登場します。

次回もお楽しみに!!

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