授業と連絡事項のみのHRが終わり、放課後を迎えた。
帰り支度もそこそこに立ち上がった
「今日は、居ないわよね?」
「何やってんだ?」
一足先に帰り支度を済ませた
「昨日みたいに巻き込まれたくないから、ノアちゃんたちが居ないか確かめてたのよ」
「んなことかよ。アホやってないで、行くぞ」
「アホって! ちょっと、待ちなさいよぉー。ほら、アンタも行くわよっ!」
「先に行ってて。購買で飲み物買ってから行くよ」
「じゃあアタシ、オレンジジュース!」
「はいはい」
スクールバッグを取りに戻った
学食と一緒に完備されている購買で、人数分の飲み物を購入してから近くに空いているテーブルに腰を下ろし、ポケットからスマホを出して、昨日
『じゃあノアも、
『そうみたいね。“7人目の魔女”の能力で、
『全部、
『なぜ、僕のせいなんだい!?』
『あら。あなたが、
『まだー? もうみんな、来てるわよー』
――わよ? いきなりどうした、と思ってよく見ると。届いたメッセージは、
「用事があるから一旦抜ける」と、
「おそーいっ。どこで油売ってたのよぉ」
教科書を広げたテーブルでダレていた
「ごめん、これで許して」
「ありがとー、許してあげるっ。はい、うららちゃん」
「私も、もらっていいの?」
「どうぞ、みんなの分あるから」
「ありがとう」
残りが入った袋をテーブルに置いて、空いている席に腰を下ろす。久しぶりに来た超研部の部室は、以前よりもヘンテコなグッズが増えていた。これらも全部、
「
「
「へぇー、そうなのか」
「なに? アンタ。うららちゃんにフラれたからって、
「マジかよ、ケンケンくん」
「ちげーよ!
「別に、いつも一緒に居るわけじゃないけど」
確かに最近、“7人目の魔女“の件を話すために連絡を取り合うことは増えた。ただ、前に勉強してたのも廊下で偶然会ったからで。そもそも、クラスが違うし。休み時間に会いに行ったりもしない。放課後も、生徒会やらクラスの用事で一緒にならないことの方が多いし。
今日も昼に、
と、事実を言ったところで簡単にはいかないことは想定内。
期待通り、
「怪しいわね」
「まぁ、どうでもいいじゃねぇか。それよか――」
追及を受ける前に、
そして、次に続く言葉で部室の空気がいっぺんすることとなった。
* * *
「最近、日が沈むの早くなったね」
隣の
「ええ、本当。みんなでプールに行ったのも、花火大会に行ったのも。つい、この間だった気がするけど」
「早いね」
気がつけばもう、10月も半ば過ぎ。日に日に早まる日の入りと比例して、外の気温も低くなり出し、来週のテストが終われば11月。そろそろ冬支度を始める時期に入る。今年もあと、残り二ヶ月余り。
そしてそれは、俺たちの高校生活も半分を切ったということ。
あと半分もある、もう半分しかない。どっちの感情を抱くかは人によるだろうけど、今の俺にとっては後者。もう、半分を切ったという思いの方が圧倒的に強い。特に、二年に進級してからは顕著に感じている。
「あっ、そうだわ」
ほぼ毎日通っている塾の前に着くと、
「テストが終わったら、文化祭の打ち上げをやることになったの」
「へぇ、そうなんだ」
「ええ、だから――」
一瞬、ひんやりとした風が商店街を抜けた。
背中まで伸びる、綺麗で艶やかな長い髪を風に揺らす。乱れた前髪を直しながら、
「必ず参加してね。それじゃあここで、また明日」
微笑んだ
「――何やってんだよ」
小さく呟いた声は、街の雑踏に紛れ、人知れず消えていった。
* * *
「ごめん、待たせちゃった」
「私も今、着いたところよ」
待っていた
「それじゃあ、さっそく行きましょ」
「
「
「また、捕まったんだね」
超研部で話をしている時
待ち合わせした駅から歩くこと数分、目的の店舗に到着。カラオケ、と記された大きな看板が一際目を引く。自動ドアを通り、カウンターで受付を済ませ。いくつもの扉が列なる長い廊下は防音対策がとられているとはいえ、漏れた楽曲と歌声があちらこちらから響いていくる。受付で指定した部屋を素通りし、大音量が響く隣の部屋に入る。
部屋の中には、朱雀高校の制服を着た男女。ナンシーと、シドの二人が居る。マイクを手にノリノリで歌うナンシーは、俺たちが入って来たことに気づいても構わず歌い続ける。シドは座って待つようにと、ソファーのスペースを開けてくれた。曲が終わりマイクをテーブルに置いて、コーラが注がれた汗をかいたグラスを口に運ぶ。
「ぷはぁーっ、スッキリしたー!」
「いいかしら?」
「ああ、いいよ。それで、なんだい? アタシに聞きたいことってのは」
「あなたに聞きたいのは――」
「能力を消す方法ねぇ......」
ナンシーは腕を組んで、難しい
そこで、“7人目の魔女”で魔女のことを熟知しているナンシーに会いに来た。
「まあ、無くはないよ」
「えっ、ほんと!?」
「ちょっと落ち着きなよ」
身を乗り出した
「アタシが知る限り、魔女の能力を消すには、儀式しかないだろうね」
「儀式? ああ、あのどんな願いでも叶うってやつね」
後夜祭で聞いた、7人の魔女を集めると願いが叶う儀式の話。ナンシーは以前儀式を行って、当時1年だった
「じゃあ、儀式を使えば、魔女の能力を消すことが出来るのねっ」
「そいつは分からないね。魔女は常に7人、儀式を行うには7人の魔女全員の協力が必要なのは前にも話したろ。だけど実際、魔女は全部で14人存在していた。つまり、アタシが把握している残りの魔女6人と、
つまり、“7人目の魔女”が二人存在することから、どこまで干渉出来るかは不鮮明、未知数。ナンシーのグループで儀式を行っても、お互いが干渉出来なかった場合は、儀式が無意味に終わることも考えられる。。
「そうなると確実に能力を消すためには、
「そういうことさ。それで、もう一人の“7人目の魔女”ってのは、どんなヤツなんだい?」
「さあ、知らないわ」
「他の魔女ために活動してねぇのか?」
「少なくとも私は、助けられた覚えはないわね」
「薄情な魔女だな! ナンシーなんて――」
「よしな、シド! 考え方は人それぞれさ」
不意に、ナンシーと目が合う。どうやら、ここは居ない方が円滑に事が進みそう。テキトーな理由付けでシドを連れだし、魔女同士の時間を作る。退出時間を待たずしてカラオケを出ると、茜色だった街は人工的な光が照らすネオン街に様相を変え、すっかり夜の繁華街。
「ごめんね」
「どうして、あなたが謝るのよ?」
「結局、一曲も歌えなかったし」
「別にいいわよ。今日は、ナンシーと話をするのが目的だったんだから」
飲み物を用意するためドリンクバーに向かっている途中、
「悪いな。呼び出してって、
「何よ、何か文句あって?」
「イヤ、文句はねぇけど。むしろ、オレが邪魔した感じじゃね? デートしてたんだろ? 服も気合い入ってるしよ!」
いつもの調子でおちょくる
「そうよ、せっかくのデートが台無しだわ。ふんっ!」
想定外の返しに、
「......マジだったのかよ。なんか、悪かったな」
「それじゃ、私は――」
「ちょっと待て。ちょうど、お前にも話しておきたいことがあったんだよ」
商店街のスーパーで夕食の買い物(
女子二人が作ってくれた夕食を、四人で囲む。
「でさ。家でDVD見てたら急に、
「
「ワケわからねぇーだろ。そもそもオレ、アイツに姉貴のこと話した覚えはねぇし」
『そうね。
互いにスマホから目を外して頷き合い。
「二人に話があるんだ」
「ん?」
「なんだよ、改まって? まさか――!」
ニヤニヤと笑みを浮かべる
「黙って聞きなさい。あなたたちに取って重大なことよ」
「へいへい。で?」
「これだよ」
「ふむ。マジみたいだな。道理で、
「ええ、納得がいったわ」
最初は半信半疑で戸惑っていたが。
「それで、あんたの話ってなんなの? 私にもあるんでしょ?」
「おお、そうだったな」
メッセージで呼び出した
「
「あっそ」
「もうちょい興味持てないのかよ? ツレねぇなー」
どうでもよさそうにスマホを手にして、
「で。それがどうして、私に関係あるのよ?」
「そりゃ決まってんだろ?
「イヤよ! どうして、あなたの下で働かなきゃならないのよ!」
「言っておくけど。何度頼まれても引き受けないわよっ」
「まっ、その話の続きは今回の件が決着してから改めてしよーぜ。出来れば、今週中に終わらせたいな......」
来週から、中間試験が始まる。