黄昏時の約束   作:ナナシの新人

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Episode31 ~もうひとりの7人目の魔女~

 人工芝のピッチ外に設置されたベンチに座っている小田切(おだぎり)と、腕を組ながら防球ネットを支える石柱に背を預けて立つ五十嵐(いがらし)に、生徒会室でのやり取りを片付けをしながらの会話。

 

「“7人目の魔女”を探せ、ね。また無理難題を突きつけられたものね」

「それもノーヒントでね」

「会長戦辞退して正解だったかも」

「だが、しかし......いや、やはりと言うべきか」

 

 神妙な面持ちを見せる五十嵐(いがらし)は、ことの核心に触れる。生徒会に一切協力はしていないと断言したナンシー以外に、もうひとり別の“7人目の魔女”が存在していることに――。

 

「もうひとりの“7人目の魔女”の能力も、ナンシーと同じ記憶操作(リライト)の能力なのかしら?」

「さあ、どうだろう。だけど、会長の手の内にいることは間違いないと思うよ」

「なぜだ? “7人目の魔女”の存在を把握していることは理解出来るが、直接繋がっているとは限らないだろう」

 

 ピッチの片付けと整備を終わらせて、場所をクラブハウスに移動。今は、個サル上級者に試合にスタッフが加わっているためロビー内には、俺たち三人以外誰も居ない。魔女の話をするにはうってつけの環境。自販機で三人分の飲み物を用意してからテーブルに着き。改めて、五十嵐(いがらし)の疑問に答える。

 

「体育祭のあと、会長に呼び出されたんだ。その時俺が、小田切(おだぎり)さんの能力にかかってることを指摘されたんだよ」

「ふむ、そうか。ナンシーの話では、“7人目の魔女”は魔女の能力にかかった生徒を識別出来るんだったな。山崎(やまざき)の近い関係にある女子が、もうひとりの“7人目の魔女”である可能性が高いということか。小田切(おだぎり)

 

 同じ生徒会に所属し、生徒会副会長を務めている心当たりがないか尋ねる。小田切(おだぎり)は「そうねぇ~」と頬杖をつきながらやや目線を足下に落とし、記憶を辿っている。

 

「私が知る中で可能性があるのは、同じ生徒会に所属している一年生の猪瀬(いのせ)さん。もしくは、生徒会直属のボランティア部の女子辺りね」

 

「正直、一番怪しいと思ったのは飛鳥(あすか)先輩だったけど」と、彼女は続けた。俺もナンシーの話を聞いた直後、最初に頭に浮かんだのは、小田切(おだぎり)と同様山崎(やまざき)の側近、秘書を務める飛鳥(あすか)だった。でも彼女は、“7人目の魔女”ではなく、玉木(たまき)が保有する透明人間(インビジブル)の元魔女。

 となれば今、一番怪しいのは生徒会一年生の猪瀬(いのせ)という名の女子だけど。その一年生の特徴を聞いても、俺には覚えがない。小田切(おだぎり)宮村(みやむら)しかり、常に生徒会室へ顔を出している訳では無いらしい。

 

「だけど。会長がいう“7人目の魔女”が誰でも。もう、私たちには関係のないことよ」

「それもそうだな。小田切(おだぎり)は会長戦を辞退したし、俺たちの記憶が消えた理由も判明したことだからな」

「そうよ。だから私は、これからのことを考えることにしたわ。先ずは、再来週の中間試験ね」

「そっか、もうそんな時期だっけ」

 

 カレンダーは、10月。今年もあと、二ヶ月あまり。ちょうど去年の今頃、何かが起きた。仲が良かった五人の間に、記憶を消してしまいたいほどのことが――。

 

「フフーン。実は、会長戦を辞退したお陰で勉強に時間を費やせたから、今回は自信あるのよねっ」

 

 得意気な顔で髪に触れる小田切(おだぎり)に、五十嵐(いがらし)がやや意地悪そうに鼻で笑う。

 

「ほう。ならば、毎回鬼門の現代文もいけそうなんだな」

「と、と、当然じゃない......!」

「あっはは!」

「ちょっと、笑わないでよっ!」

 

 軽く叩かれながら、手を合わせて許しを請う。

 

「もう!」

「あ、ごめん時間だ。外すね」

 

 夜勤のスタッフが出勤して来た。席を立って、事務所の中で引き継ぎを済ませ、定時ぴったりにクラブハウスを出る。外は、暖房が効いて温かかったロビーとは打って変わって、秋らしい冷たい風が頬を撫でる。

 

「ずいぶん涼しくなったわね。明日からは、もう少し厚着しようかしら?」

「俺も、防寒着の用意をしておくか」

 

 五十嵐(いがらし)は、ズボンのポケットに両手を突っ込み。小田切(おだぎり)は自身を抱くようにして体を縮込ませている。このまま長居したら、風邪を引きかねない。少し急いで、最寄りの駅まで彼女を送っていこうと思ったところで、ポケットの中で、スマホが振動した。発信者は、宮村(みやむら)。通話ボタンを押して電話に出る。

 

「はいよ」

『おう、お疲れさん。いいか?』

「どうしたの?」

『“7人目の魔女”のことで話してーことがあってな。今、お前んちの近くまで来てんだけど居るか?』

「悪い。今から帰るとこだから、あと20分くらいかかると思う」

『そっか。じゃあ、コンビニで時間潰しとくわ』

 

「じゃあな」と、宮村(みやむら)は返事も聞かず一方的に通話をぶった切りやがった。スマホをしまう。

 

宮村(みやむら)?」

「そう。うちの近くまで来てるって。“7人目の魔女”の件で何か話があるみたい。悪いんだけど......」

「ねぇ。私も、同席させてもらっていいかしら?」

 

 玄関の鍵を回して扉を開けて、客人三名を招き入れる。

 

「で。どうして、お前らが居るんだよ?」

「別にいいでしょ。“7人目の魔女”については、私たちにも関わりがあるんだから」

 

 さっきと言っていることが真逆。だけどこれは、ナンシーの件を隠しておく必要があるからだろう。

 

「ふ~ん。まっ、そう言うことにしておいてやるよ」

「何よ、その言い方。ムカつくわね......」

 

 テーブル越しにいがみ合う二人。端から見ると、小田切(おだぎり)が一方的におちょくられてるだけだけど。口には出さずに俺は、宮村(みやむら)に用件を尋ねることに。

 

「それで?」

「オレたち超研部は総力を上げて、“7人目の魔女”を探すことになった」

 

 放課後、部室へ戻った宮村(みやむら)は“7人目の魔女”を探そうと提案したが。超研部は特別乗り気ではなく、ひとりで探せ的な空気だったらしい。しかし、猿島(さるしま)に報告に行った山田(やまだ)が帰ってきた途端、どういう訳か魔女探しに躍起になったことで状況が一変。

 その理由(わけ)は――。

 宮村(みやむら)が選挙戦で敗退した場合、白石(しらいし)が、玉木(たまき)の秘書になってしまう未来を視たから。

 

「まさか。山田(やまだ)が、あの白石(しらいし)うららとは......無謀だな」

「そうか? オレはちょっと、脈アリだと思ってっけどな~」

山田(やまだ)が誰に好意を寄せていたとしても今はいいわ。それで、アナタが宮内(みやうち)くんに報告に来た理由は?」

「そりゃあもちろん、選挙協力に決まってるだろ? 小田切(おだぎり)さんたちも居てくれて手間が省けた。一緒に、“7人目の魔女”を探そうぜ......!」

 

 俺たち三人は「どうする?」と、無言のままアイコンタクトで語り合う。

 

「おい、なんだよ。この、オレがスベってるみたいな空気はよ?」

「私たちさっき、魔女探しから一旦手を引きましょうって話合ってたところだったのよ」

「は? なんで? 消された記憶を取り戻すんじゃなかったのか?」

 

 宮村(みやむら)が疑問に思うのは当然。ただ、“7人目の魔女”がナンシーと同様に記憶操作の能力を有していることを念頭に置けば、これ以上の深追いは禁物。会長と“7人目の魔女”が近いところで繋がっていたら、せっかく辿り着いた記憶を取り戻すことが出来る「儀式」のことも忘れさせられてしまう可能性がある。

 お姉さんの件があるとはいえ、宮村(みやむら)には悪いけど選挙戦が終わるまでは、穏便にしておきたい側面がある。同時に、宮村(みやむら)が会長になれば、もうひとりの“7人目の魔女”についても何か分かるかも知れない。ただ、今は......。

 

「ほら。そろそろ、中間テストがあるだろ。だから、本格的な調査はそれが終わってからにしようって」

「ああ~、中間か。ならしゃーねぇーか」

 

 どうやら上手く、こちらの思惑は伝わった。

 

「じゃあ、宮内(みやうち)だけでいいや。頼むぜ」

宮内(みやうち)くんの話を聞いていたのかしらっ?」

「大丈夫だって。オレと同じくらいの学力あんだし。てか、どうして小田切(おだぎり)さんが怒るんだぁ~?」

「あんたの無責任な言動に苦言を呈してるのよ!」

 

 宮村(みやむら)は、ニヤニヤと笑みを浮かべながら毎度のように安い煽りをして。小田切(おだぎり)も人がいいから、律儀に相手にするいつものパターン。

 

「まあまあ。バイトもあるから相談相手くらいにしかならないぞ」

「それで十分さ。頼むぜ、相棒」

「はいはい」

「まったく......」

 

 話はまとまった。

 とりあえず、現状どこまで掴んでいるか尋ねてみたが、今のところこれと言った手がかりは掴めていないらしい。最後の手段として以前、“7人目の魔女”を恐れて登校出来ないでいることを話したお姉さんについて、山田(やまだ)と共に真相を尋ねに行ったそうだが、あえなく門前払いを受けてしまったそうだけど――。

 

「なに? あなた、お姉さんが居たの?」

「ああ、ひとつ上にな」

「へぇ~、なんか意外かも。ひとりっ子だと思ってたわ」

「いいのか?」

「構わねぇよ。山田(やまだ)にも話しちまったことだからな」

 

 宮村(みやむら)は、笑顔を見せた。部を上げて大々的に“7人目の魔女”を探すことになった以上、いずれ話さなければならなくなることを覚悟していたようだ。

 

小田切(おだぎり)さんは、兄弟姉妹(きょうだい)居ないのか?」

「弟が、ふたり居るわ。(うしお)くんも兄弟が居るって言ってたわよね?」

「ああ。俺もひとり、弟が居る」

 

 話題は魔女から大きく脱線して、兄弟の話題に変わった。それぞれ兄弟が居ることが分かり、小田切(おだぎり)は俺にも兄弟が居るか尋ねた。

 

「面倒見いいから、弟か妹が居そうだけど?」

「ご明察。みっつ下に妹が居るよ」

「巨乳か!?」

「サイテーね!」

 

 間髪入れずに小田切(おだぎり)がツッコミでくれたお陰で手間が省けた。写真が無いか聞かれて、今年の正月に帰った時に撮った写メが、妹から送れて来たいたのを思い出した。

 

「あら。すごくかわいい子ね」

「どことなく似ているな」

「巨乳じゃねぇのか」

 

 妹の写真を見た三人の反応は、三者三様。しかし宮村(みやむら)は、どんな時でも平常運転である意味で感心してしまう。

 

「妹さんは、静岡に居るんだよな?」

「ああ、朱雀高校に進学を決めたとき引っ越すって話もあったんだけど。中学に上がるタイミングだったから遠慮したんだ」

「それで、ひとり暮らしなのね。でもどうして、遠く離れたうちの学校に進学したの?」

「だな。その足じゃ不便だろうしな」

「うむ。親元に居た方が安心だろう。家族も」

 

 よくあることで、たいして面白味もない話しだけど。三人は興味があるらしい。別に、隠す理由もないし話すことにした。

 

「腕の良い整形外科医が居たのが一番の理由。それに知らない土地って訳でもないから」

 

「どういうこと?」と、小田切(おだぎり)は首をかしげる。

 

「小学校まで、この辺りに住んでたんだよ」

「おいおい、マジかよ?」

 

 揃って驚いた顔を見せる、宮村(みやむら)たち。

 中学に上がる直前、親の都合で静岡に引っ越しが決まった。俺自身、誰一人知り合いの居ない学校でゼロから始める難しさを身を持って知っている。だから、同じ思いを二度もさせたくなかった。

 ただ、俺は恵まれていた。

 さすがは、サッカー王国と謳われる静岡。中学に上がってすぐ、プロリーグで活躍していたプロサッカー選手が卒業したうちの中学校を訪れて、トークショーを開いた。学生時代の苦労話、挫折を乗り越えての成功体験。最後に、グラウンドでボールを蹴る機会があった。

 その時ふと気がつくと、その人を中心にたくさんの笑顔が溢れていた。俺も、その中の一人。誰ひとり顔見知りがいないのに、自然と仲間が出来た。

 そして、いつの間にか俺はサッカーに魅了されていた。

 元々運動は得意な方だったし、プロ選手を輩出した学校だったこともあって練習環境にも恵まれていた。当然大変なこともたくさんあったし、選手生命に関わる大ケガも負った。

 それでも、やらなければ良かったと後悔をしたことは一度もない。それだけは、決してありはしない。

 

 

           * * *

 

 

「送っていかなくて、大丈夫?」

「平気よ。それより長居しちゃってごめんなさいね」

「それは別にいいけど、気をつけてね」

「安心しろって。オレがついてるんだぜ?」

「じゃあ、また明日。行きましょ、(うしお)くん」

「邪魔したな」

 

 ウインクする宮村(みやむら)を無視して振り返った小田切(おだぎり)五十嵐(いがらし)は、すたすたと街灯と月明かりが照らす夜道を歩いていく。

 

「ったくよー。相変わらずツレねぇよな~」

「まあ、認められてるからキツく当たられるんだろ」

「分かってるって。さて、本題といこうぜ」

 

 公園の自販機で缶コーヒーを買い求め、いつになく真面目な顔でベンチに座る宮村(みやむら)。俺は、彼に背を向ける形で、ベンチの手すりに腰を降ろす。

 

「去年のことを知ってただけで、お姉さんとは関係なかった」

「なら、会長が探せっつー“7人目の魔女”が本命か。しっかし、お前以外にも覚えてるヤツがいたってことは記憶が正しいって証明されたってわけだ」

「......けど、詳しい事情までは分からず終いだった」

「ふむ。事情はどうあれ、どうするよ?」

「さっき話した通り、一旦区切り。山田(やまだ)は......まあ、連絡も来ないからそれどころじゃないんだろ」

「だろうよ。白石(しらいし)さんが秘書になるって知って以来、最後の魔女探しに躍起になってるからな」

 

 全校生徒3000人前後の超マンモス校。お姉さんと関わりのない一年生と、魔女に該当しない男子生徒を除けば、三年と二年の女子生徒を合わせて、1000人ほどにまで絞れる。いや、おそらくは、もう――。

 

「掴んでるんだろ?」

「ああ......姉貴が知ってるハズだ。何せ、そいつから逃げてるんだ。顔も、名前も、知らぬ存ぜぬなわけがねぇ......!」

 

 そうだ。お姉さんは、“7人目の魔女”の存在を認識している。

 直接聞き出せることが出来れば、あらゆることに片がつく。会長選も、白石(しらいし)玉木(たまき)の秘書になってしまう未来も、宮村(みやむら)のお姉さんのことにも。

 

「もう一度、姉貴を問い詰める。出たとこ勝負だな」

「そっか。ああ、そうだ俺、明日と明後日病院に寄ってから登校するから」

「おう、了解。いつも通り、担任には伝えとく」

「悪いな」

「いいって。さてと」

 

 ぐっと反動をつけて、ベンチから立ち上がった。

 

「んじゃあ、帰るわ」

「ああ、お休み」

「おやすみ~」

 

 背を向けたまま軽く手を振って歩いて行く宮村(みやむら)と反対方向へ歩み出し、自宅アパートへ帰る。

 そして、二日後の朝。先日話した通り、朱雀高校へは登校せず朝一で病院で、昨日の午前中に受けた定期検診の結果を聞く。

 主治医から下された診断結果は、順調に回復している。

 仮に今のペースで順調にいけば、時間制限付きで夏のインターハイ出場も見えてくる可能性もあるとのことだ。ただし、それも年末に本格的な検査をして問題が無ければの話で、油断大敵としっかり念を押された。主治医に礼を言って、病院を出る。

 すると、病院前のロータリーのバス乗り場付近のベンチに思いがけない人物が座っていた。

 

小田切(おだぎり)さん?」

「あら、思ったより早かったわね。検査結果どうだったかしら?」

 

 ベンチに座っていたのは、制服姿の小田切(おだぎり)

 既に授業が始まっている時間のはずだけど。とりあえず、学校への通学路を歩きながら話しを聞く。

 

「そっか、わざわざ届けてくれたんだ。ありがとう」

「別にいいわ。一時間目は、自習だったから」

 

 小田切(おだぎり)宮村(みやむら)に頼まれて、届け物に来てくれた。宮村(みやむら)には「急ぎの連絡だから」と聞かされたらしいのだが、受け取ったプリントの内容は取り急ぎの物ではなかった。お礼に近くのコンビニで飲み物をご馳走して、再び通学路を行く。

 普段の日常であれば、お互い授業を受けている時間帯にこうして隣に並んで歩いているはなんか変な感じ。

 

「あら。あれって、山田(やまだ)じゃないかしら?」

「え? あ、ホントだ」

 

 商店街に差し掛かった時、神妙な面持ちをした山田(やまだ)が肩を丸めて前方から歩いてくる。声をかけると、驚いた様子で一歩飛び引いた。

 

「おわっ!? な、なんだ、お前たちかよ......」

「なんだとはご挨拶ね。あなた、授業をサボって何をしているのかしら?」

「お前たちこそ、何やってんだよ?」

「私たちは、それぞれ用事で外に出てただけよ。それで?」

「俺は......」

 

 山田(やまだ)から語られたのは、“7人目の魔女”についてだった。

 昨夜、宮村(みやむら)の姉――宮村(みやむら)レオナの説得に成功し、魔女の名前を聞いた山田(やまだ)は今朝早く、山崎(やまざき)に7人目の魔女の名前を告げた。それにより、宮村(みやむら)が次期生徒会長に決まった。これで、白石(しらいし)が秘書になる未来も変わって一件落着......とは行かなかった。

 

「それで、7人全員の魔女を知ってしまった山田(やまだ)は、“7人目の魔女”の能力で記憶を消された、と」

 

 記憶操作(リライト)の能力。これで、もうひとりの“7人目の魔女”もナンシーと同じ能力と判明。

 

「でもあなた、私たちのこと覚えてるじゃない」

「渡された注意事項に効果が出るまで最長で24時間かかるんだってよ」

「じゃあ明日の今頃には、全部忘れてるのね」

山田(やまだ)、大丈夫か?」

「心配すんなって。じゃあ俺は、注意事項に従って帰って寝るわ。()()()

 

 どこか強がりにも思えた山田(やまだ)の姿が見えなくなるまで、俺と小田切(おだぎり)は、商店街の人混みに消えていく背中を見送った。


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