勉強合宿からの帰り道を
「お待たせ」
コンビニの袋とトートバッグを下げた
「わぁ!
「ちょっと、よしなさいっ。汗かいちゃうじゃないっ!」
「ただいまー」
「お帰り。お二人ともいらっしゃい、ゆっくりしていってくださいね」
出迎えてくれた
「さすがに、三人一緒は狭かったわねぇ~」
「十分広かったわよ」
「参考までに聞きたいんだけど、超研部は文化祭で何をするの?」
プールに行く間のバスの中で超研部のみんなで話していた時に、
「また、ずいぶんと超常現象からはかけ離れた出し物なのね。それに、お客さん来るのかしら?」
「焼きそばパンなんて、購買で安価で売ってるわよ?」と、
「ふふ~んっ、その点は抜かりないわっ。ちゃーんと秘策を考えてるんだから!」
「へぇ、どんな手なの?」
「それはぁ、当日のお楽しみよ!」
「そう。ちょっと冷えちゃったわ」
「あら。ここから、学校見えるのね」
「ホントね」
隣に行って同じように窓の外を見ると、朱雀高校校舎の数ヵ所から明かりが盛れていた。来週から新学期だから、きっと先生方が準備をしているのだろう。
「えーっと、うららちゃんのお家は......」
「なーんだ」
「さあ、もういいでしょ。そろそろ寝ましょう」
順番で歯を磨いて部屋に戻る。先に歯磨きを済ませた二人はまた、窓の外を見ていた。
「何を見ているの?」
二人の背中に話しかける。
「あ、うららちゃん」
「
「それならきっと、あのアパートね。」
自宅のある住宅街を少し越えた先の橋を渡った、川沿いのアパートを指さす。まだ、明かりが点いている。
「
心配そうに言う、
「大丈夫よ。
「だから、不安なんでしょ。何でもテキトーだから」
「さすが
「じゃあ、消すねー」
ひと言断りを入れて部屋の灯りを消した
「そういえば、例の写真見せてもらったけど。新学期になったら、魔女を探すんでしょ?」
「ええ、そのつもりよ」
「だったら、アタシたちと一緒に――」
「ダメよ」
「私たちが探す魔女は、記憶に関する能力を持つ魔女。今までの魔女とは別格、魔女の能力が効かない
「女子のお泊まり会の定番と言えば、恋バナ!」
「おやすみ」
薄い掛け布団を被って、
「ええ~っ、
「夜ふかしは、美容の天敵なの。それに夜はちゃんと寝ないと、身体の成長が止まっちゃうわよ」
「うっ、うららちゃんはっ?」
「私も日付が変わる前にはベッドに入るわ。寝ないと記憶が定着しないから」
「ほら見なさい」
「うぅっ、説得力が有りすぎて反論の余地もないわ」
間接照明が灯る薄暗い部屋の中で、どこか恨めしそうな目で私たちに交互に目を向けた
「そういうことだから。おしゃべりは、二人でしてちょうだい」
「うららちゃんは、平気?」
「大丈夫よ。林間学校で朝まで起きてたから」
「じゃあ、恋バナ! 夏合宿の時に気になる人が居るって言っていたけど、進展あった?」
「どうなのかしら? 悪くなっていないと思うけど」
「とりわけ進展はないわけね。ところで~、気になってる男子って、誰?」
興味津々といった感じで、私の布団の中に潜り込んできた。
「フッた
「ミヤミヤコンビ?」
初めて聞くワードに首をかしげる。
「
口元に人差し指を添えながら、私たちの関係を探るような視線を向けてくる。
「一年生の時同じクラスだったから」
私は、正直に答える。人付き合いが苦手だった私に、きっかけを作ってくれた人。
「それだけ?」
「ええ、それだけよ。
――いいえ、少し違う。
私にとって彼は、一番信じられる人......ただの友達以上の、
その後、去年の今頃の思い出話をしていたはずがいつの間にか「ゾンビと幽霊は、はたしてどちらが強いのか?」と、恋バナとも、思い出話とも無縁な方向へ話題は変わり。時計が午前一時を回った頃、
「
「......なに?」
背中を向けたまま、返事が返ってきた。
「記憶、取り戻せるといいわね」
「そうね。さあ、寝ましょう」
「ええ、おやすみ」
* * *
「校内で暴れてる一年生を大人しくさせないと、お店を出店できないですって!?」
二学期始業日の放課後。生徒会室へ、文化祭で出店予定の「焼きそばパン屋」を申請へ行っていた
「何よそれ。また面倒な条件を突き付けられたわね。ねぇ、うららちゃん?」
「ええ。それにしても、会長が魔女のことを把握していただなんて......」
「今は、そんなのどうでもいいさ。どのみち解決しねーと、出店はおろか、部の存続に関わる話にまで発展しかねねぇんだぜ?」
「廃部って。イヤよっ、そんなのっ!」
「おれなんてまだ、入部してひと月も経ってないぞ?」
「ま、不満を言っても変わんねーよ。とにかく、廃部が嫌ならやるしかねぇのさ。んでだ、暴れてる一年ってのは――」
暴れている一年生のリーダー格は、魔女の能力を有する女子、
学校からの帰り道。
「結局、何の手がかりも見つからなかったわね......」
「
「大丈夫よ。
「......でもさ。キスしようとして痛烈な拒絶されたんでしょは? 部室で突っ伏してたけど、本当に大丈夫なのかしら? ハァ......よし!」
大きなため息をひとつ付き、顔を上げた。
「じゃあね、うららちゃん。また明日ー!」
交差点で
家の近所の公園でよく知る朱雀高校の男子生徒が、ベンチに座っていた。
「どうしたの?」
私は、ベンチで途方に暮れていた彼......
「――えっ? ああ、
一年の三学期の終わり頃もそうだった。
右膝のリハビリで入院していたのに病院を抜け出して、落ち込んでいた私に、嫌な顔ひとつ見せず付き合ってくれた。
だから今度は、私が力になる。
だって私たちは、ただ友達以上の――