Episode24 ~言葉の意味~
バイト終わり、フットサルコート隣接のファミレスで、
「お待たせ。どうだった?」
「残念ながら詳しい話は聞けなかったわ。今は、文化祭の準備で忙しいからってね」
「そっか」
どこの部活も二学期に入ってひと月足らずで文化祭の準備を済ませなければならないのだから、当然といえば当然なのだろうけど。
「文化祭が終わったら、改めて聞きに行ってみるわ。手芸部に」
テーブルの中央に置かれた「NENE」と刺繍されたペンケース。数針のまち針で固定されたレースの生地を、半分ほど縫い付けた状態のまま止まっている縫い針。これは写真の入った手帳と一緒に、棚にしまってあった裁縫箱の中から見つけた代物らしい。ただ、
そこで何か手がかりがあるのではないか、と放課後手芸部へ調査に行ったが、文化祭の準備中のため詳しい話は聞くことは出来ず終い。
「じゃあ俺たちも、文化祭の話をしようか」
「はぁ、そうね。会長から許可をもらったんでしょ?」
「うん、部室がないから不参加でもお咎めはなし。もし出店するなら、野外で露店を出店してもいいってさ」
「露店ねぇ。定番は、たこ焼き、焼きそばの惣菜系の屋台辺りかしら?」
「どっちもありきたりでつまらないわね」と、左手で頬杖をついた
「お、居た。よっす!」
「ん?
「あら、遅かったわね。来ないと思ったわ」
「ちょっち厄介事が起きてな。お前たちにも関係のあることだ」
何のことだろうと顔を見合わせた俺たちに「魔女についてだ」と、声を潜めた
「一年の、
「ああ。まだどんな能力かまでは解明できてねぇが。
「ふ~ん、それで? どうしてそれが、私たちに関係あるのかしら?」
「話を聞いた限り、今のところ接点はなさそうだけどね」
「そう焦んなって。ここからが本命さ......!」
わざと焦らした
「
「魔女を消す? どういうことよ......?」
「文字通り、学校から魔女の能力を持つ存在を消す。つまり、退学させるってことだ」
退学というワードに動揺が走った俺たちはお構いなしに、
「何年も前に製作されたノートの上巻には、“
「
「ご心配ありがとう。でも私は、大丈夫。もう誰にも能力をかけてないし、二度と使うこともないわ」
「そう、それだよ、オレが聞きたいのは。どうしてお前、会長戦を辞退したんだ......?」
何かと余裕を持って本性を見せない
「よかったの?」
「記憶探しに専念したいから。そんなことより、新しい物証が出てきたから調べに行ってくるわ。あなた、今からバイトよね? 隣のファミレスで待ってるから終わったら来てもらえるかしら?」
こんな感じで、詳しい理由までは教えてもらえなかった。
「それに、オレを次期会長に推薦した理由も分からねぇ。いったい、どういうつもりだよ?」
「別に。特に理由はないわ。
「ふーん。ま、
「ふんっ、言ってくれるじゃない。そこまで言うなら絶対に勝ちなさいっ」
生徒会室で選挙辞退を告げた時とは打って変わって、彼女はスッキリした表情をしている。会長選を辞退した未練は本当にないように思えた。少しダベり、
「お前に頼みがあるんだ」
「なに?」
「
「
「いや、そいつ自体は乗り気じゃないらしい。ツルんでる中に、
「そんなこと言われてもなぁ」
「声をかけてくれるだけでいい。後は、オレたちでどうにかする。頼む。信用出来るのは、お前しかいねーんだよ。ほい、前払い」
自販機で買った缶コーヒーを放り投げた
「安い信用だな......」
愚痴のひとつも言いたくなる。別れ際、「もしかしたら、
「どうしろってんだよ、まったく」
「どうしたの?」
「――え?」
突然かけられた声に顔を上げる。すぐ近くに、
「悩んでいるみたいだけど?」
「少しね」
「じゃあ、話してみて」
そう言って、彼女は隣に腰を降ろした。引き下がりそうにない。
まあ、聞かれて困るようなことでもない。正直に、
「そう。
「何をどう話せばいいのかなって」
「大丈夫よ」
思い悩んでいる俺とは裏腹に、隣に座っている
「どうして?」
「だって、私が悩んだり困ってる時いつも助けてくれたわ。だから、
「俺、そんな大したことしてない気がするんだけど?」
「そんなことないわ。少なくとも私は、そう思っているもの」
正直なところ俺がしたことと言えば、話を聞いたり、買い物に付き合ったり、その程度のこと。それでも
――ああ......そうか、そういう意味だったんだ。
「何か元気出た、ありがとう。明日、話してみるよ」
「ええ、どういたしまして」
今、