「
「ああ。ふむ。しかし、クラスでも影の薄い物静かな
腕を組んで神妙な
「ちょっと、なんなのよ? じろじろ見て」
「魔女ってのは、おっぱいが大きい女子ばっかだなって思って」
「死ねぇっ!」
間髪入れず、
「なんで、俺が......?」
気の毒なことに、
「うららちゃーん、
「でも、
「ど、どういうことだよ......?」
泣きついている
「鈍いわね、アナタ。魔女には何かしらの共通点があるかもってことよ」
「ああ~、なるほど。で、お前らと
「おっぱい」
即答する
「巨乳」
「く、悔しくなんてないんだからっ!」
「それは関係ないと思うけど。とにかく、
「......わーったよ」
筆記用具を持って、渋々部屋を出ていった
「う~ん、トランプも飽きたわねぇ」
「そうねぇ、行きのバスでもやったし。他に何かないの?」
「JUMBOならあるようだ」
部屋の隅に放置されていたのを見つけた
「積み木を重ねて、倒した人が負けのヤツね」
「動作は単純だけど、結構熱中するのよね。これ」
「私も、それでいいわ」
「じゃあ、女子はそれで」
「女子は? アンタたちは何すんのよ?」
「よくぞ聞いたな、
「カード麻雀?」
「そんなの持ってきてなかったわよね?」
「
そういえば、試合を見終わったあと二人で何か話していた。どうやら、これを譲り受ける話をしていたようだ。
「ルール、わかるか?」
「俺は分かるよ」
入院中、暇をもて余した歴戦の勇士たちと何度も手合わせをしてきた。目を閉じると、何時間も駆け引きを駆使し勝負したあの時の光景が、まるで昨日のように甦る。何度看護師さんに静かにしろと叱られたことか。
「くだらん」
「あれ~、もしかして
「......そんなわけないだろ」
「......ただいま」
適当な安い挑発で
しかし、追試を突発してもらわないことには、超常現象研究部の部室の鍵を持った教師がクラブハウスへ来ない。
「何か、いい方法はないかしら?」
「
「教師が目の前にいるんだからできるワケねぇーだろ、バカ」
「なんだと......バカにバカ呼ばわりされる筋合いはない! そもそも、追試になったテメーが悪いんだろうがッ!」
「ああん? やんのかコラ!」
「上等だ、表出ろ!」
今にも殴り合いを始めそうな険悪な空気になってしまった。
「魔女のことは別にしても、追試をパスしないといけないんだろ?」
「そりゃそうだけどよ......。期間内に合格しねーと、とんでもねー量の課題を出されるって話しだし」
「なら、追試の合格が優先ね。
「気になること? あ、そういえば――」
落ちつきを取り戻した
「試験をパス出来る能力ってことだよな? そんな都合のいい能力――」
「
「はあ!? カンベンしてくれ、そう簡単にできるワケないだろ......!」
「それは大丈夫よ。さっきは彼女からしてきたんだから、悪い印象は無いハズだわ」
「ぐっ!」
結局、
「遅いわねぇ~」
「そうね。先に、お風呂を済ましておこうかしら」
「あ、アタシも行くっ。
「まあ、いいわ。付き合ってあげる」
「オレたちも行くか?」
「そうだな。ただ待っていても埒があかない」
「先に行ってて。レポート仕上げとく」
「あいよ。後でな」
着替えを持って部屋を出た五人を廊下で見送り、部屋に戻る。部屋の隅に置かれた折り畳み式の机を組み立てて、ビーチサッカーのレポートをまとめていると、ノックもなしにドアが開いた。部屋に入ってきたのは、先程出ていった
「どうしたの? 何か忘れ物......
「おう。よくわかったな」
戻ってきたのは
「なんで、
「
「はあ?」
レポートをまとめていた手を止めて、顔を上げる。
「仕方ねぇだろ? 妹以外の女の扱いに慣れてねぇんだからよ」
「いや、その言い訳はないんじゃないのか?」
「言い訳じゃねぇって! だってよ、実際に俺、部活に入るまで殆ど女子と話したことなかったんだぜ?」
「ん?」
――何かが、おかしい。俺の中で、そんな想いが沸々と大きくなっていく。まるで話の前提が違っている、そんな感じだ。
そこで、
「
「なんだよ、急に」
「頼む、教えてくれ」
「......まあ、入学当初はな」
「入学当初?」
「ああ、六月の頭くらいまではよく一緒に居た。俺も
二人とも中学の頃は、地元で有名な不良。そして二人ともが、そんな自分を変えたくて、自分たちのことを誰も知らない名門進学校の朱雀高校に進学したのだが、元不良と根っからの優等生とは中々話も合わず。自然と二人は、一緒に居る時間が増えた。
しかし、ある日事件が起きた。
下校中に、朱雀高校の女子生徒――
「アイツらは、俺を売って逃げやがったんだ」
――妙だ、やっぱりおかしい。
そして、何より......。
「でもさ」
「なんだよ?」
「お前ら、去年の秋頃よく一緒に居ただろ?」
「はあ? んなワケねぇだろ。何でアイツなんかと......チッ!」
面白くなさそうに舌打ちをしたが、この時俺は、あり得ないことが頭に浮かんだ。馬鹿げているが思い切って言葉にする。
「もしかしてお前、覚えてないのか......? 自分に彼女が居たってことも」
「は......はぁ!? 彼女!? お、オマエ、マジで大丈夫か......?」
思いきり引かれた。むしろ可哀想なモノを見るような目で心配されてしまった。
しかし、今の返事で俺の疑念は確信に変わってしまった。
「おーい」
「ん、何だ? おっと」
気がつくと目の前に
「何だ、じゃねぇよ。急に黙っちまってよ」
「あ、ああ......。悪い」
「お前、疲れてるんだろ? それは
「ああ......そうだな。そうさせてもらうよ」
書きかけのレポートを片付けて、
「あら、
「あ、
シャワールームを出たところでバッタリと、風呂上がりの
「髪、濡れてるじゃない。ちゃんと乾かさないと風邪引くわよ?」
「あ、うん、後で乾かすよ」
「何か、あったの?」
心配そうな
「ねぇ、
「なに?」
――去年のこと、どれだけ覚えている。
どうしても、確かめずにはいられなかった。