ピピピッピピピ
洋希「ん...ふぁ〜」
アラームの音が俺の部屋中に響き渡った。さすがにうるさすぎた、これは完全に音量ミスったな。まあ起きれないよりはましか。
ベットから体を起こし、窓を開ける。外はまだ薄暗いが、特別寒いというわけでもない。むしろ気持ちいいぐらいだ。
洋希「さて、準備しますか」
現在時刻は6時、浦の星に行くにはだいぶ時間がある。じゃあじゃあなぜこの時間に起きたかと言うと、日課のランニングである。こうでもしないと体力の維持ができないのだ。これを中学からやっているので、体力には自信がある。
身支度を済ませ、なにか食べておこうとリビングに向かう。知沙姉はまだ起きてきてないみたい。
一応走りにいくことを伝えるために置き手紙を書いておいた。
『ちょっと走ってくる 洋希』
パンがあったのでそれを一つ取り、食べる。帰ってきたあとちゃんと朝飯を食べればいい。そう思いながら外に出た。
相変わらず外は薄暗く、人っけもない。とても静かな時間が流れている。
洋希「いいところだな」
そう改めて感じながら準備運動をし、走り始めた。
コースはとくに決めてないがとりあえず海沿いを走ることにした。
海を見ながらランニングできるなんて、東京にいた時は想像すらしてなかったな。別に東京が悪かったとは言わない、ただ、今までにないような感覚を味わっているからいい思ってしまうだけだ。
自然と足取りも早くなる、どんどん走る。
数十分ぐらい走ったあたりで、木がモッサリしているところに鳥居を見つけた。
洋希「あれは神社なにかか?」
気になったのでそこに行くことにした。神社ならこれからのことを祈ろう。でも、まだここからだと少しかかるな。
十字路を曲がり、目測で、さっきの鳥居のところまで行く。
目の前まできたが階段がある。たぶんこの上に何かあるだろうと思い、階段を登る。
???「♪〜」
あと少しで登りきるところで誰かの声が聞こえてきた。とても綺麗な声だ。恐らく誰かが発声練習でもしているのだろう。邪魔しては悪いと、登りきったと同時に近くの木に身を隠した。顔を少しだけだして、さっきの声の主をさがす。神社の前で踊っている人がいた。女の人だ、紺色の髪の毛で、後ろで結んでいるのが見えた。言わいる、ポニーテールというやつだ。ちなみに俺の1番の好きな髪型はポニーテールである。
俺はその踊りを見ることにした。別に変な意味ではない。見ることにしたと言うか、見とれてしまったのだ。とても素人とは思えないぐらいの華麗な踊りだ。もう少し近くでみたい、そう思いもう一つ前の木に隠れようと、移動した。その時、枯葉に隠れていた石につまづいてしまった。そのせいでガサガサと大きな音がたってしまった。
???「誰!?」
あーあ、バレちゃった。これは正直に言うしかないな。アハハ。
洋希「怪しいものじゃないです!ただのとおりすがりのものです!はい...」
???「私の踊りが綺麗だったから見とれてた?」
洋希「は、はい...」
俺と女の人は近くにあったベンチに座っている。俺はさっきまでのことを素直に話した。
???「そ、そっか...///でも!覗きはダメだよ?」
ごもっともです。いけないとわかっていましたが、魔が差してしまいました...。てか顔を赤らめてるの可愛いな。こういう美人な人が顔赤らめてるのみると、ちょっと意地悪したくなるが、まだ会って30分も経ってない人にそんなことできない。と、こんなこと考えてたらほんとに許してもらえないぞ。
洋希「す、すいません...以後気をつけます」
???「よろしい!」
とりあえずは許してもらえたみたいだ。このまま通報とかされたらたまったもんじゃない。俺の高校生活が終わってしまう。
???「そう言えば君この辺の子?あんまり見かけないけど」
また聞かれたな。やっぱ俺ってそんなに他と違うのかな。
いや、まてよ...もしかしてだが...
洋希「俺は赤羽洋希です、昨日引っ越して来ました」
???「そうなんだ!私は松浦果南!宜しくね!」
洋希「はい!宜しくお願いします!ところで松浦さん」
果南「なに?」
この予想が合ってるとすれば...
洋希「さっき俺に「あんまり見かけない」って言いましたよね?それってこの辺には男の子はあんまりいないってことですか?」
果南「そうだね...この辺にはほとんど男の子はいないかな、沼津の方に行けばいると思うけど...」
やっぱり、もともとこの地域には男が少ない、だから女子高しかないんだ。前に渡辺にも「あんまり見かけない」みたいなこと言われたけど、そう言うことか。ということはあいつも実はこの辺に住んでるのか?色々疑問は残るが今解決できそうな問題では無いことは確かだ。
洋希「教えてくれてありがとうございます」
果南「うん、力になれたならなによりだよ」
随分周りが明るくなってきたなと思い時計を見ると、7時を過ぎていた。やべ、話しすぎた。
洋希「すいません、俺そろそろ帰らなきゃいけないんで...」
果南「そっか、せっかくだから私の踊り見てもらおうかと思ったんだけど、仕方ないね、気をつけて帰ってね」
洋希「はい、松浦さんも気をつけて」
そういって俺は神社を後にした。あとで調べたところ、あそこは弁天島と言うらしい。これからランニングコース考えないとな。
家に帰ってきてからは色々大変だった。シャワーを浴び、前の高校の制服に着替え、朝食をとる。なんやかんやあって、8時ぐらいになってしまった。間に合うかなと思いスマホのアプリで道をしらべる。大体4〜50分ぐらいだ。走れば間に合うだろう。
急いで家を出る。ちなみに知沙姉は家にいなかった。仕事にいったのかな、仕事にいっててくれ、頼む。
走ってる途中、さっき寄り道した弁天島を通りすぎた。今度きたときにまた松浦さんにダンス見せてもらおう。
あと少しのところで長そうな坂が現れた。角度はそんなに急ではないが大丈夫だろうか。いくらスタミナがあるとはいえ限界はある。まあ遅れたらもとおこもない。俺はできる限りの力で坂を登った。ようやく浦の星が見えてきた。そのまま道なりに進んでいくと、校門が見えた。そこには女の人が1人立っていた。制服を来ているので恐らく浦の星の学生だろう。
洋希「お、おはようございます...」
時間は8時間45分。何とか間に合ったようだ。
???「おはようございます、もしかして、昨日連絡して下さった、赤羽さんでしょうか?」
洋希「は、はい!そうです!」
???「お待ちしておりました、では中へどうぞ」
俺は黒髪の女の人に中へ案内される、この人も結構美人だな。てか俺ここにきてから美人に出会いすぎじゃない?なにここ、天国なの?
???「申し遅れました、わたくし、黒澤ダイヤと言います、この学校で生徒会長をしています、よろしくお願いします」
洋希「よろしくお願いします」
黒澤さんに連れられて学校内に入る。中はいたって普通の高校と変わりはない。黒澤さんの案内で、俺は『生徒会室』と書かれた場所にたどり着いた。黒澤さんがドアをあけ、「どうぞ」という。
洋希「し、失礼します...」
中には黒澤さんがいつも座っているであろう席と、後から設置された席があった。その横には教科書や制服なんかがおいてある。
ダイヤ「どうぞ、座ってください」
洋希「は、はい...」
俺は設置された席にすわる。黒澤さんも席についた。
というか、この人が試験担当者なのかな?生徒が試験担当って果たして良いのだろうか。
ダイヤ「えーではこれから入学試験を開始いたしますが...」
が?
ダイヤ「とくにこれといって筆記試験などは行うつもりはありません、これから聞く質問に答えていただくだけです」
え、それだけなの?もしかしてそれだけで合否判定しちゃうの?めっちゃ重要じゃん。しっかり答えないと...。
ダイヤ「あら、赤羽さん、そんなに緊張しなくていいのですよ?わたくしとおしゃべりするような感じで答えていただいて結構ですよ?」
いや、別に緊張なんて...。でも何かスゲー緊張しちゃう。だって目の前にこんな凛として綺麗で、それでいてこんなに落ち着いた雰囲気の人がいたら緊張しちゃうわ...。
洋希「わ、わかりました...」
ダイヤ「それでは、まず、この浦の星への入学希望の理由は?」
洋希「えっと...、家が近いからです...」
正直これしかない。他に出せとか言われたら詰むわ。そん時は嘘でも何かしら言おう。
ダイヤ「そうですか...では次、あなたの趣味を教えていただけますか?」
洋希「パソコンやゲーム、運動です。あ、あとスクールアイドルです」
ダイヤ「スクールアイドル?」
洋希「はい、昔からライブとかよくみてて、趣味というか好きなものですね」
ダイヤ「なるほど...実はわたくしもスクールアイドル好きなんです」
洋希「えっ!?ほんとですか?」
ダイヤ「え...ええ」
意外。絶対黒澤さんみたいな人なら「そんなもの知りませんわ」とか言いそうなのに。同じ趣味の人がいると何か嬉しいよね...嬉しくない?
ダイヤ「スクールアイドルの話もしたいですが、一応試験なのでそれはまた後日ということで...」
洋希「は、はい」
まあ多分スクールアイドルのこと話し始めたらテストどころじゃ無くなるだろうしな。
ダイヤ「では最後に、この学校に入ってあなたのやりたいことは?」
洋希「やりたいこと...ですか?」
ダイヤ「はい」
やりたいことか...。やばい、全然考えてなかった。やりたいことやりたいこと...うーん...。
洋希「すいません、とくに決まってません...」
ダイヤ「そうですか、ではそれをこの学校で決めていただけたら幸いです」
そうですね......ん?『この学校で決めてください』?だと...。それにこの教科書や制服...もしかして...。
俺がキョロキョロしていると、
ダイヤ「気が付きましたか、実はですね...あなたは既に合格しているんです」
洋希「え!?それってどういうことですか?」
ダイヤ「実は男子生徒の入学希望はあなたが初めてなんです」
洋希「え......えええええええええええええええええええええ!!!!????」
この時期に男子の入学希望が俺1人...。それってもう絶望的なんじゃ...
ダイヤ「なので、あなたは電話をしていただいた時点でこちらで合格ということにさせていただきました」
洋希「そ、そうですか...」
ダイヤ「もちろん他に行く高校がきまっているのならこの合格は消していただいてもかまいませんが?」
洋希「いや、大丈夫です」
もとよりこの学校にしかあてはないんだ、せっかく合格にしてくれたんだ、これに乗っかろうじゃねえか。
すると黒澤さんが一枚の紙をとりだした。
ダイヤ「ではこちらのほうに名前と判子を押していただければ、正式に合格になります」
洋希「わかりました」
俺はバックの中からペンと判子をとりだし、その紙に名前を記入し、最後に判子を押した。これで俺も浦の星女学院の一員だ。
ダイヤ「それでは今日ここまでです、そこにある制服と教科書は持ち帰ってください、お疲れ様でした」
洋希「お疲れ様でした」
教科書類を全てバックに入れ、生徒会室を後にしようとドアに手をかけた時、
ダイヤ「赤羽さん」
洋希「はい?」
黒澤さんに呼ばれ後ろを振り向く、
ダイヤ「この学校に入っていただきありがとうございます」
その凛とした顔から寂しさや悲しみの影が見えた。なんだろう、いまの言葉はもっと深い意味があると思う。
洋希「俺が入りたいから入っただけです、それじゃあ」
ドアをあけ、廊下に出ようとした時、
???「ピギィ!?」
洋希「うわっと!?」
だれかとぶつかってしまった。俺は瞬時に立て膝になりそのぶつかった相手を抱え込むようにして掴んだ。
洋希「大丈夫?」
???「だ、だいじょ...ぶ...です...」
ぶつかった相手は赤髪のツインテールの女の子だった。とても可愛らしく、小動物みたいだ。思わず抱きしめたくなってしまった。すると、
???「あ...ああ...」
なんだ?俺の顔を見た途端に顔が赤くなってきたぞこの子。もしかして俺に一目惚れしちゃったとか?いやーモテる男はつらi...
ダイヤ「赤羽さん!すぐにその子から離れてください!」
洋希「え?」
???「ピ...ピギャァァァァーーーーーーーー!!!」
突然の大声に俺はとっさに耳をふさいだが、距離が近すぎて耳を塞いでる意味がない。あ、やばいどんどん意識が遠くなって...。
バタッ......
一応主人公の家の場所は「松月」の隣にある設定です。
主人公の家とかを決めとけば細かい時間設定が出来ると思ったので、今後はそれを元に書いていくので、「松月」を知らないかたはしらべて、場所を把握しておいて下さい。手間取らせてすいません。
これからも楽しんで見ていただけたら幸いです。