花丸「洋希先輩、それはなんずら?」
洋希「これはベイブレードっていって、ベイ...このコマをランチャーで打ち出してお互いにぶつけ合う。外に出すでもいい、相手の回転をとめるとか、バースト...破壊することで勝負がきまるんだ」
花丸「ほわぁ〜、なんか面白そうずら」
洋希「やってみるか?俺のベイ貸してやるけど...」
花丸「ベイ...あ!マルそれなら持ってるずら!」
洋希「まじか!?」
花丸「ちょっととってくるずら!」
〜数分後〜
花丸「持ってきたずら!さあ、バトルするずら!」
洋希「花丸...なんとなくは察したんだが...」
花丸「なんずら?この昔ながらのベイでやってやるずら!」
洋希「それはコマであってベイではないんだよなぁ...」
どうも皆さんこんにちは、ブレイダーのリオートです。
最近になってベイブレードにハマりました。ベイブレードはメタルファイトの時代にハマってまして、バーストになって改めてハマってしまい、新ベイを発売初日に買ってしまいました笑
それでは本編へ、GOシュート!!
第60話 出発
人が行き交う沼津駅構内。その改札の前で、俺たちは1人の少女が東京にいくのを見送りにやってきた。
シャツの上に空色の上着をまとい、クリーム色のスカートをバッチリ着こなした少女、桜内梨子。我がAqoursの誇る作曲担当であり、ツッコミとたまにボケの両刀をもつ彼女は、これからピアノのコンクールに向かうため、この沼津をはなれ、東京へ赴くのだ。
だがこれは決して簡単なことではなかった。ピアノのコンクールの日は、俺たちの予備予選と同じ日だったのだ。悩んだ末に、梨子は自分でライブに出るといった。しかし、千歌と俺は、梨子にあるピアノへの想い、才能をなくして欲しくないとこれでもかと説得した。その甲斐あって、梨子はピアノと向き合い、コンクールを優勝することを約束してくれた。
千歌「しっかりね!」
梨子「おたがいに!」
互いの手を握り合い、エールを送り合う。
ルビィ「梨子ちゃん!頑張ルビィ!」
ダイヤ「東京に負けてはダメですわよ!」
黒澤姉妹もそれぞれ異なる声援を送った。
洋希「梨子、お前のピアノを東京中に響かせてこいよ!」
梨子「うん!」
ほとばしる笑顔を返してくれた梨子に、もうこれ以上言うことはないと思った。出るか出ないかで悩んでいた梨子は、今はもうどこにもいない。
曜「そろそろ時間だよ!」
鞠莉「チャオ、梨子」
果南「気をつけて」
花丸「ファイトずら!」
ヨハネ「くっくっく...東京の闇に飲まれ...」
花丸「そんな遠回しな応援しなくていいずら」
善子「いいじゃない!私なりの応援なのよ!て言うかツッコミ早い!」
みんなの声を聞き取った梨子は、改札の方へ向かっていった。一歩一歩、俺たちとは違う道へと、足を踏み出していく。と思った矢先、梨子がピタッと止まりだした。どうしたんだ?と俺が思う前に、スーツケースを置いたまま、振り向いてこちらに向かってきた。そして走ってきた勢いのまま、俺に飛びついてきた。
洋希「ちょ...桜内さん...?」
突然の出来事に、思わず苗字+さん付けで呼んでしまった。呼びかけても俺の首に回された腕が、緩むことはなかった。ワインレッドの髪の毛が、俺の頬をくすぐる。するとようやく梨子が小さく呟いた。
梨子「いってくるね...洋希くん...」
声に多少の震えがあった。不安、恐怖、それらの感情が細かく俺の耳から脳へ伝わった。
梨子は怖いんだ。決心したからといって、負の感情を抱かないで、行くのは難しい。人間だれしも怖がる、怯える、だから大事なのはそれをどう乗り越えるかだ。今、梨子がこの恐怖を乗り越えるために最もなことは...俺の励まし...なのだろう。
洋希「大丈夫だ梨子、お前ならやれる。俺はどこにいたって、どんな時だって応援する。梨子がまた、ここに戻ってくる...その時まで」
梨子の背中に手を回して、少しばかり抱きしめた。梨子の体温が、直接俺に伝わってくる感覚に、なんとも言えない感情を抱いた。
梨子「...ありがとう...」
梨子の腕が緩んだのに気づいて、俺も回していた手を離した。もう少し...と思ってしまった俺は、近々警察のお世話になってしまうのではと、不安になった。ほらね、だれしも不安は抱くものなのさ。
梨子「私...全力で演奏してくる!洋希くんやみんなの耳に届くぐらい最高の演奏をしてくるね!」
洋希「ああ!耳かっぽじって楽しみにしてるぜ!」
吹っ切れた梨子は、再び改札へ向かい、今度こそ通り過ぎた。
千歌「梨子ちゃん!」
過ぎ去ろうとした梨子に、千歌が呼びかけた。
千歌「次は...次のステージは...一緒に踊ろうね!」
梨子「...もちろん!」
気合いの入った顔を見せた梨子は、目的地へ向かうホームに走り出した。
あとは...残った俺たちで、予備予選を突破する。そのためにまずは練習に戻らないと...と思ったのだが、冷たく、そして殺気じみた視線が7つほど俺に向けられているのを感じた。無論その正体は曜たちだった。
曜「洋希...さっきのは一体なに?」
洋希「な、なにって...ただ送りだしただけじゃないか...」
地味にドスの聞いた声で聞いてきたので、答えに多少の焦りが出てしまった。そんな鬼みたいな顔したらビビるわ。曜に曖昧な返事をすると、こんどは果南先輩が口を開いた。
果南「まさかとは思うけど...洋希と梨子って付き合ってるの?」
洋希「なんでそうなるんですか!」
果南「だってさっきの、これから遠距離恋愛になるカップルにしかみえなかったもん」
洋希「なんか前にも似たようなこと言われた気がする...」
果南先輩の言葉にデジャブを感じた俺は、はぁ...とため息をついて視線を落とした。
すると近くにいたルビィが頬を赤らめながら、口を動かした。
ルビィ「その...おめでとうございます...」
洋希「いやまて!?付き合ってないからな!?」
花丸「はたからみたらカップルだからアウトずら」
洋希「あれこれもう俺詰み?詰んでるのか?」
花丸に最後のダメ押しをされ、いよいよ返す言葉がなくなった気がした。なぜだ...やり始めたのは俺じゃないのになぜここまで責められるのか...。
万事休すと思われた時、善子がくっくっくと不敵な笑みを浮かべるながら、俺に近づいてきた。
善子「1つだけ回避する方法があるわ!」
洋希「おおなんだ善子!いってみろ!」
ヨハネ「それは...ヨハネのものになれば...」
洋希「却下」
軽いチョップを善子の頭に打ち付ける。当てた場所がちょうどお団子の所だったため、ぼよーんと跳ね返る感触を味わった。善子自身も特にダメージを受けなかったみたいだ。
鞠莉「ひどいわヒロキ!」
洋希「うわぁ!なんすかいきなり」
突如叫びだす鞠莉さんに驚いて、初手で情けない声を発してしまった。両手を胸に押し当て、目をうるうるとさせて、今にも泣きそうな様子だった。
鞠莉「私とは...私とは遊びだったの!!」
洋希「あ、遊びってなんの話...」
鞠莉「あの熱い口付けを...忘れてしまったのね...」
熱い口付け?と言われ頭を回転させ、記憶を搾り取る。鞠莉さんとキスしたことなんて...あ、あったわ。
洋希「それって...初めてあった時にしたやつの事ですか?」
鞠莉「YES!」
洋希「それ鞠莉さんが一方的にやったやつじゃないですか!!」
鞠莉「マリィのファーストキスを奪うなんて...罪な男ね♡」
洋希「自分で捧げてそりゃないでしょ...」
その言葉に続いて反論を述べ続けようと思ったが、鞠莉さんにそれが通用しないと、反射的に悟った俺は鞠莉さんから視線を逸らした。鞠莉さんは俺の反応を楽しむから、こっちが黙ってしまえば問題ない。
ダイヤ「いつまでごちゃごちゃやってますの!練習しに行きますわよ!」
この状況に痺れをきらしたダイヤさんが、俺たちに一喝してきた。俺にとっては救いの手でもあり、その望んだのことができるのである。ダイヤさんの無駄に厳しいところが、ここに来てありがたく感じた。
ダイヤ「洋希さん、「無駄に」は余計ですわ。第一、あなたがあんな破廉恥なことをしなければ、こうはならなかったのですわ!」
洋希「すいません、やってきたのはあっちなんですが...」
当たり前のように俺の考えを見据えたダイヤさんは、1番に駅をあとにしようとした。それに続いてルビィや花丸たちも歩き始めた。
とりあえず...今はなんとかなったみたいだ...。
散々あらぬ疑い、ならびに余計なことを言ってきた方々のあとを追うように俺も歩みだした。
少し歩いて、俺は1人ついてきてないことに気がついた。振り向くと千歌は未だ改札の先を見つめていた。千歌の気持ちを察した俺は、戻って隣に立つ。
洋希「心配か?」
千歌「うん...梨子ちゃん、ほんとに大丈夫かな...」
洋希「あいつなら、きっとやりとげるよ。だから信じて、今俺達ができることをやって、梨子の帰りを、待ってようぜ」
千歌「そうだね...信じよう、梨子ちゃんを!」
お互いに笑みを浮かべる。千歌は最後の最後のまで梨子を心配していた。さすがリーダーというだけじゃない、誰かを本気で想える、誰かのために何とかしたいという気持ちを、今の千歌が持ち合わせている。だから梨子のために、行動を起こせたのだろう。隣にいるリーダーの成長を感じながら、練習へ向かう。
あってまだ数ヶ月だが、俺と千歌、梨子は家が近いのもあって会う機会も多く、休みの日に千歌の部屋で3人でおしゃべりすることも多かった。ふざける千歌に俺がツッコミをいれ、その光景を梨子が笑う一連の流れが完成しているぐらいだ。それはまるで...昔からの親友のように、幼なじみのように...。
しかしその関係を良しとしない人物が1人いることを、俺は近々気づくことになる。
ダイヤ「特訓!ですわ!」
でかでかと「特訓!」と書かれたホワイトボードを前に立ち、気合いの張った声でダイヤさんが叫んだ。
千歌「またぁ?」
花丸「本当に好きずら...」
俺らの中ではもはや聞き飽きた言葉であるからして、千歌と花丸がこうも呆れるのに今回ばかりは同感した。
特訓はいいが、何をするかを毎回直前に言うのだけはやめて欲しいかぎりだ。最近俺の考えたメニューがなかなか採用されないし...。
ルビィ「ああ!!」
パソコンをいじっていたルビィがなにかを見つけたようだ。隣にいた俺と千歌は、その画面を左右から覗く。映っていたのは...Saintsnowだった。
千歌「これって...Saintsnow!」
ルビィ「先に行われた北海道予備予選をトップで通過したって!」
果南「へぇ、これが千歌たちが会ったっていう...」
千歌「頑張ってるんだ...」
Saintsnow...前に俺達が東京のイベントに赴いた時に出会ったグループだ。姉の鹿角聖良、妹の鹿角理亞の2人によって結成されている。ライバルポジションでもある2人の活躍を、本来なら喜ぶところだが、俺はどうにも素直に喜べない。その理由は、東京でのイベントのあと、得票数0だった俺たちに、追い討ちをかけるがごとく、厳しい言葉をぶつけてきたからだ。「ラブライブを諦めた方がいい」「ラブライブは遊びじゃない」と。終いには「マネージャーをやめるべき」なんてことも言われたのは、二度と忘れることはないだろう。彼女たちの踊り、歌は素晴らしいものだった。しかしあの人間性に欠ける言動に、俺は未だ許し難く思っている。
曜「洋希...大丈夫?」
曜が心配そうな顔を数秒考え込んだ俺に向けてきた。恐らく顔が相当強ばっていたか、明らかに敵意を向けた顔をしていたかで、俺がまだSaintsnowを軽蔑していると悟ったのだろう。俺ってほんとに顔に出ちまうな...。
洋希「ああ...ちょっと考え込んでただけだ...」
そんな回答をすると、みんなが曜と同様に心配そうな
顔を向けてきたが、視線を床に落とした俺は、それを感覚的に捉えた。
果南「まあ...東京でなにがあったのかは知ってるけど、大切なのは目の前の予備予選。まずはそこに集中しよ?」
俺が沈んだ空気にしたのを、果南先輩が断ち切った。堅実とも言える発言に、Saintsnowという単語をなんとか頭から振り払おうとする。
鞠莉「果南にしては随分堅実ねぇ?」
果南「誰かさんのおかげで、色々勉強したからねぇ?」
2人のトークに、充分にも微笑ましい部分があるが、どうにもやはり気持ちの整理がつかない。
果南「洋希、Saintsnowに色々言われたみたいだけどさ、それはもう過去のことじゃん。大事なのは今だよ。9人になったんだから、Saintsnowにだって...ううん、ほかのスクールアイドルにだって負けないよ!」
洋希「...過去のことに散々引きずられてた人に言われてもなぁ...」
果南「ああ!いったなぁ!」
果南先輩の言葉に、皮肉を返してしまい、やってしまったと思ったのと同時に、皮肉を言える余裕が出来たことに、少しばかり驚きを感じた。
鞠莉「大丈夫よヒロキ!今は私たちもついてるのよ!安心して!」
洋希「頼もしいですけど...いちいち抱きつくのは...」
鞠莉「あら...か...」
洋希「ここは日本です...でいいですか?」
鞠莉「良かった。いつものヒロキに戻ったわね♪」
これまた1本取られてしまった。ほんとに自分のペースに持ってくの上手いんだから...。
左腕にくっつく鞠莉さんに向けていた視線を上げると、千歌たちの顔が、目にとまった。笑み浮かべ、決心づいた顔をしていた。こいつは...もうあの時のことを切り捨てて、Saintsnowを、同じスクールアイドル、ライバルとしてみている。なら、俺が思いつめててどうする...。
息を吸い、両手を顔の横に開き、手のひらで頬を叩く。
パンッ!と鋭い音が部室に響く。
洋希「よし!じゃあ予備予選に向けて、練習開始
だぁ!!」
全員「おおー!!」
ルビィ「お姉ちゃんはどう思った?」
ダイヤ「なにをですの?」
ルビィ「洋希先輩と、梨子さんのこと...」
ダイヤ「わ、私はなんとも...」
ルビィ「羨ましいとか思わなかった?」
ダイヤ「そ、それは...」
ルビィ「ルビィは...いいなぁって思った」
ダイヤ「ルビィ...」
ダイヤ(洋希さん...殿方に対してそう思えるようになったのですね...成長しましたわねルビィ...)
ルビィ「あとお姉ちゃんさ...洋希先輩に抱きつかなきゃいけないんだよね?」
ダイヤ「だ、誰から聞いたのですの!」
ルビィ「鞠莉さんが...」
ダイヤ「いつのまにルビィに...」
ルビィ「お姉ちゃん、頑張ってね!」
ダイヤ(妹の応援が悲しく感じますわ...)
次回もお楽しみに!ヾ(・ω・`)