鞠莉「あら、どうかしたの?」
洋希「いや、お花見ってなにがいいんだろうなぁって考えてたんですよ。ただ桜を見るだけなのに...面白いのかなって」
鞠莉「ノンノン!お花見はただ桜を見るだけじゃないわ!仲間とtalkを弾ませ、美味しいものをeating。交流の場においては、とってもExcellentなことだと思うわ!」
洋希「なるほど...でもそれって桜いらないんじゃ...」
鞠莉「そんなことないわよ!桜がそういった雰囲気を醸し出してくれるのよ!」
洋希「おお...そこまでいわれたら、なんだかお花見に行きたくなりました!」
鞠莉「そう?ならマリーと2人で...」
洋希「今度Aqoursのみんなでいきましょ!」
鞠莉「...そうね」
どうもみなさんこんにちは!桜が綺麗になってきたこの季節、新しい学校がもう少しで始まるリオートです!
長く感じた2月3月も終わってしまい、とうとう4月に...。名残惜しいですが、次に向けて頑張りたいと思います!
それでは、本編どうぞ!
しばらくして、千歌から連絡が入った。そっちが終わったらダイヤさんの家に来てくれと。すぐさま身支度を整え、千歌から送られてきたマップを頼りに目的地に向かう。外は薄暗くなっていて、今すぐにでも雨が振りそうだったが、急いでいたので傘を持っていくという考えには至らなかった。ダイヤさんの家はさほど離れているわけではなかったのでまあまあ早くついた。それにしても...なんとも和のイメージがつよい家だな...。見た限りの木造建築、入口には門が構えてあって、どこかの組合みたいにも見える。ダイヤさんのような人がいるのが、なんとなく納得できる家だ。
そんなことはさておき、俺はドアをノックして中へと入る。中は渡り廊下があり、そこを辿ってダイヤさんたちを探す。それにしても...広い。うちもそこまで狭いわけではないが、格段にここが広い。鞠莉さんが洋のお嬢様だとしたら、ダイヤさんは和のお嬢様がお似合いだろう。と、また考えが脱線してしまった。こういうことは、全部終わってからにしよう。
やっと鞠莉さんを見つけた。その瞬間、鞠莉さんは俺の方に向かって走り出してきた。このままだとぶつかりかねないと思い避けようとした。
ダイヤ「どこへいくんですの!」
しかしすぐにダイヤさんがそれを止めた。
鞠莉「ぶん殴る!そんなこと、一言も相談せずに!...」
拳をギュと握りしめ、怒りをあらわにする鞠莉さん。
この会話から察するに、話すところまで話したのだろう。果南先輩が...なにを考えていたかを。
ダイヤさんは立ち上がって鞠莉さんに近づき、話を続けた。
ダイヤ「おやめなさい、果南さんは、ずっとあなたを見てきたのですわ。あなたの立場も、あなたの気持ちも、そして、あなたの将来も...誰よりも考えている...」
鞠莉「そんなのわからないわよ...どうしていってくれなかったの...」
ダイヤ「ちゃんと伝えていましたわよ。あなたが気づかなかっただけですわ」
俺はその言葉に疑問を抱いた。果南先輩はいつそれを伝えたのだろうか。なぜ鞠莉さんにはそれが伝わらなかったのか。いったい...どんな伝え方をしたのか。
鞠莉「いつよ...いつ伝えたのよ!」
ダイヤ「部室のホワイトボード、そこに答えがありますわ」
ダイヤさんの言葉を聞き、鞠莉さんはハッとした。恐らく、気がついたのだろう。果南先輩がどこでなにを伝えたかを。すると鞠莉さんは俺には目もくれず、一目散に走り出していった。果南先輩の想いを...確認するために。
鞠莉さんが去ってすぐ、俺はダイヤさんに先程の疑問を投げかけた。
洋希「ダイヤさん、果南先輩はいつどうやって伝えたんですか?」
ダイヤ「先程言った通り、部室のホワイトボードですわ。果南さんはスクールアイドルをやめる直前に、そこに鞠莉さんへの想いを綴ったのですわ。でも残念ながら、鞠莉さんには気づいてもらえなかったみたいですが...」
ホワイトボード...そういえば俺たちが初めて部室に入った時に、なにか書いてあったな。歌詞だかなんだか、結局わからずにそのまま放置しちゃったけど...。
洋希「そんな遠回しに...」
ダイヤ「果南さんは、あれで気づいてくれると思ったのですわ。だから直接いわなかった。鞠莉さんなら...と。お互いに気を使いあった結果ですわ...」
洋希「...ダイヤさんは、どう思ってたんですか?」
ダイヤ「わたくしは...それが最善の策だと思っていましたわ」
洋希「知っていたなら...ダイヤさんが全部話すってこともできたはずです...」
ダイヤ「その時の私には、そんな勇気はありませんでしたわ...」
話をしていくにつれて、ダイヤさんの顔がいつもの威厳のあるものと打って変わって、弱々しくなっていく。俺自身も、なんだかダイヤさんを責めているような気になって、それ以上はなにも言えなかった。
ダイヤ「洋希さん、私はどうするべきだったのでしょうか...」
どうするべきだったか、正直俺にもわからない。今安易に全部話せばと言ったが、もしそれでさらに状況が悪化したら、取り返しがつかないことになってしまったら、ダイヤさんは、全責任を自分自身に押し付けるだろう。だから、ダイヤさんの行動は、間違ってはいなかったのだろう。しかし、まだそれは断定できない。
洋希「わかりません。でも、それ考える前に、今はやるべき事があります」
ダイヤ「やるべき...こと?」
洋希「あの2人を、あるべき関係に戻すことです!」
そういって俺も鞠莉さんと同じく、ダイヤさんの家を飛び出していった。外は案の定大雨突風。傘があっても出るのを躊躇うぐらいだ。止むのをまつ、という手もあったが、鞠莉さんはとっくに学校へ向かっている。話すなら今しかない。俺はダイヤさんの家に向けお辞儀をし、走り出した。
走り出したのはいいものの、雨の強さが尋常じゃなかった。まるでシャワーの1番強いのを近距離で当てられてるような感じだった。数秒のうちに服はびしょびしょ、時々吹く突風に流されそうになる。それを我慢して、鞠莉さんが向かったであろう学校へとはしる。
洋希「ハァ...ハァ...」
海に入ったあとかのような状態になりながらも、なんとか部室にたどり着いた。思った通り、鞠莉さんは既に部室にいた。鞠莉さんも俺と同様、全身ずぶ濡れだった。
俺は部室に入り、早速ホワイトボードを確認する。よく見ると、たしかにちゃんと文になっている。ところどころ文字は切れているが、それを予想の範囲内で繋げると、こんな文になった。
「いつもそばにいても 伝えきれない思い出
心迷子になる 涙 忘れてしまおう
歌ってみよう 一緒にね」
最初の方だけだが、なんとなくこの文からでも伝わってくる果南先輩の想い。この後にも文は続くみたいだ。それが、全部、果南先輩の、鞠莉さんに対しての想いなのだろう。
隣にいる鞠莉さんは、口を開かず、ただホワイトボードに頭を打ち付けているだけだ。
洋希「鞠莉さ...」
声をかけようとした瞬間に、鞠莉さんは俺に飛びつく。俺の服を掴む力が、いつもより強い。
鞠莉「私...気づけなかった...果南は伝えてくれたのに...」
洋希「俺だってわかりませんよ、こんな伝え方されたても...」
鞠莉「私...果南のことは何でもわかってると思ってた...好きなものとか...気持ちとか...」
洋希「でもこれでわかったはずです。あなたはまだ、100パーセント果南先輩を理解出来ていない。人の感情は、機械と違って目まぐるしく変わる。それを他人が全部理解することは...は出来ないって」
鞠莉「そうみたいね...」
鞠莉さんの掴む力が段々と弱まってくる。しかしまだ涙は止まらないようだ。なぜなら雨で冷たくなった俺の体で胸の当たりだけ少し温かいからだ。恐らく鞠莉さんの涙だろう。
鞠莉「ほんとに分からなくなっちゃたわ...これからどうすればいいか...」
洋希「それは簡単です。果南先輩の想いがわかったなら、こんどは鞠莉さんが全てを伝えればいいんです!」
鞠莉「私が...全てを?」
洋希「そうです!果南先輩に対する怒りも、悲しみも、苛立ちも、もどかしさも、そして...鞠莉さんが果南先輩を大切に思っていることも...全部、言葉にしましょう!」
鞠莉「言葉に...そうね...それしかないわよね...」
鞠莉さんの声に張りが感じられた。決心してくれたようだ。
洋希「なら、早速果南先輩を呼んで...」
果南「私ならここにいるよ」
俺は咄嗟に声のする方を向いた。そこには今まさに呼び出そうとした果南先輩がいた。
洋希「果南先輩...どうしてここに?」
果南「ダイヤに呼び出されてね、それで、洋希はどうして私を呼び出そうとしたの?」
ダイヤさんに...ということはダイヤさんはここで俺と同じで決着をつけようとしたのか。しかもそれを俺より早く考えた。さすがダイヤさんだこと...。
洋希「鞠莉さんが...話したいことがあるって」
果南「鞠莉が?」
俺は鞠莉さんから離れて机に寄りかかる。もうこれ以上の口出しはしない。ここで全てを終わることを願うしかない。
果南「なに、話って...」
鞠莉「どうしていってくれなかったの...?思ってることちゃんと話して、果南が私を考えてるように、私も果南のこと考えてるんだから...」
話のきりだしはいい。果南先輩もちゃんと聞こうとよってきている。あとはどんな言葉をかけるか...。
鞠莉「将来なんか今はどうでもいいの!留学?まったく興味なかった!当たり前じゃない!だって...果南が歌えなかったんだよ?放っておけるはずない!!」
鞠莉さんは留学や将来よりも、親友である果南先輩のことを考えていた。ライブで歌えなかった親友を...誰よりも、何よりも思っていた。鞠莉さんは、あの時に思っていたことを、すべて今、打ち明けたのだ。
そんな鞠莉さんが次になにを言うのかと思うと、鞠莉さんは果南先輩に近づいた。そして...
パァン!!
鋭い音が部室に響き渡った。俺も一瞬なにが起こったか分からなかったが、どうやら鞠莉さんが果南先輩に一発ビンタを食らわせたのだ。たしかに伝えろとはいったが、そんな物理的に...。はたかれた果南先輩も、かなり驚いた様子だった。
鞠莉「私が果南を想う気もちを、甘く見ないで!!」
鞠莉さんは...やりきった。言葉でも、拳(手のひら)でもしっかり果南先輩への想いを伝えた。何一つ迷いのない、純粋な気持ちを...。
果南「だったら...だったら素直にそう言ってよ!リベンジだとか負けられないとかじゃなくて、ちゃんと言ってよ!!」
目の下に涙を浮かべながら、鞠莉さんに対する、今までとは違った言葉を投げかける。果南先輩は、ただ言って欲しかっただけなんだ、鞠莉さんの口から、直接気持ちを...。
鞠莉「だよね...だから...」
そういって鞠莉さんは自分の頬を果南先輩のほうに近づける。指で自分の方をつつき、「やり返していい」と。
鞠莉さんなりのケジメなのだろう。気持ちを伝えなかったのは果南先輩だけじゃない、自分にも罪はあると自覚した証拠だ。
覚悟をきめた果南先輩は手を掲げる。鞠莉さんは恐る恐る顔をゆっくりと近づける。目をつぶり、痛みにこらえる準備をしていた。俺もただ、無言でその光景を見つめるだけだ。
しかし、どうしたことだろうか。果南先輩は掲げた手を下ろしてしまった。鞠莉さんもビンタが飛んでこないことに気づき、目を開く。そして果南先輩は、俺たちが予想だにしないことをし始めた。
果南「ハグ...しよ?」
そういって果南先輩は鞠莉さんの前に両手を突き出した。それを見た鞠莉さんは、先程まで流れが止まっていた涙をふたたびこぼしながら、果南先輩に飛びついた。
互いにギュと身を寄せ合い、互いに泣く。このハグは、2人にとってはとても特別な意味を持つものだと、この様子をみて察した。これで...2人は元通りだ...。
鞠莉さんたちを見続けていると、目頭が熱くなってきたので、俺は気づかれないように、静かに部室を出ていった。
洋希「ふう...」
学校からでて、今までの疲れ重くなった体を校門に寄せた。2年に渡って続いたいざこざが、やっと解決されたのだ。
ダイヤ「お疲れ様ですわ、洋希さん」
洋希「あれ?ダイヤさん?」
ダイヤ「はい、どうぞお使い下さい」
そういってダイヤさんはタオルを渡してくれた。そういや、俺はびしょ濡れのままだったわ。2人のこと見てたらすっかりわすれてた...。
俺は受け取ったタオルで頭からふいていく。
ダイヤ「洋希さん、今回はありがとうございました」
洋希「なんのことです?」
ダイヤ「2人のこと、色々と気にかけてくれて...」
洋希「おれが個人的にやったことです、気にしないでください」
ダイヤ「これから2人のこと、よろしくお願いしますわ。ああ見えて二人とも繊細ですから...」
洋希「ちょっと待ってください」
清々しい顔で頼んできたダイヤさんに、俺は
洋希「ダイヤさんもやるんですよね?スクールアイドル」
ダイヤ「わ、私ですか?」
洋希「当たり前じゃないですか!さすがに俺一人で8人も面倒みられる自信はないんで、ダイヤさんにも入ってもらわないと!」
ダイヤ「わ、私には生徒会がありますからそんな時間は...」
洋希「そこは問題ないですよ。鞠莉さんや果南先輩、千歌たちもいますし!それに...俺だっているんですから!!」
千歌「そうだよダイヤさん!!」
塀の影からひょっこり顔を出してきた千歌。それに続いて曜たちAqoursも揃って顔を出してきた。その中で1人、ルビィはなにか持ったままダイヤさんの方へ近づいた。
ダイヤ「ルビィ?」
ルビィ「親愛なるお姉ちゃん!ようこそ!Aqoursへ!」
ルビィはダイヤさんに衣装を差し出した。それは次のライブで使おうとしたうちの一つだった。ルビィが、ダイヤさんのためにと作っていたものだ。
洋希「ダイヤさん、もう一度、輝きましょう!!」
ダイヤ「...わかりましたわ...そういうことなら、あなた達の手、お借り致しますわ!」
ダイヤさんは衣装を手に取った。
ダイヤ「次のライブ、花火祭りで行うのでしょう?だったら時間も限られていますわ!明日から猛特訓ですわ!よろしいですかみなさん!?」
Aqours「おおーー!!」
新たに加わった3年生。たがこれで終わりではない。俺達にはもうすぐそこにライブが待っているのだ。果たして9人になったAqoursは、無事ライブを成功させることができるのか。
次回、ラブライブサンシャイン〜希望の光〜
第53話「未熟DREAMER」
千歌「果南ちゃんたちが入るってことはさ...ライバルが3人増えるってことだよね...」
曜「果南ちゃんたち大人っぽいし、洋希はそっち系が好きみたいだし...どうすればいいんだろ...」
千歌「じゃあ、私もダイビングスーツきて、いきなりそれを脱いだりして...」
曜「それは大人っぽいとか関係ない気が...」
千歌「じゃあいきなり抱きついてキスするとか!」
曜「...できるの?」
千歌「...できない...///」
曜「私たちは私たちなりにやるしかないみたいだね」
千歌「どうしよ〜」
曜「じゃあ、洋希が私たちを守りたくなるようにすればいいんだ!」
千歌「どうすればいいの?」
曜「まず教室のベランダから飛び降りて...」
千歌「それはもういいよ!!」
次回もお楽しみに!ヾ(・ω・`)