梨子「どうしたの?突然」
洋希「雨の日って行く場所限られるじゃん、それが嫌なんだよな...」
梨子「確かにね」
洋希「ま、外に出られないなら家のなかでゲームしたりすりゃいいけどね、梨子はなにしてる?」
梨子「私!?私は...読書かな...」
洋希「へぇー意外だな、ピアノとかやってんのかと思ったわ。で、何読んでるの?」
梨子「ぶ、文学作品よ...」
洋希「どんな内容だった?」
梨子「えっとね、女の子が女の子に壁ドンされるっていうやつよ...」
洋希(本に詳しくないんだが、それは文学作品なのか?こんど花丸ちゃんに聞いてみよ)
たぶん花丸にきいてもわからない。
花丸「ダイヤさんが?」
ルビィ「うん...」
学校をでて、マルたちはバス停近くの塀でバスが来るのを待っている。その間マルはルビィちゃんからある話をきかされていた。ルビィちゃんとダイヤさんは昔からスクールアイドルが大好きで、いつも二人で雑誌を見たり、テレビでライブを見たり、時にはの真似をしていたらしい。しかしダイヤさんがが高校に入って少したったころを境にダイヤさんがスクールアイドルを毛嫌いするようになったらしい。
花丸「そうなんだ...」
ルビィ「だからね、ほんとはルビィも嫌いにならなくちゃいけないんだけど...」
右手を胸にあて、ルビィちゃんはそうつぶやいた。その言葉はどこか弱々しく、悲しそうだった。でも、なぜそう思うのだろう...
花丸「どうして?」
ルビィ「お姉ちゃんが見たくないっていうものを、好きでいられるわけないよ!...それに...」
花丸「それに?」
ルビィ「...花丸ちゃんは興味ないの?スクールアイドル」
花丸「マル!?ないない!運動苦手だし、オラ、オラとか言っちゃうし...」
何回かルビィちゃんにスクールアイドルのライブをみせてもらったことはあるけど、みんなかわいくて、オラとか言ってるひとは誰一人いなかったずら。だからマルには...
ルビィ「じゃあルビィも平気」
笑ってルビィちゃんはそういった。でもその笑顔が本物じゃないのはすぐにわかった。
どうすればルビィちゃんをスクールアイドルの道につれていけるんだろう...
連絡船にゆられ、俺はある場所に向かっている。その場所とは果南先輩のところだ。理由としては、単純に千歌が渡し忘れていた回覧板を届けるためである。当の本人は今頃家の手伝いに奮闘しているだろう。なので代わりに俺が届けるってわけだ。
洋希「あとで送料でも払わせようかなぁ...」
青く澄んだ空を見上げながらそうつぶやいた。誰かにきかせるわけでもないが、なんとなく口にださないと気が済まなかった。
洋希「にしても...なんでルビィちゃんはやりたがらないんだろうなぁ...」
あんだけ好きならやってみたいとか思うはずだけど...なにか理由があるのか...。
そうだ、こういうときは3つだ。3つ理由を考えてみよう。そしたらなにかわかるかもしれん。と、どこぞのアニメに影響された俺はサッと立ち上がり姿勢を正す。
洋希「ルビィちゃんがスクールアイドルをやらないのには理由がある」
俺は腕を突き出し、人差し指だけをピンと伸ばした。
洋希「1つ、ルビィちゃんは極度の人見知りであるということ。まあ...最近治ってきたきもするけど...」
次に中指をだす。
洋希「2つ、あくまで予想だが運動が苦手であるということ。スクールアイドルは踊りながら歌を歌わなくてはいけない。したがって体力に自信がないとやろうと思えない。」
最後に薬指を。
洋希「3つ!...あるいはそれ以外!」
と、なんとも締めの悪い終わり方をしてしまった俺は、静かに席に座った。
俺は最後にいったそれ以外の例を考えた。
例えば家族関係とか...はっ!そうだよ!なんで最初に気が付かなかったんだ!
多分ダイヤさんに「ルビィ!あなたはあんなへんちくりんな部活に入ってはぶっぶーー!ですわ!」とか唆されたんだろう。
くそっ、姉に釘をうたれていたか...。これは1本とられたぜ...。
そのことで一人嘆いているのを乗っていた人に見られていたのは洋希は気づきもしなかった。
ようやく船が到着し、まっさきに果南先輩の所へ向かった。しかしそこには...
洋希「あれは...小原先輩?」
なにやら果南先輩と小原先輩が話している。俺はそれを壁の影に隠れてこっそり聞き耳をたてた。
果南「だから、私はもうやらない!」
その言葉を最後に、バタバタと音が響いた。ソーっと顔をだすと果南先輩がダイビングショップの中に入っていくのが見えた。
鞠莉「相変わらず頑固親父ね...」
そう小原先輩は呟いた。
なんか今日は来ない方がよかったかも...。今日のところはスタコラサッサしますか。
鞠莉「それに...盗み聞きをする変態さんもいるみたいね」
な、まさかバレたとでも...。いやさすがにそんな能力者じみたものは...。
鞠莉「あなたのことよ?ヒロキ」
やっぱりバレてたーーーー!
洋希「な、なんでわかったんですか...?」
俺はダイビングショップの角からヒョイと顔をだした。
鞠莉「臭いよ」
洋希「臭い!?」
まじか、俺そんなに臭ってるのか!?
鞠莉「It’sjoke♪」
はい、小原先輩のジョークいただきましたー。
鞠莉「なんとなくね、ヒロキがいる気がしたの。ほら、私たち運命共同体みたいなものじゃない」
洋希「そんなものになった覚えはないんですが...」
鞠莉「キスまでしたのに?」
洋希「あれは一方的じゃないですか!」
鞠莉「ひどい!私とは遊びだったっていうの!」
洋希「遊びもなにも、まずそこまでいたってません!」
鞠莉「そ、そんな...」
なんだろう、どうして小原先輩としゃべるといつとこうなるのだろうか。この人自分のペースにもっていくの上手すぎないすかね?
洋希「ゴホン、まあそれはそうと、果南先輩と何を話していたんですか?」
鞠莉「あら?私たちのgirls talkに興味があるの?」
洋希「聞いてた限り、そういうものには聞こえませんでしたけど」
鞠莉「...こっちの話よ、あなたには関係ないものよ...」
さっきまでのにこやかな笑顔とは一変して、顔がくもった。
洋希「わかりました、じゃあ俺はこれを渡さなきないけないんで」
鞠莉「そう...私はもう帰るわ」
洋希「お気を付けて」
鞠莉「ありがと」
そういって小原先輩は家に帰っていった。
俺は果南先輩のいるダイビングショップに入った。入口に設けられた席に、果南先輩が座っていた。
洋希「あの...」
果南「洋希、鞠莉と何話してた?」
トーンの落ちた声で果南先輩は尋ねてきた。
洋希「果南先輩と何を話してたんですかって聞いただけです。まあ答えてもらえませんでしたけど」
果南「そう...」
重苦しい雰囲気が漂っている。お客さんがいないのがせめてもの救いだろう。こんなところ来たいと思わないもん。
洋希「あ、これ回覧板です。ここに置いておきますね」
果南「うん、ありがと」
回覧板を置いた俺は、とりあえず[QUEST CLEAR]なので、ダイビングショップを後にしようとした。
果南「洋希、最後に1つ聞いていい?」
洋希「な、なんですか?」
最後の最後で果南先輩に止められてしまった。いったい何を聞かれるのやら...。乱入クエストの開始じゃ。
果南「その...ま、鞠莉とキスしたって...ほんと?」
洋希「ゑ?」
果南「ほら...さっき鞠莉がキスだのどうのこうのいってたからさ...」
少し頬を赤らめてそう聞いてきた。
はぁ、もっと真面目な話かとおもったのに...。気が抜けるよ...。
洋希「一方的にされただけです、ここにね」
そういって俺はほっぺたをゆびさした。
果南「そ、そっか!それならよかった!」
なにがいいのかわからんけど、さっきまでの暗い雰囲気がなくなってきてるから善子するか。
まちがえた、良しとするかだ。
洋希「ていうか、俺たちの会話聞いてたんじゃないですか!」
果南「ごめんごめん、私は地獄耳だから」
嘘だ。絶対入口に耳つけて聞いてたゾ。
洋希「まあいいですけどね...じゃあ俺は帰りますんで」
果南「うん、バイバイ洋希」
洋希「さよなら」
最後にみた果南先輩の顔は、いつもの晴れた空の様な顔だった。
花丸「μ'sかぁ...」
マルは本屋さんで「μ's大特集!」とかかれた本を手に取り、読んでいた。そこにはμ'sのファーストライブからの情報が事細かに記載されていた。
マルは一つだけ、ルビィちゃんにスクールアイドルやらせる方法を思いついた。それは、マルがスクールアイドルに入るからルビィちゃんも一緒に入らない?と誘う作戦だ。前にルビィちゃんが、「花丸ちゃんは興味ないの?」と聞いてきたので、恐らくこの作戦は上手く行くはずだったのだが...。
マル「オラには無理ずら...」
雑誌にのっているμ's一人一人、みんなかわいくて美人さんだった。それに、マルみたいに変な喋り方の人はいないと思った。そんな時、ある1ページに目が止まった。それは「星空凛」という人が白いウエディングドレスの様な衣装を着ている写真だった。
その写真を見た時、マルの中の何かがうごめき始めた。そうだ、最初から諦めちゃダメだ。ルビィちゃんを救うにはこれしかないんだ。だから...
マルは、決心した。
スクールアイドル、やってみよう。
そんな花丸を遠くから発見した堕天使が、「天使大時点」という本を持ちながら、気づかれないようにレジに向かっていった。
梨子「む...無理よ...さすがに...」
千歌「でも!ハァハァ...μ'sも階段のぼって鍛えたって...ハァハァ...」
曜「ハァハァ...でも...こんなに長いなんて...ハァハァ...」
洋希「まだそんなにのぼってないけどな」
千歌「ひろくんは...男の子だから...余裕なんでしょ...」
洋希「いや、男とか女とか関係ないけどな。普段から走ってりゃなんともないだろ」
俺たちは朝練で走り込みをするために、淡島神社に通じる階段を利用して練習している。
事の発端としては、千歌が、「μ'sみたいに階段ダッシュみたいのやりたい!」という提案だった。それから色々探して練習になりそうな階段がここであったのだが、思ったより距離が長く、まあまあ傾斜もあるため。走りなれてない千歌たちには相当辛かったようだ。
俺?俺はまあ、スクールアイドル始めるまでは朝の日課で走ってたし、それなりには体力に自信はある。けどこの階段を登りきるのは骨が折れそうだなぁ...。
千歌「ひろくん...水ない?...」
洋希「ん、ちょっとまて」
俺はバックの中をあさってみるが、残念ながら俺の飲みかけしか入ってない。さすがにこれはなぁ...。
洋希「わりぃ、俺の飲みかけしかないわ」
千歌「そ...それでもいいから...」
梨子、曜「千歌ちゃん!?」
こいつ、疲れて頭ショートしてんな。だってこのままやったらあれだぞ、うん。
千歌「ひろくん〜...」
やむを得ないな。
洋希「ほら、やるけど口つけんなよ」
千歌「ふぁ〜い」
と俺の忠告を無視して千歌は口をつけて思いっきり飲み出し、そして飲みほした。おい、人の話聞いてたか?
千歌「ぷはぁ〜!生き返る〜やっぱりいろ〇すは美味しいね!」
曜「千歌ちゃん...」
千歌「ん?どうしたの?」
梨子「それ、洋希くんの飲みかけなんだよ?」
千歌「それがどうしたのって...ああ!」
洋希「やっと気づいたか」
千歌「べ、別にそういうのじゃなくて!///ええっと...///」
洋希「まあいいよ、わざとじゃねえんだし」
実際瑠美で慣れてるから特に気にはしない。口つけるなって言ったのはあくまでこうやってめんどくさいことになるのを回避するためだ。手遅れだがな。
曜「洋希!私にも水頂戴!」
梨子「私も!」
洋希「そんなにもってきてないぞ。千歌ので最後だ」
曜、梨子「そ、そんな...」
千歌「ごめんね梨子ちゃん、曜ちゃん。私が飲みほしちゃったから...」
洋希「そんなに飲みたかったのか?終わったら買ってやるから、それまでがんばれ」
曜、梨子「...」
なんだその「そういうことじゃない」みたいな顔は、俺は悪くないぞ?あくまで飲みほしたのは千歌だからな?やめろ、その怨念の塊みたいな目を俺に向けるな。
果南「あれ?千歌」
水騒動の中、階段をリズムよく降りてくる果南が見えた。
千歌「果南ちゃん!」
曜「もしかして、上まで走っていったの!?」
果南「一応ね、日課だから」
梨子「日課!?」
果南先輩の発言にみんな驚きを隠せないようだが、俺は果南先輩が走り込みをしているのを知っていたのでそれほど驚きはしなかった。
果南「千歌たちこそ、どうしたの急に?」
千歌「鍛えなくちゃって...ほら!スクールアイドルで!」
果南「ああ...そっか」
洋希「にしてもよく息一つ切らしてませんね」
果南「慣れみたいなもんだよ、洋希もまだ余裕そうだね」
洋希「まだのぼったばかりなんで、なんとも言えないっすね」
果南「そういえば最近、洋希走り込みしてないよね?」
洋希「千歌たちの朝練みてるんで、最近はちょっと」
果南「そっか...さびしいなぁ」
洋希「えっ?」
果南「あ!な、なんでもないよ///が、がんばりなよ!」
そういって果南先輩は階段を降りていった。さびしいって...何のことだろうか。
千歌、曜、梨子「ジッー」
洋希「なんだよ、その目は」
千歌「べつに!」
曜「やっぱり洋希は女たらしだよ...」
梨子「年上まで手玉にとるなんて...さすがね...」
洋希「...また勘違いされてんなぁ...」
結論、こいつらの前で女の子と関わるとめんどくさい。
ルビィ「雨っていいですよね♪」
洋希「どうしたんだ急に」
ルビィ「雨の音とか聞いてると心が落ち着きませんか?」
洋希「まあわからなくもないかな」
ルビィ「それにいいことだってありますよ!」
洋希「いいこと?例えばどんな?」
ルビィ「水たまりぴちゃぴちゃしたり、花がより一層綺麗に見えたりしますよ!」
洋希「へぇーそういう捉え方もあるのか」
ルビィ「洋希先輩はなにかいいことあったりしませんか?」
洋希「そうだな...あ!女の子の服が透けるとか!」
ルビィ「ルビィ、おうちに帰りますね...」
洋希「嘘だよルビィちゃん!MA☆TTE!!」
純粋な子の前で変態発言は控えましょう。