死から始まる幻想郷人(?)生   作:Narvi

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 どうも、初めまして。こんにちは! ナルヴィです!

 唐突に書きました。後悔はないです。

 吸血鬼大好きなんです。許してください、なんでもしますからぁ!!←


プロローグ 幻想入り、そして人生終了

 雨がうるさく感じる夜だった。

 

 雨粒が僕の体を余すことなく濡らしていく。だがしかし僕の体は微塵も寒いと感じることはなく、雨とは別の赤い液体が僕の体に暖かさを感じさせていた。

 

 幻想入り。

 

 この幻想郷という『忘れられた者が訪れる辺境の地』では、外から来たものをそういうらしい。訪れる原因は複数あるらしいが、僕の場合は正規の訪れ方ではない。

 あくまで自分の意思だった。何もかも忘れたくて、こんなよくある信憑性の欠片もない噂にでもなんでもいいからすがりたくて。

 たまたま、本当にたまたまだ。妖怪の賢者がそれを見ていて、そして僕自身もそうなる素質があったということだろう。

 

 しかし、甘かった。

 

 確かに僕はそうなる素質はあったんだろう。しかし、そこで生きていけるかなんてものはその素質には関係ないのだ。

 今まで外の世界でのびのびと生きてきた僕に、幻想郷の生活は些か荷が重すぎた。

 

 開始数日で、妖怪に食われてこのざまだ。僕のこの世界で一から生きていこうという決意を返してほしい。思わず乾いた笑いがこぼれる。

 

「はぁ、死んだな……」

 

 僕の血が未だ降り止まない雨に溶け、流されていく。ぼけぼけの目で見ても周りが血で満たされているのは明らかで、死ぬんだろうな、って他人事のように考える。

 

「すごい血ね……」

 

 唐突に僕の頭上から、女性の声が聞こえた。透き通るような綺麗な声で、近づいてきた足音すら聞こえなかった僕の壊れかけの耳でも、なぜかすんなりと通っていった。

 

「あなた、死ぬわね」

 

「ああ、死ぬな……」

 

 彼女の問いに僕は軽く笑ってみせた。ちょっと申し訳なくなって「ごめん、動けなくてこの体制でしか話せない」と言う。相手はさも気にしない様子で「別にいいわ」と言ってくれた。

 

「死ぬっていうのに、あなたは冷静ね」

 

「まあ、そうだな……」

 

「人間は死に怯える種族だと覚えていたのだけれど、どうしてかしら?」

 

 そう言われて、少し考えてみる。

 とは言っても、答えはすでに頭に浮かんでいた。思いついた言葉をそのままに、僕は口を開いた。

 

「僕の命は自分のためにあり、一人のものでしかない」

 

「……? どういうことかしら?」

 

 種族のことを言っていたことから、彼女は人間ではないのだろう。「ちょっと長くなるかもだけど、いいか?」と聞くと、彼女は了解してくれた。

 

「まず、この考え方は人間だけかもしれないけど、人の命は自分だけのものではないって言うのがあってね。わかる?」

 

「いいえ、わからないわ。だって、私の命は私のものだもの」

 

「まあ、そういう考え方もあるってだけで、人間の場合は口ではどうこう言おうと大抵の人が死後家族や友達に悲しまれて、感謝されて見送られる。ということは人の命は自分だけのものではないってことになる」

 

 まあ、結局これは持論でしかないけれど、少なくとも僕はそういうものだと認識している。

 彼女の顔は見えないが、「ふ~ん、それで」と彼女は言っているし、恐らく納得はしてくれたのだろう。「理解が早くて助かる」と言って、僕は更に言葉を続ける。

 

「でも、僕の場合はそうでなくてさ。僕はこのとおり、幻想入りしてきたんだけど、当然この世界に僕の死を悲しむものなんて誰ひとりいない。そもそも僕は自分の意思でここに来たんだ。自分の命は自分だけのものだし、ここで死んでも後悔なんて一つもないよ」

 

 僕がそう言い切ると、彼女は「ほう……」と一つ呟くと、しばらくの無言が続いた。喋り切ることに集中していたからか、言い終えると僕は口を開くことすら億劫になっていた。

 

 外の世界ではかろうじてその枠に収まっていた僕の命は、幻想郷に来て完全に独立した。当然、この命は誰がなんと言おうと僕だけの物だし、僕以外の物になりえない。

 

 死んでも悲しむ者なんてこの世界に誰ひとりいない。だから、死ぬことに恐怖を感じることはない。

 ただ、自分から望んでこの世界に来たというのに、満喫することができない。それが少し悲しかった。

 

「そろそろ……死にそうだ……」

 

 ちょっと眠たくなってきた。これが死ぬってやつなんだと思う。もう神経はとっくに麻痺していて、雨の感覚は何も感じないし、音もほぼ聞こえない。

 

「あなた……生き……い……しら?」

 

「え……なに……?」

 

 ――何も聞こえないや。

 

 それが口に出ることはなく、閉じかかっていた目は完全に落ちる。

 

 僕の人生はここで終わってしまった。誰かの目の前で死ねた、自分が死んだのを見届けてもらえた。今はそれを、喜ぶとしようか。

 そして、僕は完全に意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、意識を失ったわね」

 

 多分まだ死んでない、と思う。まあ、直に死ぬだろうけど。

 

「この人間、なかなか見込みがありそうね……」

 

 死を恐怖しない人間。私が妖怪だと気づいていながら普通に接し、私に対して臆することなく――単純に感覚が麻痺していたのかもしれないが――持論を語り、あろうことか自分の死を笑っていた。

 

「ここで死ぬには惜しいな」

 

 不敵に笑う。私は目の前の人間に近づくと、その冷え切った体を抱き上げ、その首筋に牙を突き立てた。




 残念! 君の冒険はここで終わってしまった!

 誰がこの展開を予想しただろうか←

 死から始まるとはいえ、まさかプロローグで、そんな、ねぇ……て、う”ぇぇ?



 楽しかった^^

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