いつも頑張るお前の傍に。いつも支えてくれる君と一緒に。   作:小鴉丸

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今回はモカの思いがメインです。

間が開きましたがどうぞ。


第五話 片思い

~総士side~

 

 

「いらっしゃいませ」

 

客が入ってくるといつもどうりに挨拶をして注文を取る。そして注文されたものを客に出す。

 

「どうぞ」

 

ここは朝のうちは客が少ない。日にもよるが特に多いのは十二時から二時半にかけての時間帯だ。

 

「(ふぅ。今日も人は少なそうだな)」

 

まだ十時を回ったくらいで見渡しても一人しかいない。俺は適当に考え事をして時間を潰す事にした。

 

そういえば、と今日バイトに入るやつを思い出す。

外国人の少女でこう言っては悪いがちょっとズレてる部分がある。でもいつも元気で明るいから客には人気だ。

 

「(でもあいつなぁ……)」

 

考えながら注いでいたコーヒーを一口飲む。

元気なのはいいんだけど逆にそれが面倒になる事もある。例えば……。

 

「たのもー!!」

 

丁度いいタイミングで来た。

 

若宮イヴという少女。モデルをやってるらしい事から当然見た目は良い、背も高く肌も綺麗。すれ違ったら男なら一度は振り向くんじゃないだろうか。

 

「うるさい。早く着替えてこいよ」

 

「うう……反応が冷たいです……」

 

とぼとぼと奥の部屋に向かっていく。その背中を見ていると後ろから声を掛けられる。

 

「よっ総士。相変わらず見た目だけは家庭的だな」

 

「……莉緒、何してんだお前」

 

遠回しな貶しをスルーして声を掛けてきた人物を見る。

 

そいつは沙霧莉緒。俺達が組んでいたバンド“Eternal Happiness”でギターをしていた男だ。

 

「何って……イヴの付き添いだが?」

 

そうだった、こいつらはどういう事か知り合いで割と仲が良い関係だ。結構前イヴに聞いたのだがなかなか面白い事だった。

 

「喫茶店デートか? 他所でやってくれよ」

 

「あはは、お前じゃないんだからさ。で? その本人はつぐとはどうなんだ?」

 

自然な流れでからかってくるのはこいつがよくする事だ。それは中学の頃から変わっていない。

 

「思いは募る一方です。以上」

 

「そっかー」

 

席に座りながら返事をしてくる。自分から聞いてきたくせに素っ気ない反応をされる。

 

その時イヴが奥から着替えてやって来た。

 

「装着です! どうですかリオさん?」

 

くるりとその場で一回転。よくアニメで見るあれだ。

 

莉緒は持っていたメニュー表を机に置いて一目イヴを見てから感想を述べた。

 

「似合ってるな。でも姫としてその格好は如何なものかと」

 

「だから! 姫じゃないですってば!」

 

イヴに強く言われるが笑っている莉緒を見るとこの二人はこういうやり取りをよくしている事が分かる。

 

この雰囲気が続くと入れなくなるので先に間に入って注文を取ることにした。

 

「注文はお決まりでしょうか?」

 

「あぁ、悪い悪い。じゃあこれで」

 

 

 

 

〜モカside~

 

 

「……モカ」

 

「んー? どうしたのー蘭ー」

 

バンド練習の休憩中に外で風を浴びてると蘭が心配そうな顔で声を掛けてくる。どうしてそんな顔をしているんだろう。

 

「あ、何か奢ってくれるのかなー? いやー友達思いだなー蘭は」

 

いつものようにのんびりと言うが蘭の表情は変わらない。

 

「今日さ、らしくないミスしてたよ」

 

「そうだねー。疲れてるのかな?」

 

適当に誤魔化してみようとしたがAfterglowの中でも一番の親友といえる蘭の目は誤魔化せなかったようだ。

 

蘭は優しく語り掛けてくる。

 

「朝の事なんでしょモカ」

 

やっぱりばれちゃったかー。

 

親友相手に隠すことは難しいようだ。あたしは素直に言う事にする。

 

「あははー、分かっちゃうー?」

 

「当たり前でしょ。何年一緒だと思ってんの」

 

そんな何気ない言葉が嬉しくも感じる。

 

「あんなの反則だよねー、人の気持ちも知らないでさー」

 

総士に朝抱きつかれた事が練習中も頭から離れなかった。思い出しただけでドキドキする。

 

私はつい愚痴みたいなのを言ってしまう。

 

「確かに総士がつぐの事を好きなのは知ってるよー? でも、もうちょっと周りも見てほしいものだよー」

 

「モカ……」

 

それは自分に言い聞かせているようだった。総士はつぐしか見ていない、と。あたしはただの幼馴染みだ、と。

 

つぐもあたしが総士の事を好きとは知らないだろう、そこまで勘がいい方ではないはずだ。

 

「……ふぅ。言葉にしてみたら案外スッキリしたよー、それじゃ休憩も終わる頃だから戻ろ?」

 

蘭の横を通り過ぎてスタジオ内に戻ろうとするがその時「待って」と言われて足を止めた。蘭は少し間を置いて真っ直ぐに私を見て言う。

 

「あたし、そういう話は疎いけどモカが悩んでるのなら相談に乗るよ。いつものように遠慮はしないでいいから、モカはいつも通りにいればいいんだから」

 

言い終えた蘭は今度は「行くよ」と行ってあたしの手を取りスタジオに向かう。

一瞬見えた顔は少し赤かった。きっと恥ずかしかったんだろう。

 

でも――

 

「(ありがと、蘭)」

 

その親友と繋がれた手を見ながら心の中でそう思ったのだった。




評価や感想をして下さった方、いつも感謝しています! 頑張りますのでこれからもこの作品いついつをよろしくお願いします!

今回も読んでもらいありがとです!

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