俺の好きな神プロのキャラが活躍する小説を書きたかっただけ。   作:いでんし

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ハスターは「マスター君」って呼んで欲しかった。
なのでここでは君付けで呼ばせていただきましょうか。
趣味の範囲でキャラ設定を色々変えられるのは二次創作のいいところ。


テスタメント

 エリゴスは不満気だった。

 彼女の眼前には、主人であるカゲツと、彼の腕を抱いてご機嫌なハスターがいる。

 エリゴスは、むすーっとした顔で、ハスターを睨みつけた。

 

 

×××

 

 

 話を数時間前に戻そう。

 先程、ハスターは神姫を連れているカゲツに興味を示し、自身が黄衣の王になるための足掛けとして、カゲツの仲間になりたいと言い出した。

 ラグナロクを止めるため、神姫を一人でも集めたいカゲツと、王になるための経験値を貯めたいハスターとの利害が一致し、カゲツはハスターの部下のイタクァ諸共、自らの仲間に加えたのだ。

 

 

×××

 

 

 当然ながら、エリゴスにとって、面白い状況ではない。

 まぁ、要するに、彼女はヤキモチを焼いているのである。

 

 そんな中、ソルとビリーは、今日一日中歩き回ったのが応えたのか、ベッドの中で寝息を立てていた。

 そして、カゲツとイタクァは苦悩していた。

 エリゴスとハスターの仲が悪い事を気にしているのではない。

 

 資金が足りない。

 

 コガネ一行と別れた後、カゲツ達は街を散策し、ギルドや宿、武器屋等を見つけた。

 街が広くて散々迷った挙句、気づけば日が沈んでいた。

 レストランで夕食を取った後、ソルとビリーが眠そうにしていたので、宿に泊まった…といった具合である。

 たったそれだけなのだが、メガフロンティアでカゲツとエリゴスが稼いだ約30万ジェムの内、おおよそ4分の一が消えた。

 原因は、この一日で仲間が一気に四人も増えた為である。

 カゲツとエリゴスが食うには充分な程度のジェムはあったのだが、今日が祭りの日ということもあり、結構浪費してしまったのだ。

 この状況が続けば、財政難になるのは目に見えている。

 幸いなのは、この世界がメガフロンティアと同様の通貨を使っていることと、イタクァ側もそれなりの量の資金を持っていたことだった。

 とはいえ、いつまでもこのままでいい訳がない。

 

「しょうがないか…イタクァ、ハスター。お前達にも協力してもらうぞ」

「お金を稼ぐ方法があるのですか?」

「ある。しかも、俺が知ってる中では非常に楽な方法だ。というかそれしか知らん」

 

 そう言って、カゲツはマントから剣を取り出す。

 

「魔物狩りだ」

 

 

×××

 

 

 翌日、朝食を取ったカゲツ一行は速攻でギルドへ向かった。

 

「誰が一番早く着けるか競走しようよ!」

 

 とビリーが提案したので、全員走ってギルドまで向かうことになった。

 もちろん、カゲツが彼女達についていける訳がなく、エリゴスに乗せてもらった。

 のだが、今日はカゲツが積極的に自分を頼ってくれるのが嬉しかったのか、エリゴスの飛行は少々安定感に欠け、非常に揺れた。

 朝食を入れたばかりのカゲツは、当然ながらグロッキーになった。

 

 

×××

 

 

 吐き気をこらえながらギルドの依頼に目を通すカゲツ。

 この辺りの魔物は凶暴性が高く、よく畑を荒らすらしい。

 神姫が一気に増えたが、だからと言って高難易度の依頼を受けるとあっさり壊滅する危険性もあったので、ひとまずはそこそこの難易度の依頼を受けることにした。

 内容は、犬型の魔物の群れの討伐である。

 

「少し前までは、人里を襲うようなことはしなかったんですよね。あの魔物は」

「暴れ出したのは結構最近なの?」

 

 受付嬢の言葉にソルが反応する。

 

「そうなんです。人懐っこくて、番犬にしている家もありました」

「そんな魔物が人を襲うなんて…何があったのですか?」

「わかりません。ある日急に暴れ出し、鎖を引きちぎって森へ駆けていったそうです」

「へぇ…どうなっているのかしら」

 

 ハスターとイタクァが興味を示す。

 受付嬢は更に続けた。

 

「そうそう。しばらくしてその人の所に戻ってきたんですが、姿が変わっていたそうです」

「姿が?」

「えぇ、まるで…」

 

 

×××

 

 

 馬車に乗って、魔物の住まう森に到着した一行。

 馬車を降りるとすぐに森へ向かった。

 森は15メートル程度の木々で構成されており、日の光はほとんど入らない。

 薄暗い森の中を、カゲツ達はどんどん進んでいった。

 最近雨が降ったのか、土はうっすらと湿っていた。

 突然、カゲツが足を止める。

 

「止まれ。気配がある」

 

 同時に、エリゴスも何かを察したのか、カゲツの背後に立つ。

 エリゴスが止まると、すぐに全員が足を止めた。

 

「…右ッ!」

 

 未来予知で察したのだろうか。

 突然エリゴスが槍を突き出す。

 瞬間、金属音が耳に響く。

 右を見ると、エリゴスの槍が、魔物の爪を防いでいた。

 

「なっ…⁉︎」

 

 カゲツが驚きの声を上げる。

 だが、不意打ちされたことにではない。

 カゲツが注目したのは、その姿だった。

 頭に一対の耳と腰にふさふさの尻尾。ここまでは普通の犬と変わりない。

 だが、こいつは胸に豊かな二つのふくらみを持ち、手足は爪のついたミトンのようなもので覆われている。

 

 その姿は、魔物の姿をした人間の女そのものだった。

 

「こいつが魔物…⁉︎」

 

 グルルルル、と魔物がうなる。

 受付嬢が言っていた通りだ。

 見た目こそ人間だが、知性はかけらも見られない。

 気づけば、五体程度の群れに囲まれていた。

 

「…やるしかないようね」

「ビリー、俺を援護してくれ。他は一人一匹ずつ相手だ!」

「応ッ!」

 

 ビリーを除く全員が魔物に突っ込み、群れから引き剥がした。

 カゲツは剣を振るうが、野生の勘と言うべきか、魔物は的確に攻撃を避けていく。

 隙を見つけて、カゲツに襲いかかってきた。

 だが、攻撃はビリーの銃弾によって阻まれ、カゲツが腹部に一閃。

 腹を裂かれた魔物は倒れこみ、動かなくなった。

 もう戦力にはならないだろう。

 後ろを見れば、エリゴスとソルも戦闘を終えており、残るはイタクァとハスター。

 

「皆さん、下がってください!ポイゾナスガスト!」

 

 突然イタクァが叫ぶ。

 言われた通りに距離を取ると、イタクァの杖から紫色の風が吹き出し、魔物を包み込んだ。

 すると、魔物が突如地面に突っ伏し、身体を痙攣させ始めた。

 

「…毒の風か」

 

 やがて、風が霧散すると、魔物はピクリとも動かなくなっていた。

 奥を見ると、ハスターも魔物を片付けていた。

 

「私とハスター様は風魔法の使い手です。もちろん、ハスター様の方が私の何倍も強いです」

 

 イタクァがすまし顔で説明する。

 昨日尾行されてた時、こちらが先に不意打ちされていたら、間違いなくデバイスを奪われていただろう。

 

 そんな中、突然ハスターの背後から更に三匹の魔物が現れた。

 

「っ⁉︎避けろ、ハスター!」

 

 カゲツの言葉に反応したハスターは、ギリギリで攻撃を回避した。

 攻撃を仕掛けた一匹が攻撃をかわされて地面に突っ込むが、対応した個体がハスターに爪を向けて襲いかかってきた。

 ハスターは一瞬のうちに角笛を構え、強く息を吹き込んだ。

 瞬間、美しい音色が響き渡り、同時に襲いかかってきた魔物が二匹同時に吹っ飛んだ。

 魔物は木に激突。すると、木はメキメキと音を立てて折れた。

 

「は…⁉︎」

 

 なんて威力だ。

 カゲツが思わず腑抜けた声を上げる。

 あんな威力の風攻撃を受けたらひとたまりもないだろう。

 攻撃を避けられた魔物もハスターを攻撃しようとするが、無残に風魔法で吹き飛ばされてしまった。

 

「どう、カゲツ君?これが最上位の実力よ」

「最上位…ソルと同格か。確かにその強さなら納得だが…」

 

 やはり神姫は強い。

 それは当然なのだが、ソルと比べると魔法の攻撃力が段違いに高い。

 ヒーラータイプのソル、アタッカータイプのハスターといったところだろうか。

 

「……マスター、待って。まだ誰かいる」

 

 突然エリゴスが警戒を促す。

 すると、森の中から集団が現れた。

 しかし、魔物ではない。

 銀の鎧に紫のフードを被り、レイピアや魔法の杖で武装した男の集団だった。

 先頭の男が、カゲツ達を眺めて話し始める。

 

「魔物が突然倒され始めたから、何があったと思ったが…まさか神姫とは!」

「…神姫を知ってるのか。何者だ?」

 

 神姫という単語に内心では驚いたカゲツだったが、決して顔には出さない。

 カゲツがメガフロンティアで拠点としていた街では、神姫のことを知っている者は誰一人いなかったからである。

 そんな中、突然自分たちの前に集団で現れ、かつ見た目は普通の少女と変わらないエリゴス達を一発で神姫と見抜かれるとなると、流石に警戒せざるを得ない。

 

「俺たちはテスタメント。訳あって神姫を探しているんだが…ちょっとそいつらを分けてくれないか?」

「断る」

「即答か。何故だ?」

「こんな少人数を大勢で囲んで、武器まで持っている。ただの取引じゃあないだろう」

「そうだな。少なくとも、穏便に済ませられるとは思ってないな」

 

 先頭の男はニヤリと笑い、レイピアを空に向けて叫んだ。

 

「いくぞお前ら!神姫は生け捕りにしろ!男は殺しても構わん!」

「オオオオ!」

 

 雄叫びをあげて、男達が突撃してくる。

 

「リーダー、向かってくるよ!」

「……どうするの、マスター?」

 

 エリゴスが問う。

 それに対し、カゲツの返答はもちろん一つ。

 

「決まってる!迎え撃つぞ!」




ハスターは本来トリッキータイプ。
しかし、その基準は実装当時に防御デバフをかけられる唯一の風SSRだったからというもの。
普通にアタッカータイプでいいと思ってる。
カゲツ君も間違えて仕方ないよ、あれは。

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