俺の好きな神プロのキャラが活躍する小説を書きたかっただけ。   作:いでんし

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ハロウィンハスター引けなくてやる気無くしてました


山賊と触手

「いい女が揃ってるじゃねぇか…お前ら!かかれ!」

「イェッサー!」

 

 剣を抜き、山賊がカゲツ達に襲いかかる。

 

「アマル、降りろ。戦闘だ!」

 

 カゲツは背負ったアマルを降ろし、剣を抜く。

 エリゴスは既に動いており、触手に捕らわれたハスター達の救出を狙う。

 

「おっと、行かせないぜ!」

 

 だが、間に山賊二人が割り込む。

 人間にしては異常な瞬発力に、エリゴスはイライラを募らせた。

 

「邪魔……!」

 

 エリゴスが連続で突きを繰り出す。

 しかし、山賊は剣を巧みに操り、槍攻撃をことごとくブロックする。

 

「……だったら……!」

 

 エリゴスの槍に闇の魔力が蓄積される。

 魔力は光線となり、山賊を一人吹き飛ばした。

 普通の人間なら、神姫の魔法を食らえばタダでは済まない。

 

「キシャァァァ!!!!」

 

 突如響き出す耳障りな騒音。

 触手の魔物が、金属音にも似た音を発し出した。

 反射的にエリゴスは耳を塞ぐ。

 

「うっ…ああぁっ…」

 

 同時に、触手に捕らわれたソルがもがき、苦しみだす。

 魔物の騒音が原因、という訳では無さそうだ。

 目を凝らすと、ソルの周りの魔力の流れがおかしいことに気付く。

 

「ソルの魔力が触手に吸われてる……?」

 

 エリゴスの目にはそう映ったようだ。

 ソルの魔力を吸った触手は、魔力を倒れた山賊へ飛ばした。

 すると、何事も無かったかのように山賊が立ち上がった。

 傷が癒えているのだ。

 あの攻撃を受けて、すぐに回復するとは考えられない。

 

「まさか…ソルの魔力を…?」

「へへ、今度はこっちから行かせてもらうぜ…」

 

 そして、山賊がエリゴスに次々と突撃した。

 その数、四人。

 エリゴスは剣を弾き、槍で凪ぎ、光線で吹き飛ばす。

 だが、山賊達はその度にソルの魔力で回復し、ゾンビの如く蘇ってくる。

 

「ぐっ…魔力が…」

 

 更に、触手はハスターからも魔力を吸い出し始めた。

 触手が山賊に魔力を送り込むと、彼らの周囲の魔力が濃くなった。

 剣を一振りすれば、それらは風を纏った飛ぶ斬撃として、エリゴスに襲いかかる。

 少人数でありながら無限に復活する彼らに、エリゴスは着々と体力を削られていった。

 

 そして、森の中を迂回して飛んでくる触手に、エリゴスは気付かない。

 

「エリゴス、伏せろ!」

 

 声と共に、触手に何かが突き刺さる。

 直後、それは爆発を起こした。

 

「キシャァァァ!?」

 

 触手が悶える。

 効果はあるようだ。

 カゲツが、エリゴスの窮地を救った。

 

「炎で焼くのが効果的みたいだな…だったら、こいつの出番か」

 

 マントから投げナイフのような投擲物を取り出すカゲツ。

 

「イタクァ!お前はエリゴスのサポートに回れ!俺であの魔物を片付ける!」

「お任せください!」

 

 カゲツは一人、触手と対峙する。

 

「こいつが火に弱い事を見ただけで判別するか。やるじゃねぇか」

 

 他のメンバーがエリゴスの相手に向かう中、唯一残った山賊が拍手を送る。

 他と比べるとやや小綺麗な服装からして、彼が山賊の頭だと推測できる。

 

「魔物狩りで生計立てて来たからな。勘で弱点はだいたいわかるさ」

「成程な。だが…呑気に話してていいのか?」

 

 前方から触手が数本伸びてくる。

 カゲツは剣で斬りつけるが、弾性の高いゲル状の触手には刃が食い込まない。

 止むを得ず、カゲツは回避に移った。

 そして、敵の猛攻撃をいなす最中、カゲツは衝撃を受ける。

 

 焼き飛ばした触手が、少しずつだが再生している。

 

「お前も再生するのか…クソ!」

 

 投げナイフの数には限りがある。

 予め魔術を埋め込んであり、何かに刺さると同時に爆発魔法が作動するという代物だが、使い切れば当然有効打が無くなる。

 再生しなければケチらず使っていたところだが、そう上手くは行かないらしい。

 しかし、倒さなければ今度は無限に復活する山賊達にやられる。

 カゲツサイドは一気に不利な局面に落とされた。

 

 

 ×××

 

 

 アマルは、戦いの様子をただ黙って見ているだけだった。

 戦況は、残念ながらこちらが押されている。

 エリゴスとイタクァは山賊に苦戦を強いられ、カゲツも触手に有効打を与えられないでいる。

 このまま戦っても、彼らに勝ち目はない。最悪、そのまま死ぬだけだ。

 

 ふと、アマルに一つの考えが浮かんだ。

 

 逃げてしまえばいいのではないか、と。

 

 もともと、あたしはこいつらに勝手に連れ回されているだけ。

 菓子こそ貰ったが、だからといって付いていく義理はない。

 仮にここでこいつらが死んだところで、自分には関係が無い。どうでもいいのだ。

 

 アマルは背を向け、この場から去ろうとした。

 

「アマルちゃん!」

 

 背後から名前を呼ぶ声が聞こえる。

 思わず振り向いた先には、触手に絡め取られた一人、ビリーの姿があった。

 

「アマルちゃん、助けて…」

 

 ビリーは目に涙を浮かべ、助けを求めていた。

 

「ど、どうしてお前を助ける必要が…」

「早くしないと!早くしないと、お兄ちゃんが…」

「あいつのことなんか知ったことか!」

「でも、ビリー達は友達でしょ⁉︎」

「⁉︎」

 

 思わず面食らったビリー。

 友達?

 友達ならピンチの時なら助けてくれると思っているのか。

 甘い。子供の考えだ。

 …いや、今はそんな事はどうでもいい。

 

「あたしを…友達って言ってくれるの?」

「そうだよ。ビリーはアマルちゃんの友達だよ!」

 

 友達。

 そんなことを言われたのはいつぶりだろうか。

 遺跡を守護していた頃は、部下と呼べる関係の者はいたが、友達だとは思っていなかった。

 もしかしたら、それは生まれて初めてのことかもしれない。

 

 何かが頰を伝った。

 …涙だ。

 それが自分の涙だと気付いたのは、十数秒が経った後だった。

 

 アマルは涙を拭い、高く跳躍した。

 今日のあたしはとても気分がいい。

 今までの最高出力の電撃を発動できる気がする。

 それに、

 

 

「ビリーには、お菓子の恩もあるからなーーッ!」

 

 

 アマルの魔力が膨れ上がり、雷鳴が轟く。

 そして、金色に輝く鎧を纏った鳥人が、その姿を現した。

 

「オーロ・トゥルエル!」

 

 鳥人の手に高圧の電撃が集中する。

 そして、力一杯、触手に向けて投げつけた。

 

「ギシァァァァ–——–ッ!!!」

 

 触手の断末魔が響き渡る。

 電撃が触手を次々と焼き飛ばし、その中枢が露わになる。

 そして、丸裸の触手に飛びかかる者が一人。

 

「…ありがとう、アマル」

 

 大ジャンプからの落下を利用して、剣を振り下ろす。

 魔物の核は、カゲツの一閃で真っ二つにされた。

 

「そ…そんな…あいつが倒された…?」

 

 盗賊の頭の余裕は何処へやら、情けない声で震えだした。

 他のメンバーも、動揺の色が見られる。

 

「さて…これでハスター様の魔力を使って、強化魔法を発動する事は出来ませんね」

「ひっ⁉︎」

 

 イタクァが、鬼の形相で山賊を睨みつけていた。

 山賊達だけではなく、カゲツやアマル、エリゴスですら恐怖を覚え、一斉に肩を震わせた。

 ハスターを拘束しただけではなく、魔力を勝手に使われて、さぞかし怒っているのだろう。

 

「…お覚悟を」

「おいおいおい!待て!何をする気だ⁉︎」

「何もしませんよ。ただ、ちょっとキツめの毒を食らってもらうだけです」

「イタクァ⁉︎」

 

 カゲツが制止するよう促すが、彼女は聞く耳を持たない。

 しかし、

 

「はいはいはい、ストーップ!」

 

 触手から解放されたハスターが、突如割り込んできた。

 

「ハスター様⁉︎大丈夫ですか?」

「全然平気よ。今から説明するから、とりあえず武器を下ろしなさい」

「えっ?でもこの人達は…」

「いいのよ。私達とグルなんだから」

「「「えっ?」」」

 

 カゲツ、アマル、イタクァの三人が、素っ頓狂な声を上げた。

 

 

 ×××

 

 

「最初は普通に山賊に襲われたけど、簡単に撃退した」

「うん」

「そして、山賊に頼んで自分達を襲わせ、アマルが俺達を助けるように仕向けたと」

「そうなるわね」

「んなもんわかるか!」

「そうだぞ!こいつに言われなきゃあたしは逃げるつもりだったぞ!」

「でも、アマルちゃんは実際助けてくれたよね?」

「結果論だ!」

 

 アマルとの交流を深めるため、ハスター達は襲撃してきた盗賊と一芝居打った。しかし、事はハスター達の思い通りに進んだものの、そのやり方には大きな問題があった。

 当然ながらカゲツ達の反感を買い、現在は言い争いをしている。

 エリゴスは彼女らから若干離れ、我関せずを貫いているようだ。

 盗賊の頭はエリゴスに近づき、一つ質問した。

 

「なぁ、嬢ちゃん。あいつらいつもあんな感じなのか?」

「……うん。でも、慣れた」

「…そうか」

 

 しばらくして、言い争いは終わった。今回の件はひとまずチャラになったようだ。

 首謀者のハスターには、禁酒一週間の罰が下されたらしいが。

 

「はぁ…困るな、全く」

「悪かったわよ、だから禁酒は三日に縮めて!」

「ダメです。しっかり一週間守ってもらいます」

 

 さて、盗賊とはここでお別れだ。

 カゲツ達には、次の遺跡を目指して道を進まなければならない。

 

「おじさんたち、ありがとー!」

「貴方達、あの魔物を操れる技術があるなら、盗賊稼業から足洗ってそっち系の仕事した方がいいわよ」

「…おう、考えとくよ」

「……マスター、早く」

「ちょっと待ってろ、すぐ行く」

 

 戦闘前同様、アマルを背負うカゲツ。

 だが、彼は盗賊に近づき、一つ呟いた。

 

「あの触手、誰から貰った?」

「…何の話だ?」

「あんな規模の魔物、この山では聞いたことがない。俺は仕事でここに何度か来たことがあるが、あんたらの話は聞いてても触手の話は一度も出てこなかった。それに、あれは()()()()()()()()()()だろう。何を隠している?」

「……」

「答えたくないならいいよ。悪かった」

「…おい、カゲツ」

「気にするな。ただの質問だよ」

 

 アマルが不穏な空気を察するが、カゲツはそれをはぐらかし、エリゴス達に向かって走っていった。




クリスマスに向けて意気揚々と準備してたバアル姐さんが限定ソルにサンタ役取られて泣いてる姿が想像できました

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