俺の好きな神プロのキャラが活躍する小説を書きたかっただけ。 作:いでんし
キャラクターが話しているのを見るだけでもう楽しいし
なにより二次創作意欲が掻き立てられる…
遺跡を駆けるハスターに、光の刃が襲いかかる。
光魔法を発動しているのは、教会騎士の一人、「人間兵器」エレミアだ。
突如発生した遺跡の罠により、カゲツ一行と分断されたハスターを単独で追いかけている。
光の刃は遺跡の壁や床を容赦なく切り裂いていく。
ハスターはその行動に疑問を持った。
「いいのかしら?騎士様が自ら遺跡を傷つけることをして」
「残念ですが、目撃者がいなければそれらは全て貴女達の責任となります」
「濡れ衣着せられるって訳ね。よくできてるわ」
軽口を叩きながらも、ハスターは全速力で逃げる。
風魔法を遺跡中に展開してわかったことだが、この遺跡、非常に広い。
地下10階程度の階層に分かれており、それらが迷路の如く張り巡らされている。
なるべく袋小路に逃げ込まないように、ハスターは走り続けた。
×××
五階程度まで上がって来たところで、異変は起きた。
ハスターの風魔法が、巨大な質量を感知したのだ。
「何か来る…?」
魔力を持つ物質や生物ならある程度判別がつくが、この質量、魔力も生体反応も全く持たない故に、なんなのか全くわからない。
質量が出現した場所は上に登る階段がある場所だ。
階段を滑り落ちるように移動している。
そして、それは曲がり角から現れた。
「——⁉︎」
現れたのは、通路を埋めるほどの巨大な岩塊だった。
それは、まるで意思を持つかのように、ハスターに向かって転がりだした。
シンプルながら、侵入者を圧死させるには十分な威力がある。
隙間、無し。
横道、無し。
後退…エレミアが追ってくる。無し。
「突破するしかないみたいね…!」
ハスターは角笛を力強く吹く。
美しい音が鳴り響き、同時に高密度の風魔法を展開。
「エメラルド・ラマ」
風魔法は転がってくる岩塊の一点に集中。
岩塊に大きなヒビが入り、直径一メートル程の小さな岩が次々に誕生する。
しかし、ハスターはサモンフォーカイムなる更に高威力の風魔法を扱える。
その気になれば岩塊を粉々に砕くことも可能だ。
にもかかわらず、そうしなかったのには理由がある。
ハスターは風魔法で岩を持ち上げると、背後のエレミアへ向かって投げつけたのだ。
「!!」
突然飛んでくる石つぶて…岩つぶてを、エレミアはなんとか回避する。
しかし、突然の回避でバランスを崩しかけたところに、次々と岩が飛んでくる。
「ぐっ!」
次々と着弾する岩。
岩が埃を巻き上げ、エレミアの姿は見えなくなった。
同時に通路に岩が転がり、歩行をやや困難にする。
「埃が捲き上るってことは手入れされていないのかしら…とにかく、これで少しは時間を稼げるわ!」
再び、ハスターは走り出した。
×××
「もーっ!なんで当たらないの⁉︎」
遺跡のとある部屋で、少女の高い声が響く。
何者かの闇魔法によってゴーレムを破壊されたところで、その少女は目を覚ました。
遺跡の各地で戦闘が勃発し、罠はことごとく突破され、大岩までもが砕かれた。
そもそもここは、自分が守護している遺跡ではない。
本能で遺跡中に罠を張り巡らせたが、魔力の低い者ならともかく、肝心のハスター達には掠りもしない。
何が起きているのかさっぱり分からず、少女は喚いた。
「何よりも、ここしばらくの記憶がないっ!何⁉︎ここはどこなの⁉︎」
慌てふためく少女は、やりようのない怒りでわなわなと震えだす。
そして、大声で叫んだ。
「一体、何がどうなってるのー!あたしの宝はー⁉︎」
×××
「ぐぁぁっ!」
「もう!どれだけいるのよ、この集団!」
教会騎士が、ハスターの風魔法で吹き飛ばされていく。
現在、ハスターがいるのは第一層。
出口が近い為か、騎士達と遭遇する頻度もかなり上がってきた。
しかし、いくら束でかかって来ようと、ハスターと騎士では実力に差がありすぎた。
風魔法で次々と騎士をなぎ倒していく。
「ひぃぃ…だめだ、勝てねぇ!」
「退避!退避ー!」
ハスターに恐れをなして、逃げ出す者まで現れた。
騎士に関しては問題ないだろう。
ハスターの意識は、別の方に向いていた。
ズズゥン…
数分前から、遺跡では謎の地鳴りが発生するようになっていた。
遠くのエリアで発生しているようだが、こちらからは確認する手立てがない。
カゲツ達が無事なことを信じて、出口へ走り続けるだけである。
だが、ただ一人、ハスターの行く手を遮る者がいる。
「いい加減しつこいわよ、エレミア…!」
「単独で、しかも私から逃げながらここまで来るとは思っていませんでした。ですが、ここでおしまいです」
エレミアは懐から何かを取り出した。
装飾の施された板状の物体の片面に、硝子板が張られた代物。
「…またデバイス?しばらく見たくなかったわ」
「また、とはなんでしょうか。貴女にデバイスを見せるのは初めてのはずですが」
「ごめん、そういう意味じゃないのよ」
対応のノリはあまり変えないが、間違いなく自分の表情が硬くなるのをハスターは感じていた。
脳裏に浮かぶのは、テスタメントの一人、リリスとの戦いで、彼女の持っている量産型デバイスで魔力を封じられたことだ。
同じ戦法を使われたら、ハスターに勝ち目は無い。
ハスターが一歩後ずさる。
同時に、ズンと低い音がして、何事かとハスターは背後に視線を向ける。
「⁉︎」
通路の天井まで届く図体を持った牛型の魔物が、背後から現れたのだ。
それだけではない。
人魚型、龍型、多種族の魔物が一斉に出現した。
おまけに、テスタメントの使役していたもののように、少女と動物の混じったような姿をしている。
どうなっている。
カゲツの話が正しければ、この遺跡には教会騎士によって生息していた魔物は全て駆逐され、中で魔物と遭遇することはないはずだ。
つまり、誰かが人為的に魔物を発生させたに違いない。
そして、魔物を発生させる方法をハスターは知っている。
「そのデバイスで魔物を呼び寄せたって訳ね」
「呼び寄せた、とは少し違いますね。この魔物は全て私のデバイスで使役し、召喚した者です」
前にエレミア、背後に魔物。
どう見ても多勢に無勢である。
「かかれぇっ!」
エレミアの指示で、魔物が一斉にハスターに襲いかかる。
我先にと飛び出したのは、羽を生やし、大きな卵の殻に下半身を沈めた幼い少女の龍型。
電撃を纏って突進してくる。
そこへ人魚型の水魔法によるアシストが加わり、回避は困難になる。
牛型は動かない。しかし、でかい図体のお陰で退がれない。
あくまでも、こいつはハスターの退路を塞ぐ役割のようだ。
そして、龍型と人魚型の連携により、牛型の所へ追い詰められる。
「今です!首を跳ね飛ばしなさい!」
命令を受けた牛型が斧を振り下ろす。
ぐしゃりと肉の潰れる音が響く。
そして、龍型に柄が折れた斧の刃が飛んできた。
「⁉︎」
龍型はギリギリで回避するが、避けた刃は人魚型の腹を深々と抉った。
吐血した人魚型は血だまりに沈む。
ズドン!
「オォォォォ…」
何かが壁に叩きつけられる音と、低い女の声が響く。
それは、両腕をねじ切られた牛型が、風魔法で吹っ飛ばされた断末魔だった。
「よそ見してて良いのかしら?」
龍型の目の前で、ハスターが左腕を振りかぶっていた。
左手の竜巻は容赦なく龍型を飲み込み、壁に叩きつけた。
残るは、一人。
「流石ですね。対処はいささか乱暴ですが」
傍観していたエレミアが呟いた。
「あんたも相当よ。自分の魔物が殺されても声一つ上げないんだもの」
「構いません。これらは所詮捨て駒。代わりはいくらでもあります」
「…腐ってるわね、あんた」
風と光、二つの魔力が膨れ上がり、遺跡がビリビリと震えだす。
エレミアは光球を周囲に出現させ、ハスターに向けて放った。
テスタメントの例の少年を思い出す戦法。
数もそれ相応に多く、全て対処するのは難しい。
狭い通路を、光球と土煙が埋め尽くした。
対して、ハスターが放ったのは小さな竜巻。
ただの竜巻ではない。
エレミアの光球を飲み込み、切り刻む。
風の刃をふんだんに仕込んだ、特製の竜巻だ。
エレミアは剣に光を纏わせると、竜巻に刃を突き立てた。
だが、弾かれる。
弾かれることは想定していなかったのか、エレミアの反応が一瞬遅れる。
瞬時に、ハスターは土煙の中からエレミアに飛びかかる。
至近距離からの風魔法を叩き込めば、いくらエレミアと言えど大ダメージは避けられない。
「サモンフォーカイム!」
ガードは間に合わない。
竜巻がエレミアを飲み込み、吹き飛ばした。
怯んだ隙に、横道に逃げる。
「…まさか、もう出口を」
嫌な予感を感じたエレミア。
ダメージを気にせずすぐに立ち上がり、ハスターを全速力で追う。
そして、通路の奥に光を見た。
遺跡の壁に取り付けられた、人為的な光ではない。
太陽の光だ。
その先にハスターがいる。
「待ちなさい!」
ハスターは止まらない。
光魔法を放つが、ハスターは全てを避ける。
そして、ハスターは遺跡から脱出した。
「くっ…逃がしません!!」
エレミアも負けじと追いかける。
ハスターと同様、外に飛び出した。
「今よ!」
「…ナイトメアスピア」
「ポイゾナスガスト!」
「アールヴレズル!」
ハスターのかけ声と共に、三属性の魔法が、エレミアを襲った。
ハ「次回からここのスペースで登場した神姫の解説をしていくわよ」