俺の好きな神プロのキャラが活躍する小説を書きたかっただけ。 作:いでんし
ツイッターの方で長く感じたとの意見をいくつか頂いたので、状況次第では短くするかもしれない。
カゲツが神姫エリゴスと出会って二日が経った。
ちょうどその日に槍を譲ってくれた武器屋の所に新しい剣が入荷したので、カゲツはエリゴスを連れて向かった。
「いらっしゃいませ。おや、そちらの女性は?」
初老の店主が現れた。
「おととい貰った槍。それにこいつが封印されていたんです」
カゲツは、店主に神姫の事を話した。
神姫という存在が、かつてラグナロクという災厄を止めた事。ラグナロクによって、魔法科学文明が崩壊してしまった事。
色々な事を話したが、店主は首を傾げてばかりだった。
当然だろう。なにせあまりにも非現実過ぎる。
カゲツ自身も、エリゴスが普通の人間より強いのは把握してるが、他はやはり信じきれていない。
とりあえず新品の剣を購入したカゲツは、その足で冒険者協会へ向かった。
×××
武器屋に剣が入荷するまでの間、カゲツは協会の仕事を一切受けていなかった。
剣が無いので、自分の力で戦う事が出来なかったからである。
エリゴスは「私一人でも大丈夫」と自信満々に言ったが、それでも少し不安だったのだ。
「エリゴス、どの仕事が良いんだ?」
カゲツが渡した冊子には、魔物退治、農業の手伝い、貴族の護衛…様々な内容の依頼が書かれている。
一通り内容を確認したエリゴスは、一つの依頼を指差した。
「…畑を荒らすオークの討伐か。これで良いのか?」
「……このくらいなら簡単」
「ずいぶんな自信だな…」
×××
依頼を受けたカゲツとエリゴスは、郊外の畑に向かって出発した。
移動の最中、カゲツは眠たそうに欠伸をした。
「……マスター、眠いの?」
「誰のせいだと思ってるんだよ…」
ここ二日、カゲツは寝不足だった。原因はもちろんエリゴスである。
カゲツが寝ようとすると、エリゴスはカゲツと一緒のベッドで寝ようとする。
エリゴスをベッドに寝かせて自分は床で寝ようとすると、エリゴスは無理やりカゲツをベッドに引きずり込んでしまう。
エリゴスは神姫なので、周りより少し強い程度の人間であるカゲツが抵抗できる訳が無かった。
一度ベッドインすると、エリゴスは執拗にカゲツにくっついてくる。
女性との関係が少ないカゲツには、出会って数日の女性にここまでされるのは少々刺激が強すぎたらしい。
変に緊張してしまい、ぐっすりと眠れない日々が続いている。
カゲツにとって、エリゴスが自分を慕ってくれるのはありがたいのだが……
さて、このエリゴスという少女(?)に関して、少しとはいえ分かった事がある。
まず、彼女はあまり感情を表に出さない。
カゲツにアプローチする時に歪んだ笑みを見せる事こそあれど、自分から満面の笑みを見せたことは無い。
まぁ、まだ出会って日が浅いし、当然の事だろう。
また、これと言った好物も無い。
肉・魚・野菜、どれも普通に食べるし、酒に弱い訳でも無い。
先程説明した無表情も合わさって、彼女の好物は一切分からなかった。
「…おっ、ここがその畑か」
カゲツ考え事をしてる内に、目的地に到着した。
郊外とはいえ、そこまで遠くにあった訳ではなかったようだ。
×××
「…という事で、よろしくお願いします」
「わかりました。行くぞ、エリゴス」
「うん」
依頼人の農民から話を聞いたカゲツとエリゴスは、魔物が集まるというエリアへ移動する。
数分移動して到着したは良いが、魔物が見当たらない。
なので、相手がこちらへ来るまで待つしかない。
「準備しとけよ、エリゴス」
「わかった」
エリゴスの手には、あの槍が握られている。
「………」
彼女が力を込めると、なんと槍の柄が伸びた。
元々の長さは人の腕くらいしか無かったのだが、今はエリゴスの首より上まで伸びている。
もちろん、そんな事を知らなかったカゲツはただただ驚いていた。
×××
…待つ事数分。ようやく今回の獲物が現れた。
「…何度見てもデカイな」
オーク。
発達した筋肉を持ち、その身長は2メートル程にもなる。
手にはメイスや棍棒を握り、専用に作られたであろう鎧を着込んでいる。
知能こそ低いが、凶暴性が強く、しかもあちこちに生息しているので危険な魔物の代名詞として広く知られている。
今回畑に入って来たのは二体。
内一体は畑に入るなり、すぐに農作物の方へ向かっていった。
そして無造作に掘り出し、土汚れなど一切気にせず口に放り込む。
スキだらけだ。
「さてと…行くぞ!」
カゲツとエリゴスはオークへ向かってダッシュ。
「オオオオッ!」
オークはすぐに存在に気付き、二人に向かってメイスを振り下ろした。
流石の反応速度だ。
カゲツは右に、エリゴスは左に回避。カゲツはすぐさま剣で斬りつけるが、頑丈な鎧に弾かれてしまった。
だが、それも作戦の内。
二人は畑からオークを引き離すために、オークの出て来た森に向かって走った。
森の中はオークの仲間がいる可能性も高いが、畑への被害をできるだけ少なくするためにはこの行動が一番いい。
急に攻撃されて憤慨したオークは、すぐに二人を追いかけ始めた。
少し奥に入ったところで、二人は方向転換し、再びオークに突撃。
オークは力任せにメイスを振り下ろすが、二人はまた回避する。
「破っ」
エリゴスがオークの右脚に槍を突き刺し、魔力を込めると、オークの右脚が
オークはバランスを崩し、倒れこむ。
その隙に、後ろに回ったカゲツが、地面と水平に剣を振る。
オークの頭が鮮血を撒き散らしながら吹っ飛び、司令塔を失った体は大きな音を立てて地面に倒れこんだ。
「ふぅ…畑からは大分遠ざけたな。ケガは無いか?」
「大丈夫。……もう一匹は?」
「…あれ?どこ行ったんだ?」
先程のオークは二体で行動していた。一体は今ここで倒したが、もう一体の姿が見当たらない。
「………!マスター!」
突然、エリゴスがカゲツを突き飛ばした。
瞬間、先程までカゲツがいたところに火の玉が飛んで来た。
火の玉は近くの木に着弾すると、爆発を起こして燃え上がった。
エリゴスがカゲツを突き飛ばさなければ、カゲツがあの木のように火だるまになっていただろう。
「オオオオオオオオッ!」
続けてオークの咆哮が響く。
どうやら、もう一体のオークが仲間を連れて来たようだ。
その数、なんと七体。しかも、
「…一体、倍近くデカいのがいるな…」
身長は4メートル程。持っている棍棒もそれ相応のサイズである。
おそらく、あの群れのボスなのだろう。
いくらカゲツでも、七体同時に相手する事はできない。
エリゴスと分担して倒すにしても、三、四体を同時に相手する必要がある。
しかし、ここで逃げては、依頼を解決する事はできない。
カゲツが苦悩する中、エリゴスは言った。
「大丈夫。私が全部倒す」
「………は?」
言った。
今間違いなく言った。
エリゴスは、あの魔物を全て自分で倒すと言ったのだ。
「何言ってるんだ⁉︎無茶だ!」
「……神姫は、これくらいの相手、どうって事ない」
そう言って、エリゴスは魔法を展開した。
「相手から姿が見えなくなる魔法を使った……でも、大きな声を出したり、動きすぎたりしたらすぐにバレちゃうから、絶対に動かないで」
「なっ…」
エリゴスが魔力を高めると、エリゴスの背後に巨大な手のような翼が現れる。
おおよそエリゴスの衣服を意識してデザインされたようだ。
魔力を扱えないカゲツでも分かる程、その物体からは魔力が溢れていた。
瞬間、エリゴスは、一気にオークの群れへ突っ込んだ。
まず、先頭にいるオークに槍を突き刺す。いとも簡単に鎧を突き破り、槍がオークの腹に深々とくい込んだ。
エリゴスが槍に魔力を込め、内部からオークの腹を爆破する。
鮮血が吹き飛び、仲間のオークも怯んだ。
返り血も気にせず、エリゴスは怯んだオークの首に容赦無く槍を突き立てる。
そしてそのままボスの巨大オークに向けて槍を振るう。屍となったオークを投げつけた。
高速で飛んできた屍を、巨大オークは手に持った棍棒で弾き飛ばした。
ボスと言うだけあって、やはり戦闘慣れしているようだ。
「オオオオオッ!」
巨大オークが咆哮を上げ、手下のオークに強化魔法を付与した。
次の瞬間、オークは一糸乱れぬ連携でエリゴスに襲いかかる。
あっという間に、エリゴスはオーク達に囲まれてしまった。
オークの一体が、全力でエリゴスに棍棒を振り下ろす。
エリゴスはこれを回避するが、背後から別のオークが攻撃する。
だが、エリゴスは全て避ける。前後左右からの連撃を、エリゴスは全身に目でもついているかのように避け続ける。
「…凄い」
カゲツが思わず呟いた。
何故、彼女はこれほどまでに攻撃を避け続けられるのか。
カゲツには心当たりがあった。
『私は王の寵愛をもたらす悪魔。未来を予見する神姫、エリゴスよ……』
それは、二日前にエリゴスがカゲツに向けて言った言葉。
未来を予見する。
おそらく、エリゴスは相手がどんな攻撃をして来るのかを
だから、全て避けることができる。
どんな攻撃も、確実に回避できるのだ。
エリゴスが攻撃を避け続けるにつれ、オーク達の連携は鈍くなっていく。
どうやら強化魔法が切れてきたらしい。
やがて、オークの一体が味方を殴ってしまう。
その隙を見逃さず、エリゴスは殴ったオークに槍を突き立てる。
吐血して崩れ落ちるオークには目もくれず、エリゴスは次々とオークを屠っていく。
四体、三体、二体、一体。
最初は七体いたオーク達も、ついに巨大オークだけになった。
「オオオオオオオッ‼︎」
雄叫びを上げて、オークが火の魔法を連射する。
「……邪魔……」
エリゴスが槍にとてつもないの量の魔力を込める。
「もう死ね……ナイトメアスピア」
込められた魔力は、一筋の光線となって、巨大オークに肉迫する。
あっさりと火の玉をかき消して、巨大オークを貫いた。
黒い爆発が起こり、衝撃のあまりカゲツは目を瞑る。
目を開けると、そこには返り血まみれのエリゴスと、上半身の消し飛んだ巨大オークの死体が転がっていた。
手のような物体は、戦闘が終わったからか消滅した。
カゲツは、エリゴス…いや、神姫の圧倒的な力の前に、何も言えなかった。
…ちょっとグロくなっちゃったかな(汗)
今回は神プロでのエリゴスちゃんの設定を全力で活かした構成となりました。
未来予知の能力ってこんなに扱いやすかったのか…