俺の好きな神プロのキャラが活躍する小説を書きたかっただけ。 作:いでんし
エリゴスが魔物を殲滅してすぐ、多数の憲兵がやってきた。
しかし、リリスは逃げた後。
カゲツ達が倒したテスタメントの部下も、全員いなくなっていた。
リリスが魔物達のどさくさに紛れて回収したらしい。
安全を確認したカゲツは、デバイスで牢獄やソル達の錠を解放していく。
「うぉっ、どうしたソル?」
手錠が外されるとすぐに、ソルはカゲツに抱きついてきた。
「怖かった…リーダー、ありがとう…!」
ソルは泣きながら、カゲツに礼を言う。
ソルが落ち着くように、カゲツは優しくソルの頭を撫でた。
×××
テスタメントがさらってきた神姫達のほとんどは、ロクな環境に置かれていなかった為か、ひどく疲弊していた。
中には昏睡状態になっている者までいるほどだ。
ソルの回復魔法で体力は戻したものの、しばらくは町の病院で入院する必要があるとのことだ。
入院する神姫の中には、リリスとの戦いで脚を貫かれたハスターもいる。
検査の結果、骨まで見事にやられたらしい。
その状態でリリスにいたぶられ、傷を長い間放置したが故に血も多く失ったようだ。
結果、ハスターは意識を失ってしまった。
命に別状はないが、完治にいつまでかかるかわからない。
回復するまでは街に残るしかないだろう。
「とりあえず馬車で街まで戻りましょう。私は疲れました…」
「ビリー、もう眠たいよ…」
「…確かに、一晩越したら眠いな。馬車で寝てくか…」
馬車に乗り込んだカゲツ一行は、数分揺られるとすぐに夢の世界に旅立った。
エリゴスはカゲツのそばに寄ると、小さく呟いた。
「……おやすみ、マスター……」
×××
「マスターくーん!会いたかったわ〜!」
部屋の扉を強引に開けて、ハスターが飛び込んできた。
ハスターはカゲツを見つけると、一目散に飛びついた。
「ぐはっ⁉︎」
「二日ぶりのマスター君〜♡ちゅ〜っ♡」
「ちょっ…ハスター様!スキンシップが過ぎますよ!そもそもなんでここに…」
何故入院しているはずのハスターがここにいるのか。
まさか傷がもう治っているわけがない。
「なんでって…傷が治ったからに決まってるじゃない」
「は?」
そのまさかだったらしい。
当時は蒼白だった顔にはすっかり血の気が戻っており、とてもあれほどの重傷を負ったとは思えない。
「ソルちゃんに来てくれた甲斐があったわ」
「ソルに頼んでたのか…昨日は出かけるって言ってたけど、まさかハスターのところに…」
「マスター君もお見舞いしてくれたっていいじゃないのよ」
「したわ!二時間もな!」
「足りないわ!もっとしてくれたっていいじゃない!お酒も持ってこないし!」
「憲兵から事情聴取される予定があったから仕方ないだろ!あと病人に酒を勧めるバカがいるか!」
とりあえず、回復はしたようで何よりである。
「しかしまずいことになったぞ…」
「まずい?何がよ?」
「エリゴスですよ!今のハスター様を見たらなんて言うか…」
「……マスター……?」
「うわぁぁ見てた!いつからいたんだお前!」
「ハスターがマスターと濃厚なキスをしていた時…」
「最初からじゃねぇか!」
「あーっ!ハスター、こんなところまで来てたの⁉︎休んでなきゃダメって言ったのに!」
「ハスターお姉ちゃんばかりずるーい!ビリーもぎゅーってするー!」
「やめろ!エリゴスが本格的にやばいことになるから!」
ソルとビリーまで乱入し、まさに修羅場。
エリゴスが爆発する寸前でカゲツがなだめたため、大事には至らなかった。
ちなみに、この後ハスターは普通に病院に連行された。
回復こそ速かったが、最終検査をすっぽかして逃げ出して来たらしい。
戻されて当然だろう。
×××
最終検査を終えたハスターが戻ってくると、カゲツ一行は宿を出発した。
そろそろ、次の仲間を探しに行くタイミングだと判断したからだ。
だが、カゲツは一つやりたいことがあった。
「コガネに一度挨拶しておきたいんだ。デバイスのことや、幻獣のこととか、色々教えて貰ったしな」
「なるほどね。…そういえば、ここしばらく会ってないわね。私のお見舞いに来てくれてもいいじゃない」
「お前どんだけ見舞いに来て欲しかったんだよ…」
雑談をしながら歩くと、コガネのいた宿に辿り着いた。
しかし、受付嬢によると、コガネ一行は昨日チェックアウトしてしまったらしい。
どこへ向かったかは、知る由もなかった。
「……マスター、どうするの?」
「…とりあえず、一度メガフロンティアに帰ろう。あの遺跡に向かうぞ」
×××
「お祭りの片付けも、すっかり終わったみたいだね」
「もっとお兄ちゃんといろんなお店回りたかったなー」
すっかり変わってしまった街並みを眺めながら、ソルとビリーが話す。
楽しい会話が続くが、そんな中ビリーがふと呟いた。
「こんなに楽しくても、ラグナロクが起これば、全部無くなっちゃうのかな…」
ビリーの発言に、全員の表情が硬くなる。
カゲツは、ビリーの頭を撫でる。
「大丈夫だ。お前らと一緒なら、ラグナロクだって止められる。きっとな」
ビリーを安心させるようにカゲツは語った。
すると、皆の表情も少し柔らかくなった。
「…そうだよね、ビリー達とお兄ちゃんがいれば、ラグナロクも止められるよね!」
「ソルも、リーダーやみんなをいーっぱい照らしてあげるね!」
「私も、マスター君の力になるわ。私に任せて!」
「マスターをサポートするのが、私達の仕事ですからね」
「マスター、……行こう?」
「おう、出発するぞ!」
「へぇ〜、これがポータルなのね!」
「一見するとただの鏡にしか見えません…これで本当に異世界へ行けるのでしょうか?」
「そう言えば、ハスター達はポータルを見るのは初めてだったか」
カゲツがこの世界にやってきた時、付いてきたのはエリゴスとビリーの二人だけ。
だが今は、ソル・ハスター・イタクァが加わり、計六人だ。
「この調子で、ラグナロクを止めるための神姫をどんどん集められるといいんだけどな」
「そう簡単に行くのかな?」
「神姫は皆私達よりも一癖も二癖もある人ばかりですからね」
「……イタクァが言えるようなことじゃないと思う」
「何言ってるんですか。早くしましょう、スケジュールが狂いますよ!」
「イタクァお姉ちゃん、そういうとこだよ…」
「おい、ポータルが起動できたぞ。行くぞ!」
ポータルがまばゆい光を発し、カゲツ達を飲み込んでいく…
「⁉︎」
カゲツは驚愕する。
まず、メガフロンティアに戻ることはできたらしい。
召喚された場所に、カゲツは見覚えがあった。
異世界へ渡る前に、ゴーレムと戦った大広間だ。
そのゴーレムが、大広間の中央辺りに陣取っているのだ。
奴はビリーとエリゴスに弱点の頭を貫かれて機能停止したはずだ。
更に驚いたのが、その横に教会騎士が大勢並んでいることだ。
ここにいるだけでもざっと二十人はいる。
そして、一人の女が彼らを代表して前に出た。
「貴方が侵入者ですね。単刀直入に言います。デバイスをこちらへよこしなさい」
一章はこれで終了となります。
次回から普通に二章に入ります。
人気が出なくても意地でこの小説は続けていきますので、今後もよろしくお願いします。
あと、ちょっとした番外編を作る予定です。