俺の好きな神プロのキャラが活躍する小説を書きたかっただけ。   作:いでんし

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ハスターさんは可愛いですねぇ
…酔ってなければ

酔ってなければ!(重要)


逆転の一手

 ハスターとビリーの魔力は、先程とは比べ物にならないほど膨れ上がっていた。

 

 ビリーは腰のポーチに手をかける。

 取り出したのは、飲み水などを入れる革製のボトルだった。

 フタを外し、中身を飲もうとするビリー。

 

「させません!」

 

 少年が魔法弾を発射する。

 しかし、発射された頃には、液体は既にビリーの腹の中だ。

 ボトルを捨てたビリーは魔法弾に銃口を向け、引き金を引く。

 一秒もせず、彼女は全ての魔法弾を撃ち落として見せた。

 明らかにパワーアップしている。

 あのボトルに魔力を増幅させる液体が入っていたのかもしれない。

 少年がそんなことを考えている間に、ビリーの銃弾が次々と飛んでくる。

 今度はビリーが攻めに回る番だ。

 密度の高い銃弾の雨を、少年は魔法弾と軽やかな身のこなしでかわし続ける。

 しかし、だんだんと押されていく。

 これでは不利だ。

 仕方ないとばかりに少年は魔道書を開き、詠唱を始める。

 一秒もせず、彼の前には光のシールドが現れた。

 彼は防御魔法まで習得しているらしい。

 無数の銃弾がシールドに襲いかかるが、シールドは無傷。

 ビリーでは破壊することはできなさそうだ。

 しかし、ビリーはニカッと笑って、銃口を天に向けた。

 銃口を向けた先には…

 

 麒麟がいた。

 

(ここから麒麟を狙い撃つつもりか…?いや、当たるわけがない!)

 

 確かに、ビリーの銃弾でははるか彼方にいる麒麟を狙い撃つのは無理があるかもしれない。

 しかしそれは、()()()()()()()使()()()()()の話である。

 ビリーは銃に魔力を込め、叫んだ。

 

「これが、スナッチの真骨頂だよ!デスバレット!」

 

 ドォン!!

 

 ビリーが引き金を引くと同時に、爆音が響き渡る。

 それは、()()()使()()()()()がビリーの銃から放たれた音だった。

 

「っ⁉︎」

 

 一発、ビリーに着弾も撃ち落とされもしないで突然消滅した魔法弾があった。

 しかし、消滅させたのではない。

 奪っていたのだ。

 かつてビリーが教会騎士と対峙した時、騎士の鎧を剥ぎ取って擬態したのも、この技によるものである。

 少年の魔法に、更にビリーの魔力を上乗せした攻撃。

 空中の麒麟を狙い、その距離を一瞬で縮めていく。

 

「麒麟!下です!!避けなさい!!」

「なっ⁉︎」

 

 麒麟が下からの攻撃に気付いたようだが、もう遅い。

 魔法弾は麒麟が乗る機械に直撃した。

 機械が無ければ、麒麟は空を飛ぶことができない。

 魔法弾の衝撃でシステムダウンした機械は、麒麟を乗せたまま高度を落とした。

 落下しながらも、麒麟の視線は上を向いていた。

 視線の先には、強化魔法で魔法の威力が格段に上がったハスターがいた。

 ただでさえ高いハスターの魔力が、更に膨れ上がる。

 魔力は風へと変換され、麒麟を包み込む。

 

「…待て」

 

 落下しながら麒麟が呟く。

 ハスターには届かない。

 

「…待て待て待て待てェ!!」

 

 焦った表情を浮かべて、麒麟が懇願する。

 やはり、ハスターには届かなかった。

 

「グレートオールドヴァン!!」

 

 風は麒麟を握り潰すように包み、爆散した。

 

 爆風に煽られ、麒麟は地面に叩きつけられた。

 そして動かなくなる。

 死んではいないだろうが、戦闘は不可能だ。

 ハスターが地上に降りてきて、少年を睨みつける。

 

「教えてもらおうかしら。ソルをどこに連れて行ったの?」

 

 ハスターが戻ってきたため、少年に勝ち目は無くなってしまった。

 少年は、正直に行方を話しだした。

 

「…この道をまっすぐ進めば古城があります。…そこにソルはいます」

「そう」

 

 ハスターはゆっくりと近づいてくる。

 不意をついて逃げ出したとしても、ハスターの瞬発力の前には無力。

 更には、ビリーまでが銃を構えており、少年の逃走の選択肢を潰していた。

 

「知ってる事、洗いざらい話して貰うわ。ついでにフードで隠れてるその顔も見せてもらいましょう」

 

 逃げられる道理はどこにもない。

 

 普通ならば。

 

「…断る」

 

 瞬間、茂みがガサリと音を鳴らした。

 何事かとハスターが顔を向けると、スパークによるまばゆい光がハスターを照らした。

 閃光により、ハスターとビリーの視界は数秒効かなくなる。

 少年にとっては、その数秒で十分だったようだ。

 視界が効かないながらも、ハスターは何者かが自分の前を猛スピードで横切ったのを感じた。

 二人が視界を取り戻した時、少年はどこにもいなかった。

 負傷して動けないはずの麒麟も姿を消していた。

 少年を連れ去った者が麒麟も同時に回収したのか、デバイスの様な物で麒麟を戻したのか。

 詳細は分からないが、一つ言えることは、ハスターとビリーは少年を逃がしてしまったということだ。

 

 

×××

 

 

 五分ほど走って、ハスターとビリーは少年の言っていた古城へたどり着いた。

 石レンガ造りの建物で、長く使われていないのか所々にツタが張っている。

 しかし気になるのは、テスタメントのアジトと言われていながら、人の気配が全くしないということだ。

 カゲツ達のいた街を襲ったのは十五人。

 しかし、昨日森で襲われた時には倍近くの人数がいた。

 おそらく、残りのメンバーはこの城にいるはずだ。

 

「…突入するわよ」

「うん」

 

 本来ならカゲツ達を待った方がいいだろうが、時間をかけるとソルが何をされるかわからない。

 覚悟を決めたハスターとビリーは、半開きになっているドアから侵入した。

 二人を迎えたのは、赤い絨毯が敷いてある大広間だつた。

 煤けたシャンデリアが床に落ちてガラスを撒き散らしている。

 その代わりに壁に付けられたろうそくが火を灯している。

 人がいるのは明らかだ。

 見たところ、建築されてからかなりの年月が経っているようだ。

 手入れがされていないのか、少々埃っぽい。

 

「ばっちいわねー、本当にテスタメントがいるのかしら?」

「もしかして、今は別のところにいるとか…?」

「ないと思うわ。私達がソルを助けに来るのはわかってるはず。ここを空けたら、すぐに取り返されちゃうでしょ?」

 

 雑談をしながら、二人は城内を探索する。

 しかし、ソルは一向に見つからない。

 

「この正面の扉は調べてなかったわよね?」

「あと調べてないのはここだけじゃないかなー?」

 

 正面の扉に手をかけようとした、その時だった。

 

 悪寒を感じた。

 この扉の奥にいる、とてつもない魔力の持ち主のものだろう。

 

 恐らく、この扉の向こうに敵がいる。

 意を決したハスターは、木製の扉をゆっくりと開いた。

 

「あら、招かれざる客かしら?」

 

 扉の先は大ホールに繋がっていた。

 その奥にある玉座に腰掛けているのは、蛇を携えた美女。

 

「私はリリス。この世界でテスタメントを指揮する者よ」




次回、とうとうリリスと対決です。

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