俺の好きな神プロのキャラが活躍する小説を書きたかっただけ。   作:いでんし

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前回イタクァ走らせた方が馬車より速くないかみたいなこと(多分違う)エリゴスちゃんが提案してたけど普通に馬車使えば良くない?

おいおいシナリオグタグタだな(今更)


追跡

 空高く白い月が登っている。

 その光が、森の中を疾走する一台の馬車を照らしていた。

 よく見ると、その馬車は妙に明るい。

 中に光源があり、それが発光しているようだった。

 

「しっかし眩しいな。魔力を抑える手錠をつけてもこのままとは…」

「魔力ではない何かで発光しているのかもしれませんね」

「ん〜……!」

 

 口に布を巻かれ、手足に枷までつけられて身動きが取れない少女。

 彼女…ソルこそが、光源そのものだった。

 ソルはいつも自らの体を発光させている。

 かつて、彼女がその身に取り込んだ「太陽光炉」の力によるものだ。

 傷ついたエリゴスを治したのも、その力だ。

 心臓の鼓動を自らの意志で止めることができないように、彼女自身も光量こそ調節できるものの、その発光を完全に止めることはできない。

 唯一、カゲツのデバイスを使うことで発光を抑えることができるが、彼は今ここにはいない。

 

 ソルは今、テスタメントにさらわれているからだ。

 

 理由はカゲツたちには知る由もないが、テスタメントは神姫を欲している。

 祭りの人混みに紛れ、ソルを誘拐することに成功したテスタメントは、馬車に乗って彼らの根城へ向かっているのだ。

 馬車の中にはテスタメントの青年と少年、そしてソルだけだ。

 少年の方は、昨日カゲツらと戦ったあの少年である。

 フードに隠れてよく見えなかった顔は、ソルの光を浴びてはっきりと見えるようになっていた。

 最初、ソルはそれを見て驚きを隠せなかった。

 今すぐにカゲツ達に報告したいところだが、拘束されていてそれは叶わない。

 何より、ソルは少年の持つ魔道具によって記憶を消されており、彼の顔はすっかり忘れてしまった。

 よって、彼女は今さらわれた後拘束されて魔法を封じられ、行先がわからない馬車に乗せられた挙句見知らぬ男二人に監視されていることになる。

 この上なく不安だろう。

 現に、彼女の目には涙が浮かんでいた。

 

(みんな…リーダー…助けて…!)

 

 ソルは心の中で助けを求めた。

 

「後どれくらいで着きそうだ?」

「二、三分ですかね。この光で魔物に気づかれなければいいんですが」

 

 彼らがそんなことを話した瞬間だった。

 突然、馬車が傾いた。

 

「?なんだ?上り坂か?」

「いや、そんな坂はアジトまでのルートに無かったはずですが…なっ⁉︎」

 

 外の様子を見ようとして、少年は驚愕する。

 まず、外からとてつもない風が吹いている。

 目を開けることも難しい。

 それでもなんとか目を開くと、違和感に気づく。

 地面が妙に遠い。

 自分の見ている風景が、少しずつだが下に動いている。

 

「まさか…風で()()()()()()()()()()()()のか⁉︎」

 

 原因は馬車の下から吹き荒れている強風だ。

 その規模はどんどん大きくなり、竜巻となった。

 竜巻は馬車を浮かび上がらせるほど成長していった。

 だが、突然竜巻が消滅。

 当然馬車は落下し、地面に叩きつけられる。

 落下の衝撃で車輪が潰れ、ついでに荷台も少し壊れ、馬車は横転し使い物にならなくなった。

 

「少々乱暴だけど、馬車を止めるにはこれが手っ取り早かったのよねぇ」

 

 上からの声。

 見ると、ハスターがそこにいた。

 

「追いついて来ましたか」

「追いついてきたわ。全く、逃げ足は速いんだから。さて、ソルを返してもらうわよ」

「させません。彼女は今回の作戦に必要ですからね」

 

 少年は右手に魔道書を持った。

 詠唱すると、背後に魔法弾が出現し、ハスターへまっすぐ飛んでいった。

 

 だが、魔法弾は銃声が鳴った直後に爆発、ハスターには届かなかった。

 

 ハスターの背中からヒョコッと現れたのは、笑顔のビリー。

 魔法弾を全て狙撃してみせたようだ。

 

「弾は昨日いっぱい見たから、もう見切れるのー!」

「…お見事です」

 

 少年はテスタメントの男に言う。

 

「ソルを抱えて早くアジトへ向かってください。ここはわたしが食い止めます」

「…すまねぇな。頼むぜ」

 

 男は横倒しになっている馬車からソルを引っぱり出し、脇に抱えて逃げ出した。

 ソルはまだ拘束されているので、抵抗は不可能だ。

 

「ハスターさん!ソルちゃんが!」

「逃がすか!」

 

 追跡しようとするハスター。

 しかし、その行く手を雷撃が阻む。

 

「行かせませんよ」

 

 麒麟。

 少年が使役する謎の存在。

 コガネの言っていることが正しければ、あれは幻獣で間違いない筈だ。

 

「はあぁぁぁっ!」

 

 麒麟が乗っている機械から電撃が飛んでくる。

 更に、少年の魔法弾がハスターの退路を阻む。

 ハスターは回避に専念するが、ビリーを背負っているのでおぼつかない。

 ビリーは振り落とされないようにしがみつき、時々銃を撃って魔法弾を迎撃しようとするが、飛んでいるハスターの背中はバランスが悪く、うまく標準を合わせられない。

 

「…ビリーちゃん、降りてくれないかしら。私が麒麟を相手するから、ビリーちゃんは地上に降りてフードの子と戦って。その方が戦いやすいと思うわ」

「りょうかーい!」

 

 ビリーはハスターから飛び降りた。

 気づけば人間が落ちたら命を落とすのは避けられないレベルの高さまで来ていたが、彼女は英霊。

 無傷で着地することなど造作もない。

 

「ぶへっ⁉︎」

 

 …着地を盛大にミスったようだ。

 ビリーは顔面から突っ込んだ。

 

「……」

 

 場の三人が固まったのは言うまでもない。

 

 

×××

 

 

 ソルを抱えたテスタメントの男は、なんとかアジトの古城へたどり着いた。

 

「ぐっ…暴れるな!」

「〜〜〜っ!」

 

 ソルは男の腕の中で必死にもがいた。

 最も、魔力が封じられているこの状態ではソルは普通の少女となんら変わらない。

 焼け石に水だった。

 やがて、ソルはとある広間に連れ出された。

 

「リリス様!神姫を一人捕らえました!」

 

 広間の奥には古ぼけた玉座があり、そこに美女が座っていた。

 踊り子のような赤と黒の衣装に肉感的な身体を包み、膝から下はレースで着飾っている。

 妖艶、という言葉が彼女にはよく似合う。

 手には杖を携え、何故か紫の大蛇を侍らせていた。

 

「御苦労ね。奥の部屋に閉じ込めておきなさい」

「了解しました!」

 

 リリスと呼ばれた美女は男に指示を出す。

 ソルは奥の部屋に引っ張られていった。

 

「…爆発音?()が戦っているのかしら?」

 

 リリスは外の戦闘音が気になるらしい。

 そこでは、彼…少年とハスター達が戦っている真っ最中であった。

 

 

×××

 

 

「雷霆万鈞!」

「サモンフォーカイム!」

 

 空中でぶつかり合う風と雷。

 だが、徐々に風が押し負けているように見える。

 

「ぐっ…」

「どうしたどうした!仲間がいねぇとその程度なのか⁉︎」

 

 ハスターが苦しそうな表情を浮かべる。

 対峙する麒麟は、ハスターに、そして自分にキレていた。

 昨日の戦いでハスターに重い一撃を入れられたのが相当悔しいらしい。

 口調も一層乱暴になっている。

 その怒りが、彼女の内なる魔力を目覚めさせていた。

 元々、カゲツの神姫達五人を同時に相手取るほどの実力者だ。

 ハスター一人手玉にとることなど造作もない。

 

 だが、麒麟は攻撃の手を止めてしまった。

 

「…どういうことよ、ナメてんの?」

「ナメてるさ。この程度のやつをいたぶったところで面白みが無い」

 

 麒麟はすっかり興醒めしてしまったようだ。

 しかし、彼女はとある提案を仕掛けてきた。

 

「なぁ、あんたらは俺達テスタメントの仲間になる気は無いのか?あの男みたいな堅苦しい生活はしなくていいだろ」

「…えっ?」

 

 

××

 

 

 一方で、地上ではビリーと少年が戦っていた。

 少年が放つ魔法弾はビリーの正確な狙撃によって無効化される。

 しかし、ビリーが反撃に移る暇もなく次の魔法弾が飛んでくる。

 そして、その弾数とスピードは少しずつ増している。

 結果的に、今はビリーが押されている状況だ。

 

 そして、ついに。

 

「わぁっ⁉︎」

 

 ビリーの顔前で魔法弾が炸裂した。

 

 すんでのところで身を引き、爆発に巻き込まれない範囲で迎撃したため、ビリーにダメージはない。

 しかし、爆風までは避けられない。

 体の軽いビリーは吹き飛び、尻もちをついた。

 ふと空を見上げると、麒麟に苦戦している様子のハスターが目に映った。

 このままでは二人ともやられるのが目に見えている。

 

「貴女に仲間のことを心配する余裕があるのですか?」

 

 意識を少年に寄せられる。

 少年の背後には大量の魔法弾が浮かんでいた。

 今すぐにでも発射できるだろう。

 

「拍子抜けですね。継承者の部下ならもう少しまともかと思いましたが」

 

 少年の表情はフードと暗がりに隠れて見えないが、軽蔑しているのは明らかだ。

 

「麒麟!つまらぬ交渉などしている暇があったらハスターにトドメを刺しなさい!」

「はぁ⁉︎やらなきゃダメかよ…仕方ねぇな」

 

 麒麟も魔力をチャージし始めた。

 彼女の雷撃に飲み込まれれば、ハスターだとしても無事では済まない。

 

「貴女達のマスターに会ったら言っておきましょう!貴方の下手な采配で、部下が二人も命を落としたとね!」

 

「……!」

 

 ハスターとビリーの眉がピクリと動く。

 

 ハスターを貫かんとする神獣の雷撃。

 

 ビリーに襲いかかる無数の魔法弾。

 

 

「私達が死ぬですって…?」

 

「お兄ちゃんのせいで…?」

 

 

「「そんな事…ある訳無い!!」」

 

 ビリーは二丁拳銃を向け、一瞬で魔法弾を一掃した。

 一つを残して。

 

 残った魔法弾は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なっ⁉︎」

 

 魔法弾を全て狙撃された事と、最後の一発が突然消滅した事実に、少年は驚きを隠せない。

 

 

×××

 

 

 上空では、ハスターが雷撃を竜巻で受け止めていた。

 しかし、このままでは押し負けてしまう。

 

「ルクス・アルデバラン」

 

 ハスターが何か唱えた瞬間、彼女の魔力が跳ね上がる。

 竜巻のサイズはみるみる大きくなり、ついには雷撃を完全に包み込む。

 ハスターが麒麟に向けた右手を握ると、雷撃は潰され、霧散してしまった。

 

「…どうなってやがる」

 

 麒麟も、目の前の状況が理解できなかったらしい。

 

「お兄ちゃんを馬鹿にされちゃあ…」

「黙ってる訳にはいかないのよね」

 

 先程とは見違えるレベルの魔力をみなぎらせて、二人は叫んだ。

 

「「私達をナメるな!」」




こっそり番外編みたいなものを書いてますが完成時期が未定です。
だいたい半年くらい同じシナリオに頭悩ませてます。
気長に待ってくれれば幸いです。

タイミング半端過ぎて投稿しづらいって理由もあるけど…

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