俺の好きな神プロのキャラが活躍する小説を書きたかっただけ。   作:いでんし

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クリスマスヘルモーズはよ


はよ!


強襲

「……うぷっ…」

 

 青白い顔のハスターが、バケツを片手に横になっている。

 どう見ても二日酔いである。

 ハスターだけではない。

 カゲツと共に酒場に同伴していたエリゴスはヤケ酒でハスター同様体調を崩しており、酔いで暴走するハスターを止めようとしたイタクァも彼女らに巻き込まれ、結果当時の記憶が飛んでいる。

 

「これからしばらくハスターは禁酒だな…」

「うるさいわね…ていうか、どうしてマスター君は平気なの⁉︎私達と同じくらいのお酒を飲んでたじゃない!」

 

 正確にはハスターに無理矢理飲まされたのだが、カゲツは割とピンピンしていた。

 彼は酒に強い体質のようだ。

 見事に三人がダウンした為、まともに活動できるのは昨日の宴会に巻き込まれなかったソルとビリー、そしてカゲツの三人だけである。

 とはいえ、そうなったらそうなったで依頼の難易度を下げればいい話なのでそこまで問題ではないだろう。

 

「とりあえず今日は俺達だけで依頼を受けに行く。三人は休んでろ」

「ソルの回復もかけたし、大丈夫だよね!」

「よーし!行こっ、お兄ちゃん!」

 

「なんでみんな元気なのよー…」

「……飲んでないからだと思う」

 

 文句を垂れるハスターに、エリゴスはツッコミを入れた。

 

 

×××

 

 

「…依頼が無い?」

「はい。昨日の魔物討伐の報告を受けてから、街の衛兵総出でテスタメントの捜索にあたることになりまして」

 

 昨日依頼を受けた同じギルドにて、カゲツと受付嬢が話す。

 昨日ギルドにはテスタメントの事を連絡したが、どうやら彼等を危険視したらしい。

 ちなみに、ギルドには「テスタメントという組織が魔物を意図的に発生させているらしい」とだけ説明し、神姫については一切話していない。

 どうせ理解はされないだろうし、近くにテスタメントがいると考えると迂闊に話しかけにくいからだ。

 

「もともとこの辺りは治安が良く、警備もしっかりとしてるので、ギルドにまでこのような依頼が来るのは珍しいんです」

「へぇ…」

 

 とにかく、依頼が無いのなら何もする事がない。

 今日は一日暇になりそうだ。

 

「という訳だ。今日はこれといった依頼もない。何をする?」

「「お祭りいきたーい!」」

「えっ」

 

 前言撤回。

 今日一日、忙しくなりそうだ。

 

 

×××

 

 

 数時間後。

 中央広場のベンチに、疲れた顔のカゲツがいた。

 正直なところ、神姫や幻獣、テスタメントのことで頭がいっぱいになっており、とても祭りの事を考える余裕などなかった。

 そもそも祭りが今日まで開催されているとは思ってもいなかったのだ。

 言い訳はここまでにしておくとしよう。

 二人の子供に付き合わされ、無尽蔵の体力に振り回されたカゲツは、疲弊した様子でベンチに座り込んでいた。

 ソルとビリーは、カゲツの元を離れて別行動している。

 彼女らは神姫と英霊とはいえ精神的にはまだ子供だ。目を離すのは不安だったが、カゲツの体力が持たなかった。

 …改めて考えると、神姫は人間とは色々と規格外である。

 戦闘能力においては、間違いなくカゲツが劣っているだろう。

 

(こんな奴が本当にリーダーでいいのか…?)

 

 少し自分が弱気になっていくのを、カゲツは感じた。

 

 

×××

 

 

 その後もカゲツ達は日が暮れるまで街を回った。

 今日が最終日らしく、そのせいもあってかかなり盛り上がっているようだ。

 人の波に巻き込まれ、気を抜けばはぐれてしまいそうだ。

 

「お兄ちゃん、ソルちゃんどこ?」

「え?…本当だ、いなくなってる。人混みに流されたか?」

 

 早速やってしまったようだ。

 正直、どこにいるのかさっぱり見当がつかない。

 

「デバイスで探したりできるか…?…あ、できた」

「ホント?お兄ちゃんすごーい!」

 

 画面にはレーダーと、ソルを示す点が映っている。

 デバイスには神姫を探す機能まで付いているらしい。

 カゲツ達からは少しずつ離れてしまっている。

 

「仕方ないな、追うぞ、ビリー」

「うん!」

 

 

×××

 

 

 所変わって、ここはカゲツ達がいる街の城下町。

 この街の王族や貴族層が住むエリアには、衛兵を派遣するための施設がある。

 その一室に、慌てた様子の兵士が入ってきた。

 彼の上官は、その様子を見てどうしたと様子を伺う。

 

「…全滅です」

「何?」

 

 震えた声で兵士が告げる。

 

「テスタメント捜索に結成した部隊が、全滅しました!」

「…⁉︎どういうことだ!我が軍の兵士はどれも訓練を重ねた手練れ!そう簡単に全滅するなど…敵の数は⁉︎」

「一人です」

「…ひとり…?」

「蛇を連れたたった一人の女に、100人の兵士全員がやられました!」

「馬鹿な…そんなはずが…」

「報告!報告ッ!」

 

 話を遮って、別の兵士が駆け込んでくる。

 

「どうした!こっちは緊急事態なんだ!報告なら後で…」

「こちらも緊急事態です!東門から多数の魔物が現れました!」

「魔物⁉︎隣国が戦争でも仕掛けてきたのか⁉︎」

「いえ、どうやら野生の魔物が何者かによって操られているようです!術者はまだ確認できません!」

「クソッ…どうなってる…⁉︎」

 

 上官は頭を抱えた。

 

 

×××

 

 

 東門周辺。

 突然現れた魔物達。

 オークや昨日カゲツ達が戦った犬女(ガルム)など、多数の魔物が突然現れた。

 とても数が多く、兵士達だけではとても相手仕切れない。

 幸い、まだ魔物達から城門までは距離がある。

 城門を閉じてしまえば、魔物は進入できないだろう。

 兵士が制御室の仕掛けを操作し、城門を閉じようとする。

 

「急げ!城門を閉じろ!」

「おっと、させねぇよ!」

「⁉︎何者だ!」

 

 いつのまにか、制御室に紫のローブをまとった男達が進入していた。

 テスタメントのメンバーである。

 テスタメントは兵士の胸にレイピアを深々と突き刺し殺害、城門の操作を妨げる。

 

「邪魔者は消えた!一気に突撃、神姫を回収しろ!」

 

 通信機の様な機械を取り出し、テスタメントが指示を送る。

 瞬間、牛歩移動だった魔物達が街に向けて一斉に走り出した。

 こうなっては、兵士だけで止めることは叶わない。

 ついに、魔物は街へ侵入してしまった。

 人々はパニックに陥り、逃げ惑う。

 とある幼い少女は恐怖で足がすくみ、転んでしまった。

 母親らしき女性が呼びかけるが、彼女にはもう聞こえていない。

 少女の前にオークが歩を進め、手に持ったメイスを振り上げる。

 そして、無慈悲に振り下ろした。

 少女は目を瞑る。

 

 ガキィン!

 

 耳をつんざく様な金属音が響く。

 

「おい、大丈夫か⁉︎」

 

 男の声。

 目を開けると、青年…カゲツが剣一本でオークのメイスを受け止めていた。

 一瞬で割り込まれ、驚くオーク。

 直後、銃声が一発響き、オークは脳天から鮮血を撒き散らして倒れた。

 ビリーの見事なヘッドショットである。

 

「早く逃げろ、ここは危険だ!」

 

 カゲツに促され、ようやく少女は逃げだす。

 それを確認したカゲツは、視線を城門へ向ける。

 

 逃げ惑う住人。

 暴れる魔物達。

 それらを指揮している様に見える紫ローブの集団。

 

「まさかとは思ったが、やはりテスタメントか」

「!お兄ちゃん、あれ!」

 

 ビリーが指差す方向には城門がある。

 外には幌馬車があり、白いドレスを着たオレンジ髪の少女が見える。

 

「ソル!」

 

 どうやら、ソルはテスタメントに捕まっていたらしい。

 後ろ手を縛られているのか、まともに動けないようだ。

 あの様子では足枷も付いているだろう。

 カゲツ達に気づいたのか、幌馬車は出発してしまった。

 

「クソッ、待て!」

「お兄ちゃん!魔物が!」

 

 カゲツが追いかけようとするが、魔物達がその進路を塞ぐ。

 さらに、彼の頭上から犬女が飛び出し、襲いかかってきた。

 

 瞬間、犬女に闇の光線が直撃した。

 

 何が起こったのか分からないまま、犬女は情けない声を上げ、蒸発する。

 

「……マスター、無事?」

 

 エリゴスが、そこにいた。

 ハスターとイタクァも一緒だ。

 

「エリゴス!調子は良いのか⁉︎」

「大丈夫です。丸一日寝て、エリゴスもハスター様も回復しました」

「私達が休んでる間、ずいぶん大変なことになってたみたいね」

「あぁ。現にテスタメントにソルをさらわれた。…俺のミスだ」

 

 落ち込む様子を見せるカゲツ。

 エリゴスは、そんなカゲツを見かね、彼の肩を掴んで言った。

 

「落ち込むのは、後。今は、この状況をどうするか、考える。……そうだよね、マスター?」

 

 カゲツの目をじっと見つめるエリゴス。

 

「…そうだな、ウジウジしてても仕方がない」

 

 カゲツは顔を上げる。

 そこには暗い表情は見られなかった。

 そして、仲間に指示を出していく。

 

「ハスター、ソルは幌馬車に乗せられた。まだそこまで遠くには行ってないだろうから、ビリーと一緒に追いかけてくれ」

「わかったわ」

「任せてー!」

「エリゴスとイタクァはここに残れ。魔物を相手しろ!」

「了解」

「了解です!」

「ビリーちゃん、背負うわ。早く!」

「うん!」

 

 ビリーを背負ったハスターは、風魔法を展開し、空に飛び上がる。

 なるほど、それなら魔物に邪魔されることもない。

 しかし、テスタメントはそれを見逃さない。

 

「逃がすか!撃ち落としてやる!」

「させるか!」

 

 カゲツが剣を突き出し、横から妨害する。

 

「テメェ、やりやがったな!」

 

 十数人の紫ローブ男が集結。

 カゲツを取り囲んだ。

 

「マスター!」

「気にするな、エリゴス!お前は魔物に集中しろ!」

 

 囲まれても、カゲツは慌てた様子を見せない。

 余裕たっぷりの表情でカゲツは言った。

 

「お前ら全員、俺が片付けてやるよ。かかってこい!」




都合よく来てくれるエリゴスちゃん可愛い(は

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