俺の好きな神プロのキャラが活躍する小説を書きたかっただけ。 作:いでんし
需要があるなら作るかもしれないけど。
では、どうぞ。
神姫、解放
…魔法科学文明。
かつてとある世界で繁栄していたとされる文明。
だが、現在、その事を知る者はいないとされている。
その理由は…
×××
「ゼェ…ゼェ…よかった…何とか町に戻ってこれたぞ…」
とある小さな町に、一人の青年が入ってきた。
茶色い瞳に茶色い髪と、いたって普通の青年である。
しかし、その格好は普通ではない。厚手の上着と頑丈そうなブーツ、そして立派なマントを身につけており、腰には小さなポーチと折れた剣(⁉︎)を携えている。
服があちこち薄汚れているのを見るに、どうやら冒険者らしい。
「まさか…魔物と戦って剣が折れるなんて…」
どうやら、彼は魔物退治の帰りらしい。
いつ頃からかは不明なのだが、この世界には普通の人間では太刀打ちできないレベルの魔物が出現する。
だが、中にはそんな魔物達に挑む物好きもいて、魔物専門の研究家になった人物もいる。
彼も、魔物研究家になる気は無いようだが、その物好きの一人のようだ。
青年はひときわ目立つ大きな建物の中に入っていった。
入り口の看板には「冒険者協会」と書かれている。
受付の女性に声をかけると、女性はとても驚いていた。
「…まさか、本当にあのゴーレムを倒したのですか?」
「もちろんさ。ほら、この腕は間違いなくあのゴーレムのものだろ?」
青年は羽織っているマントの中から巨大な腕を取り出した。
見た所、明らかに自然にできたものではない。どうやら、この魔物が今回の討伐対象であるらしい。
「協会騎士数人が一斉にかかっても倒せなかったんですよ!?本当に一人で…」
「俺もタダじゃ済まなかったよ。あちこちに擦り傷負ったし、剣も折れちまった」
「…と、とりあえず、今回の依頼は完了です。えーっと、お名前は…」
「カゲツだ」
カゲツ。それが青年の名前のようだ。
「カゲツさんですね。…どうぞ、報酬の150000ジェムです」
「ありがとう。…これでしばらくは資金に困らないな」
冒険者は、冒険者協会に所属して、そこに集められる依頼をこなし、その報酬として資金を得る。
冒険者だからといって、流石に無料で泊めてくれる宿屋などありはしない。
何事も結局は金なのである。
「宿代の心配は無くなったけど、問題は武器だな。この町の武器屋は…あそこか」
冒険者協会を後にしたカゲツは、真っ先に武器屋へ向かった。
×××
「はぁ!?剣がもう無い!?」
「申し訳ございません。先程、売り切れてしまいまして…」
初老の武器屋の店主が、ひたすら頭を下げている。
「他に武器屋は無いんですか?」
「この町の武器屋はここだけですねぇ」
「マジか…次の入荷予定とかは分かります?」
「早くても2日はかかるかと思われます」
「困ったな…まあ、2日くらいなら金も持つし、後日また…ん?」
青年の目は、店の奥にある槍に向けられた。
…いや、槍にしては柄が短すぎる。装飾品も多く、とても武器として使えるとは思えない。
だが、なんと言えば良いのだろうか、謎の魅力を感じる。
手入れも行き届いており、ピカピカに輝いている。
「…あの奥にある槍?は…なんですか?」
「ああ、アレですか。私が店主になる前からあります」
「え!?そんな前からあるんですか?」
「ええ…」
何を思ったのか、店主は少し考えた後、青年に問いかけた。
「良ければあの槍、持って行きませんか?」
「え!?良いんですか、結構昔からあるんでしょう?」
「私ももう歳でしてね、この店をもうじき閉める予定でして…」
「え?でもこの町の武器屋は…」
「新しい武器屋がもうすぐこの町にやってくるそうなんですよ」
「おお!じゃあ早速その店で新しい剣を…」
「一週間後の話ですけどね」
「ダメじゃん!」
「要するに、剣の代わりに、この槍を持っていってはどうか、という話です。お代はいりません、どうぞ持っていってください」
「え!?そんな長く置いてあった物をタダで!?大丈夫ですか!?」
カゲツはさっきから驚いてばかりだ。
店主は続けた。
「問題ありませんよ。この槍はきっとあなたに良い結果を残す。長年武器屋の店主をやってきたからわかる勘みたいなものです。あなたのような人に使われれば、この槍も本望でしょう」
謎の説得力を感じる。
そこまで言われると、青年も断れなかった。
「じゃあ…その槍をください」
「まいどあり。大事にしてやってください」
店主から槍を渡される。
そこそこ重量があり、ますます武器として扱うのは難しそうだ。
だが、どう表せば良いのかわからなかったが、謎の安心感を感じた。
×××
「さて…どうしたものか」
武器屋の店主にうまいこと言われて貰った武器ではあるが、あくまでもカゲツが得意とする武器は剣なのだ。
槍なんて簡単に使える気がしない。
とは言え、今更武器屋に返しに行くのも気がひける。
「もう暗くなってきたし、飯食って寝るか…」
カゲツには魔物退治の疲れが溜まっているらしい。
とっとと宿屋に戻っていった。
余程疲れていたのか、自分の後ろから誰かが見てたことすら気付かなかった。
×××
「…………………ん…………?」
真夜中のことだ。
「!?なんだ………これ……」
体が重い。
体の上に何かがいるらしい。
確か俺は、宿屋に戻った後にすぐに寝たはずだ。
一体何が‥
「あ…………やっと起きた…………」
「!?」
「おはよう………マスター……♡」
目を開けると、見知らぬ少女が四つん這いでカゲツにのしかかっていた。
少し紫のかかった銀髪にルビーの様な赤い瞳、そして紫色が中心の機械的な鎧の様な物を着ている。
しかし、手足がしっかり補強されているのに反して、発育の良い胸元や腹部・太ももを、まるでビキニの様に露出させた、大胆な格好をしていた。
腰からは配線の様な物が伸びており、頭には機械的な装飾品を着けていた。
顔立ちは良く整っており、美少女と言って差し支えないだろう。
「なんだこいつ…おい!降りろ!」
カゲツは少女を無理やり除けようとする。
しかし、それは叶わない。
体の自由を封じられる魔法を使われたとか、そんなものではない。
純粋に筋力で負けている。
この特別筋肉がある様には見えない少女に、数多くの魔物を相手し、勝利してきたカゲツが単純な力で勝てない。
「お前は…一体何者なんだ…?」
青年は問いかける。
「私はエリゴス……神姫だよ……」
「神姫…?」
聞いた事のない単語だ。
「私は王の寵愛をもたらす悪魔。未来を予見する神姫、エリゴスよ……」
「悪魔…?未来…?」
訳が分からない。カゲツは混乱が止まらなかった。
「よく分からんが…お前は…俺を殺しに来たのか?」
悪魔と聞いてカゲツが思い浮かべたのは、人間の魂を取って食らうような、邪悪な存在。今目の前にいるこの少女…エリゴスも、その類だと思ったのだ。
だが、エリゴスは首を横に振った。
「違う。私はただ、マスターに愛されたいだけ………」
予想以上にぶっ飛んだ返答が飛んで来て少々困惑するが、どうやら彼女にカゲツへの敵意は無いらしい。
「なら…一旦俺から降りてくれないか?これじゃ落ち着いて話すことができない」
エリゴスは、渋々とカゲツの上から降りた。
カゲツは一瞬不意打ちでこっちが逆にとっちめてやろうかとも思ったが、このエリゴスという少女には悪気は無いようだし、そもそも純粋に自分の力でそんな事ができる気がしなかったので、諦めた。
見た目は普通の少女…いや、服装は全然普通ではないのだが…に襲いかかる事なんてできないという、カゲツの良心が働いた事も付け加えておく。
「それで…神姫、だっけか。お前は自分をそう言ったな。神姫とは一体なんなんだ?」
身体が自由になったカゲツは、エリゴスに問いかけた。
「神姫は、神や悪魔の力を与えられた存在。かつて、ラグナロクっていう災厄を止めた存在……」
「ラグナロク…?」
「千年以上前に発達した魔法科学文明を崩壊させた災厄……。本当は世界を滅ぼすはずだった災厄を、文明の崩壊程度に食い止めたのが私たち神姫よ……」
あまりに現実味のない話である。カゲツは話半分に聞いていた。
「へぇ…あんたの先祖が止めたのか?」
本当だとしたら、先程もエリゴスが言った通り、千年以上前の話になる。
なのだが、
「違う。私がラグナロクを止めた……みたい」
「へぇ………はぁ!?お前が!?」
「ラグナロクを止めた後、私たちは長い眠りについた。その間に記憶が抜けちゃったみたい……」
「なんだそりゃ…」
そうなると、大半の時間を眠って過ごしてるとはいえ、エリゴスは見た目に反してかなりの長寿ということになる。
まぁ、悪魔の類ならそんなことはザラなのかもしれないが。
「じゃあ、俺はどうやってその神姫様を解放したんだ?」
「神姫の大半は、何かしらの武器に封印される形で眠りについた……。私も一緒。あの槍に封印されたの」
エリゴスが指差す先には、昼間に武器屋で貰った槍があった。
「俺が正式な持ち主になったから、それに応じてあんたも解放された…ってことで良いんだな?」
「そうだよ……」
「なら、最後の質問だ。エリゴス、あんたは強いのか?」
「……私の力は、マスターを守るための力。マスターの敵は、絶対に倒す」
なんか質問の回答が噛み合ってない気がしなくもないが、やはり強いらしい。
「…そうか。なら一つ頼みがある。聞いてくれるか?」
「頼み?」
「俺は今、魔物を討伐しながら金を稼ぎつつ生活している。その魔物討伐の手伝いをしてくれないか?」
多数の魔物を相手にしてきたカゲツだが、エリゴスを振りほどく事は出来なかった。もしかしたら、魔物相手にも問題無く戦えるかもしれない、そう思ったのだ。
「もちろん、ついていく。私の力は、マスターの為にあるのだから」
「ありがとう!最近の魔物は手強いし、一人で行くのは少しキツかったしな」
多少上手くいきすぎな気もするが、協力者が増えてくれるのはありがたい。
「ところで…まだ外は暗いが、今は何時だ…?」
カゲツは枕元に置いてあった懐中時計を確かめる。
「まだ1時じゃないか…もう少し寝るか…」
カゲツはベッドに倒れこんだ。
「……なぁ、なんであんたは俺にくっついて寝てるんだ?」
「………私も一緒に寝る。マスターと一緒がいい」
「何言ってるんだ⁉︎暑い!離れてくれ!頼むから離れてくれぇぇ!」
エリゴスはカゲツから離れない。
柔肌が当たって、カゲツは変に意識してしまう。
結局その日は、まともに寝る事は出来なかった。
ガチャでエリゴスちゃんを当てた時に一目惚れした。
だからエリゴスちゃんは多分この小説で一番出番があると思う。
そして一番戦闘で過労すると思う。
感想等お待ちしてますm(_ _)m