「マスター、」
「その、マスター、とは何ですか?」
ふむ、次は私のことを語らねばなるまい。
「できれば、他の呼び名で……」
「しかし、君の名は…」
「いいのです。これが私の名前ですから」
evil、悪を意味する名。だが、この名は彼女には似合わない。ならば、
「live」
「?」
「どうだろう、君の新しい名前に、」
「ッ、」
「君にevilは似合わない」
「っぁ、」
「普通の暮らしをしてほしい、そんな願いを込めたのだが、」
「っ、うぅぅ」
少女は肩を震わせ、今にも泣き出してしまいそうだ。
「い、いや、嫌なら別に構わないのだが、センスがなかっただろうか?」
「そんなことありません!!!!
本当に……ありがとう、ござい、ます」
そう言って、彼女は涙を流しながら、本当に幸せそうに笑った・・・・。
「名前をつけるなんて、お父さんみたいですね。」
「ぶっ!?!?」
飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。
「ゴホッ、ゴホッ、な、何をいって、」
彼女は私の言葉など無視して
「お父さん、って読んでもいいですか?」
そう言って、いたずらっぽく笑った。
「それで、お父さん、お父さんはどこから来たの?」
「はぁ、なんでさ……」
「ねぇ、お父さんってば、聞いてる?」
「なぁ、本当にそう呼ぶのか?」
「うん!」
許可した覚えはないのだが、ライブは私のことを「お父さん」と読んでいる。そう呼ばれると、なにやらむずむずするから止めてほしいのだが……そんな私の心情を知ってか知らずか、やたらと「お父さん」呼びを連呼するライブ。もう好きにしてくれ。
「私がどこから来たかか、ふむ、どう説明したものか。」
この子はそれなりに地獄を見てきてやたら大人びているとはいえ、実際は8歳の女の子だ。異世界やら、平行世界やら、英霊、聖杯戦争等と説明しても難しいだろう。
「私は、………?どうした?ライブ、、ライブ!」
私はマスターが顔を青くして小さく震えているのを見て声をかけるが反応がない。
「ライブ!!」
「おとう、さん?」
再び声を張り上げると、ライブは震えた声で応えた。
「どうしたんだ、大丈夫か!?」
「あいつが!あいつが……戻ってくる。」
彼女に宿るのはウサギの力。力を発揮していなくとも、かなり遠くの音が聞こえるということだった。ということは、何かを聞いたのか?
先程の話と今のライブの「戻ってくる」という言葉から考えられるのは……
ドオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!
すさまじい音が鳴り響いた。