赤い瞳と赤い弓兵   作:夢泉

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「はぁ、、、、なんでさ。」
 弓兵は本日何度目かわからないため息をつき、お決まりの言葉を呟いた。

「シロウ!おかわりです!」
「贋作者!我にもだ!」
「おいおい、まだ食うのかよ。」
「すさまじいですね…………。」

 今私の目の前には、かつて聖杯戦争で戦ったセイバー、青タイツ、金ぴか、ライダーがいて、朝食を食べている。どうしてこうなったんだっけ?思い出してよく考えてみよう。

 
・・・・・・・・・・・


「できた!」
 私の義理の娘ライブが元気な声で叫んだ。
「手際がよくなったな。見た目も美味しそうだ。」
 私は今、ライブと台所で朝食を作っている。しばらく前ににライブから料理を教えてほしいといわれてから休みの日はこうして一緒に料理をしている。ライブは最近、かなり腕をあげてきた。
「ありがとう!」
「さて、採点といこうか。」
 


「「いただきます!」」













「!」
「……どう?」
「…………美味い。」
 皮肉の一つでも言おうと思っていたのだがな…………
「やったぁ!」
「………100点満点とはいかないが、合格点だ。」
「ほんと!?」
「あぁ。だがまぁ、まだ厨房にはあがらせないぞ?」
「わかってる。100点とったらだよね。私頑張るよ!」
「ふっ。せいぜい頑張るんだな。」
 私はそれだけ言って味噌汁をすする。…………やはり、美味いな。









「今日は学校無いし、お父さんの店も休みだよね?久しぶりにどこかいかない?」
 ライブは不安げにこちらを見てくる。うぐ、涙目と上目使い。どこでこんな技を覚えたのだ………。この子がお願いをするなんてな。何かあったのだろうか。………ここは、
「そうだな、それもいいな。」
「ほんと!?」
「あぁ。どこにいきたい?」
「そうだなぁ………じゃあ『ピンポーーーン』………誰か来たみたい。」
「………そうだな。出てこよう。」









「全く、こんな時間に誰が………」
 扉を開ける。後で私は扉を開けなければ良かったと後悔することも知らずに。



「よぉ、弓兵。あがらせてもらうぞ。」
「おはようございます。シロウ。」
「雑種!我をもてなすことを許す。ありがたく思え!」
「すみませんアーチャー。止められませんでした。」

「……………………。」
 固まること数秒。何が起きた?今目の前にはふんぞり返っている英雄王と挨拶をする騎士王、そして当然のように家に入ってくる青タイツと申し訳なさそうにしているライダーがいる。

「おい、弓兵。案内しろや。」
「シロウ。お腹がすきました。」
「雑種!我直々に来てやったのだ何か申せ!」

「なんでさあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「おぉ、やっぱり坊主だ。」
「シロウ。お腹がすきました。」
「泣き叫ぶほど嬉しいか。よいぞ、贋作者。もっと泣け。貴様の泣き顔は実に愉悦だ。」
 セイバー、君にはその言葉しか無いのか。ギルガメッシュ、それはどういう意味だ。

 ーーーーーー少し状況を整理しよう。朝起きて、ライブを起こして、ライブと朝食を作って、朝食をとりながら今日はライブの学校は無いし、私も定食屋の仕事がなく、久しぶりにどこか行ってみようか等と話していた。平穏な日常となるはずだった。……………何がどうしてこうなった? 













「お父さん。朝から何叫んでるの?お客さん案内しなくていいの?」
 ライブが騒ぎを聞きつけて玄関に来た。

「「「「お父さん!?」」」」

「………あ、あぁ。そ、そうだなライブ。彼らを居間に案内してやってくれ。」

「おい、ちょい待て弓兵。」
「シロウ、どういうことですか?」
「説明しろ。贋作者。」
「………………(やりましたね桜。)」

「何をだ?」

「その子は誰ですか?今シロウのことを、お父さんと言っていたように聞こえましたが。」

「あぁ、ライブは私の娘だ。」

「おはようございます。初めまして。エミヤ ライブです。」

「「「……………。」」」

「シロウ!!私というものがありながら!凜ですか!?桜ですか!?」

「何の話だ!凛と桜がどうしたって?」

「だから、その、あ、あなたが、こ、子作りをした相手です!」

「…………は?お、おい、ちょっと待て!誤解だ!」

「どういうことです!?桜ではないんですか!?」

「凛でも桜でもないとなると一体?……………そういえばこの子の見た目何処かで………」

「なあ、そいつアインツベルンの嬢ちゃんに似てねえか?」

「はっ!まさか!シロウ!貴方イリヤスフィールに手を出したのですか!」

「おいおい、アーチャーそれは無いわ。」

「姉に手を出すとはな、見下げ果てたぞ雑種。」

「いや、なんでさあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」









番外編
一章終了記念番外編~第二次エミヤ戦争①~


 

 

「・・・・・・とまぁ、こんな感じだ。」

 私はこの世界のことを説明し、ライブが自分のことや私との出会い。そしてそれからのことを話した。改めて聞くと私はずいぶん恥ずかしい言動をしている。何度もライブの話を止めようとしたが、英霊たちに睨まれて断念した。……彼らにこれからいじられ続けるだろうな。はぁ、なんでさ。

 

「「「「………………………。」」」」

 

「よく頑張りましたね。………一つだけ聞かせてほしい。ライブ、貴女は今幸せですか?」

 

「うん!」

 

「それなら良い。まだ幼いというのに貴女はなんて気高く強いのでしょう。

 ………シロウ、彼女を悲しませるようなことがあれば許しませんよ。」

 

「ああ。彼女の幸せは私が必ず護ってみせる。」

 もちろんだ。彼女だけの正義の味方になると決めたあの日から、その覚悟は何があろうと変わらない。

 

「気に食わぬ。………余はちょっとガストレアとやらとふざけた人間共を一掃してくる。」

 

「おい待て、ギルガメッシュ。気持ちはわかるが落ち着け、そして乖離剣をしまえ。」

 

「ええい!話さぬか狗!」

 

「おい待て、螺旋剣出すな!洒落にならねえ!」

 

「………?どうしたのですかライブ?」

 ライブが肩を震わせているのを見て声をかけるライダー。

 

「ウゥ、、ヒクッ、、」

 

「どうした嬢ちゃん!おい金ぴか!てめぇが物騒なもん出すから泣いちまったじゃねえか!」

「何だと!?貴様がキャンキャン吠えるからだろう狗が!」

「あぁ?上等だ。てめぇ表出ろや。」

 

「どうしたんだライブ?」

「ウゥ、ヒクッ、わかんない。ウゥ、わかんないけど、グス、心がすごく、、ポカポカして、グス、暖かくて、でも、グス、涙が出てくるの。」

 

「それが普通の幸せの暖かさというものなのかもしれませんね。」

 アーチャーに背をさすられながら、幸せそうに泣くライブにライダーが言った。

 

「グス、うん。そうだね。グス、私、今、すっごく幸せ。すごく、、、あったかい。」

 

 そう答えるライブを今なお語り継がれる古の英雄達は優しげな眼差しで見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さんも英霊なんですか!?」

 

「あぁ。彼女はアーサー王、アルトリア・ペンドラゴン。」

「アルトリア・ペンドラゴンです。」

 

「えっ!あのアーサー王なんですか!?女性だったんですか!?すごいです!かっこいいです!感激です!」

 

「アルトリアとでも呼んでください。」

 

「そんな馴れ馴れしくなんてとんでもありません!アーサー王様とかではダメですか?」

 

「そういう風に呼ばれるのは距離があって嫌です。私と貴女は対等です。是非、アルトリアと呼んでください。私も貴女をライブと呼びます。」

 

「でも………」

 

「何なら、お母さんと呼んでもいいですよ?」

 

「ブフッッッ!な、何を言うんだセイバー!」

 

「セイバー、抜け駆けとは卑怯だぞ。」

 

「おうセイバー、第一次の続きをするか?」

 

「第一次?……何の話だ?」

 

「お前には関係ねぇ。今は、な。そんなことより、俺はクー・フーリンだ。よろしくな!クーとでも呼んでくれ。」

 

「あのクー・フーリンなんですか!?すごいです!よろしくお願いします、クーさん!」

 

「我は英雄王ギルガメッシュ!お主は雑種の中でも見ごたえがある。よって我をギルと呼ばせてやる!ありがたく思え!」

 

「こいつはこういうやつだ。悪気はねぇんだ。気を悪くしないでやってくれ。」

 

「ギルさんはあの英雄王なんですね!かっこいいです!よろしくお願いします!」

 

「私はメドゥーサです。以後お見知りおきを。ライダーとでもお呼びください。」

 

「わかりました。よろしくお願いします、ライダーさん。」

 

 紹介が一通り終わった。皆、自分から真名を言うとはな。どうやら皆、ライブのことを気に入ってくれたらしい。

 

 

 

 

 

 

「それで君たちはどうやってこの世界に?」

 これだけがわからない。聖杯戦争が始まるとでも言うのか?

 

「座に戻ってからあったことは覚えてるだろ?」

 何故座の話になる?戻ってから、とは恐らくあの聖杯戦争からだろう。その後のことなら嫌というほど覚えている。

 

「あぁ。」

 

「なぜか俺たちにはあの4日間の記憶が残っていた。そして、その後ギルガメッシュがアラヤやガイアを脅して座の行き来ができるようにした。」

 

「あれはギルガメッシュの仕業だったのか!?常に誰か訪ねてきて大変だったんだぞ!」

 第五次聖杯戦争メンバーを筆頭になぜか第四次の英霊達や、その他の英霊達も来た。常に誰かいて正直疲れていた。まぁ、退屈ではなかったが………。

 

「フハハハハハ!良かったではないか!我に感謝せよ!」

 

「話聞いてたか!?大変だったと言ってるだろう!」

 

 エミヤが知らないが、その後第一次エミヤ戦争があり、エミヤの所有権をめぐって英霊達は争っていた。しかし、その最中に景品のエミヤがいなくなり、一時休戦。守護者の仕事かと思われていたが、その後アラヤがエミヤをどこへやったと訪ねてきて捜索が開始されたのだ。

 

「まぁ、急にいなくなった守護者を見つけ出してくれってアラヤに頼まれてな。」

 

「だがどうやってここへ?」

 

「キャスターだ。」

 

「あぁ………。」

 なるほど、なんとなくわかった。キャスターのほくそ笑む顔が目に浮かぶ。

 

「神代の魔女ってのはすげえな。お前の居場所を見つけてこの世界まで俺らを飛ばしたんだ。」

 

「何故君たちが?」

 

「適当だとよ。」

 本当は4人しか送れないとわかり、第一次エミヤ戦争が再開され、その勝者3人とストッパーの常識人ならぬ常識英霊のメドゥーサがきたのだ。

 

「なるほどな。さて、君たちはこれから『ぐうぅぅぅ!』どうする。」

 誰かの腹が盛大に鳴る。誰かは、………。聞くまでもあるまい。

 

「シロウ、朝食を。お腹がすきました。」

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

 こんなことがあって冒頭に至る。はぁ、なんでさ。

 

「すまないライブ。今日はどこにも行けそうにない。」

 

「………そっか………。」

 

「本当にすまない。」

 

「いいよ!気にしないで!私もすごく楽しいから!」

 

「アーチャー、どこかに行くつもりだったんですか?」

 

「ライブと久しぶりにどこかに遊びにいこうとしていたんだが、、、。」

 

「いいんですよ!気にしないでください!皆さんと話しているだけでとっても楽しいので!」

 

「「「……………………。」」」

 3体の英霊は無言でうなずきあい、

「嬢ちゃん、みんなで遊びに行かねぇか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わかっているな。」

「ああ。」

「ええ。」

 

「ライブを最も楽しませたものが贋作者をおのがものとできる。」

 

 

 

 

 

   第ニ次エミヤ戦争が勃発した。

 

 

 

 

~続く?~

 

 




 一章終了記念です!エミヤとライブが一緒に暮らしています。
 この続きは、また二章が終わったときにでも投稿します。では、これにて。

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