赤い瞳と赤い弓兵   作:夢泉

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二章四話~騎士王の眠る地~

「あのね、目の前がこう、グワーってなってワワワーってなって…あれが魔術?」

 言動が少々幼い、年相応のものとなっている。余程驚いたのであろう。

「魔術の話は当分するなと言っただろう?」

「なんでなの‼」

 私の答えを聞くとライブは頬を膨らませて拗ねてしまう。

「……すまない。詳しいことは今の私に言うことはできないんだ」

 これは嘘偽りのない真実だ。今の迷いを抱えた私では何も言うことはできない。

「私に才能が無いからなの?」

 ライブは不安そうに私を見てくる。その捨てられた子猫のような目線には弱い……ここは私の柄ではないがこう言うべきか…

「断じてそうでは無い。私を召喚した者が、才能ない者であると思うか?」

「………思わない」

「私にもよくわからないことなんだ。だから、その解決のヒントを探しに行こうと思っている」

「……そうだったんだ。…ごめんなさい」

 素直に頭を下げるライブ。この子のこういうところは素晴らしい美徳だ。

「謝ることはない。君の不安は当然のものだ」

「何処に向かうの?」

「グラストンベリー、アーサー王の眠る地だ」

 

 

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「アーサー王のお墓……?」

「そうだ」

「お父さんはアーサー王に会ったことがあるの?」

「あぁ」

「じゃあお父さんは円卓の騎士、なの……?」

「まさか。私はただのしがない弓兵だよ」

「じゃあお父さんにとってアーサー王は…?」

「彼の王は、私の…そうだな……」

 彼女は私にとってのなんだったのだろう。サーヴァント、ではない。そんな浅い関係ではない。戦友、とするには俺は余りに釣り合わない。師匠ではあった。憧れだった。死した今でも、かつての記憶をほとんど失った今でも、彼女は私が手を伸ばし続ける綺羅星だ。けど、なにより私は、彼女が「俺」に言ってくれたように彼女を……

「私の……」

 ここで私は、瞳を輝かせて私の応えを待っているライブの顔に気付き我に返る。危なく恥ずかしい台詞を口走るところであった。残念だったなライブ。

「秘密だ」

「・・・え?」

 ライブは鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしている。こういうときは理性的になる前に話題を変えてしまうに限る。

「さて、この話はもういいだろう。別に急ぎの旅でもない。別に寄り道をしても構わんのだろう?」

「…いいけど…ねぇどんな関係なの!」

「秘密だと言ったはずだが?」

「納得できない!」

 

 

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 それから何日か旅は続いた。その間、エミヤは魔術以外の、様々な技能をライブに教えていった。

 そして、遂にグラストンベリーが見えてきたのであった。

「墓参りか……一度来たことはあるが……」

 あの時は凜と一緒だった。彼女と共にイギリスに渡り、時計搭を訪れた。あの時、私、いや、「俺」には、全うな魔術師として生きていくという選択肢もあった。だが、その選択を前にして、「(アイツ)」の結末、理想の果てを見て、それでも俺は自分の生き方を変えられなかった。その事を後悔はしていない。確かに私もまた、「(アイツ)」と同じ道を歩んだ。磨耗に磨耗を重ね、結果として生前抱いた多くの思いすら見失った。

 「(アイツ)」と同じように「(まちがい)」を消し去ろうともした。

 だが、今は違う。私は答えを得た。私は、私の理想(正義の味方)が間違ってなどいなかったと理解できた。

 そして……

「お父さん、どうしたの?ボーッとして」

「ふっ…随分と思考に没頭してしまった。どうもこの国はなにかと縁があって敵わない」

「……?」

「昔を懐かしんでいただけさ……」

 

 

 

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「着いたな…グラストンベリー修道院…騎士の王が埋葬されているとされる場所。明らかに以前と違うのは、私が既に死者である、ということだな。…死者が死者の墓参りとは…いや全く可笑しな話だ」

 一体私は何をしたいのだろうな。セイバーは既にいない。しかもこの世界の彼女はおそらく私の知っている彼女ではない。彼女に会いに来たところで声が聞けるわけでもない。ましてや悩みの相談などできるわけがない。だというのになぜ私は……

「お父さん、いってらっしゃい」

「は…?何を言っている?」

「お父さんはアーサー王となにか特別な関係だったんでしょ?私はそこに割ってはいるほど野暮じゃないよ」

「君本当に8才か…?しかし、この辺りはガストレアが少ないとは言え、いないとも言えない。君をおいていく訳には……」

「嫌だ!絶対に行かない!……それに、もしもの時はすぐに駆けつけてくれるでしょ?」

「まぁ…それはそうだが……」

「さあ行った行った!」

 そう言ってライブはグイグイと私を押す。

「わかった!わかった!行く!だがその前に準備をさせてくれ!」

 

 私は出来うる限りの対策をした。

 簡易的な結界を重ねてかけ、ライブを中心に半径200メートルに展開した。一定以上の大きさの生物が来ればわかる。この距離なら、たとえあの聖杯戦争最速の青い狗だとしてもライブに迫る前に私が立ちはだかれる。

 その他にもたっぷりとやったが、その説明は省こう。多すぎて語れない。

 

 

 

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「まずは、久しぶり、とでもいっておくべきかな?セイバー」

 赤い弓兵は皮肉気に笑いながら言う。しかし、急に決まりが悪そうに顔を反らし、落ち着きがない様子になって……

「……久しぶりセイバー」

 と言った。そこにはいつもの皮肉気な笑みも、眉間の皺もなく、落ち着いた、けどちょっぴり恥ずかしげな笑顔があった。

「俺さ、英霊になったよ。やっぱり俺は俺のあり方を変えられなかった」

 

「でも、それでいいと思ってる。俺の理想、正義の味方。それが借り物の偽善であったとしても、それは絶対に間違いじゃないって気づけたから」

 

「今さ、聖杯戦争のサーヴァントも抑止の守護者も関係なく、全く知らない異世界に召喚されてるんだよ。意味わかんねぇよな?

 

「それで今はマスターである少女、ライブの……ち、父親、ということになっている……爺さん…切嗣と同じようになったんだ……」

 

「それでさ、セイバー…ライブは使えば使うほど体が蝕まれる力を持っている。その力は人々に忌み嫌われる物で、彼女はずっと虐げられてきた。今この世界には多くの怪物が溢れ、どこも安心とは言えない。そしてライブは人々からも攻撃されてしまう」

 

「勿論俺が守りきってみせるが…受肉しているとはいえ俺の現界がいつまで続くものなのかもわからない」

 

「彼女に護身の術として魔術を教えようとしたが…彼女は魔術においても、類いまれなる力を持っていた、持ちすぎていた……」

 

「彼女がその身を魔術によって滅ぼしてしまわないか、それがとても不安なんだ……」

 

「……答えなんか返ってくるわけがないよな……ありがとうセイバー、愚痴みたいなの聞いてくれて」

 「彼」は礼を言いつつ立ち上がる。

「じゃあなセイバー。また来れたら来るよ」

 そして別れの言葉を口にして、王の墓から離れていく。しかし、2、3歩進んだところで立ち止まり・・・

「……素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する

――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ………」

 それは英霊召喚の呪文。しかし彼は英霊で、しかもアーチャーだ。キャスターのクラスで現界しているわけではないし、英霊が英霊を召喚するなど、それこそ神代の魔女程のキャスターでなければ無理だ。

 そんなこと彼はわかっているのだが……

「一体私は何を期待しているのだ……」

 そう、彼は僅かに期待していた。彼の王と再び会えることを。しかしそんなことはない。

 彼は見るからにがっかりした、けれどどこか吹っ切れたような様子で、もう一度だけ王の墓へ振り返る。そして、

「俺もセイバーのこと、…!」

 なにかを言おうとした弓兵はとっさに口を閉じ顔をしかめた。

「…!この気配ッ…‼ライブ‼」

 弓兵はとてつもない速さでライブのところに向かった。

 弓兵が先程までいたところに、奇妙な紋様が浮かびはじめていることに、弓兵は気づくことができなかった。

 

 

 

 

 




fgoでマーリン召喚できたよ‼エミヤも貰えたよ‼わーい‼

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