世界最強の怪物が鎮守府に着任しました   作:宮古ヨッシー

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 このたび新しく投稿させていただきます。キャラのセリフや性格がもしかしたら原作と異なるかもしれません。誤字や矛盾などの指摘はどんどんお願いします!

 文も拙く投稿も不定期ですがよろしくお願いします。


出会い編
始まり


それはとある海岸にて。

 夕暮れ時の海岸は既に薄暗く、人っ子一人さえもいない。いたとしてもせいぜいカモメくらいだ。そんな港も船もなく、さざ波の音だけが聞こえるただただ殺風景なこの海岸にて、適当な岩に腰掛けてこの場に居座る一人の男の姿があった。

 

 常人の数倍の体を持ち、立派な白いひげを携えた、筋骨隆々な大男の名はエドワード・ニューゲート。通称「白ひげ」

 

 白ひげのその名を知らぬ者はこの世にいない、この世界において最強と名の轟く伝説の怪物だからだ。若い頃は軍人としてその圧倒的な強さで戦場を暴れまわった白ひげだが、興味がなくなったと言ってまさかの四十代に引退、その後は己の信念に従って自由気ままに生きている。でもその体にはいくつもの傷跡が残っており如何に多くの戦場を駆け抜けてきたかがよく分かる。そして七十を超えた今もその強さは健在なのだとか。

 

「グラララ、静かな海ってのも久しぶりだ。どうもこの頃の海は何かと騒がしいからな」

「おーい、オヤジ。頼まれたことやってきたよい」

「ん? おおそうか、ご苦労だったなマルコ」

 

 突然全身青い炎に包まれた何かが上空から声をかけてきた。特に驚くこともなくご苦労と一言言うと、その何かは白ひげの横へと降り立つ。すると青い炎は徐々に消えていき、一人の男がその姿を現した。マルコと呼ばれたその男は「不死鳥」の異名を持つ実力者であり、そして白ひげの一番の相棒である。

 

 マルコは土産がわりに持ってきた一升瓶を白ひげに渡すと先ほど得た情報で気になっていたことを話し出す。

 

「それよりオヤジ聞いたか? 海軍の連中がまたやったそうだよい」

「ああ、さっき新聞で見た。「艦娘」の件だろ、どうやら軍事費を倍にするそうじゃねぇか。こりゃセンゴクの奴も本気ってわけだ」

 

 二人が話しているのは艦娘と呼ばれる人の姿をした艦船兵器の事である。だが兵器といっても艦娘達は意思や五感を持ち、見た目もうら若き少女達となんら変わりはない。

 

 そもそもこの世界では深海棲艦という謎の強力な艦船によって海での活動権を奪われている。それに対抗すべく人間達の手によって造られたのが艦娘だ。彼女達こそが今現在深海棲艦と互角に渡り合える唯一の手段とされている。

 

「でも今の人間達が艦娘の力を借りないとロクに太刀打ち出来ないってのは情け無いことだよい」

「まあそう言うなマルコ。今はあの頃みてぇに戦場を腕っぷし一つで戦う者はずいぶん少なくなったからな。残ってんのは俺やセンゴク、そしてお前ぐらいだ」

 

 何かを思い出しながら語る白ひげ。彼の脳裏には軍人だった頃の記憶が蘇っていた。戦友だったセンゴクと共に戦場を暴れまわり、敵の軍隊と何度も殺し合いをしていた頃を。その後は白ひげの除隊とは逆に、センゴクは己の正義の為に軍で戦い続け、今では海軍のトップである元帥の立場に上り詰めていた。

 

「まさか本当に元帥になりやがるとはな、センゴク」

「もしオヤジも軍に残ってればなれたんじゃねぇのかよい?」

「オイオイ冗談はよせマルコ、俺は地位には興味ねえと言ったろ」

 

 そう言いながら一升瓶の酒をがぶ飲みする白ひげ。その飲みっぷりはとても七十を超えているとは思えないほど豪快。そうだったなと一言言うとマルコもまた自分用に買ってきた酒を飲んでいく。

 

 辺りはすっかり夜になっており空には散りばめられたように無数の星が光を放っている。海岸から振り返れば遠くにぼんやりと街明かりが見えるのもまた、夜を明るく彩ってくれていた。

 

「さて、どっかでうまいメシでも食っていくか」

「ああ、賛成だよい」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 馴染みの居酒屋で夕食を終えた二人は街はずれにある空き家で体を休めていた。ここは二人がこの街に行き着いた頃から利用している空き家だ。管理人もだれもおらず、あまり上等ではないが休む程度には充分だった。

 少々古びた椅子にそれぞれ腰掛けた二人、話の議題はやはり深海棲艦についてだ。

 

「本当に深海棲艦ってのは何なんだ。艦娘も不思議だが深海棲艦はそれ以上だよい」

「さあな、だが海へ出るのに不便になったのには違いねぇ。奴らに見つかりゃ船なんざすぐに沈められるからな」

「それが原因で日本が最後の旅路になるとは思ってもいなかったよい」

「まあ俺としちゃ別に構わねぇがな。グラララ、本気で海へ出たきゃ力ずくで行ってやる、全部蹴散らしてな」

 

 深海棲艦による突然の強襲が始まったのは今からおよそ五年前、ちょうど白ひげとマルコが日本に滞在している頃だった。それによってシーレーンは絶たれ、白ひげ達もまた今は出航を中断している。とは言っても実力行使で渡航できなくはないのだが。

 

「そういやマルコ、さっき居酒屋で誰かが言ってた「ブラック鎮守府」ってのは何だ?」

 

 晩飯を食べに寄った居酒屋で耳にしたブラック鎮守府という言葉が引っかかった白ひげ。名前からして何となくは分かるが詳しくは知らない。ならば情報収集を定期的に行なっているマルコなら何か知ってるのではと踏んで聞いてみる。するとマルコから聞かされたのは白ひげ想像を超えるものだった。

 

「ブラック鎮守府は普通じゃない提督が治める鎮守府のことだよい。なんでも、艦娘達を人じゃなく只の兵器として扱い、有無を言わさず無理矢理出撃させたり、食事も満足に与えないそうだ。そして最悪の場合は、轟沈や解体も平気であるそうだよい」

「ったく、とんだハナッたれ小僧がいたもんだ」

「ああ、全くもって解せない奴らだよい」

 

 艦娘の導入によって深海棲艦との戦争は少しずつではあるが優勢になっていき、一部の海域を奪還することにも成功している。だが一方で一部の人間達による艦娘への扱いが酷くなり、提督の横暴によって荒れてきている鎮守府も出てきている。海軍としても士気に関わる為何とか摘発に乗り出しているもののあまり成果は出ていない。

 

 白ひげはマルコに聞いたブラック鎮守府について多少なり苛立ちを覚えていた、というより苛立ちを通り越して呆れてさえもいる。それは話した本人も同じらしく、その表情は険しくなっているのが見てとれる。

 

「俺には関係ないことだが、なんだか胸くそ悪いな」

「それは俺もだよい。悪かったな、こんな話しして」

「構わねえよ、元は俺から聞いたことだ」

「そういやオヤジ、知ってるか?」

 

 そしてマルコの口から語られたのはまたしても白ひげを驚かせるものだった。だがそれは同時にかつて戦場を暴れまわった最強の怪物を動かすきっかけとなる。

 

「ここ横須賀の鎮守府もまさに、ブラック鎮守府だそうだよい」




 いかがだったでしょうか? これからもこんな感じで投稿していくと思います。本格的な日常編は三〜四話あたりになりそうです。

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