インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~ 作:ロシアよ永遠に
17.9禁にかもしれない、と!
「ババンババンバンバン…ババンババンバンバン…っと。」
今日も1日ご苦労様。
自身の着ていた服とサヨナラし、生まれたままの姿へと変える。
洗濯機にそれらを放り込み、腰に手ぬぐいを巻き付ける事も忘れない。
そう、服は今から洗濯。
そして自身が今から始めるのは…
命の洗濯
そう、
風呂だ。
寒い空気が突き刺す今日この頃にコイツは欠かせない。
いくら暖房を付けども、末端までの暖は中々取れない。
故に
だからこそ
リリンの生み出した文化の極みは必要なのだ。
「おっと、そういえばボディーソープがそろそろ切れかけてたな。ついでに補充しとくか。」
ボディーソープと言えばシャルロットが女の子と解ったときも、切れかけていた風呂用品を届けたのが切っ掛けだったなぁ…。
そんなに長い時間が経っていないはずなのに、何処か懐かしんで思い出し笑いを浮かべてしまう。
ガチャ
「あ……。」
「ふぇ……?」
一夏は思った。
風呂用品を風呂の時間帯に補給するのは金輪際止めようと。
「い…ちか…?」
「ゆう…き?」
目の前で身体を洗っているのは、恋人である木綿季だ。
既に髪は洗い終えたのかしっとりと濡れており、今はボディーソープを泡立てて、その細身の体躯を洗っている最中なのだろう。
細く、しなやかな四肢。
年頃の少女らしくキュッとくびれたウエスト。
いかにも柔らかであると断言できる(意味深)ヒップ。
そして美しく張りのあるバスト。
恋人フィルター的な物もあって美化しているかも知れないが、一夏からすれば完成された芸術がそこにはあった。
「あれ?え…なんで…?」
見る見るうちに顔を赤らめる木綿季に我を取り戻した一夏は、思わず背を向ける。
「ご、ごめん木綿季!は、入ってるって…気付かなかったから…。」
そうか、鍵をかけ忘れていたのか、と自身の失態を悔いる木綿季。
まぁ浴室に電気が着いていることに一夏も気付かなかったのでどっこいどっこいなのだが。
「す、すぐ出て行くから!」
「待って!」
よもや呼び止められるとは思わず、ビクッと静止する一夏。
振り返る事は出来ない。
振り返りたいが、それは理性が許さない。
背中越しにシャワーが流れる音が耳に入り、何を思って呼び止めたのか確かめたくなる。
ややあって
シャワーが止まり。ちゃぷん…という水音の後、木綿季は漸く口を開いた。
「ど、どうぞ…。」
「な、何が?」
「入ってきても、良いよ?」
「What?!」
如何してこうなった。
洗身を終え、浴槽に入りながら一夏は自問する。
ゆったりと、それこそ足を伸ばして入っているのは至上のことだ。風呂に入りに来たのだから、それは普通だろう。
だが…
広げた足の間にすっぽりと収まるように湯に浸かる木綿季が、一夏の入浴をただならぬ物へと変えていた。
「あ、温かいね、一夏。」
「お、おう、そう、だな。」
すこしぎこちないやり取りが浴室に木霊する。
木綿季が『入って、どうぞ』と促し、戸惑いながらもなるべく木綿季を見ないようにしながら一夏は身体を洗った。思えば、木綿季の誘いを断らなかった地点で、理性の抑制が弱まっていたのかも知れない。
いざ身体を洗い終え、出ようとした矢先、次は
「一緒に…入ろ?」
等という爆弾発言が木綿季の口から飛び出してきた。
こうなれば毒を食らわば皿まで。
流石に2人で背を向け合って入るのは狭いと言うことで、比べて体格の大きい一夏が身体を伸ばして入り、その中に木綿季が一夏に背を預けるように入ることとなった。
(ど、どうするんだよこれ…!)
目の前には全裸の木綿季。
ほんのりと漂うボディーソープの香り。
しっとりと濡れた肌。
髪を結い上げているので、露わになっているうなじ。
断言しよう。
今この状況で興奮しない男子高校生がいるだろうか?いや、いない!
肌が触れるか触れないかのこの距離感。
手を伸ばせば、その柔らかな少女の体躯に届く。
心臓がバクバクと波打ち、その血流は下半身へと…
(これ、あかん奴や!)
スーパー理性の本領発揮。
今この場でおっ立ててしまっては、その伸びた先にある柔らかな木綿季のお尻に触れてしまう!
そうなってしまっては、ただでさえヤバい理性が瞬く間に崩壊し、一夏は野獣と化してしまうだろう。
そうなってしまっては、『入浴レ〇プ!野獣と化した可能性の獣』などという見出しで事案になりかねない。
(うぉぉぉぉ!!!静まれ…静まりたまえ!さぞかし名のある名器《誇張》と言うモノが、なぜこの場でおっ立とうというのか!?)
端から見れば必死の形相だっただろう。
襲うまいと、零落白夜を発動させようとする雪片弐型を鞘に納めることに成功した一夏は、ふぅ…と安堵の溜息を漏らす。
イケないけど…イッちゃいけない。
そんなお預けのようなもどかしさを噛み締めながら。
「ね、一夏。」
「お、おぅ?なん…」
何だ、と、そう言いかけた矢先に、木綿季は一夏の手を取ると、自身の脇を通してお腹に回し、まるで抱きかかえるような形へともっていった。
(な、なん…だと……)
「こうやって…ボク、ギュッて…して欲しいな。」
いつになく甘い声が耳を甘噛みするように囁かれる。
手のひらに触れる柔らかな木綿季の腹部が、一夏の理性をガンガンぶち壊しに来る。
「その…ギュッてしたら…色々ヤバいんですけど…。」
「ヤバいって何が?」
故意?
故意なのか?
男の性欲を知らないとでも?
まるで小悪魔かとも思える木綿季のスキンシップは、一夏の脳を麻薬か何かのように麻痺させてくる。
「もしかして…一夏、エッチなこと考えてたりするの?」
「んなっ!?ち、ちがっ…!」
「一夏のエッチ。」
シャルロットと言い木綿季と言い、どうしてこうも人をスケベ扱いしたがるのか。いや、あながち間違いではないのだが…。
「でも一夏、そういうことを無理矢理しないって、ボク信じてるから…だから一緒に入ろって誘ったんだよ。」
「木綿季…。」
「それにさ、恋人同士でお風呂って、ちょっと憧れてたんだよね。」
ゆっくりと背中を一夏に預けてくる木綿季は、一夏の顔を覗き込むように顔を向ける。
「身体だけじゃなくて…心もポカポカするよ。」
ポカポカというよりドキドキしてるんだけど。
「えへへ…一夏ってば、すっごくドキドキしてるでしょ?背中にバクバク伝わってくるよ。」
「こ、こんな状況で…ドキドキしない奴が…いるかよ。」
「うん、そうだね。…ほら。ボクも…。」
ふにょり…と、手のひらに伝わる柔らかな感触。
そしてその後に伝わってくる、早く波打つ確かな振動。
「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆ木綿季さん!?」
「ボクも…ドキドキしてるんだよ…?」
あろうことか、木綿季は一夏の手を自身の左胸へと導いたのだ。
もはや木綿季の鼓動を確かめる余裕などない。
柔らかなその感触、そして手のひらに押しつけられる
「ひゃぅっ!?い、一夏…指…動かしちゃ……ん…っ!」
無意識だった。
その麻薬のように求めて止まないその柔らかな感触を味わおうと、手を軽く握る。手に強くもなく、かと言って張りがないわけでもないその弾力が伝わる。
そして指を動かされる度に耳に響く、木綿季の甘美な嬌声…。
もはや、一夏の理性は1989年の11月10日のベルリンの壁。
胸の感触が重機で、理性というベルリンの壁を破壊せしめんと迫り来る。
歴史を覆す事は出来ない。
故に、理性の崩壊は時間の問題。
「ゴクッ…!」
思わず固唾を飲み込む。
このまま…木綿季を快楽の海に沈めたい。
自身も快楽の海に沈みたい。
一線を越えたい気持ちが、理性の崩壊を推し進めていく。重機の強固なアームが、コンクリート製の壁にヒビを入れ始めた。
「ふぁ…ん…っ……一夏ぁ…んっ…!」
こちらに顔を向ける木綿季の、柔らかな唇を奪う。
木綿季に抵抗はなかった。むしろ、彼女からその舌を絡めてきている。
「んっ…ちゅ……ぷぁ……んん…っ!」
上気したその肌、そして…潤ませる彼女の瞳。
もはや一夏を止められるものは何もない…。
いざ…人類の…否!生命の神秘を解き明かす旅路へ…
「ブクブク……!」
「へ…?」
唇を離したのかと思えば、何かが泡立つ音共に一夏の姿は消えた。
眼下には湯船に沈み、目を回す彼の姿。
その顔は真っ赤に染まり、その原因は風呂場で興奮状態に陥ったことによってのぼせたことであるのは明確だった。
「い、一夏!?一夏ぁぁぁっ!?」
静かな夜の織斑家に、木綿季の悲鳴が響き渡った。
一夏が沈んだのは快楽の海ではなく、風呂の湯とは皮肉であった。
「…全く…一緒に風呂に入ってイチャコラして、挙げ句のぼせるとは…。」
「うぅ…面目次第もない…。」
足を高くして、額にぬれタオルを置いてソファに横たわる一夏の看病をしながら、木綿季は円夏に正座させられて説教を受けていた。
木綿季の悲鳴を聞いて何事かと円夏が駆け付けた所、全裸の木綿季と湯に沈む一夏。状況が飲み込めず、流石の円夏も混乱した。
幸い呼吸停止などはなかったが、やはりのぼせていたのは間違いないらしく、円夏が一夏を引き上げてこうして安静にさせて今に至る。
「…まぁこの馬鹿兄が手を出してこないことにヤキモキするのは解るが、コイツの気持ちも考えてやれ。」
「一夏の…気持ち?」
「手を出さないのは、単にコイツが鈍いわけではない。…コイツなりに考えて手を出さないようにしてるんだよ。」
円夏は続ける。
手を出して、取り返しの付かない事態になる訳にはいかない。
だからせめて、学生の間は清い関係でいることに誓いを立てているのだ、と。
だが木綿季の誘惑はそれに反故させるもので、耐えるのに必死なのだという。
「まぁ…お前がもどかしく思う気持ちもわかる。だがな、コイツなりにお前を大切に思っているからこそ手を出さないことも理解してやれ。」
「…うん。」
「…なら傍に着いていてやれ。私はスポーツドリンクでも買ってくる。」
円夏は上着を羽織り、家を後にする。
残されたのは2人だけ。
千冬はまだ帰ってこない。
「ゴメンね、ボクが変に焦ってて…。」
思えば木綿季は悩んでいた。
一夏が手を出してこないのは、自身の魅力が足りないからだろうかと。
だから誘惑した。
布団に潜り込み、
はては今回の一緒の入浴だ。
だが一夏は手を出さないように堪えていた。
それは木綿季の魅力がないからではない。
木綿季が大切だからこその選択で誓いなのだと。
それをつゆ知らず、寧ろそれを破るような行為をしてしまった自身の不甲斐なさ、そして一夏の優しさに、木綿季は胸を締め付けられる。
「ありがと…ごめんね、一夏。」
これはせめてものお詫びと…
静かに目を閉じている一夏の唇に、キスを落としたのだった。
円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。
-
にいに。
-
お兄ちゃん。
-
兄さん。
-
兄貴。
-
一夏。