インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~   作:ロシアよ永遠に

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シリアスかと思った?残念!ブシドーです(錯乱)


第56話『敢えて言わせて貰おう!この戦いにシリアスを求めるなどナンセンスだ!』

準決勝第二試合開始数分前

 

ようやく結ばれた2人は、仲睦まじく、それこそ周囲どころか見るもの総てに砂糖を吐き出させかねないほどにイチャコラしながら……と言うこともなく。甘酸っぱい、恋人になっての距離の変化に戸惑い、そして照れながら元の客席に戻ってきた。

 

「お、新たなカップルのお帰りだヨ。」

 

声高々に宣う鼠の彼女の一言に、友人達は元より、女に飢えた男プレイヤーが、まるで某敵兵士の如く目を光らせてこちらを睨んでくる。

カップル、と言う単語に、未だ恋人という関係に慣れない2人は、見事に揃いも揃って顔を真っ赤に染めあげた。

 

「あ、アルゴ…!ちょ…カップルって!?」

 

「ン?ここに居るメンツは皆知ってるゾ?…まさか秘密だなんて思ってないよナ?」

 

辺りに居る友人達を見遣れば、微笑ましく見る者やら、嫉妬に孕んだ目を向ける者、どっかのバカップルみたいになるなよと目で訴えて来る者。

あとは…、いざ弟に先を越されて、喜んで良いやら悲しんで良いやら複雑な表情を浮かべる1名くらいか。

 

「えと…何処から見てたの?」

 

「勿論、全部、だヨ?」

 

「「ファッ!?」」

 

聞かれていた。

あの大々的な告白も。

盛大に泣いて抱き着いたことも。

その後キスしたことも…!

 

「「アババババ…!!」」

 

もはや当の2人は恥ずかしさでオーバーヒートしていた。そんな茹で蛸の2人をケタケタ笑いながら、どうやってネタにしようかとアルゴが考える最中、アスナがゆっくりと2人の前に歩み寄る。

 

「おめでとう、2人とも。その…からかう意味じゃなくてね。」

 

「あ……、んっ。ありがと、アスナ。」

 

自身の背を後押ししてくれた親友。彼女のおかげで、ユウキは意を決して一歩踏み出し、イチカの告白を受け入れる覚悟を得ることが出来のだ。言わばユウキにとってアスナは恋のキューピッドなのだ。そんな彼女の祝福に、ユウキは顔を赤らめながらもいつもの笑顔で応える。

 

「ようよう!イチカよぅ!朴念仁の代名詞のお前さんが恋人作るたぁ、ALOが明日サービス終了すんじゃねぇか?」

 

「おいおい、そこまで驚くものか?」

 

「いや、そのお前…SAOの事は知らんが、私の中では、現実で学校が閉鎖するんじゃないかと思うほどの緊急事態だぞ?」

 

「えぇ…千冬姉まで…?」

 

それ程までの大問題に取り上げられるとは露とも思わなかったイチカだが、周囲からしてみれば誇張でも何でも無い。彼の鈍さはその領域に達していた。

そんな彼が好きになったユウキという少女は、いったいどんなアプローチをしたのだろうか。そんな疑問が旧SAOの生き残りは浮かべそうなものである。そしてIS学園に居る彼女らも、だ。

 

「今日はトーナメントの打ち上げも兼ねてお祝いのパーティーもしなきゃなんないわね!2人とも、挨拶考えといてよ?」

 

「そうね。事の顛末を根掘り葉掘り聞かせて貰うから、楽しみにしておくわ。」

 

「思ったんですけど、根掘り葉掘りって言葉の、根掘りは土に埋まってるから解るんですけど、葉掘りって何で葉を掘るんですか?」

 

「そりゃ勿論、細かいとこまで掘るってことから、子細に至るまで聞くって意味合いがあるからよ。」

 

とまぁ当の2人を祝福するやらネタに走るやらしている間に時は過ぎていき、司会による試合開始予告まで騒がしくする一行だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ちわびたぞ少年!この時を!」

 

目の前の仮面の男…ブシドーは、リングに上がるや否や声高々に叫んだ。

仮面を付けているために表情は解りづらいが、興奮して居るであろう事は見て取れる。下手をしたら、鼻息を荒くしている可能性も否ではない。

 

「私は自分が乙女座であったことをこれ程嬉しく思ったことはない。」

 

「いや、乙女座関係なくないか?」

 

「センチメンタリズムな運命であると言わせて貰おう。そして!!」

 

彼は長剣と短剣、それぞれ一本づつを抜き取り、まるで昔の剣豪である宮本武蔵、彼のよく知られる二天一流の構えを取る。人が見れば失笑を買うであろうその構えだが、相対するキリトにそれはない。むしろ彼のその構えが、彼の強さそのものを相対する者に重圧としてのし掛かってくる。なるほど、彼の言っていた二刀での戦いを望むと言うのは、その技量が自信の裏付けとなったからか。

 

「少年、抜きたまえ。そして二刀を使え。」

 

改めて彼が敢えてそう言うからには、こちらも使わざるを得ない。ユナイティウォークスと、エクスキャリバーをその手に、キリトも長年培ってきた二刀流の構えを見せる。

 

「それでこそだ、少年!」

 

「リクエストにお応えしないと、マジでヤバい。アンタ、強いからな。」

 

「何という僥倖!少年にそこまでの賛辞を賜るとは、ここまで勝ち進んできた甲斐があったと言うもの!さすれば!!審判!!!」

 

『は、はいっ!!』

 

「早く試合を始めたまえ!!私は我慢弱く、落ち着きがない男だ!!」

 

もはや試合の進行を彼が握っていると言っても過言ではないようにも感じるが、それでも最後の一線として、勝手に闘わなかっただけまだマシか。

 

『それでは!準決勝二戦目!始め!!』

 

それでも試合のゴングが鳴り響くと同時に、ブシドーは有無を言わさずに、キリトとの間合いを一瞬で詰める。

 

「斬り捨て…御免!!!!」

 

鋭い一閃だった。

やはりキリトの言うように、その踏み込みと剣閃の速さは、ALOのプレイヤー全体を見ても頭1つ抜きん出ており、並大抵の技量ならこの一撃で真っ二つにされるのが関の山だろう。

だが、キリトとて並大抵のそれで収まるものではない。

構えたユナイティウォークスが、迫り来る長剣を受け止める。

ギチギチと刃と刃が噛み合い、鍔競り合いのまま互いを睨み合う。

 

「かつてこれ程までにVRMMOの世界で心躍る果たし合いを行うことが出来ただろうか!?予選で君を見たとき!私とを結ぶ何かを感じたのだ!!」

 

「感じたって…何をだよ!?」

 

身の危険を感じたキリトは、もう片手で持つエクスキャリバーを振るう。しかしブシドーは呆気なく後退し、再び距離を詰める。

 

「無論!」

 

また剣閃が来る!

そう読んで防御に入るキリトの視界からブシドーはかき消えた。

 

(何処だ!?)

 

視線を泳がせて探すキリト。その目に陰りが走る。ブシドーはその身を跳躍させていた。

 

「運命の赤い糸だ!」

 

ダリルとハワード。その二本の刃が同時に振り下ろされる。

が、キリトとてSAOで随一の反応速度を持つプレイヤー。間一髪で彼の凶刃をクロスさせた両手の剣で防ぐことに成功する。ブシドーの陰が視界に入らなければ、やられていたかも知れないことに、内心ヒヤリとしながら。

 

「そう!私とキミとは闘う運命にあったのだ!」

 

「いや、勝ち進んだら否が応でも闘うだろ!?」

 

体重を乗せた圧力を上乗せした剣戟を、足のバネを使って弾き返す。

まさか弾き飛ばされるとは思わなかったブシドーだが、その身を軽やかに翻し、ものの見事に着地する。

が、その着地取りと言わんばかりに距離を詰めたキリトは、ソードスキルの光を纏わせながら振りかぶったユナイティウォークスを横薙ぎに薙ぎ払う。

その一閃にブシドーは何のことはなく長剣で防ぐが、ソードスキルに上乗せされた攻撃力でその刃を跳ね上げられてしまう。

だがキリトの攻撃は一撃では終わらない。間髪入れずに返す刃と言わんばかりに振り抜かれたのは、同色のソードスキルの光を纏ったエクスキャリバー。一撃目は右から左へ、二撃目は左から右へ振り抜く。SAO時代に二刀流ソードスキルとして存在したダブルサーキュラー。そのOSS版である。

ブシドーは咄嗟に弾かれた勢いに身を任せる事で、辛うじて脇腹を掠める程度にダメージを抑えることに成功した。

 

「ちっ…浅いか…!」

 

直撃させられなかったことにキリトは苦虫をかみつぶしたかのような気分になる。

対しブシドーは、軽微ながらダメージを入れられたことに対して、悔しがるどころか、その口許を釣り上げているではないか。

 

「ふっ…ふふふ……!ようやく…ようやく理解した!」

 

「………?」

 

「予選から何処かキミの圧倒的な剣技に私は魅せられてきた!そして先の試合で見せた二刀流!それを見たとき私は理解し、そして確信したのだ!!私はキミの圧倒的な実力に心奪われた!!

 

 

 

 

 

 

この気持ち!!まさしく愛だ!!

 

「「「「「「「「愛!!??」」」」」」」」

 

ブシドーのその宣言に、キリトに加えてコロッセウムに居た観客全員が声を揃えて言葉を返した。

 

「時に少年!!」

 

「は、はいっ!?」

 

先のやりとりから思わぬ緊張が走り、ついつい敬語での返事になってしまった。

 

「好物は何かね!?」

 

「え?あぁ…か、辛いもの、かな?スパイシーなチキンとか、チョリソーとか…。」

 

「そうか、好きな食べ物はチョリソーか!ますます気に入ったよ、少年!!」

 

もはや唐突すぎて目の前の男がいったい何なのか解らなくなってきた。

素なのか?

はたまた相手を混乱させるための戦術か?

 

「細かな詮索は不要だと言わせて貰おう。私はそのような小賢しい戦術は興が乗らん。」

 

まるで読心術でも嗜んでいるのか。心中を看破されたかのような台詞に、キリトの表情は強張る。

 

「少し脱線したな。そろそろ逢瀬の続きと行こうか少年!まだ決着は付いていないのだから。心ゆくまで踊り明かそうではないか、少年。豪快さと繊細さの織りなす武の舞いによってだ、少年。そうだ、キミは私のプリマドンナ!エスコートをさせてもらおう!」

 

「誤解を招きそうな台詞宣ってんじゃねぇぇぇ!!」

 

「むぅ!エクスキャリバーとは!だが武器の性能差が、勝敗を分かつ絶対条件ではないさ…当てにしているぞ!ダリル!ハワード!!」

 

織り成す剣戟は凄まじいのだが、飛び交う言葉はもはや準決勝に相応しいかと言えば、9割方首を傾げかねない。そんな混沌とした戦いに、誰しもが得も知れぬ不安を抱えていたとか何とか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリト君はホモじゃないそうよ絶対あり得ないわ何よあのホモ仮面愛だの赤い糸だのふざけるんじゃないわよキリト君が貴方なんかに靡くものですかえぇ絶対に靡かないわキリト君はノーマルだものSAOで噂になってたイチカ君とのカップリングなんて…あ、でも少し見たいところもないわけじゃなくてでも恋人としてそれは超えちゃいけない一線というかでもでも…」

 

「うわーん!ママが何か怖いですよイチカさ~ん!」

 

「な、何か負のオーラを感じる…。」




ふぅ…(投石防御)

円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。

  • にいに。
  • お兄ちゃん。
  • 兄さん。
  • 兄貴。
  • 一夏。

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