インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~   作:ロシアよ永遠に

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タイトル通り、イチカとユウキのデュエルメインです。
しかし衝撃のラストが…


色々と他のアニメのキャラの台詞を使ってます。
解る人居るだろうか


第4話『激突!絶剣と絶刀!』

カウントダウンが、その瞬間までの時を刻む。

 

既に相手の絶剣の少女は既に自身の剣を抜いており、臨戦態勢である。

デュエルを容認したからには流石にイチカは素手で戦おうなどとは毛頭無い。

彼もストレージを開き、腰に自身の得物をオブジェクト化する。

 

それは雪のように白銀で彩られた鞘。

柄も、そして鍔も…何もかもが白を基調とした色合いで統一されている。

 

まるで…黒の剣士のキリト、それに相反するかのように。

黒系統の色が多いインプにしては、異色とも言えるほどに目に付く。

 

左手を鞘に添え、利き手である右で柄をしっかり握って、その刃を解き放つ。

 

日の光が、その刀身を照らし、鮮烈なまでの輝きを穿つ。

美しく紋を打つその刃は、まさしく宝刀と思しきまでに美麗。

しかしその鋭さと、見事なまでの反りは、素人目から見ても明らかにかなりの業物であることを彷彿させる。

 

「どう?しっかりメンテしておいたわ。」

 

「流石リズだ。これ以上無いくらいにご機嫌に感じるよ。…こいつなら、充分渡り合えそうだ。」

 

「ふふん!復帰祝いとテストの労いの意味も込めて、メンテ料はまけてあげる。…その代わり、思いっきり暴れなさいよ!」

 

「応っ!」

 

リズベットが仕立て上げた長刀『雪華』

それを下段に構える。

腰の高さで左手を添える程度に刀を携え、左脚を半身前に出す。これがイチカが刀を()()に扱う際のもの。

久々に刀を振るうことには変わりないが、目の前の相手に自然と笑みが浮かんでしまう。

絶剣

自身と同じく、『絶』の名を持つ少女。

どんな剣技を、どんな戦法を取ってくる?

身のこなしは?

反応速度は?

未知の相手に、様々な思考を巡らせる。

ただ一つ、解っていること。

 

強い!

 

それは今まで戦った誰よりも。

それが意図せずとも気負いとなり、肩に力が入ってしまう。

 

(ダメだ…力を、力を抜け、俺…!いつも通り…いつも通りにやれば良い…!)

 

気持ちを落ち着けるために、目を閉じ、深呼吸。

一瞬、周囲とイチカとの意識が隔絶され、思考がクリアになる。

何も考えるな

ただ戦い、勝ちに行く

それだけだ

 

カウントの音程が徐々に高くなっていく。

デュエル開始まで10秒を切る。

ここに来て、ようやく目を開いたイチカの視線は、どこまでもユウキを見据えている。

 

その眼光…威圧感がまた、ユウキを奮い立たせていく。

 

3…

 

2…

 

1…

 

『デュエル・スタート』

 

瞬間、

どちらからともなく瞬時に距離を詰めた。

刃と刃が勢いよくぶつかり合い、甲高い金属音がまるで超音波のように発せられ、空気を震わせる。

 

どうやら考えは同じだったようだ。

 

似たもの同士であることを感じ取りながらも、2人は同じタイミングで鍔迫り合いを解いて、互いに距離をとる。

 

同時に先に動いたのはユウキだった。小柄な身体を利用して、低姿勢からの肉迫、腰撓めからの切り上げがイチカを切り裂く。しかし、すんでの所で身体を反らし、マクアフィテルの刃は彼の鼻先を掠める程度に治まった。

しかしイチカとてただやられるつもりもない。振り抜いた彼女の脇腹に、仰け反った勢いを活かしての中段蹴りを叩き込む。別に剣技だけがデュエルの華ではない。己の得物を活かすのも、自身の肉体。それは技量のみならず、体術という搦め手でも当てはまるものだ。

流石にブーツには武器のように攻撃補正もなければ、威力も無いので、ユウキの体力ゲージは極々僅か。それも1、2ドット減少したかどうかという程度。まともに当ててこの程度なので、威力の低さは致し方ない。寧ろ、鼻先を掠めただけで同じくらい体力減少している自身の蹴りの強さを褒めて欲しいくらいだ。

蹴り一つで不意を突かれたのか、ユウキに多少なりともよろけが出ている。ここは畳み掛けられる時に畳み掛けておくべきだ。

 

「せやっ!」

 

横薙ぎに、雪華の刃が振るわれる。何時ものように両手ではない、右手1本での振るい。一撃を狙う為に、蹌踉けるユウキの首元を狙ったものだ。

このまま行けばクリティカル判定でかなりのダメージを与えられる。そうすれば勝ちも見える。そう考えるものの、それが当たるというイメージその物が、イチカには全く湧かなかった。

ユウキは体勢を崩しながらもマクアフィテルの刃で雪華をかちあげ、軌道を逸らして最小限、剣の削りダメージで押さえ込む。

打ち上げられたことにより、辛うじて雪華から手を離さないイチカだが、両手で持つ武器故の、盾としての役割も兼ねたそれが宙ぶらりんとなり、急所たる懐がガラ空きになる。

 

「もらったよ!」

 

勝利と踏んだユウキは、一撃だけの単発だがごっそり体力を奪う、突進系ソードスキル『ヴォーバル・ストライク』を発動する。それも喉元に向けて、だ。

マクアフィテルをライトエフェクトが包み込み、発動まで最早コンマレベル。

その場に居た誰しもが、ユウキの勝ちを確信しただろう。仲間であるメンバーですら、ここからの巻き返しは無理だと踏んでいた。

 

 

…ただ1人…キリトを除いて。

 

 

ジェットエンジンの噴射音にも似たサウンドと共に、ユウキの剣がイチカの喉へと吸い込まれる光景を最後に、2人を中心として大規模な爆発が生じる。

 

 

もうもうと吹き上げられた砂塵が視界を遮り、誰しもが状況を把握できない。しかし、最後に見た光景からして、刀が打ち上げられた状態でのタイミングでのヴォーバル・ストライク。あれは避けようも防ぎようもないので、見ていた誰もがユウキの勝利だろうと予想を立てる。

 

「あちゃ~、イチカでもダメだったか。」

 

「リメンライトになっているだろうし…回復の準備を…」

 

「いや…」

 

腕を組んで、ジッと爆心地を見ていたキリトが、ふと口を開く。

 

「トドメも、勝利の余韻も、まだ早い…!…だろ?イチカ。」

 

「当然…!って言っても間一髪だけど、な…!」

 

ヴォーバル・ストライクのクリティカルを食らったはずのイチカの声に、場はざわめきに包まれる。

砂塵が晴れると、そこにはマクアフィテルの切っ先、それを左手に持った雪華の白銀の鞘、それで食い止めているイチカの姿。

 

「な、なんで…左手で…!?刀は両手持ちだから、装備できないんじゃ…!?」

 

「別に、これが武器ってわけじゃないぞ?今も確かに装備しているのは雪華だけだしな。…ただ一つ、鞘その物も雪華の一部と言うことになる。」

 

つまりシステム上、両手の装備その物は刀1本で塞がってしまっているが、刀そのものを片手で持つかどうかは自由。つまり、刀を片手で扱えるのならば、左手にはセットになっている鞘を持つことその物は可能だ。だが、鞘を盾代わりにする、等という奇策を講じるのは、イチカを除いて他に類を見ない使い方だ。

 

「正直、こんなに早く使うとは思わなかったけどな。…もう少し出し惜しみしたかったけど、絶剣さんが余りに強すぎて使うことを…強いられているんだ!(集中線)」

 

「ふ…ふふふ!良いね良いね!そう来なくっちゃ!ボクも燃えてきたよ!こんなどんでん返しがあるからデュエルって楽しいんだ!」

 

「俺もだ!こんな楽しいデュエル…中々味わえないからな!お互い、思いっきりやろうぜ!」

 

「良いよ!でも勝つのは…ボクだよ!」

 

 

 

 

 

 

何度目だろう。

刃同士がぶつかり合う音を数えるのが面倒くさくなってきた。

いや、数えるのが難しい位までに白熱した戦いが目の前で繰り広げられていた。

キリトやアスナとやり合ったときも盛り上がっていたが、それ以上に息を呑むほどに一進一退の攻防が続いていたのだ。

イチカの剣閃、そして鞘による防御。

ユウキの剣戟、そして速さと反応速度による回避。

避け、防ぎ、薙ぎ、振るい、断つ。

その一撃一撃が、まさしく急所を狙い、勝ちを取りに向かう。

 

「ぜらぁぁぁ!!」

 

「てゃあぁぁぁっ!!」

 

ギィン!!と、聞き慣れた剣と剣のぶつかり合い。

まるで剣舞のように、お互いの動きが重なりあい、相手の身体に届かない。見ているがわからすれば、白熱すると共に、中々付かない決着にもどかしさすら感じるかも知れない。

しかし当の二人と言えば、息が上がり、そしてHPゲージがじわりじわりと削られていこうとも、焦りや疲れの表情は微塵ともない。

むしろ、この戦いその物が長引くこと、それを望むかのように口許をつり上げている。

 

「っへへ…やるじゃねぇか絶剣!こんなに心躍るデュエルは中々味わったことないぜ?」

 

「ボクも、こんなドキドキするのは初めてだ!…もっと!もっとイチカの強さを見せてよ!そうすれば、ボクももっともっと強くなれる気がするんだ!」

 

「俺としちゃ、もっと戦っていきたかったけど…これ以上は、どうなっても知らないからな?」

 

「もちろんだよ!ボクも切り札…使っちゃうからね!」

 

最初の打ち合いの時と同じように、2人揃って後方へ飛び退く。

だが次の一撃はまだ出さない。

互いに整息し、全力で撃ち込む次の一撃に備える。

ユウキはマクアフィテルを目先に構え、イチカは右半身を前に構え、程よく脱力。

ピンと張り詰めた空気が、周囲を支配する。

 

「いくぜ!」「行くぞぉ!!」

 

声高々に互いが迫る。

先に構えを動かしたのはユウキだ。

突き出していた剣を僅かに引き、マクアフィテルにソードスキルのエフェクトを纏わせる。2人の距離が、剣の間合いに入った瞬間、それは突き出された。

だがそれを見越したイチカは、逆手に構えた鞘でいなして、雪華にソードスキルのエフェクトを纏わせる。

一撃を弾いたなら、次を撃ち込まれる前にやる!

いままで単純な剣技だけが渡り合ったが、ここに来て勝負に出た。

風が、空気が、雪華の刃に纏わされる。

刀ソードスキル『辻風』

高速で振るわれた刃が、まるで鎌鼬のように相手を切り裂く、多段ヒットソードスキルだ。射程その物も鎌鼬の発生する分長く、鎌鼬の一撃の威力も低いが、全発ヒットすればかなりのダメージとなる。

しかし、ユウキは一撃目を防いでも未だソードスキルのエフェクトを纏う刃を突き出してくる。

その刃が、あろうことか鎌鼬の刃のエフェクトに突き刺さり、文字通り打ち消していく。

一瞬の、まさしく刹那の間隔で繰り出される鎌鼬の応酬を、脅威の反応速度と、そして剣捌きでキャンセルしていく。

 

(ま、マジか!?こんなの…千冬姉でも…!)

 

そして鎌鼬もシステム上6発の発生が限度となっており、その全てがユウキのソードスキルによってキャンセルされる。これで…七発。

 

「はぁぁぁああ!!!」

 

未だに収まらないユウキのソードスキルは、辻風の硬直で動けないイチカの脇腹に、肩に、腰に撃ち込まれていく。

 

(こ、これが…絶剣の、オリジナルソードスキル…!)

 

「マザーズ…ロザリオッ!!!」

 

最後の一撃はイチカの胸部、そのど真ん中を狙って突き出された。

 

つよい…!

 

自身の2週間のブランクなんて目じゃないくらいに。

 

圧倒的な反応速度に、

 

的確なまでの剣捌き。

 

これが…絶剣の…ユウキ。

 

良い勝負をしたと思ってはいたが、実際に彼女のオリジナルソードスキルを目の当たりにしてみれば、それを生み出すために恐ろしいまでの努力、そして実力を磨いていたことを身を以て知った。

 

…これは、負けるわけだ。

 

妙な満足感と共に、11連撃、その最後の一太刀を受け入れようと目を閉じる。

 

 

 

 

しかし、

 

幾ら待っても、ダメージによる衝撃も生まれなければ、リメンライトと化したときの違和感もない。

 

 

 

 

 

 

「リザイン、する?」

 

無邪気な、それでいておどけるように目の前から聞こえる少女の声に、イチカは目を見開く。

そこには、自身の胸部に刺さるすんでの所で止められた漆黒の片手直剣。そして、こちらを見上げる絶剣の少女だった。

 

「お、おう…。リザイン…」

 

もはやそれ以外の選択肢もなく、イチカはリザインする…。

そして目の前にユウキのリザルト画面が出て来たことで、緊張の糸が切れたイチカは、マザーズ・ロザリオの衝撃で仰け反っていた身体から急に力が抜けて、勢いよく仰向けに倒れ込んでしまう。

 

「わっ!わわっ!?」

 

倒れ込んだ際に、彼にほぼ密着していたユウキは彼の脚に引っ掛かって、後を追うように倒れ込んでいく。

 

ドサリという、妙な転倒音と共に、2人は砂地へと仲良く倒れ臥した。

 

2人分の体重と、その衝撃により巻き上がる砂塵。

 

 

 

 

(あれ?なんか…唇に柔らかい物が…?)

 

倒れた際に目を瞑ってしまったので、恐る恐る目を見開いてみれば、紅い双眼とバッチリ目が合った。

それも超至近距離で、である。

 

(な、なんだよこれ、どんな状況だよ?)

 

混乱するイチカではあったが、目の前の少女の目には涙が溜まり、頬は真っ赤に紅潮し、身体は心なしかぷるぷると震えている。

 

「この…!」

 

唇から、柔らかな感触が離れると共に、ユウキの震える声が聞こえた。

 

あれ…?

 

あるぇ?

 

これは…もしかしなくても…

 

「イチカの…バカァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

今日二度目の張り手は、一発目よりも痛く、そしてそのダメージによって、ごく僅かに残っていたイチカのHPは全損し、哀れにもリメンライトと化してしまったという。

 




激突したのは剣と剣、そして唇と唇!

デデーン!!

イチカ、アウトー!!

円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。

  • にいに。
  • お兄ちゃん。
  • 兄さん。
  • 兄貴。
  • 一夏。

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