インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~   作:ロシアよ永遠に

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ハロウィン\(^o^)/オワタ…でも投稿!
ちょい飛ばし気味です。ご了承を。


番外編『これはTrick or Treatですか?いいえ、大事件です。』

運営にとあるメールが届いた。

苦情のメールが。

それも一通や二通ではない。

数十に至るまでに、それがほぼ同じ内容で、だ。

そのどれしもが、

『明らかにチートプレイヤーがいる。』

とか、

『あいつらが蹂躙した後は、ペンペン草も生えなくて、逆に草生える。ワロスww』

とか、

『あいつらマジキチ。モンスターに同情する。』

 

そんな内容の数々。

これについては運営も頭を抱えた。

当のプレイヤー集団においては、既にチートの類いがないのかを洗っているため、その可能性は皆無だ。

にもかかわらずこんなメールが届くというのは、如何ともし難い。

今日もまた、例のプレイヤーに対しての運営会議かと、誰もが頭を悩ませる案件となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、掃討完了だな。イチカ、そちらは?」

 

「こっちも粗方…っていうか、オウカが7~8割持って行ったけどな。」

 

ユグドラシルシティ周辺の平原で、件の4人はイベントアイテム収集の為の狩りを行っていた。その首尾は順調そのもの…と言うよりも、明らかにおかしい収集速度だ。

接敵必殺という言葉に違いない程に、敵を見つけてはぶった切り、オウカ衣装装備に付いてきていたというマナを消費して弾丸を発射させるという、片手直剣と片手小銃のセット武器『紫電』によって、距離を選ばない戦いをしていた。更に服装の特殊効果が、『走行・飛行速度が増加』というものだ。それにより、平原の地に空に、正しく縦横無尽に駆け回って、そこに蔓延るモンスターを斬っては撃ち、撃っては斬りという、無双の大暴れであった。

 

「…なんだか、私とイチカがオミソみたいだな、今回の狩りは。」

 

そうぼやくのは、金色の鎧と青のマントに包まれたマドカだった。なぜか街から出た途端に青のエプロンドレスから、この鎧姿に変わったのである。察するに、エプロンドレスは街中での限定衣装で、鎧は戦闘衣と言ったところなのだろう。手に持った金木犀の片手直剣を慣れない手つきで振り回しながらも、そこそこに敵を倒していたりする。

イチカはと言うと、得物が普段の物と変わらないカテゴリであるカタナなので、普段通りに戦っていたりする。

そして…

 

「ひゃっほぉう♪」

 

巨大な鎌を振り回して、ユウキが狩りまくっていた宙域の最後の一体。それを物の見事に両断した。その両断されたモンスター、というのもそこそこにHPが多く、所謂大型モンスターだったのだが、鎌に付いた特殊効果『確率で即死効果』というとんでもステータスによって、オウカほどではないにせよ、かなりの高効率で敵を狩り漁っていた。

討伐の比率的に、

オウカ>ユウキ>イチカ≧マドカ

と言った具合である。

 

「しかしまぁ…ユウキはインプの翅も相俟って、小悪魔そのものだな。」

 

敵をバッサバッサ狩りながら、その愉悦で得意げに八重歯を見せながら笑う彼女は、正しく小悪魔…インプそのもの。華麗…とは言わないが、ハロウィンにこれ程似つかわしい仮装は中々お目に掛かれないだろう。

 

「お前もより鬼の仮装らしく、角と虎柄の腰巻きでも着ければどうだ?」

 

「ハハ……そんでスキンカラーを赤や青にするのか?勘弁してくれ。」

 

そこまでやらかしてしまうと、今度元に戻すのに骨が折れる。ヘアカラーはともかく、スキンカラーまで変更しようと思えば、必要なそのアイテムやユルドは決して安くない物になってくる。

 

「ふむ、敵の反応が消えたか……限定の新しいソードスキルも、大分馴染んできたな。」

 

マナ回復アイテムである理力の液薬を飲み干しながら、オウカは紫電の装備説明を開く。

今回の仮装装備、その一部にはとある特殊効果があった。

それは完全オリジナルソードスキル。

装備することにより、装備の形こそ似通っていても、カテゴリとしてはオリジナルの武器に分類される。それによって、その武器ならではの限定ソードスキルを使用できるようになる仕様だ。

例えば相手のソードスキルを封じて、なおかつ速度低下させる範囲ソードスキルの『鳴神』や、自身の攻撃力、速度、クリティカル率を上昇させる『雷神功』、ソードスキル封じとスタン効果のある範囲ソードスキル『電光石火』等、正直かなり強力な物が揃っている。加えてオウカのプレイヤースキルが相乗効果を成して、普通にチートに見える程のスペックとなっていた。

 

「ボクも、最初は重たい…大剣のイメージがあったけど、そこまで重さもなかったし、慣れたら案外使いやすいね。」

 

重さがない、と言いながらも、やはりその武器そのものから滲み出る威圧感がそうは思わせない。

ユウキの扱う大鎌『ネメシスリップ』には、前述の通り確率で即死効果付き。

限定ソードスキルはというと、実際の所3つだけ。

大鎌を投げて敵を斬り裂く遠距離ソードスキル『カラミティスロウ』。回転による斬撃で周囲を斬り裂く範囲ソードスキル『ブラッドサークル』。突撃と同時にすれ違い様に両断する突撃ソードスキル『レ・ラナンデス』。これらのソードスキルには、オウカの装備のような、デバフ…所謂バッドステータスを付与する物はない。だが、これらのソードスキルには確率で即死効果が発生するようになっている。装備効果+ソードスキル効果となっているため、即死確率を更に引き上げていた。

 

「俺は…いつもの武器とあんまり変わんない…な。」

 

「いつもと変わらぬ物と言うのは存外良いものだぞ?下手に普段と違う物を扱えば、少なからず型が崩れるもの。お前はカタナと、それによる抜刀術を直向きに磨いたのなら、それを大切にするといい。」

 

「そりゃまあ…そうだけどな。」

 

たまには違う武器を試してみたかった思いもあるが、オウカの言葉もわかるので煮え切らない言葉を返す。

イチカの持つ武器は、カタナそのものの形をした『ヴァリ丸』だ。普段使っている雪華と同じく白の色味だが、鞘や鍔、柄には所々金の装飾が施され、戦闘で扱うには勿体ないイメージを湧かせる。

ソードスキルは、先述の二人よりも多い八つ。

強力な一撃を穿つ『一の型 螺旋撃』

一定範囲の敵を自動ロックし、次々に切り抜ける『二の型 疾風』

炎上の状態異常を付与する『三の型 業炎撃』

隙が少なく、スタンを見込める『四の型 紅葉切り』

納刀からのカウンター『伍の型 残月』

斬撃を飛ばす『六の型 緋空斬』

切り抜けると同時に、数多の斬撃をたたき込む『七の型 無』

素手の状態で掌底を叩き込む『八の型 無手』

威力やデバフ付与は飛び抜けて高くないが、引き出しが多いのが強みとも言える。

 

「しかし…このあたりは粗方狩り尽くしてしまったな。どうする?」

 

「…ふむ、すまんがそろそろ私は抜けよう。後は3人で楽しむといい。」

 

時間を確認したオウカは、そろそろ頃合いと言わんばかりに端末を操作すると、パーティを離脱する。短い暇を縫ってまで付き合ってくれたオウカ。…いや、その短い暇をゲームに費やしている分、かなりのめり込んできている様だ。

 

「千冬姉、休み時間にゲームもいいけど、ゆっくりするのも忘れないでくれよ?」

 

「なに。体力には自信がある。それに、こうして羽目を外して遊ぶも言うのも、私にとっては十分な息抜きだ。」

 

確かに色々桁外れな彼女は、メンタル面は知らないが、体力面では心配ないかもしれない。だが、何事も油断や慢心は大敵。今度、今回の狩りの礼も兼ねてマッサージでもしてやろうと、イチカは内心誓う。

 

「ではな。また狩りに行こう。」

 

「うん!オウカさんも、お仕事頑張ってね。」

 

「………。」

 

ログアウトの為に街へ戻ろうと転移するオウカ。そんな彼女をブンブンと手をフルに振るユウキ。そして視線だけを向けて腕を組みながら、指先だけを立てて別れを告げるマドカ。そんな二人と弟に見送られながら、オウカは現実世界へと帰還した。

 

「…さて、これからどうする?」

 

「ボクはもう少し狩りをしたいかな…マドカは?」

 

「…そうだな。私は……」

 

瞬間、耳をつんざくような爆音が響いてきた。その余りの大きさに、3人は堪らず耳を塞ぐが、それでも脳を揺らすほどの音量による振動で、立っているのがやっとだ。

 

「ぎ……っ…!な、なんなの……コレェ…!」

 

「ぐ……新手の…魔法かなんかか…!」

 

超音波による不快感で揺らぐ視界。耳の良いケットシーであるポーカーフェイスのマドカも、流石にその顔を歪めて止まない。

余りの音響に周囲の草木が、まるで風に煽られているかのように凪いでいる。

 

10秒…いや、20秒ほどだっただろうか?

 

「よ、ようやく収まったか…2人とも、無事か?」

 

ようやく収まったその音の残響に顔をしかめながら、三人は互いの無事を確認し合う。と言っても、パーティを組んでいる以上、視界の隅にステータスが簡易ながらも表示されており、HPダメージはおろか、デバフの類いも受けていないのは確かだ。…となると、ただの巨大な音のエフェクトか。

 

「しかし…何だってこんな音が?」

 

「音による衝撃波による木の傾きから…あっちか。」

 

どれだけの強風に煽られたのかわからないが、木々の枝や葉が逆立った髪のように一方向に纏められている。その為、音の震源を察するのは容易い。

 

「…見に行ってみる?」

 

「正気か?」

 

「でも気にはなるな。」

 

「む、むぅ…す、少しだけだぞ?」

 

もはや怖い物見たさの類で、3人は翅をひろげて飛翔する。

敵の攻撃か、はたまたプレイヤーの攻撃によるものか。

どちらにせよ、危険な可能性があるにも関わらず、その元凶を確かめなければ気が済まないのは、ゲーマーとしての性なのだろうか。

ある程度の高度まで飛翔したとき、3人はその翅を止めてその目に入る物に唖然とする。

 

目の前に、青々と続いていたはずの平原。

それが無残に抉られた巨大なクレーターに置き換えられていた。

先程の爆音、それによって出来たのがこのクレーターなのだと理解するのに、そう時間はかからなかった。

 

「な…何が…あったんだ?」

 

「何らかの攻撃?…いや、攻撃じゃあ普通はここまで地形変化するまでに、イモータルオブジェクトに当たるはずだ。」

 

攻撃などで多少地面が抉れたりすれども、ここまで巨大なクレーターが出来るなどとは思いにくい。ともすれば、何らかのイベント的な物によるのか…。

 

「ね、ねぇ。あそこ…。」

 

ユウキが何かに気付き、その指が指す先には、数人のプレイヤーが戦う光景。その相手は、以前戦ったヴァルハザクの様な四足歩行タイプの巨大なドラゴン。

だがその体躯は、ヴァルハザクとは違った意味で禍々しかった。

体と前後の脚から突き出たような無数のトゲ。

 

それと同じように身体に寄生しているかのような紫色のクリスタル。

 

更に額に当たる部位や、身体の鱗と思しきところに見開かれた不気味で紫色の瞳。

 

見るだけでおぞましさを与える存在。もはやアレがドラゴンと言っても良いのかすらわからない。

 

ゆっくりと、ある一定の距離に近付いたことにより、その『存在』の名前を認識、表示される。

 

『黒の聖獣』

 

見るからにその強大で巨大な存在によって、先述のクレーターが作られたのは、火を見るよりも明らかだ。

そして、遠巻きに見るに、戦ってるプレイヤーは防戦気味にも見える。

 

「なんか苦戦してそうだし、手伝いに行かない?」

 

「…ん、まぁアレと似たような奴と戦ったこともあるからな。良いかもしれん。」

 

そんなユウキの提案に、マドカも乗り気だ。

しかし、もう1人であるイチカのその顔は、何処か難色を示している。

 

「…なぁ?」

 

「ん?」

 

「アイツ、俺が戦ったらいけないパターンじゃないか?」

 

「何を言っているんだ?そんなわけないだろう?」

 

第六感的な何かで乗り気にならないイチカに、マドカとユウキは顔を見合わせる。

 

「まぁ、乗り気じゃないなら構わんぞ。私とユウキで行くさ。」

 

渋る仲間を無理強いするまでもないのか、イチカを気にするユウキを連れて、マドカは金木犀の剣を構えて黒の聖獣に向かい、飛翔していく。遠巻きに見ても、黒の聖獣はその巨体さながらの攻撃範囲と怪力で、有象無象全てを須く薙ぎ払い、蹂躙している。人一人増えたところでどうなるものでもないだろうが、いないよりはマシと言ったところだ。

 

「あ~もう!やってやる!やってやるよ!」

 

燻っているのは性に合わない。だったら行動に移すまでだ。

そう決心したイチカは高速飛行に移行、ヴァリ丸を抜刀して黒の聖獣に斬り掛かる。

 

「イチカじゃねぇか!なんだ、お前も仮装クエスト受けてたのか?」

 

そんな彼に親しげに声をかけるのは、黒い肌に顎髭、筋骨隆々とした巨体。そして『深い蒼の髪』をしたノームプレイヤー。その手に持つのは、装飾剣と言わんばかりの煌びやかな巨剣。そして身に纏うのは淡い青のコート。

 

「えっと……初めまして?」

 

誰だろう。

どこかで聞いた声だし、見たことあるような気もするけど、似た特徴を持つ彼は、『こんな豊かな髪をしていない』。

 

「い、イチカ君?エギルさんよ?エギルさん。」

 

「あぁ。アスナさんも参加して……ってエギルゥゥゥゥ!?」

 

同じくコスプレをしたアスナは、長いその髪を三つ編みにし、服装は青を基調としたものになっている。インナーに黒い短パンと、薄紫のシャツ。胸部や肩部、手首やブーツには、青く同じデザインのプロテクターが着けられている。そしてその手には、片手小銃と片刃の細剣。名称は『ヴァリアント・ユニット』であり、コアユニットをベースに、金属や無機物を素材として様々なツールに変化させる事が出来る、汎用性の高い武装だ。小銃や細剣も、その一つに過ぎない。

 

「オイオイ…俺だって普通気付くだろ?なあ?」

 

「だってその…髪があるから…。エギルって言ったらハゲじゃん?」

 

「スキンヘッドと呼べ!ス・キ・ン・ヘ・ッ・ド!!」

 

どうやら、周囲からのエギルに対する判断材料は髪らしい。

 

「いや…私もキリト君も、最初は気付かなかったんだけど…。」

 

「あたしも、最初は素で『どちら様ですか?』って聞いちゃったくらいですし、普段とのギャップは相当な物じゃないですか?」

 

そう言い放つのはリーファだ。かくいう彼女もコスプレの衣装を身に纏っている。が、その服装は如何せん刺激が強い物になっていたりする。

まずその髪型は、普段のポニーテールからストレートに下ろしたものだ。普段と違う髪型なので、そこはギャップによるものを加味して、かなりの新鮮味を感じるだろう。

だが、問題はその服装だ。もはや下着に限りなく近い布面積の短パン、そして胸元を強調するかのようなヘソ出しの露出の多いカットソー。その上にファーの付いたコート。

…何というのか、彼女のバストサイズと相俟って、物凄く刺激の強い服装である。

 

「ちょっ…イチカ君、ジロジロ見ないでよ…。」

 

「じ、ジロジロなんて……はっ!?」

 

思わずその服装に魅入ってしまったとき、久しく感じていなかった、懐かしくも、そして日常で感じてはいけない気配を感じてしまった。

 

「……………。」

 

もう振り返るのも怖い。

と言うか振り返ったら死ねる。

確定。

 

「イチカ?」

 

「は、ハヒッ!?」

 

「あとでお話。OK?」

 

「お、おーけー。」

 

女の嫉妬とはかくも恐ろしい。

そんな一幕。

 

『はぁ……はぁ……リーファちゃん……なんて刺激的なんだ…!はぁ…はぁ…!』

 

「ん?何か聞こえないか?」

 

耳の良いマドカがその黒い猫耳をピクピクさせて、この場にいるプレイヤー以外の声に反応する。

 

「あぁ、これね。」

 

名を呼ばれたリーファは、近くにあった茂みに向かって、手に持つ物々しい大型ライフルのトリガーを、何の躊躇いも無く引いた。

瞬間、

 

「ひぎゃぁぁぁぁっ!?燃える!?燃えるぅぅぅ!?」

 

大型ライフル『テスタ・ロッサ』の銃口から放たれたのは銃弾ではなく、高熱の火炎放射だ。その威力は射程こそ短い物の、高度の炎魔法に匹敵するものだ。

そしてその炎に燃やされた茂みから飛び出したのは、1人のプレイヤーだ。出てきてすぐにリメインライトと化したものの、一瞬だけおかっぱの髪型が見えた……気がした。

 

「まぁ変質プレイヤーだから気にしなくて良いよ?」

 

「あ……そう。」

 

「…懲りないな、アイツ。アスナを助けるときには男気見せたのに、何処でこじれたのやら。」

 

おかっぱの彼を知るキリト。その彼に視線を移したイチカとユウキは、一瞬目を見開き、次の瞬間には吹き出してしまった。

 

「ぷっ!くくく!キ、キリト!な、何だよその格好!」

 

「に、似合わないっ!似合わないぃっ!あっははは!」

 

そのキリトの格好、というのは、代名詞たる黒を基調とした軽装ではない。

明らかにタンク寄りの重装甲。

青と黄色、白と言ったトリコロールに染められた鎧に、胸部と両手の甲、そして額充てにあしらわれた水色のクリスタル。短いながらも背中には赤いマント。

…明らかに普段のキリトの方向性と違った、正統派勇者の装備。

そしてその手に持つのは黄色い柄と鍔、そしてそこからすらりと伸びる銀色の両刃の刀身の騎士剣。

 

「だ、だから言ったろ!俺には黒以外似合わないって!」

 

「えー?だって折角のハロウィンだよ?仮装しなきゃ勿体ないよ?」

 

「いやだぁぁ!俺には黒以外ないんだぁぁ!!黒以外なのに黒歴史になるぅぅぅ!?」

 

「お!キリトに座布団一枚!」

 

ちなみに…

キリトの装備している鎧は、『ファルセイバー』。

手に持つ剣は『ファルブレード』。

境界を操る力を持つらしい。

ちなみに精錬することにより、鎧は『グリッターファルセイバー』、剣は『グリッターファルブレード』になるとか何とか。

 

「盛り上がってるのは構わんのだが。アイツはどうするんだ?」

 

何故か律儀に待っていた『黒の聖獣』。確かにコイツを倒す積もりで駆け付けたのだ。断じて漫才をするためではない。

 

「も、勿論倒すぜ!なっ!」

 

「えぇ!勿論よ!私たち4人じゃ苦戦してたけど、イチカ君達が加わったら勝てるわ!」

 

「買い被りかもですけど。」

 

キリト・アスナ・エギル・リーファの4人に加え、イチカ・ユウキ・マドカが加わったことにより、フルパーティを組むことが出来た。

後は目の前の敵を倒すのみ…!

 

「よっしゃっ!タンクは任せろ!行くぜぇぇ!!」

 

『おおおお!!!』

 

エギルの野太い掛け声で、レアモンスターとの決戦が始まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、

 

『黒の聖獣』は体力が減少することで、強力なバフを自身に付与していたが、何の偶然が、イチカの持つ『ヴァリ丸』のソードスキルを一の型から順番に七の型までコネクトさせることで、『奥義・無仭剣』という強力な隠しソードスキルを発動させ、敵のバフを消し去るという偉業を達成。あと一歩まで追い詰めた。しかし、ここに来て再生という何とも鬼畜な能力を発揮。これは『奥義・無仭剣』でも解除できず、万事休すかと思われたが…

 

「皆!10秒でいい!持ち堪えてくれ!」

 

かつてキリトが二刀流を披露したときの台詞を、今度はエギルが宣う。

その声に何か期待してしまうのは、追い詰められた者の性と言うべきか、6人は死力を尽くして時間を稼ぐ。

HPはレッドに染まり、

マナは枯渇し、

息は切れて集中力は欠け始める。

 

10秒。

 

その時間がとんでもなく長く、体感的に10分と感じなくもなかった。

 

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

『待たせたな…!』

 

何故かエコーの掛かったエギルの声。

 

現れたのは、ふわりと揺れる赤いワンピース、

アクセントで黒のラインが入った白の上着をその上に羽織り、

その手に持つのはマイク。

膝上のスカートから覗く、浅黒く、筋骨隆々とした脚が眩しい。

 

『これが……超Sレアの課金コスプレ装備!【七森中学校制服】だ!!!!』

 

そして!と言葉を繋げる彼を見る皆の目は、もはや現実の物を見る目ではない。実際現実ではなく仮想世界だが。

 

『これがソードスキル!!!』

 

そして彼は歌い出す。

野太い声で、

マイクを用いた大声量で。

 

ゆりゆららららゆるゆり

 

ゆりゆららららゆるゆり

 

ゆりゆららららゆるゆり

 

大事件!!!

 

 

 

その圧倒的パフォーマンスにより、

 

『黒の聖獣』は跡形もなく消し飛んだ。

 

そして

 

彼の歌を聴いた他のプレイヤーにより、エギルの二つ名がALOに畏怖の象徴として蔓延ることになる。

 

『筋肉モリモリマッチョマンの変態』と…。




コスプレ装備一覧
キリト…スパロボBXより『ファルセイバー』とその武器の『ファルブレード』(パイロットが松岡氏)
アスナ…リリカルなのはより『アミティエ・フローリアン』(映画版)
リーファ…閃の軌跡よりシャーリィ・オルランド
エギル…閃の軌跡よりヴィクター・S・アルゼイド&安元洋貴氏のアレ

円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。

  • にいに。
  • お兄ちゃん。
  • 兄さん。
  • 兄貴。
  • 一夏。

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