インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~ 作:ロシアよ永遠に
キリトは、イチカの試験期間中にGGOクリアをしたと言うことになっています。
「…で?それで張り倒されて気絶して、今に至る、と?」
新生アインクラッド22層にあるログハウスのリビング。ゆうに3、4人は座れるソファに腰を下ろしている黒髪の少年に向かって、一人用のチェアに座る同年代の、同じく黒髪の少年が問うた。
ソファに座る少年の左頬には、見事なまでの真っ赤な紅葉が描かれており、否が応でも目に付いてしまう。
「ぷっ…!」
「ぷ?」
「あっははははははは!!」
「も、もう…!ダメよキリトっ君…!わ、笑っちゃ…ぷっ…くく…!」
「に、にしてもテンプレなまでにラッキースケベっぷりね…っくくく…ふふふ…っ!」
「み、皆さん、ひ、ひどいですよ…っで、でも……っ…ふっ…ふふっ…!」
「で、でもさ、こ、こうまで見事な痕があると…っ同情通り越して…笑っちゃうね…ぷぷっ!」
上から、一人用のチェアに座るスプリガンのキリト、ウンディーネのアスナ、レプラコーンのリズベット、ケットシーのシリカ、そしてシルフのリーファである。
ソファで頬に紅葉の少年…イチカは、半目状態でケラケラと笑う戦友達をにらみ、不機嫌丸出しだった。
「しかしまぁ…謝るどころか、お尻を褒めるなんて…予想の斜め右上を行く答えね。」
「い、イチカさんて…お尻フェチさんなんですか?」
「ち、違うっての!シリカ!?誤解を生みそうな発言は止めて!?」
…黒鉄宮に入れられなくても弄られる運命だったのか。シリカの言に異を唱えながら、イチカの内心は穏やかではない。
「…ログインして早々ビンタされるなんて、正直幸先悪い気がするんだけど…」
「いやいやイチカ君、ある意味自業自得だよ?飛びながらのストレージ閲覧は基本的に危険だもの。緊急時でなかったのなら、そこは反省すべき所だわ。」
「…ぐうの音も出ません。」
勉学の師たるアスナに釘を刺されては、イチカも頭が上がらない。流石、優等生という代名詞が相応しい彼女の論に反証できるほど、イチカの肝は据わっていなかった。
「まぁ2週間もインしてなかったんだもん、イチカ君の気持ちも分からなく無いよ。テスト、お疲れ様だったね。」
「り、リーファ…お前だけだよ。俺を労ってくれるのは…!」
慰めてくれるリーファの手を取り、イチカは俯いた。下を向いていて死角である目元からは、なにやら水滴がぽたぽたと滴り落ち、床に敷かれたカーペットにシミを作っている。
織斑一夏、男泣きである。
「ま、まぁ俺達だってイチカのテストは気になっていたのは確かだぞ?な?アスナ?」
「そ、そうだよ。…それで…どうだった?流石にISに関しては私の専門外も専門外だけど…一般科目は…」
「ISに関しては同級生と教え合ってたから問題ないです。やっぱ、普段からの勉強が大事なのを痛感しましたよ…。一般科目の方は、先生の教えて貰ったところが的中したので、結構出来たかなって手応えはあります。」
「クエストの合間に頑張ってたものね。流石に平均は上回るでしょ。何せアスナ先生が『飲み込み早い』って言う太鼓判押すくらいだもの。」
「リ、リズ…私、そんな大層なことしてないよ?」
「いえ!私もアスナさんに教えて貰って、成績が伸びました!アスナさんの教え方が上手いのもあると思います!」
「シリカちゃんまで…!?」
どうやら、イチカやシリカにとってアスナという存在は偉大、それを不動の物とし始めているようで、もはや彼女を見る目が崇拝の域に達し始めている。
もっとも、イチカは以前自身に敵意を向けていたラウラ、彼女が出会った当初に千冬に向けていた視線に近い物をしているなどと、露とも自覚していないだろうが。
「まぁとにかく、だ。ここ2週間の近況報告でもしておくかなぁ…。先ずは…新しい仲間についてなんだが。」
「新しい、仲間?」
「あぁ。知らなかったと思うけど、俺、一度別のゲームにコンバートしたんだ。」
「コ、コンバート?な、何だって急に?」
「菊岡の要請だよ。…なんでもガンゲイル・オンラインて言うゲームで起きている不可思議な事件を調査しろってさ……それで…」
キリトは続けて語る。
そこで猛威を振るっていた
「その過程で協力してくれた仲間が、GGOからALOにコンバートしてさ。今日、イチカがログインするから紹介したいって言って、来て貰う予定なんだ。…まぁ学校が違うから、少し遅れるかも知れないみたいだけどな。」
「へぇ……銃撃戦メインのGGOでキリトの相棒なんかとなれば、渋いガンマンか…もしかしたら正確無比のスナイパーとかだったりしてな。」
「それは…会ってみてのお楽しみだ。あとは…そうだな。これを手に入れたことくらいか。」
キリトがアイテムストレージを操作して可視できるようにオブジェクト化したもの。それは黄金色の華美な片手直剣。一言で表すならば、宝剣というに相応しいまでに煌びやかで、そして引き付けられるほどに。
その見た目に思わず、イチカもゴクリと喉を鳴らしてしまう。
「ま、まさかこれって…!」
話や画像程度には情報を得ては居たが、実物を見るのは初めてだ。
誰も彼もが望んで、それこそ喉から手が出るほどに欲するであろう物。
「『聖剣エクスキャリバー』!?」
「ご名答。」
サーバーに1本しか存在し得ないという『
持ってみろよ、と言わんばかりに差し出してきたので、丁重に、丁寧にそれを手に取る。
…重い
それがまずイチカの抱いた感想だった。
元々片手剣スキルをそこまで上げていないイチカなので、エクスキャリバーの熟練度要求値を満たしていないから余計にそう感じるのだ。
だが、必死こいて熟練度をほぼカンストまで持っていって、そして装備し、敵を屠る時の気持ちはどれ程のものだろう。
カタナではないにせよ、目の前にある伝説の剣を見て、イチカはそう感じられた。
「やっぱり、伝説級ともなるとスゲぇな。なんて言うのか…手に持ったときの感動とか。」
「だろ?コイツを手に入れるのも皆で協力しての大冒険だったんだぜ?あのキモ…。」
「お・に・い・ちゃ・ん?」
「じゃなくて、愛嬌のある邪神にも救われたしな。」
キモい、と言いかけたところで、怒気を孕んだ鋭い睨みを放つリーファによって、慌てて訂正するキリト。
…キリトがキモいと言い張り、リーファが気に入った姿…。
碌なモンじゃねぇな、と勝手にイチカの中で彼等の言う邪神ことトンキーへのイメージは固まっていく。
「後は…そうだな。最近アインクラッドにとんでもなく強い剣士が現れた、ってことくらいか。」
「…強い剣士?」
「そう。何でも自身の生み出した11連撃のオリジナルソードスキルを賭けてデュエルしてるんだ。」
「でも、今まで腕に覚えのあるプレイヤーが挑んでも、誰一人勝ててないのよ。私やキリト君も挑んだけど、結局やられちゃった。」
「は?キリトや先生が挑んで…!?」
自身より強い二人を打ち負かす程の剣士なんて…彼のヒースクリフとかなら未だしも…。イチカにとって、その辻デュエリスト(仮)の、恐らく途方もない強さにぶるりと震える。
「お、イチカ君、武者震い?」
「…そうかもな。アインクラッド最強の夫婦を打ち負かす剣士なんだ。興味ない、なんてことはないな。」
「もしかしたら…イチカさんなら勝てるかも知れませんよ?『あのスタイル』を使ったら、流石に意表を突かれますし。」
「あ~確かにアレは初見では避けらんないでしょ?そうなったら、イチカが初勝者になるのかしら?」
「…どうだろうな。でも、基本的には正攻法でいくつもりだ。『アレ』は切り札として置いておきたいからな。」
「ちなみに、だ。その辻デュエルをしているプレイヤー、その二つ名って言うのが…
『絶剣』だ。」
オマケ
水車小屋のリズ
リーズリズリズ鍛冶屋の子
水車小屋からやって来た
リーズリズリズリズベーット
マスタースミスの女の子
バッキバキ ボッキボキ!
剣っていいな折っちゃお(byキリト)
プーンプン ムッカムカ!
なんてことすんの!?キレちゃお(byリズベット)
あの子と野宿で 心もおどるよ
ドーキドキギュギュッ! ドーキドキギュギュッ!
あの子が気になる まっかっかの
リーズリズリズリズ鍛冶屋の子
水車小屋からやって来た
リーズリズリズリズベーット
そばかす印の女の子
台詞(リズ、キリトのこと、好きぃ!!)
おかしいな…疲れてるのかな…
円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。
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にいに。
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お兄ちゃん。
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兄さん。
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兄貴。
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一夏。