インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~ 作:ロシアよ永遠に
こんな時くらいしか中々出番がない二人…
「良い天気だな。」
「うん、そうだね~。絶好のお弁当日和だね~。」
ぽかぽかと照らす日の光が、黒髪の少年と栗色の髪の少女の顔をほころばせる。
11月という暦ながらも、この日差しのおかげで心地よい環境がそこにあった。
「じゃ、そろそろお弁当にしましょっか?」
「お、待ってました!」
少女…結城 明日菜の言葉に少年…桐ヶ谷 和人はほころばせていた顔を、若干血走った物へと変える。それ程までに彼女の弁当は魅力的で、そして待ち遠しい物だった。
そんな彼を見た明日菜は現金な和人に苦笑しながらも、鞄の中から2つの包みを取り出した。
1つは黒を基調とした中に白のラインが入った色合いの
もう1つは白を基調とした生地に赤いラインが入った包みだ。
互いの思い入れの深いカラーである、その片方の黒い包みを和人に渡すと、彼は嬉々として包みを開き、中のバスケットの蓋を開ける。
そこには、サンドイッチがあった。柔らかなパンに挟まれた瑞々しいレタスと、食欲をそそられる鶏肉のグリル。肉が赤い色合いなのは、少し辛めの香辛料のスパイスだろう。
「これって…」
「そう。ユイちゃんが初めて食べた朝ご飯のサンドイッチ。何となく作ってみようって思ったの。」
「そうだったな。…そういえばもう1年近く前になるんだな。」
2024年11月7日
思えばあの日からもう1年近くも経っていた。
あの最悪のデスゲームから始まり、そして二年掛けて生還し、今を生きている。何もかもが遠い昔のようで、でも今でもその想い出は鮮明に思い出せる。
それ程までに必死で、そしてその日その日を懸命に生きていた。
全てが現実に戻って、皆と再会して…
「SAOに巻き込まれて…つらいこともいっぱいあったけど…でもやっぱり、アレが無くて良かったとは思わないなぁ…。」
「…そうだな。SAOがあって…今がある。」
「かけがえのない人達と出会えたのもSAOだもの。…亡くなった人達もいるのは確かだけど、でもそこでの出会いも別れもあって、今がある。」
空に浮かぶ城を夢見た男…茅場昌彦の凶行とも取れるSAO。奪われた命もあるが、それと同時に得るものも確かにあった。
「だから…SAOに出会えて…キリト君…うぅん。和人君に出会えて良かった。」
「俺もだよ。明日奈に出会えて良かった。」
そして…どちらからとも無く唇を重ねる。
…あの浮遊城で得られた、確かにここにある大切な物。それは仮想世界でも現実世界でも不変の物。
1と0とで構築された世界であっても変わることはない。この気持ちも、そしてこの人の温もりも。
数秒程…触れあった唇を話した二人は顔を見合わせ、その頬を赤らめながらも顔をほころばせて笑い合う。
これからも、ずっと一緒にいたい大切な人。
「さ!お昼休みが終わっちゃう!食べましょ!」
「あぁ。そうだな!」
二人どちらからとも無く、サンドイッチを一つ掴むと、同時に齧り付いた。口に広がるスパイシーなチキンと、シャキシャキのレタスが次の一口を求めさせる。
愛する人の作ってくれた料理を、これまた愛する人と共に食べる日常…そんな中で和人は思う。
隣に座る大切な人とは別に、共に戦場を駆け抜けた友人も、今頃は同じ日の下で昼食を食べているのだろうか?
先日、ようやく恋心を自覚した彼にも味わって欲しい。
大切な…愛する人と過ごす時間の温かさを…。
そして、嫉妬に孕んだ視線を送る二人の女子生徒の存在には気付かぬ二人だった。
「一夏さん!私、今日はたまたま早起きいたしまして、たまたまお弁当を作ろうと思いましたの!」
「あ、あぁ。そ、そう、なのか。」
「それで沢山作りすぎてしまいましたので…一夏さん、よろしければ食べていただけませんこと?」
IS学園屋上で…
帰還者学園で和人が明日菜の作る極上と言っても過言ではないサンドイッチを堪能している同時刻、よもや一夏が同じ料理たるサンドイッチで命の危機に立たされているなどと、二人は知るよしも無かった。
和人と明日菜は甘さ控えめの微糖。
そして一夏はポイズンクッキングにより即倒。
円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。
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にいに。
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お兄ちゃん。
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兄さん。
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兄貴。
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一夏。