インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~   作:ロシアよ永遠に

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皆さん、お久しぶりです。
生きてますよ~。
まぁ更新遅くなった理由(言い訳)として、新しい部署のゴタゴタと、身内の不幸が重なってしまったのです。
まぁこれからは少しずつ更新速度を早めて行けたらなぁ。と思っています。


第25話『平たくないのに壁とはこれいかに?(胸部的な意味で)』

「…よし、これでピント調整は出来たけど…木綿季、他に違和感とかないか?」

 

『うん、大丈夫。快適そのものだよ。』

 

和人の部屋に明日奈と木綿季(inプローブ)が戻って来たのは、2人が部屋を出て30分後のことだった。普通に会話できるまでになった木綿季は、元の明るさを取り戻していた。代わりに、明日奈の方がモジモジしており、時折和人の顔を顔を赤らめながらチラチラ見ていたが、彼はその理由を知る由も無く、一夏と共に首を傾げるだけだった。

…どうやら、木綿季によって和人と明日奈の馴れ初めについてあれやこれやと聞かれ、それに伴ってその時の心境がフラッシュバックしてきたらしい。そんなこんなで恥ずかしくてまともに顔を見れないとか何とか。

一難去ってまた一難とは良く言ったものだ。

 

「じゃあこれでOKだ。プローブそのものは一夏のBluetoothを通じて木綿季に映像と音声が送られるようになってる。プローブのバッテリーは十時間は保つと思うから、帰ったら充電を…」

 

「え?ちょ…和人?」

 

「ん?」

 

「俺の方に…なの?」

 

「え?違うのか?」

 

「いや…IS学園だぜ?」

 

『駄目なの?』

 

「いや…機密機器があるISを扱ってるから…許可が下りるか…」

 

各国の先端技術の塊であるISが集う学園だ。ある意味でISの実験場でもあるこの場は、各機の最新パッケージのテストもままあるので、外部の、それも無関係な木綿季が、見学とはいえ入ることが許されるのか…。

 

「…ん~、それもそうか。まぁそれでも一度千冬さんに相談してみたらどうだ?」

 

「千冬姉にかぁ…あんまり迷惑掛けたくないんだけど…。」

 

「迷惑…というか、頼ってるといった方が良いんじゃないのか?」

 

「頼ってる?」

 

「相談する、って言うのは、その人を信頼してないと出来ない物だ。割と家族から相談を持ちかけられるのは嬉しいと感じるもんだぞ?」

 

「そう言う物なの、か?」

 

「そう言うもんだ。」

 

和人とて兄だ。妹である直葉に時折相談を持ち掛けられることはままある。リアルのことやゲームのことなど、その幅は中々広いものだが、一時期溝を作っていた2人にとって、それでも今は仲の良い兄妹としていてくれることに、相談出来る間柄に戻れたことには、和人も嬉しくもあった。

 

「ん~、まぁ事情が事情だからな、オープンハイスクールとは違うんだ。でも相談は…してみるか。」

 

『ほ、ほんと!?』

 

「お、おう。…でもだからって行けると決まったわけじゃないからな?」

 

『うん!でも楽しみにしてるよ!』

 

念願の学校に行けるかも知れない。そんな希望の光がさしてきたとあって、木綿季の声は弾んでいた。

何やら2人は意を決してから開き直ったのか、以前のように普通に話している。まぁ一時期、かなり初心な2人を見せられたものだが、過ぎ去ってみれば何のことか、和人や明日奈にとって取り越し苦労だったようにも思える。ただ、恥ずかしい思いをしたのは明日奈だったわけだが。

 

『IS学園かぁ…一夏、ISって空を飛べるんだよね?』

 

「ん?たしかにそうだけど。」

 

『やっぱりALOで飛ぶのとは違うの?』

 

「そうだな…その身一つで飛び回るALOと違って、ISを纏って飛ぶのは少し違うけど、スピードそのものはALOとはダンチだぜ。」

 

「あくまでもALOはゲームだからな。さすがに訓練を必要として、競技や戦闘で使う機器とは違うか。」

 

和人自身も、空への憧れは無いことはない。SFにも出て来そうな機械で、自由に空を飛び回れる。そんな夢のような機器。流石に乗れるなどという想いはなかったが、現実で空を飛べるというのは魅力的な響きであることには変わりなかった。

 

『いいなぁ…。』

 

「ん?ISに乗れるのが、か?」

 

『それもだけど…やっぱり本物の空に憧れる、って言うのもあるんだ。ボク、何年もリアルの空を直に見たことないからさ。』

 

仮想世界の空なら、ずっと見てるんだけどね、と木綿季は付け足す。空を切る風や、照り付ける太陽、青々とした空は、限りなく現実に近い物にはなっているものの、やはり作り物には変わりない。幾ら空を飛ぶ楽しさを味わえるとは言っても、どこかしら現実の空を恋い焦がれると言う物だ。

 

『もし、IS学園の許可がもらえたらさ、空を飛ぶって言うのを見てみたいんだ。…画面越しでも良い。リアルの空を、近くで感じたい…。』

 

ずっと無菌室で暮らす木綿季ならではの、純粋で、切なる願いだ。

学校に行きたいという願いに加えて、こんなことまで頼むなんて、厚かましく、虫がよすぎるかも知れない。

だが誰もがそれを咎めることはない。

それは木綿季の身体の事を知る3人だからこそ、それを嗜めない。

 

「まぁ…俺も出来るだけ木綿季の願いを叶えられるようにしてみるよ。」

 

そんな木綿季の想いの全てを叶えてやることは出来ない。だが、それに出来うる限り近付けてやることは出来るはずだ。

プローブを使用して学校へ連れて行く

それも彼女の願いを叶えるための一つなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、

 

3人の前で大きく出てみたはいい。

しかし、いざその巨大な壁が近付いてくるとなると、自然と緊張は高まってくるものだ。

それはまるで、旧SAOにおいて、フロアボスに挑む前のような途方もない緊張感。

しかも25層や、50層、75層のクォーターポイントにおける、特に強力なボスに挑む感覚に近い。いや、もし100層まで攻略していたなら、ラスボスであるハズだったヒースクリフに挑むときも、こんな気持ちになったのかも知れない。

だが自分の望む未来、それを得るために乗り越えるべき壁に挑む。

旧SAOでは現実に戻るために。

そして今は木綿季を学校へ連れて行く為に。

念の為にプローブは、許可が得られるまでは電源をオフにしている。

これでも先進技術が集う学校だ。下手に情報漏洩を疑われるようなことはしたくない。

 

「…よし!」

 

IS学園の門前で大きく意気込んだ一夏は、そこに見えぬはずの門番をジッと睨み付ける。

 

「待ってろよ。ラスボス(千冬姉)…!」

 

「誰が神聖剣の持ち主か、バカモノが。」

 

スパーン!という、もはや学園で聞き慣れている乾いた音が響くとともに、慣れたようで慣れたくない鋭い頭の痛みも同時に襲ってくる。

 

「ぐぉぉ…!!ち、千冬姉…ルビまで読むなんて、可笑しくねえか?」

 

痛む頭を抱えながら、こんなコトをする人物は一人しか居ないので、振り返ることなく、この痛みを与えた人物に恨みがましく呟く。

 

「…まったく、何を学園の前で宣誓しているかと思えば、何を宣っているのだ?用事が済んで帰ってきたのなら、さっさと学園に入れ。」

 

「お、おぅ…。」

 

入らなければ、後ろからヤクザキックをかまされかねないので、素直に従うことにする。門のセキュリティを抜けるために、学生証を翳すと、防犯装置が外れるようになっている。ここまでは難無く来れたのではあるが、セキュリティを抜けたと同時に、後ろを歩いていた千冬がそれに気付く。

 

「おい、一夏。」

 

「ん?」

 

「その肩の装置はなんだ?」

 

装置、と言うのは言わずもがな、十中八九プローブのことだろう。あからさまに肩に乗っかるそれを見て、流石に怪しまないわけにはいかないのか、千冬は怪訝な表情を浮かべる。

 

「えっと…これはさ、今日外出した理由でもあるんだよ。」

 

兎にも角にも、もう少し間を開けてから説明をしようとしたのだが、向こうから切り出してきたのなら仕方もないし、話も早い。

 

「実はさ…」

 

掻い摘まみながら、一夏は説明する。

ALOで出会った木綿季のこと。

親しく、友人として過ごしていたこと。

木綿季の病状のこと。

木綿季の願い。

そしてそれを叶えるために和人に話を持ち掛け、プローブを借りたこと。

そしてその上で姉である千冬に、木綿季に授業を受けさせて欲しいと相談しようとしていたことを打ち明けた。

二人はいつの間にか外にある休憩スペースへと足を運び、ベンチに座ってコーヒーを飲みながらの話へとなっていた。

 

「だからさ千冬姉。木綿季に授業を受けさせてやってくれないか?」

 

「ふむ…それは、ここがIS学園と知ってての相談なのか?」

 

やはりそこがネックか。

世界最高峰の兵器として名を連ねるISを扱う学校なのだ。情報漏洩が最大の懸念となるのは分かっていた。

だが、だからこそ千冬という最愛の姉を頼った。

姉の名声や権力に縋るのは卑怯かも知れない。

しかし、木綿季の願いを叶えるために、一夏は姉を頼るという選択をした。

受け入れられるかどうかは…賭でしかない。

 

「一夏。」

 

「な、何だよ?」

 

「話をすることはできるのか?」

 

「あ、あぁ。」

 

今のところ、プローブの電源を切っているだけなので、スイッチを入れれば木綿季のメディキュボイドに接続されるようになっている。望むなら話すことも可能だ。

そう一夏から説明を受けた千冬は、まるで珍しい物を見るかのようにプローブに顔を近付けて、マジマジと見つめる。

 

「ふむ。ISの知識ならともかく、フルダイブ系統の技術は全く分からんな。このような小さい装置で、向こうとテレビ電話のような物ができるとは… 」

 

「まだ和人達が研究中のテーマなんだってさ。木綿季の使い心地の感想を聞かせることを条件に、貸して貰ったんだよ。」

 

「最近の学生の知識という物は計り知れんな。…うちの学生も大概だが。」

 

だがIS学園は、修学の一環としてISについての知識を学んではいるが、和人達はその修学とは別に、独学でフルダイブ系統の知識を深めている。その勤勉性に、思わず千冬も内心で舌を巻く。

 

「じゃあ…千冬姉。電源を入れるぞ?」

 

「うむ。」

 

ヴォン…という独特の音と共に、プローブがその機体を起動させる。バッテリーから機体全体に電力が供給されて数秒後、防護用の透明カバーに包まれたカメラが、駆動音と共に左右上下を、まるで何かを探すようにキョロキョロと動き始めた。

 

『あ、電源が入った。…一夏、ここがIS学園なの?』

 

「お、おう。まぁ正確にはその外なんだけどな。…で、だ。」

 

「ほぅ…?本当に繫がっているのだな。さすがに驚いたぞ。」

 

『へ…?』

 

聞き覚えのない声に、装置の向こう側にいる木綿季は、まるでキョトンという擬音が相応しいまでの抜けた声を挙げる。

和人による調整は完璧だ。それ故に、声の主のいる位置や方角まで、まるでその場に居るかのように木綿季に伝わる。

木綿季は恐る恐る、と言った様子でその声の元を辿る。

ピリッとして、そしてキャリアウーマンが着こなしていそうな黒のタイトスカートとスーツ。そして見上げていけば、それに包まれるふくよかな胸部。更にその上には、鋭く、そしてキリッとした表情の女性。

 

『え?あ……え?』

 

「初めましてだな。紺野木綿季。あえて言わせて貰う。織斑一夏の姉、織斑千冬であると!」

 

これが、未来の義姉妹のファーストコンタクトであった。

円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。

  • にいに。
  • お兄ちゃん。
  • 兄さん。
  • 兄貴。
  • 一夏。

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