インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~ 作:ロシアよ永遠に
そして我等が黒ずくめ先生の登場シーンです。
そしていつの間にかお気に入り100件。
高い評価も幾つか頂いて感謝感激と同時にガクブルしてます((((゜д゜;))))
「悪いな、ここは閉鎖中だ。」
目の前のノームの男性はこう宣った。
あれから7人はイチカの指示通り、全速力で迷宮まで飛び、全速力で迷宮区を駆け抜けて、ボス部屋へ続く長い直線通路を抜けて辿り着いた。
その時間およそ30分。
後にも先にも、これ以上短いタイムは生まれることはないだろうと思えるほどの物だった。
しかしいざ辿り着いてみれば、20人ほどのプレイヤーが駐留していた。その中でリーダーと思しきノームが、7人に通行不可を宣言したのである。
「これからウチのギルドがボスに挑むんでね。今はその準備中なんだ。」
「じゃあその準備中の時間に、俺達が挑んでも文句ないはずだろ?」
「悪いけど、こればっかりはな。どうして持って言うなら、イグドラシルシティにある本部にでもナシを付けてくれ。」
あくまでも、こちらに挑ませる腹づもりはないらしい。
見れば、先程ボス部屋の前に居た斥候3人がいるのが目につく。
…なるほど、こちらがボスに挑んだパーティと踏んでの封鎖か。
恐らく彼等は、使い魔を通してボスのパターンを把握すると同時に、こちらの戦力も調べ上げていたのだろう。
さっきはパターンを見るために消極的だったこちらが、パターンを知った上で攻めに入り、アイテムを駆使した上での戦いをしたのならば、ボスを討伐する可能性が高まってくる。それを防ぐために、こちらの情報をリークして、自身らが挑むまでは戦わせないように進言したのだろう。
…明らかに露骨な占拠行為。
上手い手口、と言えばそれまでだが、イチカにとってこのやり方には怒りを覚え、思わず歯軋りをしてしまった。
「つまり―」
そんな怒りの中で、一つの声がイチカの意識をそちらに向けさせる。ユウキだ。
「ボク達がこれ以上どうお願いしても、そこを退いてくれる気は無いってこと、だよね?」
「あ、あぁ。ぶっちゃけると…そうなるな。」
「そっか、じゃあ…仕方ないね。」
仕方ない、そんな言葉と共に苦笑いを浮かべるユウキは諦めるつもりなのか?イチカの中で妙な違和感を覚えたとき、次の彼女の台詞は、そんな物を吹き飛ばし、予想を上回るような物だった。
「戦おう」
スラリと抜き放つマクアフィテル。
そしてユウキの眼は…穏やかなそれとはかけ離れ、剣士としての物へと変わっていた。
ユウキが臨戦態勢に入ったことで、ノームのプレイヤーも武器を構えるが、彼女の素速い剣戟は、その構えを十全にさせる前に彼の胴を切り裂いた。
切り裂かれた事でノックバックし、ヨロリと後退る彼の表情は驚愕に満ちる。
「き、汚ぇ…不意打ちしやがった…!」
「ユウキ…。」
「っへへ、やっぱそう来なくっちゃな!」
口許をつり上げつつ両手剣を抜き放ったジュンがユウキと並んで、武器を構え始める攻略ギルドのプレイヤーと相対する。そんな彼に続きスリーピングナイツの面々も、それぞれに自身の得物を取り出していく。
「お、おい…。」
「イチカ。」
流石に止めようとしたイチカだったが、そんな彼をユウキが先んじて呼び止める。
「お互いに譲れない物があるんだ。…だったら、ぶつからなきゃ、分からないこともあるんだよ!どれくらい…こっちが真剣なのか…強い思いを持っているのか…!」
彼女の言葉に、イチカはハッとする。
そうだ、アスナ達を助けにいく時もそうだった。
姉の、イチカ自身を心配する想いと
自分の、仲間を助けたいという想い。
互いに譲れないからこそ、姉弟はぶつかり、わかり合えた。
自身の信念と想い…曲げられないからこそ…ぶつかる。
「そうか、そうだったよな…俺も。」
言われて気付いた。
そしてユウキの想いに改めて共感するからこそ…イチカは腰に携えた雪華を抜き取り、切っ先を攻略ギルドの面々に突き付ける。
「ま、そんなわけだ。俺たちはボスに挑む。……邪魔、するなら…斬って捨てる…!」
意を決したイチカを横目に、ユウキは笑みを浮かべながら、こちらに睨みを利かせる攻略ギルドにも視線を向ける。
「そんなわけだからさ。封鎖してるなら、覚悟は出来てるんだよね?最後の一人になっても…この場所を守り続ける覚悟が、さ?違う?」
鋭い目を向けるユウキに、攻略ギルドの面々も気圧されて踏み込めずにいた。
数では上回っているはずなのに、何故か勝てる気がしない。
スリーピングナイツからしても、ここで消耗するのは得策ではないため、これで素直に通してくれるならば万々歳なのだが、彼等も引くに引けないのだろう。
睨み合う両者
しかし、迷宮区に重厚な足跡が重なって近付いてくるのに気付いたノームの男性は、口許をつり上げる。
「ヤバッ…!」
直線通路を埋め尽くしてなお、後方にたむろするほどの大人数が、今まさにこちらに雪崩れ込まんと向かってきている。遠目ながらも、そのHPゲージには攻略ギルドのマークが刻まれているのが目についた。
恐らく…残りのレイド部隊なのだろう。
「…団体さんの到着か。」
「ゴメンねイチカ。ボクの短気に巻き込んじゃって。」
「俺こそ…悪いな。決断が遅れて…こんな事になった。」
「うぅん。どんな形であれ、ボクは後悔はしてないよ!…だって、さっきのイチカ、今までで一番いい目をしてたもん!」
「そ、そうか……いい目、か。…それじゃ…後悔無いように…一人でも多く道連れにしてやろうぜ!」
「いいね!アタシはそういうの好きだよイチカ!」
「たたたた、戦いは数、と…将兵は言いますが…そ、そそれを覆すのも…お、面白いかもしれませんね…。」
「この人数差で逆転なんかしたら、それこそMMOトゥデイに載るんじゃない?」
「それはそれで…楽しみだ。」
「それじゃ…デスペナルティが怖くない人から来て貰いましょうか?」
士気は充分だった。誰も彼もがただでやられる気は無い、むしろ逆に喰らってやると言わんばかりの気概を持っている。流石にこの人数に勝てても、消耗していてはボス討伐所ではない。だが、いまこのシチュエーションを楽しむのも…悪くはないとイチカは感じていた。
「往生際が悪いな。」
ぞろぞろと、圧倒的とも言えるほどに大人数で押し掛けてもなお、抵抗する意識を持つ7人に、リーダーと思しきサラマンダーのプレイヤーは悪態をつく。
そんな大行列の最後方で…一人のスプリガンが口許をつり上げる。
同時に、脚力をフルパワーにして跳躍すると、円形にくり貫かれた直線通路の壁を、まるでニンジャか何かのように駆け抜けていく。レイド部隊を追い抜くと同時に跳躍し、…直線通路とボス部屋前の広場、その境目にブレーキ痕を残して、彼等の前に立ち塞がるように向かい合った。
「悪いな…
ここは通行止めだ!」
黒いコートを纏った剣士がゆらりと立ち上がり、こう宣言した。
今日はユウキと、双子の姉である藍子の生誕日のようですね!おめでとうユウキ!
この小説でイチカと祝えるように頑張って書いていきたいです。
円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。
-
にいに。
-
お兄ちゃん。
-
兄さん。
-
兄貴。
-
一夏。