閃乱カグラ外伝 ヒーローは動く   作:智昭

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 謎の白い粉により電信柱の化け物と化した、青年・雷田誠。彼の凄まじい力により、4人の忍(飛鳥・葛城・柳生・雲雀)は圧倒されていた。
 
仲間のピンチに、動揺する葛城。しかし、仲間(柳生)による助言によって正気を取り戻した葛城は、ついに仲間の前でセクハラーメンマンへと変身。雲雀と柳生の巻物で新たな力を発揮した葛城は、見事に雷田に取り憑いていた化け物を倒す事に成功した。雲雀と柳生に正体はバレたが、改めて仲間の大切さを知った葛城であった。果たして今回は、何が起こるのか。
※飛鳥は、睡眠薬で眠らされていた。
※斑鳩は、霧夜と学園で情報収集をしていた。


第7話 キングオブハジケリスト登場

 雷田との激戦から二日後、忍達は日頃の任務での力を癒すため休息をとっていた。趣味を楽しむ者から休日での復習を欠かせない者など、それぞれにあった休日を過ごしていた。

 

 一方の葛城は、これまたセクシーな私服を着飾り、大きな胸を揺らしながらある場所へと向かっていた。

「やべー、寝坊してしまった。あの人、時間に厳しいからなぁ…」

どうやら葛城は、ある人物と待ち合わせしている様子。葛城の言う『あの人』とは、一体誰なのか?

 

 走る事数分、葛城は待ち合わせ場所へとやってきた。そこは、今でも主人の帰りを待つ犬の像が建っており、待ち合わせ場所として有名な『渋谷 ハチ公前』です。葛城は、像の前で手を合わせて一礼した。そして、周りを見回した。

「え~と。着いたのはいいけど、あの人はどこにいるんだ……もしかして、あの人も遅刻か…」

 

 葛城が待ち合わせている人物を探ししていると、人ごみに紛れて、あるおかしな呼びかけが聞こえてきた。

「チクワいかがっすか……チクワいかがっすか…」

その声に反応した葛城は、呆れながら声が聞こえた場所へと向かった。すると人ごみの中で、金平糖の様な体でオレンジ色をしたの生き物が、『マッチいかがですか』のトーンでチクワを売り込んでいた。周りを歩く人達も、相手にしないように、ただただスルーするのみであった。

 

 「チクワ……いかがっすか。おかしいなぁ…渋谷だっていうのに1本も売れない…」

「渋谷じゃなくてもいっしょっすよ 」

葛城は、その生き物に慣れた感じで話し掛けた。すると生き物も、葛城の方を振り向いた。

「おっ、葛城!遅ーよ、今まで何してたんだよ」

「『何をしてる』」は、こっちの台詞っすよ……首領パッチさん…」

 

 なんと、葛城が待ち合わせていた人物は、この『首領パッチ』という男のようだ。首領パッチは、ギャグ漫画『ボボボーボ・ボーボボ』という作品の登場キャラクターで、元『ハジケ組』の親分。さらに、『伝説のキングオブハジケリスト』という異名を持つ、ハジケリスト(バカ)なのだ。改めて言おう……バカなのだ。

 

 葛城と首領パッチは、普段から仲が良く、プライベートでは一緒にプロレス観戦するほどの仲良しなのだ。周りは白い目で見るが、2人には関係ない。

 

 話は戻り、首領パッチは葛城の質問に答えた。

「オマエが遅いから、渋谷のオシャレ野郎共にチクワを売りつけていたんだよ。チクワブームの再来だ!」

首領パッチは、根拠のないバカ回答をした。葛城は慣れているため、呆れながらも冷静にツッコむ。

「チクワにブームも何もないでしょ ……何でそうなるんですか」

「米騒動なんだよ!」

「はい!?」

突然の意味不明の発言に、葛城はただ驚く。

「オレんちが米騒動なんだよ!おい、渋谷のファッションモンスター野郎!服を着飾ってる暇があるならチクワ買え!そして食え!オレんちが米騒動なんだよ」

首領パッチの発言には、特に何の意味も含まれてない。葛城は、心の中で『意味わからねー』とつぶやくしかなかった。もう一度言おう…首領パッチは、バカなのだ。

 

 それを見ていた周りの人も、2人の事を避け始め、ただただ無視していた。それでも首領パッチは、恥を知らないのか、ずっと『チクワ買え!チクワ食え』と連呼する。やがて仲のいい葛城も、見てられなくなり止めに入った。

「首領パッチさん、辞めましょうよ 周りがアタイ達を避けてますって」

「うるせーな、爆乳!!オレんちは、今モーレツに…………………燃え尽きた…ガクッ」

突然黙り込んだと思いきや、首領パッチの体がオレンジから白へと変わった。さらに体つきは萎れて元気がなくなり、その場に倒れ込んだ。

「ちょっと、首領パッチさん!急にどうしたんっすか 首領パッチさん!」

「こ……コーラ………コーラが切れた……」

「コーラ?」

 

 首領パッチの口から「コーラ」という単語が。葛城はとりあえず、首領パッチを背負い近くのファミレスへと向かった。葛城は、ドリンクバーでコーラの入ったグラスを『これでもか…』と思うほど用意し、ストローを首領パッチの口や鼻に突っ込んだ。すると、グラスのコーラはみるみる減っていき、さっきまで萎れていた体が元の元気な体へと戻った。

「プハーー!コーラ美味ー!」

首領パッチは、ハジケすぎる(バカな事をやり続ける)と元気がなくなるのである。コーラは、そんな首領パッチの力の源でもあるのだ。

 

 葛城は、首領パッチが元に戻るとひとまず安心した。

しかし、いくら仲が良くても彼の予測不可能の行動には、葛城もよく悩まされているのだ。

「元に戻ったのは良かったっすけど、変な事ばかりされてもアタイも疲れるんすよ… 」

「わりーわりー!オレ、注文するけど、オマエも何か食うか?」

葛城が心配しているのに対し、マイペースに注文しようとする。しかし葛城も付き合いが長いのか、やれやれと首を横に振る。

「オイ店員!マルゲリータピザ、マルゲリータ抜きで」

「それ、何も無いただのピザじゃねーかよ」

 

 このような感じで、いつもはお調子者の葛城も首領パッチの前ではツッコミ役にまわるのだ。葛城は、注文を終えると話を切り出した。

「首領パッチさん、今日アナタを呼んだのは、あるお願いがあって……」

「なんだ?俺に出来ることなら協力するぞ」

首領パッチは、コーラを飲みながら話に耳を傾ける。

「実は……首領パッチさん……アタイとヒーローやってください!」

「………ヒーロー……」

 

 さっきまでふざけていた首領パッチが、急に真面目なりました。首領パッチは、コーラを飲みかけのコーラが入ったグラスをテーブルへと置いた。

「一体どうしたんだよ葛城?突然、ヒーローになりたいだとか……何をオマエをそうさせたんだ?」

首領パッチは、疑問を問う。葛城は、全て話した。謎の怪人や白い粉の事。本来は秘密事項の為、話してはならない情報なのだが、葛城の目は真剣そのものでした。話を聞いた首領パッチは、しばらく考え、そして話を切り出した。

 

 「オマエ……本気でヒーローになりたいのか」

いつもならふざけている首領パッチだが、葛城の話を聞いた途端、似合わない真面目な雰囲気で葛城に聞いた。

「首領パッチさん………もちろん!アタイは、今回の事件で本気でヒーローになりたいと思ったんです。大事な仲間を守る為、化け物の呪縛に苦しんでる人達を守る為……もし、このまま他の人まで苦しめられたらそれがどんどん広がってしまう…。」

葛城も、自分の思いを首領パッチへとぶつけた。

 

 葛城は、ヒーロー活動を始める前にも、様々な思いを経験した。抜け忍となった両親と離ればなれになった『悲しみ』や大切な仲間やライバルが出来た『喜び』、本当の自分とは何なのかという『迷い』、他にも葛城は様々な経験を重ね、いろんな事を思い続けてきた。今回のヒーロー活動は、無謀だとわかっていても葛城の一度やろうと思った事は、ゴールまで突っ走るという彼女なりの美学があったのです。葛城の眼差しは、真っ直ぐです。そんな葛城の話を聞いた首領パッチは、再び口を動かした。

「なるほどな……………よし、引き受けた!」

「え!………………よっしゃーーーーー!」

 

 首領パッチの答えを聞いた葛城は、自分がファミレスにいるこ事を忘れたかのように、大きな声で喜んだ。周りからお客も思わず振り向き、気づいた葛城はゆっくりと腰を下ろした。

 

 「ありがとうございます、首領パッチさん。これからも、よろし…」

「ただし条件がある!」

「へ?」

了解したように見えた首領パッチだが、共にヒーロー活動をするにあたって、何か条件を加えるそうだ。葛城の安心感は、一気に静まり再び緊張へと変わった。

「……首領パッチさん……その条件って……一体」

「…………ハジケろ」

「………はい!?」

 

 首領パッチの口から飛び出したのは「ハジケろ」というなぞの命令形の言語であった。

「ど…首領パッチさん……ハジケろ……というのは?」

「ハジケろっつったら、ハジケるんだよ」

首領パッチは、当たり前のように話すが葛城には全然理解できていなかった。

「いやいや、わからないっすよ。そもそも何なんですか『ハジケろ』って 」

「俺が納得するハジケが出来たら、オマエのヒーロー活動に付き合うぞ」

「いや、だから……そもそも『ハジケ』が何なのかもわからなくて…」

「あれ?もうコーラなくなっちまったか。俺がドリンクバーから帰ってくるまで、何か考えとけよ」

「あ!おい、待てって……」

首領パッチは、葛城の事はお構いなしに、ドリンクバーへと向かった。

 

 葛城は、考えた。首領パッチの言う「ハジケ」とは、一体何なのか。

「何なんだよ!いくら(二次元での)先輩だからって、言ってることがらむちゃくちゃだろ 何なんだよ『ハジケろ』って」

突然の無茶ぶりにご機嫌斜めの葛城。しかし、イライラしながらも、指でテーブルを叩きながら『ハジケとは何なのか?』と考えていた。

「ハジケろ………かぁ」

 

 「おい この店はどうなってるんだよ 」

「ん、何なんだ?」

奥の席から謎の怒鳴り声が聞こえてきた。するとそこには、黒服を着たヤクザ風の男が4人ほど座っており、その1人が店員に何かを訴えていた。

「オタクんとこのグラタンに、髪の毛が入っていたぞ!兄貴が腹でも壊したらどうするんだよ 」

「申し訳ございません 今すぐ新しいモノを…」

「ごめんですんだら警察いらねーだろが アァ!!」

どうやら、注文した食べ物に髪の毛が入っていた事でもめている様子。店員は、今にも泣きそうに、足ばかり小刻みにふるえていた。遠くの席から見ていた葛城は、眉間にしわを寄せて話を聞いていた。

「おいおい…いくらなんでも、髪の毛であそこまで怒鳴らなくても……あれ?」

 

 葛城は、何かに気づいた。

「本当に申し訳ございません」

「ふざけるんじゃねーよテメー!」

「さっきも言っただろう、謝って済むなら警察はいらねーんだよ」

「そうだそうだ!髪の毛入れるくらいならチクワ食って俺んちを米騒動から解放しろよアホが 」

「………なんか首領パッチさん混ざってる〰!」(葛城)

ヤクザの中から聞き覚えのある声と発言が…そう、首領パッチだ。ドリンクバーに行くと言って席を離れた首領パッチだが、なんとヤクザに紛れて店員にクレームを言っていた。葛城だけでなく、店員もヤクザも『誰だこの人』と心の中で思っていた。

 

 ヤクザ風の男は、再びしゃべり出した。

「と、とにかく責任とってもらおうか 」

「俺んちが火事なんだよ、だからチクワ食えごら 」(首領パッチ)

「アニキが腹の腹が壊れてもいいのか、あぁ 」

「米騒動、米騒動、米・米・米・米騒動!」(首領パッチ)

「黙ってないで、何とか言えよ 」

「そんな事いいから、チクワ食え〰〰〰!!!」(首領パッチ)

「さっきから、何やってるんだよトゲ野郎 」

 

 ヤクザ風の男の兄貴は、ついに首領パッチの行動をツッコんだ。周りも正直、首領パッチの奇想天外な行動にこまっており、心の中で「ツッコんでくれてありがとう」と思っていた。

 

 首領パッチは、お構いなしにしゃべり続ける。

「火事と米騒動なんだよ!だからチクワ食え-!」

「さっき、から訳のわからない事言ってるんじゃねーよ お前達、そのトゲ野郎を取り抑えろ」

「「「うっす!!!」」」

ヤクザ風の男腹、3人がかりで首領パッチを取り抑えようとした。葛城は、とうとう見てられなくなり、奥の席へと向かった。

「おい、ヤメロ!」

「あん、誰だよ姉ちゃん」

「さっきから見ていれば、細かい事でキレすぎだろ…そのくらいにしたらどうだ」

葛城は、思っていた事を口に出した。しかし、ヤクザ風の男達は、葛城の体をジロジロ見つめていました。

「何に見てるんだよ」

「それにしても姉ちゃん、いい体してるな…そうだ、店員の事を許してあげる代わりに、姉ちゃんの体で代償してもらうか」

「はぁ、何を訳のわからない事を…」

「いいじゃないか、減るもんじゃねーしよ」

 

 男達の狙いは、首領パッチから葛城へと移った。葛城は、忍の立場上一般人に変に暴力を振ることは出来ません。葛城は、男の手を払い後を去ろうとする。

「おい、やめろって!」

「いいじゃねーかよ、姉ちゃん。いっそのこと今夜…」

「忍……発見……」

「「!!」」

ヤクザ風の男の子分の1人が、急に片言のようにしゃべり出した。男は、葛城を見て『忍(しのび)』という単語を発していた。それを聞いた葛城は、ある確信がついた。

「おい、ノブヒコ(子分の名前)!何を急に訳のわからない事言ってるんだよ。今日はやけに物静かだと思っていたら、急にどうし…」

兄貴分が喋っているスキに、ノブヒコという子分は、懐からナイフを取り出し兄貴分へと刺そうとした。

それにいち早く気づいた葛城は、刺さるギリギリの所で受け止めた。

「チッ…邪魔ガ入ッタカ…」

 

 異変に気づいた兄貴分をはじめ、ファミレス中がざわざわし始めました。

「ヒッ!の…ノブヒコ……これは一体……」

ヤクザ風の兄貴分は、ノブヒコのいつもとは違うことに気付くと、顔から汗がにじみ出てきました。一方、ノブヒコは葛城を不気味な眼差しでみていた。

「忍………コロス…フン!」

ノブヒコは、懐から拳銃を取り出し、天井へ銃弾を撃ちつけ威嚇した。

「キャーーーーー」「逃げろーーーーー!」「ママ怖いよー」

銃声でファミレス内は、大騒ぎ。やがて葛城達を除く客・店員は、全員外へと逃げた。

 

 「ホラホラ、逃ゲロ逃ゲロ人間風情…ゼーニゼニゼニゼニー!」

可笑しな笑い方で、銃弾を撃ち続けるノブヒコ。すると、体がいつの間にか化け物の姿へと変わっていた。その姿を見た兄貴分含め、ヤクザ風の男達はびっくり仰天。

「ぎゃーーー!化け物だ〰〰〰逃げろ…逃げるしかねー 」

「オット!逃ガシハシナイデゼニ……シャァ!」

ノブヒコは、刃物の様に鋭い舌を兄貴分に向けて伸ばしました。

「ギャー!か…だ…ずげ…………て…」

舌は、兄貴分の体を貫通し、それと同時に体だんだん細くなり干物の様にカラカラになってしまいました。

「プハー!食ッタ、食ッタ。人間風情ノエネルギーハ辞メラレナイゼ…ゼニゼニゼニ」

 

葛城、怒りに怒った。こんな「残酷なやり方があるのか」「人間を何だとおもっているんだ」と、怒りの感情が沸き上がっていた。そして、化け物に向かって走りだした。

「この野郎めが〰 」

葛城は、変身ベルトを装着し巻物を挿入した。

「忍!変身!!」

『オーダー入リマース セクハラーメンマン一丁!!』(ベルト音声)

葛城は、セクハラーメンマンの姿に変身しながら、勢いよくノブヒコへと突進した。

「何ダゼニ!?ブワッハ!!暴レ牛並の威力ゼニ……アベブっ(レジカウンターに衝突する)」

ノブヒコはそのまま、レジカウンターまで突き飛ばされた。

 

 「お…オマエ、本当に葛城なのか……」

セクハラーメンマンへと変身した葛城に、首領パッチも驚きを隠せません。そして、葛城はお約束のセリフを…。

「小さき山(貧乳)が危機の時!大きい山(爆乳)の危機の時!!いやっ、地球(おっぱい)の危機はアタイが守る!!!セクハラーメンマン舞忍びます!!!!」 

葛城は、セリフとともに格好良くポーズを決めた。

「ぐぬぬぬ…俺ヲナメルナゼニ 」

ノブヒコは、口から剣を取り出し葛城に襲いかかった。

「剣か…よし、こちらも新兵器を使ってみるか!」

葛城は、自身の胸の谷間から緑色のUSBメモリを取り出し、ベルトに挿入した。さらに、ベルトを開け閉めした。

『オーダー入リマース キザミ!!』

すると、葛城の左右隣に小さい謎の空間が出現し、そこから棒のような物が出てきた。葛城が手に取ると、棒は段々と姿をみせた。手にした物は、麺切りカッターの様な形をした双剣でした。

「さーて、一丁やりますか!」

葛城は、敵に向かって突撃した。

 

 ノブヒコの剣捌きに、葛城も双剣で対抗した。慣れない武器に戸惑うかと思いきや、葛城は順調に使いこなしていき、いつの間にかノブヒコも圧倒されていた。

「おら、おら、どりゃ〰!」

「コノ女、剣ノ扱ハ雑ニ見エルガ……五分モ経タナイ内ニ、オレより上手(うわて)ニ行ッテヤガル」

「そこだ〰!」

葛城は、ノブヒコのスキを突いて、腹部に斬りかかった。

「ギャワ〰!……ナンノ…コレシキ……ゼニ」

ノブヒコは、腹部に大きめの傷がありました。それでも、ノブヒコは立ち上がり攻撃態勢に再びはいった。

「なんてヤツだ…だけど、この間と比べたら大したことねーな……よし、次で決めて……」

 

 葛城は、ベルトを操作しようとした。しかし、次の瞬間であった。

「ヒップホップ、パチ美!!」

「どわっ!何だ何だ!?」

突撃、側方から女装した首領パッチがヒップアタックで葛城の態勢を崩した。さすがの葛城も、これは怒リだした。

「ちょっと、首領パッチさん!急に何をするんすか 」

「ヒロインの座は、私のモノよ!」

「はい!?」

首領パッチの返答に、葛城はきょとんとした。首領パッチは、本来のキャラクター(個性)から急に別のキャラクター(個性)に急変する予測不能の人格者でもある。けして多重人格でもなければ、病気の発作でもない。ただ、かまってほしいだけなのかもしれない…。

「今は、戦いの最中なんですよ アンタの小芝居に付き合っている暇は…」

「ねえねえ葛城の姉ちゃん、アハハハ」

「ナッ!またキャラクター(個性)が変わってる!」

首領パッチは、女キャラから今度は無邪気な子供キャラへと個性を変えた。きらきらとした瞳と、鼻からは鼻水を垂らしたりと、葛城には何が何だかさっぱりです。

「ちょっと、首領パッチさん……いい加減に…」

「ねえねえ、連れて行ってよ遊園地!遊園地!」

首領パッチが『遊園地』と指を指して言っていたのは、ノブヒコでした。ノブヒコも、なぜ自分が『遊園地』と言われているのか、訳がわからなかった。

 

 駄駄を捏ねる首領パッチを、葛城は無理に話そうとしましたが、首領パッチはクッツキ虫以上に離れません。

「遊園地!ゆ~えんち!」

「ちょっと首領パッチさん、勘弁してくださいよ 今日のアンタはいつも以上におかしいっすよ」

そんな2人をよそに、ノブヒコはコソコソ何かしようとしていた。葛城は、首領パッチに目がいっていたものの、忍特有の勘で察した。

「あ、アイツ…何を…」

コソコソしていたノブヒコは、懐から小さい袋を取り出した。葛城は、ソレを見て反応した。

「コレが有レバ無敵ゼニ!」

「白い粉!」

ノブヒコが取り出したのは、今まで倒した怪人達が使用していた、謎の白い粉でありました。コレを飲む事で、怪人は強大な力を手に入れる事が出来るのだ。

 

 ノブヒコは、その粉を袋ごと飲み込みました。

「へっへっへー、力が漲ッテクルゼニ…」

白い粉を飲み込んだノブヒコは、黒いオーラがで体を覆われていた。

「見て見て!お化けさんが黒いのに包まれてるよ」

「首領パッチさん、いい加減に元のキャラに戻ってください」

状況が悪化したにもかかわらず、首領パッチは子供キャラのままでした。一方の葛城は、2つの厄介事に挟まれて困惑気味だ。

 

 ノブヒコは、レジカウンターに置いてあったレジスターを見て不気味ナ笑みを浮かべていた。

「金ガ………俺ノ源ニ……ハァ!」

ノブヒコは、レジスターを強引に持ち上げた。すると、腹部に謎の口が出現し、レジスターをそのまま自分の体内へと吸収した。

「アイツ…レジを!」

「力が…力が漲ルゼニーーーーーーー!」

レジスターを吸収したノブヒコは、レジスターの化け物へと姿を変えました。ディスプレイの顔、胸元はキーボード、右手はレシートプリンターで左手はバーコードスキャナ、さらに腹部には小銭入れの様な引き出しが着いていた。

 

 「サーテト…マズハ小手調ベニ、ソノ刺野郎カラ始末スルデゼニ」

ノブヒコは、ディスプレイのドットを上手く活かし、不気味な目つきを再現していた。狙いを首領パッチに定め、攻撃態勢にはいった。

「うわーかっこいい!ロボットだ、ロボットだー」

「首領パッチさん!そいつは、敵で……」

首領パッチは、ノブヒコをロボットと勘違いし、無邪気に近づいた。

「モウ遅イ!クラエ!! 釣銭流星!!!」

ノブヒコは、腹部にあった小銭入れらしき引き出しから、小銭型の核爆弾を首領パッチへと放った。

「まずい!首領パッチさん、危ない!」

葛城は、体を張って前に立ち、核爆弾から首領パッチの身を守りました。

「ぐわーーー!!!」

核爆弾は、葛城の体を直撃した。アーマーのおかげで、傷は浅かったものの、葛城の変身は解けてしまいました。それでも葛城は、首領パッチを守りきりました。

 

「チッ!余計ナ邪魔ガ入ッタゼニ。トドメ……ト言イタイトコロダガ…ソウハ、イカナイ様デゼニ」

外からパトカーのサイレンが鳴り響いていた。入口付近では、複数の警察官と突撃隊が様子をうかがっていた。

「今回ハ、コノ辺デ見逃シテヤルゼニ。次会ッタ時ハ、オマエラヲ確実ニ殺スゼニ。……デハ…サラバ!」

ノブヒコは、その場から姿を消した。

 

「待て……オマエは……アタイ…が…」

傷は浅いものの、ダメージは大きかった葛城は、その場で気を失いました。そんな葛城を、首領パッチはいつもの個性に戻り、真剣な表情で葛城をみつめていた。

「葛城……」

 

 一方入口付近では、警察官と突撃隊が警戒していた。しかし、いくら時間が経っても化け物のノブヒコどころか、葛城と首領パッチも出て来ません。

「前隊、突撃せよ!」

突撃隊は、ファミレスの中へと突入した。しかし、中には誰もいません…。

 

 「葛城…」

「……誰かが…アタイを……呼んでる」

「葛城……葛城…葛城さん…葛城さん、葛城さん!」

「はっ!こ…ここは」

葛城は目が開けると、半蔵学園学生寮のリビングのソファーに横になっていた。近くには、飛鳥・斑鳩・柳生・雲雀・霧夜の5人が心配そうに見守っていた。

 

 「葛城、目が覚めた様だな」(霧夜)

「ここは…寮…ハッ!そういえば、アタイ」

「落ち着いてください葛城さん。状況は理解していますので…」

 

 葛城がリビングを見回すとテレビが付けてあった。そこでは、先ほど遭遇したファミレスでの出来事が示されていた。幸い、葛城が忍ということはバレていない様子。しかし、レジスターの化け物と化したノブヒコは、今現在も渋谷で暴れている様子。

「申し訳ありません葛城さん。私達が早く気付いていれば…こんな事に…」

「いいよ、気にするなって斑鳩!アタイは、この通りピンピンしているぜ!それに……怪人が現れたのに連絡し忘れたアタイもアタイだけど…」

 

 葛城は、心配をかけない様にいつもの調子で話すが、内心はすごい責任感をかんじている。そんな葛城を見た飛鳥は、言った。

「大丈夫だよ葛姉。別に私達は怒っていないよう 悪いのは、怪人さんなんだから」

「へへへ、ありがとよ飛鳥」

飛鳥の言葉に葛城は、若干元気を取り戻した。

 

 っとここで、葛城はあることに気付いた。

「そういえばアタイ、どうやってここへ?あの時アタイは、気を失って…」

葛城は、ノブヒコの核爆弾をまともに喰らい気を失っていたので、その後の記憶がありません。すると、斑鳩が答えた。

「首領パッチさんです」

「えっ…」

「首領パッチさんが、葛城さんをここまで運んでくださったんです」

「葛姉の事を心配してたよ」(飛鳥)

「俺は、アイツの事は嫌いだ」(柳生)

「もう、柳生ちゃん」(雲雀)

 

 葛城を寮まで運んでくれたのは、首領パッチでした。斑鳩の話によると、首領パッチは気を失った葛城を汗だくになりながらも、お姫様抱っこでここまで運んでいたようだ。葛城は、疑問に思った。いくらバカな首領パッチでも、なぜ戦いの“邪魔”をしていたのか?なぜ自分を寮まで運んだのか?葛城は、訳がわからず髪をかきむしった。

「あー訳がわかんねー!あの人は、何を考えているんだよ。あの人の“邪魔”がなかったら……なかったら」

いくら仲が良くても、今回の事は特に訳がわからない。考えれば考えるほど、葛城の感情はおかしくなる。

「ちくしょー!!」

「葛姉…………」

「何が正しかったんだ…あの人は……あの人は…」

 

 葛城は、自分を責め始めた。しかし、すぐさま斑鳩が言った。

「葛城さん、何があったかは知りませんが……まずは、こちらを読んでからお決めになっては」

斑鳩は、胸の谷間にしまっていた手紙の様な物を取り出し、葛城へと渡した。

「なんだよコレ?」

「首領パッチさんが、葛城さんに渡す様にと置いていかれた手紙です」

「手紙…」

葛城は、手紙を黙読し始めた。葛城は、軽く頷きながら手紙を読み込んだ。

「これは!」

「何が書いてあったの、葛姉?」

「そういう事……バカなのはアタイの方って事か」

 

 手紙を読み終わった葛城は、片目から涙をこぼした。葛城は、手紙を胸元にしまい、走り出した。

「葛姉!どこに行くの!?」(飛鳥)

「決まってるだろ!バカな先輩(首領パッチ)を助けにいくのさ!」

「霧夜先生!追いかけた方が……」(斑鳩)

「いや、アイツに行かせてやってくれ」(霧夜)

霧夜は、珍しく葛城の独断行動を許可した。それも、まるで何かを悟っているような様子でした。

「しかし…先生」(斑鳩)

「確かにアイツは、自分勝手なヤツだが、やるときにはやるヤツだ。今回は、アイツの行動を許してあげてくれ、斑鳩」(霧夜)

「先生……わかりました」(斑鳩)

「葛姉……大丈夫かな…」(飛鳥)

「心配ないよ飛鳥ちゃん。葛姉なら大丈夫だよ」(雲雀)

「アイツは、頑丈だから簡単にはやられない…」(柳生)

 

 一方その頃。葛城は、屋根に飛び移りながら大急ぎで渋谷へと向かっていた。

「待っていて首領パッチさん!アンタは、あの時“邪魔”なんてしていなかった。……アンタのいう“ハジケ”の意味がわかったぜ!」




 今回から、クロスオーバー的な展開へと発展します。関連タグの方にも新たに「ボボボーボ・ボーボボ」を追加します。
 次回も、頑張って投稿していきます。ご愛読ありがとうございますm(_ _)m

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