閃乱カグラ外伝 ヒーローは動く   作:智昭

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今回は、バトル回です。展開とキャラクター間のやりとりにご注目!今回も一生懸命書きましたので、よろしくお願いしますm(_ _)m


第6話 兎と烏賊(イカ)

 ここは、街外れの某広場。あたりを見渡しても、人が通る気配すらありません。そんな広場に謎の黒い壁が。そう、忍結界です。中では、電信柱の化け物へと姿を変えた雷田誠と、半蔵学園の飛鳥と葛城が接戦を繰り広げていた。

 

 「忍コロス!…ヴォ〰〰!!」

雷田は、太い金棒のような腕で飛鳥と葛城を襲いかかる。しかし、2人は攻撃を忍特有の素早さで次々にかわしていました。道路は雷田の攻撃で穴だらけです。

 

 「“秘伝忍法 二刀僚斬!!”」

飛鳥は二刀流をサヤにおさめ、×(バツ)の字に居合い切りを喰らわせた。

「無駄無駄~。ソンナ攻撃ガ通ルカ」

しかし、相手の体は岩以上に硬く、斬撃が通りません。

 

 次に葛城が、後方に回り込んだ。そして高く飛び、蹴り掛かろうとした。

「剣が駄目なら、打撃はどうだ!」

「フン、考エテイナイトデモ思ッタカ!」

雷田は、頭部から紐のよう物を伸ばし、それを使って葛城を捕まえようとした。

「ヤバっ!おっと」

葛城は、危険を察知して紐をかわした。紐は、そのまま近く木に当たった。すると、とてつもない電撃が流れ、木を黒こげにした。紐の正体は、電線だったようです。

 

 「危ねーな。あんなのまともに喰らったら、ひとたまりもないな」

「ケッケッケ-。マダマダコレカラダ〰」

雷田は、さらに電線の数を増やし、2人に襲いかかった。

「葛姉、任せて。“秘伝忍法 半蔵流乱れ咲き”」

飛鳥は、素早い刀さばきで、次々と電線を斬り刻んだ。しかし、雷田も負けてはいません。斬られた電線は、何度も生えかわり、いくら斬ってもキリがありません。

「くっ、なんて生命力なの…」

「ハッハッハ-。サァ、オ前ハドコマデ耐エキレルカナ」

「前ばかりで…後ろがガラ空きなんだよ!」

「何!!」

葛城は、雷田が飛鳥に攻撃を集中している事を逆手に、後ろに回り込んでいた。そして、高く跳び上がり雷田の顔に、強烈な蹴りを喰らわせようとした。

「もらった〰」

 

 葛城の足が、雷田の顔に近付いた時だった。

「助けて…」

「ハッ!」

「助けて…くれ…」

「この声は……オッサン(渡辺出雲)の時の…」

突然、葛城の心の中に助けを呼び声が聞こえた。渡辺と戦った時もそうであった。その声はまるで、怪人と化した人間のもう一つの人格が呼びかけている様でした。葛城は声に反応し、相手に当たる前に攻撃を中断してしまった。雷田は、そんな葛城のスキをつき、電線を葛城に向かって伸ばた。

「葛姉!危ない」

「なっ!」

「クラエ〰」

 葛城は、成す術もなく黙り込んでしまった。この時葛城は、油断した自分が悪かったので、どうにでもなれと思っていた。電線は葛城を直撃しようとしたが、次の瞬間、白いツインテールをなびかせた一人の少女が、和傘を盾に葛城を守った。

「や⋯柳生⋯」

少女の正体は、一年の柳生でした。

 

 「何を油断している。いつものお前はどこに行った」

柳生は、毒の効いた言い回しで、葛城に言った。冴えない葛城を見た柳生は、若干ピリピリとした感情をみせていた。そんな柳生に続いて雲雀も駆け付けた。

「飛鳥ちゃん・葛姉、助けに来たよ」

「雲雀ちゃん、柳生ちゃん」

「チッ!奴ラノ仲間カ。⋯⋯ナラ、マトメ殺ロシテヤルー」

雷田は、柳生に攻撃を防がれたのがよほど悔しかったのか、頭の電線をさらに多く生やした。そして、その電線を束のようにまとめ、太い電気の光線を四人めがけて放った。

「あ、また来た!」

「大丈夫、電気なら雲雀に任せて。お願い、忍兎」

雲雀が印を称えると、雲の様なものに体を潜めた兎が召喚された。

 

 忍には、自分の個性に合わせた「口寄せ動物」が奥底に眠っている。そんな忍兎は、雲雀の口寄せ動物なのである。

 

 忍兎は、雷田の放った電撃をその雲の様な体で吸収し始めた。

「ナンダ、アノ兎。⋯⋯俺ノ電撃を吸収シテイル」

電気を蓄えれば蓄えるほど、忍兎はどんどん大きくなっていき、初めはぬいぐるみの様な可愛らしいサイズの忍兎が、なんと大型トラックの様な大きさへと変わった。

「よし、いけー忍兎‼」

電気を全て吸収した忍兎は、雲雀の合図と同時に溜め込んだ電気を一気に雷田へと放出した。その量(電撃の)は、雷田の攻撃をはるかに上回るものであった。

「ぐわぁぁぁぁー。凄イ量ダ⋯キュ⋯吸収シキレナイ⋯」

自身の電撃を倍返しで喰らったら雷田は、電線は燃えて、固い体の表面も剥がれそうになっていた。

 

 「凄いよ雲雀ちゃん」

「いいぞ、雲雀」

「よっしゃー、そのままあいつをぶっ倒して⋯」

四人はこの時、勝利を確信していた。そう思った次の瞬間…。

「痛い⋯」

「なっ!」

「痛い⋯今すぐ⋯やめてくれ。⋯た⋯助けて」

葛城の心の中で、再び謎の声が聞こえた。『痛い…助けてと』苦しそうに藻掻いているような苦痛の声です。そ声は、不思議なことに雷田の方向から聞こえてきます。葛城は、もしかしたら化け物と取り憑かれた人物は痛みを共有しているのではないかと思い焦りだした。

「‼雲雀、やめろ!」

葛城は、雲雀を取り押さえ攻撃を強制終了させた。これには飛鳥と柳生、雲雀は驚きを隠せません。

「えっ」

「ちょっと……どうしたの葛姉!」

「ダメなんだよ!アイツが⋯⋯アイツが痛がってるんだよ⋯雷田のヤツが」

「何を言ってるんだ葛城!⋯さっきから様子がおかしいぞ」

 

 大好きな雲雀取り押さられるを見て、柳生は怒りを抑えられず、葛城の胸ぐらを掴んだ。

「違うんだ聞いてくれ⋯アイツが⋯」

「柳生ちゃんと葛姉、喧嘩は良くないよ…」

 

 そんな中、ほったらかしにされた雷田下を向いて、不気味な笑みを浮かべた。そして、頭部からまた新しい電線を1本伸ばしたが、4人は気付いていませんでした。

「余所見シテルンジャネーゾー」

「「「「!!!!」」」」

電線は、勢いよく伸びて葛城に向かって突っ込んだ。それにいち早く気付いた柳生は、葛城をかばい自分が電線に捕らわれた。

「しまった!!」

「ケッケッケ-、忍1人捕獲!」

「「柳生ちゃん!」」(飛鳥・雲雀)

柳生は、雷田の電線に体を縛られ、宙吊りにされてしまった。藻掻いて抜け出そうとするも、動くたびに電線から電気が流れ、思うように動けません。

 

 飛鳥は、再び二刀流を構えて雷田の元へ走りだした。

「待ってて柳生ちゃん。今、私が助けて……あ、あれ?な、何だか眠気が……何コレ……」

「おい、どうした飛鳥!」

「飛鳥ちゃん」

突然、先ほどまで元気だった飛鳥の動きが鈍り始めました。体は重く、眠気はさし、体の力は抜けて手にしてた二刀流も地面に落としその場で倒れ込んでしまいました。

「一体…なん…で……」

飛鳥は力を振り絞ってしゃべりましたが、力尽きてその場で寝込んでしまいました。

 

 葛城と雲雀は、何が何だかわかりませんでした。

「飛鳥ちゃん、しっかり。飛鳥ちゃん、死んじゃやだ」

雲雀は、涙を浮かべて飛鳥の体を揺すりましたが、全然起きません。葛城は、飛鳥の口元に耳を近づけて呼吸の有無をかくにんした。

「大丈夫だ雲雀。飛鳥は死んじゃいないよ」

「本当……よかった」

 

 突然倒れた飛鳥ですが、命に別状はなかった。

「オイ電柱男!お前……飛鳥に何をした!」

葛城は、雷田に向かって怒鳴りつけた。雷田は、余裕の笑みを浮かべて葛城の質問に答えた。

「ケッケッケ。ソロソロ薬ガ効イタカ」

「薬!?」

「アア、俺ガソノ女に何ヲシタカ思イ出シテミナ…」

葛城は、雷田と出会ってからの出来事を頭の中で振り返ってみた。雷田は、『薬』と言っていましたが、闘っているときに薬を使う事は至難の業ですが、そういう素振りはありませんでした。葛城は、闘っている時以外の場面も振り返ってみた。

 

すると、葛城は思い出した。

「ハッ!まさか、あの銃弾に!」

「流石ハ忍。ソノ通リサ!」

それは、飛鳥と葛城が雷田の影武者を尾行していた時のことであった。影武者を本物の雷田と勘違いし、2人は影武者を取り抑えました。しかし、その男が影武者と気付いた瞬間、飛鳥の顔に一発の銃弾が擦ったのです。その銃弾には、喰らった相手に凄まじい眠気を与える睡眠薬が入っていた様子。

 

「安心シロ、命ニ負担ハ無イ。タダ…俺様ガオ前ラヲ殺スケドナ!!ハハハハハー」

挑発するかのように、高笑いする雷田。

 

 葛城は、自分のせいで柳生は捕まり、飛鳥は罠にハマってしまったと、責任を感じていた。先ほどと比べて息も荒くなり、顔に汗がにじんでいた。

「ちくしょーめ〰 」

葛城は、やけくそになり雷田へ突っ込んだ。

「駄目だよ葛姉!変に突っ込んだら…」

雲雀は、止めようとしたが遅かった。

「ヌルイワ〰!」

「ぐわっ!」

「葛姉!」

葛城は、雷田の金棒のような腕に叩きとばされた。

「サッキマデノ勢イハドーシタ!忍トイウノハ、チョロイ者ダ。捨テ駒2人が失ッタダケデ、コンナニ落チブレルトハナ…ハーハッハッハー」

再び高笑いで挑発する雷田。

 

 葛城は、悔しさと責任感で頭がいっぱいになっていた。

「ちくしょー…ちくしょー」

葛城は、目には大粒の涙がこぼれようとしていた。

「何をやってるだ、葛城!!」

突如響いた怒鳴り声。声の主は、捕まっていた柳生であった。

「や……ぎゅう…」

「……柳生ちゃん」

いつもクールで、控えめな柳生なのだが、今回の葛城を見て珍しく大きな声で怒りを訴えた。

「それが、いつものお前か!お前の得意な戦いが全然出来ていないぞ!!」

「柳生……わかってるぜ。でも……アタイのせいで…オマエと飛鳥が…」

柳生は一旦黙り込み、今度はいつのものクールな感じしゃべり始めた。

「お前は、勘違いしている」

「なっ!?」

 

 「俺はお前のせいで捕まった訳じゃない。俺は自分の意思で捕まったまでさ……仲間を守るうえで当然の事をしたまでだ」

「仲間…」

そして柳生は、慣れない声の大きさで再び葛城に怒鳴る。

「オレが知ってるお前は、どんな事でも動じない無責任なお前だ!!!」

「ハッ!」

柳生の言葉を聞いた葛城は、気づいた。今の自分はいつもの自分じゃない事に。柳生は遠回しに言っているが、間違ったことは言っていない。

 

 しかし、すっかりほったらかしにされた雷田も、黙ってはいません。

「貴様、俺ヲホッタラカシニシテシャベルトハ、良イ度胸ダナ。……悪イガ…捨テ駒ハ、引ッ込ンデロ〰!」

「ぐわ〰!!」

雷田は、柳生の電線に強めの電撃を流し始めた。

 

「柳生〰!」

葛城は、電撃に苦しむ柳生を助けようと、雷田の元に走りだした。そして、服の裏に隠していた変身ベルトをすかさず装着した。

「葛姉、そのベルトは、一体?」

謎のベルトに、雲雀は疑問を問いた。しかし、葛城は止まることなくベルトのボタンを押し、縦二つに開いたベルトに忍転身の巻物を挿入した。

『オーダー通シマース! 忍転身一丁』(ベルト音声)

「忍…変・身!」 

『オーダー入リマース! セクハラーメンマン一丁!!』(ベルト音声)

開いたベルトを閉じると、葛城はセクハラーメンマンのバトルアーマー姿へと変身した。

 

 「くらえ〰!」

「早イ!!ぐっ…ぐわ〰〰」

 葛城は、勢いよく突っ込み、雷田の体に跳び蹴りを食らわせた。それはただの蹴りではなく、仲間を捨て駒だと馬鹿にした雷田への怒りの鉄槌でもありました。しかし、攻撃は終わってません。

『速サ…マシマシ(増し増し)!』(ベルト音声)

葛城は、ベルトを2回開け閉めした。すると、蹴りのスピードが早くなり、まるでマシンガンの乱れ打ちかの様に葛城は雷田の体に蹴りまくった。

「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ〰〰!!」

「ぐわ〰!!!」

雷田は、葛城の蹴りを受けて離れている所にあったゴミ捨て場までぶっ飛ばされた。そのひょうしに、捕らわれていた柳生は解放され、葛城によって救出された。

 

 葛城は、気を失った柳生を抱えて、雲雀の元へともどった。雲雀は、突如変身した葛城に対し、頭が追いついていませんでした。

「雲雀、柳生と飛鳥を頼む」

葛城は、抱えてた柳生を雲雀の元へ優しく下ろした。

「葛姉……その姿って…」

「悪い、説明してる暇は無いんだ。……あの電柱野郎は、アタイが倒す!」

 

 飛鳥と柳生を雲雀に預けると、葛城は雷田が飛ばされたゴミ捨て場へと向かった。

「俺ノ…自慢ノ体ニ……ひびが…オマエハ一体」

雷田が問うと、葛城は答えた。

「小さき山(貧乳)が危機の時!大きい山(爆乳)の危機の時!!いやっ、地球(おっぱい)の危機はアタイが守る!!!セクハラーメンマン舞忍びます!!!!」

 

 葛城は、決めゼリフと共にポーズを決めた。しかし、それをみた雷田は、自分をなめているのかの様に感じた為、怒り出した。

「ぐぐぐ…俺ヲナメヤガッテ〰忍……絶対コロス〰!!」

雷田は、再び頭から大量の電線を生やし、葛城に襲い掛かった。

「いっ!またアレかよ 」

葛城は、再びベルトを開け閉めした。

『速さマシマシ(増し増し)』(ベルト音声)

葛城のスピードは、また一段と上がり、雷田の電線攻撃を次々と避けていった。

 

 「これじゃキリが無いな。なら、コイツで…」

葛城は、すかさずベルトのボタンを押し、胸元から透明色のUSBメモリを取り出しベルトに挿した。

『トッピングオーダー入リマース……コラーゲンボール』(ベルト音声)

グローブから、コラーゲンで出来たボールが出現した。前回の渡辺出雲との戦いでは、このコラーゲンボールで攻撃を防いでいるのだ。そんなボールを葛城は、電線の根元に投げつけた。

「よし、これでヤツの動きは止まって…」

「コンナ攻撃が効クカ〰 」

雷田は、あっさりとコラーゲンボールを電撃で跡形も無く消した。これには、葛城も唖然。

 

 「ま、マジかよ やっぱり、オッチャン(渡辺出雲)の時みたいにはいかねーか…それなら」

葛城は、胸元から別のチップを取り出そうとするも、雷田はそれをいち早く察知した。

「何ヲコソコソヤッテルンダ、小娘〰」

「おっと、危ねぇ 」

雷田による電撃で、うまく攻められない葛城。葛城は、何か一瞬でもスキが出来ないかと、チャンスをうかがうも、なかなか思うように動けません。

 

 遠くから看ていた雲雀も、葛城を心配しながらも、自分にも何か出来ないかを考えていた。本当ならば自分も戦いたいものの、今の自分には飛鳥と柳生のそばにいるという指名がありました。

「葛姉!」

「雲雀!アタイは、大丈夫さ。ちくしょー、思っていたより手強いな…何か他に手段は……ハッ!そういえば…」

 

(回想シーンスタート)

 葛城は、思い出した。それは、遡ること数日前、春花から変身ベルトを渡された時のことでした。

「この変身ベルトは、使い方によっていろんな能力を発揮するのよ」

「どういうことだ春花?」

春花は、ベルトを使って葛城に仕組みを説明した。

「このベルトは、アナタの巻物は勿論、他の子の巻物や巻物以外も挿入可能になってるの。ただ、どういう能力を発揮するかは私でもわからないけどね」

 

(回想シーン終了)

 そして、話は現在にもどる。春花が言った事を思い出した葛城は、あることを思いついた。

 「よし…い一か八かでやってみるか。雲雀!」

「な、何、葛姉…」

「お前達3人の巻物を、ちょっとだけ貸してくれ!」

葛城は、遠くで見ていた雲雀に、自分達の巻物を貸りたいと言い出した。突然のお願いに、雲雀は若干困惑気味です。

「え、雲雀達の巻物……一体何で」

「いいから早く渡してくれ」

「何ヲ企ンデイルカハ知ランガ、サセテタマルカ〰!」

葛城と雲雀のやりとりに気付いた雷田は、金棒の様な拳で殴り掛かろうとした。

 

 「葛姉!」 

『このままだと葛城がやられちゃう』そう思った雲雀は、自身の胸元に仕込んでいた巻物を葛城のに向かっても投げつけた。

葛城は、雷田の攻撃を軽やかに避けきり、雲雀の巻物を見事にキャッチした。そしてつかさず、ベルトのボタンを押した。

『足甲オーダー通しマース』(ベルト音声)

葛城はベルトを開き、挿入していた自分の巻物と雲雀の巻物を取り替えた。

『足甲オーダー入リマース…忍(しのび)…雲雀!』(ベルト音声)

 

 すると葛城の足甲が、雲のようにモコモコとしたピンクのブーツへと早変わりした。

「おいおい、何だよこの足甲は。こんなにモフモフしてて闘えるのか?」

普段の足甲と比べて小さく、さわり心地の良さそうなふわふわとした柔らかさ、まるで綿を素足で履いているかの様な感覚でした。葛城は、みるみる心配になってきた。それとは逆に、雲雀は目を輝かせて足甲を見ていた。

「葛姉、可愛い~。雲雀もそんなブーツが欲しいなー」

「おい!今、そんな事を言ってる場合じゃ…」

「余所見ヲスルナト言ッタダロ〰 」

雷田は、頭の電線で葛城を襲おうとした。

「ヤバっ!また来やがった」

その時、葛城が思った訳でもないのに、足甲がピクピク動き出した。それはまるで、足甲が葛城に、何かを教えているかの様に見えた。さらに足甲は、雷田の電気に喰い気味で反応している様にも見えた。

「!!なるほど…よし、試してみるか!コレでもくらえ〰」

葛城は、足甲にチャクラを溜め込み、1つの雲の様な塊を生み出した。そしてそれを、雷田の頭元に向かって蹴り飛ばした。

 

 雲は見事に、雷田の頭に命中した。まるで、アフロヘアーのカツラを被っているようにも見ます。

「よっしゃー。命中!」

「コンナ子供騙シナンゾ、俺ノ電気デ跡形モ無ク……」

雷田は、自信の電気を集中させて雲を消そうとした。しかし、電気を流せば流すほど、雲は消えるどころか、どんどん大きくなっていきます。

「クッ…何ダコレハ…」

 

 葛城は、何かを狙っているのか、余裕の表情を浮かべていた。

「さ~てと。そろそろ……一丁やりますか!」

葛城は突然、指をならしました。すると、雷田の頭の雲が、鉄のように一気に固まり、重量を増した。

「グワ〰〰〰!ナ…ンダコレは…タ……立テナイ……」

葛城は、雷田の目の前で技の解説を始めた。

「雲雀の使う属性は“電気”。忍兎がアンタの電気を吸収して巨大化したのと同じさ。その雲は、電気を吸収すればするほど大きくなって、やがて相手の動きを鈍らす錘へと変わる……まぁ、アタイも勘で使ってみたけどな!」

 

 葛城は、何だかいつもの調子が戻ってきた様子。まさに、柳生が話していた『どんな事でも動じない無責任な葛城』のであった。そんな葛城に、雷田は恐怖を感じ始めた。

「マッ…待ッテクレ……金ハ出ス……ダカラ……タスケ…」

最初は、傲慢な態度を見せていた雷田も往生際が悪くなり、負け犬の遠吠えを吐くようになっていた。しかし、もう手遅れです。 

「もう遅いぜ!アンタには、アタイらの仲間を傷つけた罰があるからな!」

 

 葛城は、ベルトの巻物を取り出し、新しい巻物と交換した。その巻物には『柳生』という文字が刻まれていた。そう、柳生の巻物です。

『足甲オーダー入りマース…忍(しのび)…柳生!!』(ベルト音声)

足甲は、モフモフしたブーツからイカの形をした足甲へと姿を変えた。 

 

 「待テ!マッテクレ 命だけは…命だけは…」

懲りずに、媚び続ける雷田。葛城は、一歩一歩雷田の元に近づいた。

「アタイは、雷田誠の命は狙っていない…」

「ホッ!(ホッとする)」

「ただ…アタイが許せないのは、仲間の事を捨て駒扱いした電柱野郎だ!ハッ!」

「ナッ!」

葛城は、高く跳び上がった。すると、イカの形をした足甲が、凍りはじめた。

 

 柳生の属性は“氷”。足甲は葛城と柳生の思いに答え、氷のドリルの様な形へと変化した。葛城は、狙いを定めると、素早く回転した。その姿は『氷のドリル』そのものであった。

「柳生のためにも、アタイはアンタを許さねー!」

「待テ……ヤメロ〰」

「英雄忍法 “龍陣氷河撃”〰!!」

葛城は、落下の勢いにのせて更に回転を効かせ、氷のドリルキックを雷田にお見舞いした。キックを喰らった雷田は、体がみるみる凍っていました。

「グォ〰〰〰〰!サッ…寒イ!息が出来ない…ギャア〰!」

雷田は、化け物の体と人間の体に分裂しました。人間の方体は、何事も無かったかのように無傷な状態。逆に化け物の方は、体中が氷で覆われ粉々に割れてなくなりたした。更に、雷田を吸収していた電信柱も元通りになっていた。

「よっしゃー!今回も、一丁あがりー!!」

「葛姉……すごくカッコイイよかった」

葛城は、拳を突き上げる勝利を喜んだ。雲雀も、初めは何が起こったのかさっぱりでしたが、今では葛城に目を輝かせて一緒に喜びました。

 

 数分後、飛鳥は雷田による睡眠薬入りの弾丸の呪縛が解け、目を覚ました。

「あ、葛姉!飛鳥ちゃんが目を覚ましたみたい」

「ひっ…雲雀…ちゃん?これは一体……ハッ!そうだ、雷田誠は!?」

「心配はいらねーよ、飛鳥。雷田誠は、この通り」

目にした光景は雷田を背負った葛城と手当てをする雲雀の姿であった。雷田は、葛城との戦いであれほどのダメージを受けたのにもかかわらず、無傷のまま気を失っていた。さらにもう一つ、葛城だけに謎の声が聞こえてきたのも、一体何を意味しているのか。謎は深まるばかりだ。

 

 「う…ひ、雲雀は…」

飛鳥に続いて、柳生も目を覚ました。

「あ、柳生ちゃん。良かった-、雲雀すごく心配したんだよ」

「雲雀…無事だったか…。ハッ!アイツは…あの電柱男は!?」

「大丈夫だよ柳生ちゃん。電柱のお化けは、葛姉がやっつけたよ」

「なっ!」

「葛姉が!」

 自分達では手も足も出なかった強敵を一人で倒したことを知り驚く飛鳥と柳生。柳生に関しては、驚いてすぐに表情が曇った。

「へへーん、アタイにかかればアンナ野郎なんてコテンパンさ!ニッシシシシシー……あっ」

いつものテンションで話していた葛城だが。

「皆……ゴメンよ!」

葛城は、大きく頭をさげて謝罪した。これを見た飛鳥と雲雀は、タジタジ。

「葛姉!?」

「どおしたの?」

 

 葛城は、顔を上げた。

「急にアタイが、自分勝手な判断で戦いのペースを乱してしまった。……そのせいで…あんな…」

いつもは、セクハラ大好きでお調子者の葛城だが今回は、自分の行動で仲間に負傷を追わせてしまったことを強く反省している様子。

「本当に……すまなかった」

「柳生ちゃん!?」

すると柳生は、浮かない表情で葛城の近くへと向かった。

「柳生……あの時はごめん…アタイはただ…その…ぐぉ!」

柳生は、強く握りしめた拳で葛城に強めのボディーブローを食らわせた。

「柳生ちゃん!!」

「葛姉!!」

ボディーブローを喰らった葛城は、よろめいて地面に膝をつけて座り込んだ。シカシ、このボディーブローには、柳生なりの思いが込められているのです。

 

 「勘違いするなら葛城。俺は、オマエの変な考えに怒ったわけではない」

「えっ!」

「俺は、この半蔵学園のチームでこれまでオマエと戦ってきたが、戦いでのオマエは一度も間違いないを起こしてなんかいない」

柳生は、遠回しに葛城への思いを話した。今まで一緒に戦ってきた仲間だからこそ、どんな時でも信じ合い、助け合うことが大事なのです。

「そういえば柳生ちゃん、葛姉が電線に捕まりそうになってた所を助けてたよね」

「うん、柳生ちゃんは葛城の事を仲間として守ろうとしてたんだね」

飛鳥も雲雀も、葛城の事を怒るどころか柳生と同じで葛城を信じていました。

それを知った葛城は、柳生の思いを聞いて自然と笑みがこぼれた。

 

 「は…は…ハッハッハッハッハー!アタイってカッコ悪いな-。後輩に忘れてた事を教えられるなんてな」

さっきまで落ち込んでいた葛城でしたが、3人の思いを知り、いつもの調子に戻りました。そんな葛城を見て、柳生は手を差し伸べた。

「オマエはそれでいいんだ……ほら」

「ああ!」

葛城は、柳生の手をとってたちあがった。

「だが、次に雲雀を取り抑えたらこの程度じゃ済まないぞ 」

「にっ 」

とどめに、鬼の形相も浮かべられた。

 

 

 4人は、さっそく学園に戻り、白い粉の事だけでなく、葛城だけに聞こえた謎の声のことなどといった情報を斑鳩と霧夜へ報告した。その中で特に気になっていたのは、『謎の声』の情報でした。霧夜は、首をかしげて考え込む。

「助けてかぁ…本当にその声は、葛城だけに聞こえた声なのか?」

「はい、私と雲雀ちゃん、柳生も一緒に戦っていました……でも、全然聞き覚えが無くて」

「本当なんですか、葛城さん」

「本当何だ!それに、声が聞こえたのは今日だけじゃないんだ。オッサン(渡辺出雲)と戦ったときも…」

葛城も、なぜ自分だけに謎の声が聞こえるのかさっぱりです。他の5人も、浮かない様子。しかし、本当に声が聞こえたのは葛城だけなのだろうか?本当に怪人に取り憑かれていた人間が呼びかけていたのか?謎は一層に深まるばかりだ。

 

 霧夜は咳き込み、話を切り替えた。

「今回の任務は、ご苦労だったな。引き続き、この件は我々で捜査を行っていく。ただ、相手はまたいつ攻めてくるかわからない。少なくとも、我々(忍)を狙っていることは確かだ」

霧夜の言葉に緊張感が奔る一同。しかし、それはほんの一瞬だけだ。なぜなら彼女達は、これまでもいくつもの試練を乗り越えてきたからだ。

「いいか、くれぐれも無理をしないように……以上!解散!!」

「「「「「お疲れさまでした!!!!!」」」」」

少女達は、挨拶と同時に綺麗に頭を下げた。

 

 霧夜の話が終わった後、雲雀は葛城の耳元で呟いた。

「今日の事、皆には内緒にすればいいんだよね」

「ああ、なんかすまないな雲雀 」

どうやら戦いの後、葛城は雲雀に『皆に、内緒でヒーローを目指している事は内緒にしてほしい』とお願いしていた様子。雲雀が快くOKしたのには訳があります。

「うんうん、いいよ。だって葛姉は、ヒーローになっても雲雀達が知ってるいつもの葛姉なんだもん」

「なんだよそれ!」

嬉しそうに笑う葛城に、雲雀も安心した。

「2人とも、何を話しているの?」

 2人の会話が気になり、間に入る飛鳥。

「え?いや、別に 」

「えー気になるってば!私にも教えてよ」

「何もないって言ってるだろう。なぁ、雲雀!」

「えぇっ!そ、そうだよ…何でもーないよ」

焦って、片言っぽく喋る雲雀。

「あぁ~雲雀ちゃんも何か隠してる」

 

 一方、遠目からその様子みていた斑鳩と柳生は。

「何を話しているのでしょうか?」

「ほっとけ。いつもの事だろう」

興味がなさそうに、振る舞う柳生。だが彼女は、ほんの一瞬だけ嬉しそうに微笑んでいた。そして、斑鳩に聞こえないくらいの小声でこう呟いた。

「ありがとな……セクハラーメンマン」




 バトルシーンとキャラクターのやり取りを考えるのに、凄く苦労しました。でも、僕がここまで来れたのも
読者の皆様のおかげです。これからも、「座右の銘」でもある『一生懸命』を忘れずに頑張ります。
次回から、クロスオーバーらしき展開になります。

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