閃乱カグラ外伝 ヒーローは動く   作:智昭

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 前回、突如現れた猫又軍団の襲撃に対し、葛城と春花は見事なチームプレイで相手を見事に撃破した。しかし、それに続いてやって来たのは、焔との闘いからさらに力を増した2体の怪人であった。
 春花は、2体の傀儡を用いて『ウナギ怪人』に勝負を挑む。その一方、葛城はもう一体怪人『ザリガニ怪人』との闘いに挑んでいた。ハサミ攻撃に対し、葛城は双剣で身を守るも、相手の怪力もあって苦戦中だ。
 果たして、今回はどうなるセクハラーメンマン!


第15話 プライドvsプライド

 双剣でザリガニ怪人のハサミ攻撃を受け止めていた葛城。

攻撃を防いだところまでは良かったものの、相手の怪力によって思うように動けない。

変身したとはいえ、これではさすがの葛城も力尽きるのも時間の問題であった。

「さーて、どうする?このまま、お前の体ごとブッダ切る事だってできるんだぞ」(ザリガニ怪人)

余裕の表情で挑発するザリガニ怪人。

ほんの少しハサミを動かすと、葛城の双剣のヒビが少しまた広がっいく。

 

 しかし、葛城も負けじと馬鹿力で対抗する。

「へっ!冗談じゃねーよ。この程度でやられたら、ヒーローという肩書きを怪我してしまうから…な!」(葛城)

「ぐわっ!」(ザリガニ怪人)

葛城は片足を上げると、ザリガニ怪人の腹部に一発の蹴りを繰り出した。

両腕に集中してた分、ザリガニ怪人の腹部はガラ空きになっていたのだ。

 

 そして、ザリガニ怪人が離れたところ、葛城に攻撃のチャンスが来た。

「どりゃあああああああああ!」

葛城は、ザリガニ怪人の腹部に、これでもかと思うほどの連続蹴りをお見舞いする。

蹴りにより、ザリガニ怪人の体は前へ前へと押されていく。

「無駄無駄!今の俺の体の甲羅は、以前の数倍硬度を上げている」(ザリガニ怪人)

葛城が一歩リードしているかのように思われたが、攻撃は芯まで届いていなかった。

それでも葛城は攻撃を辞めません。

甲羅にヒビ一つは入れたいところだが、葛城の蹴りでも甲羅はびくともしない。このままでは、ただ体力だけが消費してしまうだけだ。

「チッ、それなら…」(ベルト音声)

『トッピングオーダー入リマース…コラーゲン』

胸の谷間から、透明色のUSBメモリを取り出し、変身ベルトに挿入した。

右の手のひらを開くと、透明色でプルンプルンな球体が一つ作られた。

「コラーゲンボール!!」(葛城)

 

 その正体は、過去に土蜘蛛怪人と戦った際に使用したコラーゲンボールである。

これを使って、土蜘蛛怪人の糸攻撃をうまく防いだこともある。

葛城は、その球体をザリガニ怪人の顔目がけて投げつけた。

「ぬわっ!め、目が…」(ザリガニ怪人)

コラーゲンボールは、ザリガニ怪人の目に入り、視界を妨げた。

 

 ザリガニ怪人は、やむを得ず目に入ったコラーゲンボールを洗い落とそうと、急いで池の方に向かって走り出した。

「これは、単なる時間稼ぎ…次で決める!」(葛城)

そのスキに、葛城は胸元から“秘伝忍法”と記された巻物を取り出した。

さらに、もう片方の手には赤のUSBメモリを手にしていた。

「いくら外が硬くても、中はプリプリの甲殻類だ!」(葛城)

『オーダー入リマース…秘伝忍法』(ベルト音声)

「からの~」(葛城)

『トッピングオーダー入リマース…炙り!』(ベルト音声)

葛城は、変身ベルトを縦に開くと、巻物を挿入口へと挿し込んだ。

さらに、もう片方の手に持っていたUSBメモリも挿入すると、開いていた変身ベルトを強く閉めた。

 

 すると、足甲から再び炎が着火されると、葛城は走り出した。

「うぉぉぉぉ、これならどーだ…とぉ!」

葛城は、その勢いと脚力を活かし、高く跳び上がる。

「英雄忍法 ヘヴィーサラマンドラァァァァ!」(葛城)

落下の勢いに乗せて、炎の飛び蹴りが放たれた。

足甲の炎は落下による向かい風により、さらに大きくなってザリガニ怪人へと迫っていく。

 

 ザリガニ怪人は、池の水で目を洗っており、背中は今ガラ空きの状態であった。

「もらったぁぁぁぁ!」(葛城)

だが、相手も一筋縄ではいかない。

「フン、馬鹿め!俺の背後を簡単に狙えるなんて思うなよ!」(ザリガニ怪人)

後ろの気配に気付いたザリガニ怪人は、振り返り両腕の野太いハサミを盾にして、葛城の攻撃から身を守った。

 

 攻撃は防がれたものの、まだ終わらない。

それでも葛城は、攻撃を継続する。

落下勢いは、直撃後に比べて落ちているが、葛城は攻撃が完全に直撃するまで足を地面に付ける訳にはいかなかった。

 

 この攻撃(蹴り)には、焔の思いも詰まっている。

いくら悪忍であろうと、友情や絆を熱く大切に思う葛城には、それを侮辱した怪人達を許すわけにはいかない。

それは、共に傷だらけになるまで闘い、同じ“カグラ”の道を目指すと決めた忍だからこそ生まれた絆でもあるのだから。

「まだまだ、諦める訳にはいかねーんだよ」(葛城)

『火加減…マシマシ!』(ベルト音声)

 

 葛城は、手を伸ばしベルトの巻物挿入口を2回ほど開け閉めした。

すると、足甲の炎が大きく燃え始めた。

それにより、炎の飛び蹴りはさらに勢いを増し、力さらに増幅した。

 

 だが、それでもザリガニ怪人は怯まない。

先ほどから、燃え上がる足甲を受け止めているにも関わらず、ハサミにはヒビどころか、焼け跡1つも入っていません。

葛城の攻撃も、相当な威力を誇っている思われるが、相手の防御力も焔に一度敗北したぶん改善されていてもおかしくはない。

「なんだコレは?お灸か?その程度の炎じゃ、俺の甲羅は破れないぞ!」(ザリガニ怪人)

「ヘン!言ってくれるじゃねーかオッサン。だが、アタイはまだまだ諦めない!!」(葛城)

 

 相手に挑発されたままでは、葛城のヒーロー魂も黙っていられない。

負けじと葛城は、ベルトの巻物挿入口をさらに2回開け閉めする。

『火加減!マシマシマシマシ〰!!!!』(ベルト音声)

すると、足甲の炎は熱を増し、さらに大きな炎へと姿を変えた。

それだけでなく、先ほどまで赤かった炎が、温度を上げて青い炎へと変わった。

「うぉぉぉぉぉ!」(葛城)

「ぐっ!この女…まさかここまでやるとは…ハッ!」(ザリガニ怪人)

ザリガニ怪人は、自身の異変に気づいた。

先程までビクともしなかったハサミに、足甲の炎による焼け跡が刻まれていた。

それだけでなく、炎の影響で甲羅が脆くなり始めたのか、“ピキッ”という音も聞こえてきた。

「うぉぉぉぉぉ!行っけぇぇぇぇぇぇぇ!!」(葛城)

「ぐっ…なっ!」(ザリガニ怪人)

ボカァァァァァァン!

 

 プライド(炎の足甲)とプライド(ハサミ)の衝突により、大きな爆発は起こった。

その煙の中からは、そんなプライドをぶつけ合った2人が姿を現した。

「うわぁぁぁぁぁ、おっと!ふぅ」(葛城)

「ぬわぁぁぁぁぁ!」(ザリガニ怪人)

ザリガニ怪人は、衝突により吹っ飛ばされ、そのまま後ろの池へと落っこちた。

一方の葛城も吹き飛んだものの、なんとか体勢を整え着地に成功した。

そして…。

「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

葛城は、叫んだ。

 

 ぶつかり合いに、自身のヒーローとしてのプライドが勝利したことに、喜びの叫びが思わず飛び出す。

「へへーん、どんなもんだい!正義は勝つ!ブイブイ…痛てっ!」

喜ぶ葛城であったが、戦いでの痛みが時間差で効いてきた。

敵にダメージを与えたとはいえ、渾身の一撃に相当なチャクラを消費してしまい、葛城の体はフラフラであった。

先程の着地も、奇跡である。

「痛ててて…ちょっと無理しすぎたぜ。それにしても、なんて硬い甲羅なんだ…アタイの蹴りでもビクともしないなんて、チタン合金でも入ってんのか?」(葛城)

 

 まだまだ気になる事は多いが、葛城の目的はこれからであった。

そもそも今回の任務は敵に関する情報収集。

白い粉と怪人の情報を見比べる為に、怪人の体の一部を回収しないといけない。

葛城は、ザリガニ怪人が落ちたく池へと向かった。

 

 池の近くに着くと、警戒しながら辺りをキョロキョロとして、ザリガニ怪人を探し始めた。

「たしか落ちたのは、この辺だっけか?甲羅の破片でもいいから落ちてないかな」(葛城)

ブクブクブクブク…。

―!!―

葛城は、異変に気付いた。

突然、池の水面からブクブクと空気による泡が発生した。

それを見た途端、何かを勘づいた。

 

 そして…。

「おりゃぁぁぁぁぁ!」(ザリガニ怪人)

「ナッ!まずい…」(葛城)

水面から飛び出してきたのはザリガニ怪人のハサミだ。

いち早く気付いた葛城は、体を後進させて攻撃を回避した。

あと一秒遅れていたら、体は切り裂かれていてもおかしくはなかった。

その証拠に、バトルアーマーには一筋の斬り傷が刻まれていた。

 

 そんなことよりも一番の衝撃は、あれほどの攻撃を受けてもまだ生きている怪人の頑丈さであった。

ブクブク…。

「ぶはぁー。ふぅ…痛ってーな」(ザリガニ怪人)

水面から、ザリガニ怪人は顔をだし、陸へと上がった。

「お…オッサン、何でだ…アタイの攻撃は確かに…」(葛城)

「攻撃?コレでか?」(ザリガニ怪人)

―!!―

ザリガニ怪人は、自身のハサミを葛城へと見せた。

ハサミには、葛城の足甲と思われる跡が深く残されていた。

熱の影響で、初めの薄い赤色から濃い赤色へと甲羅自体も変色している。

さらに、その跡をよく見ると、真ん中に1、2㎝ほどのヒビが入っている。

なのにも関わらず、ザリガニ怪人は何も無かったかの様な余裕の表情をうかべていた。

「俺の甲羅にヒビを入れたのは褒めてやる。しかし、パワーが足りなかったみたいだな」(ザリガニ怪人)

「う…嘘だろう!」(葛城)

「さーて、今度はこっちの反撃といきますか」(ザリガニ怪人) 

「ちぃ、そうはさせ…うっ!やべぇ、さっきの攻撃の影響で…足が」

葛城は、動こうとするも足にとてつもない重量感を感じており、思うように動けなかった。

 

 それもそのはず。

先程の攻撃でかなり無理しすぎてしまい、チャクラや体力の消費はもちろん、足にもそれなりの負担が掛かっていてもおかしくない。

びっこを引きながらでも、葛城は相手から距離を離そうと歯を食いしばりながら後ろへ下がろうとした。

「させるかよ!」(ザリガニ怪人)

そうはさせまいと、ザリガニ怪人は葛城へと走り出す。

そして、右腕のハサミを大きく振りかぶると、ついに。

「言っただろ!何をやっても…無駄だっつってるだろうが〰!」(ザリガニ怪人)

「ぐふっ!ぐわぁぁぁ」(葛城)

「葛城!!」(春花)

ザリガニ怪人の野太いハサミによる強烈な右ストレートが、葛城の左頬に直撃した。

葛城はそのまま、後ろの木へと吹っ飛ぶ。

 

「痛ってててて…ぺっ!やるじゃねーかオッサン。…今のは…正直かなり効いたぜ…」(葛城)

 

葛城は、攻撃を食らってもいつもの様な感じで振る舞っているものの、体はかなりフラついている。

左頬は、腫れ上がり痣が出来ただけでなく、ヘルメットも半分ボロボロであった。

「へへへへ、アタイはまだやれる!アタイは“正義の味方(ヒーロー)”に鳴るって決めたんだ…」(葛城)

葛城は、手を震わせながらと胸元に手を入れてUSBメモリを取り出そうとする。

しかし、そんな葛城に怪人も黙っていない。

「させるか、シザーラッシュ!!」(ザリガニ怪人)

 

 ザリガニ怪人は、左腕のハサミを高速に動かして、レイピアのように突きながら葛城の方へ前進する。

葛城は、歯を食いしばりながら攻撃を避け始めた。

攻撃はそれほど早くはなく、いつもの葛城であれば避けるのは容易いことである。

しかし、今の葛城は左眼の視界が歪んでいるせいか、攻撃を完璧に避けれず、バトルスーツに次々と斬り傷を付けられていた。

「ちぃッ、今のアタイのスキルでは勝つには難しいぜ」(葛城)

何か秘策はないかと模索する葛城だが、ついに足が互いに当たってしまい、バランスを崩してしまった。

「しまっ…」(葛城)

「もらったぁぁぁぁぁ!」(ザリガニ怪人)

「はっ!ぐわぁぁぁぁぁ!!」(葛城)

 

 ザリガニ怪人の繰り出した攻撃により、のセクハラーメンマンの変身が解除されてしまった。

葛城の体は傷だらけで、あらゆる箇所からの出血が目立っていた。

幸いバトルスーツのおかげもあって、傷はそこまで深くはなかったものの、次に攻撃を喰らってしまえば、立てるかどうかわからない状態に追い詰められていた。

 

 「もう終わりか?もうちょっと楽しませてくれると期待していたが…残念」(ザリガニ怪人)

「やべぇ…何か秘策さえあれば…」(葛城)

葛城は、再び胸の谷間に震えた手を突っ込み、もっているUSBメモリを確認した。

入っていたUSBメモリは、『コラーゲン』『キザミ』『炙り』の3つ。

コレだけでは、相手に勝てるかどうか非常に危うかった。

「ちぃ…秘伝忍法を使うにもチャクラが足りねぇ…」(葛城)

 

 もはや葛城は、絶対絶滅であった。

「こ…このままじゃ……ハッ!そういえば」(葛城)

ベルトの裏側が、何やらゴソッとした。

 葛城は、変身ベルトを裏返してみた。

すると…。

「やっぱり…あの時の…」(葛城)

そこにあったのは、セロハンテープでくっつけていた、一つのUSBメモリであった。

そのUSBメモリには、“二郎”という2文字が達筆で書かれており、今までのUSBメモリとは比べものにならない様な何かを感じる。

 

 今から数ヶ月前に遡る。そのUSBメモリは、葛城が春花から変身ベルトを受け取った日に、一緒に渡されたものであった。

渡されたのは、透明色(コラーゲン)・緑色(キザミ)・赤色(炙り)・そして“二郎”という文字が書かれたものの、計4種類。

 

 その時春花は、葛城にこんな忠告をしていた。

「いい!この3つはまだいいけど、間違っても“二郎”は使い方を間違えないでね!」(春花)

「どういうことだよ?」(葛城)

「二郎は、他の3つと比べて凄まじいパワーを秘めているもので、むやみに使うと自身に害を与えてしまう恐れがあるの…そして、この力はある思いで変わるの!」(春花)

「思い!?」(葛城)

突然重たい空気となり、葛城にも緊張が奔る。

春花もいつものドSキャラを忘れ、冷静で真面目な顔で、口を開いた。

春花の口から出た答えは、葛城がヒーローとして動くことにあたっての、課題の一つでもあるのだ。

「それはね…!!」(春花)

 

 こうして、変身ベルトと4つのUSBメモリは、葛城に託された。

葛城は、“二郎”と書かれたUSBを手に取った。

「今は何でもいい。この状況をどうにかしないと、みんなが危ない」(葛城)

『オーダー通シマース…オーダー入リマース…』(ベルト音声)

葛城は、もう一度変身しようと、変身ベルトに再び巻物を挿し込んだ。

「何をするかは知らんが、そうはさせんぞぉぉぉぉ」(ザリガニ怪人)

葛城の様子に気づいたザリガニ怪人は、そうはさせまいと葛城のいる方へ突進した。

その間に、葛城は二郎メモリをもった右手を高く上げた。

そして…。

「超…忍・変・身!!」(葛城)

上げた右手を勢いよく下ろし、そのまま変身ベルトに

二郎メモリを強く挿し込んだ。

『トッピングオーダー…じろ※☆#@○×…』(ベルト音声)

―!?―

 

 二郎メモリを挿入したその時であった。

故障したのか、ベルト音声が急にバグったかの様に、音が乱れ始めたのだ。

それだけではなく、ベルトから謎の電流が葛城の体へ放電された。

「な、なんだ!?ぐ…ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」(葛城)

「なんだアレは?」(ザリガニ怪人怪人)

 

 葛城は、自分が思うように様に身動きがとれず、頭を抑えて苦しんでいた。

「ぐぁぁぁぁ、か…体が…体が言うことを…聞かねぇ…」(葛城)

この様子を見てたザリガニ怪人は、両腕のハサミをお互い擦り合わせ、刃をさらに鋭く磨いでいた。

「フン!切り札だと思ったら、まさかの自滅アイテムかよ。安心しな、お前はそのアイテムでは死なせねぇ…何故なら、俺が殺すからよ!」(ザリガニ怪人)

ザリガニ怪人は、鋭く磨いだハサミを構え、葛城に向かって突っ込み始めた。

 

 しかし、そんな葛城の様子にも変化が現れていた。

「まずい…ヤツが来る…ぐっ!体が…体が、せめてアイツをぶん殴る力…だけでも…」(葛城)

「死ねぇぇぇぇ!!」(ザリガニ怪人)

ザリガニ怪人のハサミは、葛城の顔面に目がけて繰り出され。

 

 しかし、次の瞬間。

「うぉぉぉぉ」(葛城)

「なんだ!?」(ザリガニ怪人)

葛城は、急に雄叫びを上げると、ザリガニ怪人のハサミ攻撃をわずか数センチ辺りのところで避けきった。

「うぉぉぉぉぉ!」(葛城)

「ぐぁぁぁぁぁ!!」(ザリガニ怪人)

その瞬時に打たれた鉄拳は、ザリガニ怪人の腹部へと直撃した。

変身していなければ、忍転身もしていない状態の拳は、ザリガニ怪人を大きく吹き飛ばす。

その拳は、もはや葛城の意志とは裏腹に、別の何かによって操られたかのような感覚であった。

威力も桁外れで、いくら蹴ってもビクともしなかった相手の甲羅は貫かれていたのだ。

「うぉぉぉぉぉ!ぐぁぁぁぁぁ!!」(葛城)

攻撃を終えても、葛城は叫び、再び苦しむ。

放出されている力は、治まる気配も見せず、みるみる葛城の体を取り込んでいるように見えた。

 

 一方その頃、ウナギ怪人と闘っていた春花も、葛城の異変に気付いていた。

「あれは!?まさか葛城、二郎メモリを…」(春花)

特大チャクラに春花は反応し、その方向を振り向いた。

視線の先には、チャクラによって形成された柱のような物が姿を現していた。

それを見た春花は、黙っているわけにもいかず、葛城を救いに走り出した。

「マズいわね。このままじゃ、力に支配されかねないわね…」(春花)

ウナギ怪人と戦闘中の春花であったが、葛城の様子に気づき闘うにも闘いにくい状況に。

二郎メモリを造った張本人としても、この状況をほっとくわけにもいかないのだ。

「おい、逃げるな…」(ウナギ怪人)

春花を逃がさないよう追いかけようとするウナギ怪人

であったが、2体の傀儡が行かせまいと通せんぼする。

「ちっ、なんて傀儡なんだ…」(ウナギ怪人)

 

 力は瞬く間に上昇していき、葛城への負担もさらに大きくなっていく。

「誰か…誰かアタイを……うぉぉぉぉぉ」(葛城)

腕から赤い光線を乱射させ、公園のベンチや時計台を次々と破壊していく。

葛城も止めるにも停められず、力の暴走に抗えない状態にいた。

「葛城!」(春花)

「うぉぉぉぉぉ」(葛城)

「きゃっ!」(春花)

春花が止めに掛かろうとするも、放たれる赤い光線により、うまく近づなかった。

 

 まるで、自身の領土を荒らされた猛獣が、復讐の為に相手を無我夢中で探しているかの様に、彼女は心の中の一筋しかない道を突き進んでいた。

止めたい、しかし思うように体が動かない。

このままでは、敵だけでなく見方までも傷つけてしまう。

自分のせいで仲間が…自分のせいで親友が…みんな殺される…。

「アタイせい…違う…違うんだ…アタイはみんなを守りたくて、正義の味方(ヒーロー)に…」(葛城)




つづく

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