辺りは真っ黒で物音1つもしない。
そんな静な空間に、1人さ迷う少女の姿が…。
少女の名前は焔。
「ここは……どこだ?確かアタシは…公園でバイトしてて…その後……あれ?その後……何があったんだ?」(焔)
焔は、自身に起きた出来事を思い出そうとするが、中々思い出せない。
公園でゴミ拾いのバイトをしていたはずの自分が、なぜ人気の無い暗い場所にいるのか?そして、迷い込んでいるのか?焔は、自然と頭を抱え込む。
「なぜだ…なぜ思い出せない……あと、ここはどこなんだ……」(焔)
「……ちゃん」(??)
―!!―
突如、ほんの微かな声が聞こえてきた。
「…ちゃん……らちゃん……むらちゃん…」(??)
その声は徐々に大きくなり、言葉もはっきりとしていく。さらに、不思議とその声は焔にとって聞き覚えのある声へと変わっていく。
「………ほむらちゃん」(??)
「誰かが……アタシを…呼んでる」(焔)
「焔ちゃん…焔ちゃん……焔ちゃん!!」(??)
ハッ!
焔は、もう一度目が覚めた。
いや、正確には今ようやく目が覚めたのだ。
「………ここは…病院?……いや、保健室か?…」(焔)
目を開けると、焔は見知らぬ部屋のベットに横向きで寝かされていた。
上半身は、服を脱がされており、包帯で背中全体をぐるぐる巻きにされている。自慢の大きな胸も、見事に包帯で隠されていた。
右腕も、包帯で応急処置されており、輸血もされていた。
キョロキョロする焔に、1人の少女は、声を掛けた。
「よかった……焔ちゃん」(??)
声がした方向に首を向けると、焔は自身が今いる場所の確信がついた。
「飛鳥!?…なぜお前がここに…ハァ!……まさか、ここは…」(焔)
「半蔵学園の保健室だよ」(飛鳥)
飛鳥は、口元をニコッとさせて答えた。
どうやら焔は、戦いで気を失ったところを飛鳥達に、助けられたみたいだ。
「よかった-、焔ちゃんが無事で。呼吸も荒くなっていたし、もうどうなるかと…」(飛鳥)
「大きなお世話だ!!」(焔)
感情は高まり、突然焔は激怒し始めた。
両手は、小刻みに震えている。
そう、いくら戦友(ライバル)とはいえ、悪忍が善忍に助けられることは、彼女のプライドが許さないのだ。
焔はベットから起き上がり、立ち上った。
「アタシは、助けてろなんて一言も言ってないぞ…痛っ」(焔)
「駄目だよ焔ちゃん。その体で闘うなんて、無茶しすぎだよ」(飛鳥)
「うるさい!善忍のオマエ救われるくらいなら…痛っ」(焔)
「焔ちゃん……」(飛鳥)
焔は、痛みのあまり膝から崩れる。
それでも、手足を無理やり動かしながらも、保健室から出ようとしていた。
「ぐぐぐぐ…アタシは…アタシは、善忍なんかに…」(焔)
痛みを訴えながらも、焔は体を休めようとしない。
背中は、傷跡が開いたのか、再び赤く染まりかけていた。
そんな彼女を、飛鳥は見捨てるわけにもいかなかった。
「飛鳥!?離せ、アタシは…」(焔)
飛鳥は、焔の手を握りって言った。
「焔ちゃんがなんと言おうと、私はこの手を離さない。だって、ここで焔ちゃんがやられちゃったら、私達は友達…いや、共にカグラの道を突き進むライバルを失ってしまうんだから!」(飛鳥)
「なっ!」(焔)
飛鳥言葉に焔は立ち止まった。
飛鳥は、目から大粒の涙を一滴流し、焔の目を見つめていた。
そして、口を再び開き始めた。
「悪忍の都合は、私にはわからない。……でも、だからって忍1人を救えなくていいの?1人亡くしてもいいの?………私は離さない、絶対に!!」(飛鳥)
「……飛鳥」(焔)
飛鳥の目は真っ直ぐ、そして友を絶対に行かせたら駄目だという思いがちハッキリと顔に浮かんでいた。
焔は、そんな飛鳥に過去に何回も助けられてきたのだ。その時に、飛鳥は今と同じ目をしていたことは、焔にとっては忘れもしないものなのだ。
そして焔は、微かだが一瞬口元をニヤつかせた。
そして、飛鳥の握っていた手を振り払いった。
「アタシはまだまだ闘える…」(焔)
「焔ちゃ…」
「でも、さすがにこの体では、ヤツを思いっ切り倒すことが出来ない……わかったよ!善忍の助けは借りないってプライドは、今日はチャラだ」(焔)
「焔ちゃん……ありがとう」(飛鳥)
飛鳥は再び、焔の手を取って喜んだ。
焔も顔を赤くしては、照れいる様子を見せる。
ツンデレな対応の焔だが、飛鳥の強い気持に掛かれば、どの忍も自然と今の自分の様になるのではないかと、心の中で思っていた。
そんな喜びムードの中、2人に忍び寄る影がいた。
その影は、目をキラリと光らせて、両手を構えて指先で滑らかな波を描いていた。
そして、影は2人へこっそり近づいた。
「おやおや、友情が元に戻ったってか!」(葛城)
むにゅッ!
「きゃぁ!か…葛姉…ちょっ…ちょっと、きゃぁ」(飛鳥)
影の正体は、葛城であった。
葛城はいきなり現れると、飛鳥の大きな胸を鷲掴みし、さざ波のように滑らかな指捌きで揉み始めた。
せっかくのムードが台無しになってしまい、さすがの焔も黙っていられる訳もなく…。
「おい、葛城!お前も少しは空気を読んだらどうだ」(焔)
「いいじゃん、いいじゃん、減るモンじゃねーんだから。スキありッ!」(葛城)
葛城は、視線を焔のいる方へ向けた。
さらに、飛鳥の胸を揉んでいた両手の片方を離し、その手で焔の胸も掴んでは揉み始めた。
「きゃぁ!やめろ……アンッ!乳が…乳がもげる…」(焔)
「良いでわないか、良いでわないか…もみもみ~もみもみ……アベシッ!」(葛城)
突如、葛城の頭部に厳つい衝撃がはしった。
それは、『拳骨』という名の鉄拳制裁である。
「怪我人にセクハラとは、何事ですか!」(斑鳩) 後ろには、握り拳を構えた斑鳩が立っていた。
どうやら、焔を心配してお見舞いに来た様子。
その証拠に、片手には果物の入ったカゴをぶら下げていた。
「あっ!焔さん目が覚めてよかった」(雲雀)
「無事で何よりだ」(柳生)
斑鳩だけでなく、つづけて柳生と雲雀も、焔を心配しお見舞いに来てくれた様子。
「まったく…油断も隙もありませんね。少しはその活発性を、学習面で活かしてみてはどうなんですか!」(斑鳩)
「痛テテテ…今日のも一段と痛てぇ…」(葛城)
葛城は、頭に出来た大きなタンコブを抑えて痛がる。そんな様子を見て、飛鳥は愛想笑いを浮かべる。
一方の焔は、ただただ呆れると思いきや、自然と愛想笑いを浮かべていた。
「お前らも相変わらずだな。しかし、葛城のセクハラは、ある意味凄いよな。まるで、気配を感じないように…」(焔)
“気配を感じない”。
この言葉を言った途端に、焔は思い出した。そう、怪人との戦いでいつの間にか背後から不意を突かれた事を。
「ナッ!……オイ!ヤツらはどうした!」(焔)
自身に何が起こったのかを思い出した様子。
焔は、近くにいた飛鳥の胸倉を掴み、問いだした。
「アタシをやったアイツは、一体どうなったんだ!今どこにいる!!一体何を目的に……痛っ」(焔)
興奮のあまり、焔の背中に再び痛みがはしる。
「焔ちゃん落ち着いて」(飛鳥)
飛鳥がそう言うと、焔は我に返りベットに戻り腰掛けた。
そして、一旦落ちつくと、聞いた。
「教えてくれ…アタイが気を失ってる間に何が起こったんだ…」(焔)
すると、斑鳩が焔のいるベットに近づき、焔に寄って話し始めた。
「…わかりました。教える代わりに、もう無理はしないと約束できますか?」(斑鳩)
斑鳩の言うことに、無言で焔は頷く。
そして、斑鳩は口を開き今から1時間ほど前の出来事を話し始めた。
あれは遡ること、1時間前。
ウナギ怪人の悪あがきにより、焔は右腕の血液を吸い取られそうになっていた。
血液を吸われる前に、体から早く引き離さないといけないが、無理に引っ張っも傷口を広げてしまう危険性がある。
そこで焔がとった行動は、体中のチャクラを一気に放出させて、その圧を利用して引き離す作戦であったのだが…。
「ありがとよ、姉ちゃん」(???)
―!!!―
突如、焔の耳から謎の声が聞こえる。
さらに、それと同時に背中には大きな切り傷が刻まれたのであった。
「!!!…………ぐは……なん…だと」(焔)
焔は、そのまま力尽きて気を失った。
ウナギ怪人は、危険を察知して焔から一旦離れる。
「ぶはっ!ふー、危ないところでありました。あとほんの数秒遅かったら、本当に蒲焼きにされていたであります」(ウナギ怪人)
謎の切り傷により、ウナギ怪人は消滅を免れた様子。
ウナギ怪人は、倒れた焔に近づくと、焔の背中から流れる血を長い舌でベロッと1回舐めた。
すると、先程まで乾いていた体が、ほんの数秒で元の潤った体へと戻る。
「さーて、わずかだが元気も戻ったことですし、トドメと行きますか」(ウナギ怪人)
ウナギ怪人は、腕から鋭い爪を剥き出した。
「では……死ね〰」(ウナギ怪人)
ウナギ怪人の鋭い爪が、焔を襲おうとした時であった。
「そうは、させないよ。とりゃぁぁぁ!!」(??)
奥の方から、1人の少女が、目にも止まらない速さでウナギ怪人へと接近。
そして少女は、腰に下げてた2本の刀を抜刀し、斬りかかろうとした。
「何!おっと…」(ウナギ男)
しかし、いち早く気づいたウナギ怪人は、体から粘液を放出させて、うまく攻撃を受け流した。
少女は、危険を察知すると怪人から距離をとる。刀に付いた粘液を振り払い鞘へと収めると、少女は名乗りだした。
「飛鳥、正義のために舞い忍びます!」(飛鳥)
さらに、遅れて4人の少女も到着。
そして、4人とも名乗り出す。
「同じく、斑鳩」(斑鳩)
「おっと、葛城」(葛城)
「……柳生」(柳生)
「え、えーと…雲雀」(雲雀)
半蔵学園の5人の忍、ここに見参。
「おお、これはなんというサプライズでありますか!忍が5人も…」(ウナギ怪人)
5人の忍の登場に、ウナギ怪人は嬉しそうに喜び、不気味な笑みを浮かべる。
「焔ちゃん、しっかり!焔ちゃん!!」(飛鳥)
飛鳥は、すぐさま焔の元へと寄り添った。
斑鳩も続けて寄り添うと、呼吸の有無や脈の変化、血流の変化を確認した。
「大丈夫です。息はまだあります。手当をすれば良くなります」(斑鳩)
どうやら焔の体は、命に別状はない様子だ。
斑鳩は、懐から包帯を取り出すと、焔の出血を抑えた。
飛鳥は、自身の大事な戦友(ライバル)を傷つけたウナギ怪人を許せなかった。
「やい、怪人!アタイらのダチを傷付けようとはいい度胸しているじゃねーか」(葛城)
「は?ダチだと!?ニョホホホホー笑わせてくれますな。忍が友情ごっことは…」(ウナギ怪人)
「くっ…私達の友達を傷つけたうえに、友情を馬鹿にするなんて……あなたは、絶対に許さない」(飛鳥)
ウナギ怪人の挑発に飛鳥は、カチンとくる。
「飛鳥さん、油断は禁物です」(斑鳩)
斑鳩は、焔の手当てを行いながら、飛鳥が油断しないように助言を掛ける。
「飛鳥!アタイも手を貸すぜ。忍の友情を馬鹿にしたアイツには、お仕置きが必要そうだな」(葛城)
葛城は、腕を鳴らしながらウナギ怪人を見つめる。
「俺も、同感だ……手を貸す」(柳生)
「ひ…雲雀だって」(雲雀)
雲雀と柳生も、気持ちは同じのようだ。
4人は横並びになり、それぞれ戦闘態勢に入っていた。
ウナギ怪人は、そんな4人を見て、そわそわしていた。
「ニョホ-、4人がかりとはいい度胸していますね…」(ウナギ怪人)
4人とウナギ怪人は、どちらともなかなか攻めず、様子を伺っている。
自然と額には汗が流れ、緊張がはしる。
そして、その流れた汗の一滴が地面にポトンと落ちた。
「では、まい…」(ウナギ怪人)
先に反応したのは、ウナギ怪人。
4人は、それぞれの武器や拳を構えて、守りの態勢に入る。
そして今、4人の忍と怪人の戦いが始まると、この時誰もが思っていた。
「試作品6号、お待ちなさい」(謎の少女)
―!!―
突如聞こえた謎の声に、一同の足は止められた。
葛城と雲雀、そしてウナギ怪人は、特に声に対する聞き覚えがあった為、足を止める反応が特に早かった。
「アイツは!?」(葛城)
「…あの人は!?この間の…」(雲雀)
「あ、姐様!!何故ココに…」(ウナギ怪人)
声がした方向には、カワウソの仮面を装備した黒尽くめの衣装の少女が立っていた。
「葛姉、あの人って…もしかして前話していた…」(飛鳥)
「ああ、アイツが怪人達を操っているかもしれないヤツでな……まさか、こんなすぐに会えるとはな…」(葛城)
前回の戦いの時に葛城と雲雀は、この謎の少女と対面しているのである。
正体は謎に包まれているが、その圧倒的な力を使って怪人を操り、忍の抹殺を企んでいるのである。
少女は、ウナギ怪人へと近づき言った。
「…試作品6号、一旦ここは退きなさい」(謎の少女)
「えっ!何ででありますか姐様。今からいいところだというのに…」(ウナギ怪人)
謎の女は、突然飛鳥に向かって指を指し言った。
「そこにいらっしゃる方は、伝説の忍である半蔵のお孫さんの飛鳥さんです。今のあなたでは、とても敵う相手ではありません」(謎の女)
「えっ、あの人……今、私の名前を」(飛鳥)
少女は、なぜか飛鳥の名前を知っていた。
前回の戦いでも、葛城や雲雀、さらには忍ではない首領パッチの情報も把握している様子であった。
「い…いや~しかし、スタミナも回復しつつありますので、こんなヤツらは吾輩が…」(ウナギ怪人)
「私に逆らうのですか?試作品6号」(謎の少女)
ウナギ怪人の発言に対し、少女は不気味な眼差しで睨み付けた。
「ヒィッ!……か、かしこまりました姐様」(ウナギ怪人)
体から凄い量の汗を流し、ウナギ怪人は剥き出しになっていた爪を元の状態へと戻した。
「ゆっくり休んでてください」(謎の少女)
そう言って、少女はウナギ怪人と共にその場を去ろうとした。
「おい、待て!」(葛城)
それを見た葛城は、少女へと言った。
「現れてそれだけかよ!オマエは一体何者なんだ!何が目的で忍びを殺すんだよ!!」(葛城)
「………それだけですか?……アナタ達に話す必要はありません。ただ……いづれわかることですので。……では」(謎の少女)
そう言って少女は、ウナギ怪人と共に紫色の煙に包まれて、その場から姿を消した。
葛城は、悔しかった。
忍の友情を馬鹿にされただけでなく、二度も敵(謎の少女)を逃がしてしまうなど、葛城の心の中は2つの感情により、ぐちゃぐちゃにされていた。
そんな葛城の肩に、斑鳩は手を掛ける。
「葛城さん、その気持を今は抑えましょう。焔さんを半蔵学園の保健室へ運んで、治療を行うことが先決です」(斑鳩)
斑鳩の言う通りだ。
このまま敵のことばかり考えていても、焔は喜ばない。今は、焔のことを1番に考えるのが、忍・ヒーローの指名である。
「ちっ……覚えてやがれよカワウソ女!!」(葛城)
こうして、焔は半蔵学園に運ばれて、今に至るのである。
「話すことは以上です。あの怪人やイタチの仮面を被った方の正体や目的は、私達もまだハッキリしていなくて…」(斑鳩)
「そうか…」(焔)
話を聞き終わると、焔は黙り込んだ。
そして、腕を組みながら何かを考え込んでいる。
「どうしたの焔ちゃん?」(飛鳥)
飛鳥は気になり、焔へ声を掛けた。
「いや、ちょっと引っかかる箇所があってな…」(焔)
「引っかかる箇所?」(飛鳥)
「怪人は、本当に2体だけだったのか?」(焔)
―!!―
焔のこの発言に、一同は固まった。一体どういうことだろうか。
「アタシは、確かに2体の怪人と戦っていたが、その際中に聞いたことのない声が聞こえたんだ」(焔)
「聞いたことのない声だと?」(柳生)
「あぁ。怪人の一匹が、最後の悪あがきでアタシの右腕に噛みついてきた。そこでアタシは、チャクラを一気に放出させてヤツを引き離そうとした。すると、その声は再び聞こえてきて、気がつけば不意を突かれていた」(焔)
焔の証言に、5人はザワつき始める。
怪人は、2体しかいないはずなのに、突然謎の声が聞こえるなんて、一体どういう事だろうか。
「で、でも…雲雀達が来たときはウナギの怪人さんだけだったよ。地面に蟹さんの甲羅が落ちているのは見えたけど…」(雲雀)
「いや。焔の言ってることは、間違えとは言い切れない」(葛城)
「葛姉、どういうこと?」(飛鳥)
葛城は、5人の中で1番怪人との戦闘経験を持つ。
ここから、葛城は自身の見解を話し始めた。
「あのカワウソ女は、怪人の事を試作品何号だの怪人を必ずそう呼んでいる。アタイが今まで倒したのは、3体。2体いるにしても、6号はなんだか引っかかるんだよな」(葛城)
葛城は今まで、土蜘蛛怪人と電信柱怪人、レジスター怪人の3体と戦ってきた。バイク怪人の場合、レジスター怪人が新たに融合した姿の為、カウントはされない。それに、前回の戦いで謎の少女が姿を現した際にも、少女はレジスター怪人を『試作品3号』と呼んでいた。
「確かに…この間以来、怪人の目撃のニュースや情報もなかったし」(雲雀)
「可能性は、0ではなさそうですね」(斑鳩)
一同は、葛城の見解を元に、他のヒントを探り始める。
っとここで、柳生が他に聞いた。
「焔……オマエは謎の声が聞こえると言ってたが、その敵の気配やチャクラは感じなかったのか?」(柳生)
「感じていたら、不意討ちされねーよ。まったく気配を感じる間もなく、アタイの背後はこの様だ…痛っ」(焔)
焔の情報からすると、敵はチャクラを感知する余裕も与えずに、焔へと接近した可能性も考えられる。
ヒントもかなり集まり、ここで斑鳩が話をまとめ始めた。
「とにかく、カワウソの方を除くと怪人は3体。その中の一匹は正体不明と言うこと……と考えてもよろしいですね」(斑鳩)
全員の考えは一致し、一同は頷いた。
すると、保健室の真ん中に何やら球の様な物が転がり、爆発する。
球からは、大量の煙を放たれ、その煙に紛れて1人の男が姿を現した。
「どうやら、話がまとまったみたいだな」(霧夜)
「霧夜先生!!」(半蔵学園の5人)
現れたのは、半蔵学園の教師の霧夜だ。
でも、突然どうしたのだろうか。
「早速だが、明日から新たな作戦を実行する」(霧夜)
「新たな作戦……ですか?」(斑鳩)
「ああ。聞いた話によると、今回の敵はかなりの強敵のようだな。そこで、我々半蔵学園と焔紅蓮隊で作戦を行おうと思っている」(霧夜)
「なんだと!!」(焔)
「最後まで聞け。これはあくまで相手の情報探しが目的だ」(霧夜)
霧夜は、懐から何かを取り出した。
それは、今までの戦いで怪人が使っていた、正体不明の白い粉であった。
「この白い粉は、今までの戦いからすると、ヤツらにとてつもない力を与えている事は確かだ」(霧夜)
「アタイが倒してきた敵は、ほとんどその粉を飲んでた。ただ……この間レジ野郎は、なんだか様子がおかしかった」(葛城)
そう、葛城は思い出していた。
その白い粉は、怪人にとてつもない力を与える効果があるようだが、前回の戦いで引っかかる事がある。
怪人を倒すと、その怪人に取り憑かれていた人間と、怪人の体が分裂する仕組みになっている。
しかし、前回の戦いではレジスター怪人は人間に取り憑いない。
融合する際も、融合体の姿のままで融合するなど、もう訳がわからない。
「この粉の成分は、まだハッキリしておらず、正体も不明のままだ。しかし、一つだけこの粉の正体を見破る方法がある」(霧夜)
「先生、その方法って…」(斑鳩)
「ああ、ヤツら(怪人)の体のデータを分析することだ」(霧夜)
「体のデータ!!!」(一同)
動物の体毛や、唾液、角質など、ほんのわずかな体の一部にでも多くの細胞が詰まっている。その細胞を分析することで、多くの情報が見られるのだ。
※うろ覚えな情報なので、正確な答とは限りませんm(_ _)m
「この薬の成分と、ヤツらDNAの関係を分析出来れば、今後ヤツらと戦うときに有利になる。そこで、今回お前らは紅蓮隊とともにヤツらの体の一部を回収してほしい」(霧夜)
「なるほど…つまり、今回の任務は敵の排除より情報を優先しろというわけですね」(斑鳩)
「それなら話が早い。ウチにも科学が得意な春花もいるし、分析なら得意中の得意さ」(焔)
「うん、コレで決まりだね!焔ちゃんは休んでて。今回は、私達と紅蓮隊のみんなで焔ちゃんの分も頑張るよ」(飛鳥)
「相変わらずオマエはお気楽だな……まっ、今回は仕方がない。そのかわり、あのウナギ男は私が殺る……先に倒すんじゃねーぞ」(焔)
こうして、次の作戦は決定された。
敵の情報を掛けて、半蔵学園と焔紅蓮隊のチームがここに結成される。
焔の為にも、今回の任務は失敗できない。
果たして、どんなチーム作戦が展開されるのか!!
っとここで、葛城がゆっくりと片手を上げた。
「ん、どうした葛城?」(霧夜)
「……」(葛城)
葛城は、いつものお気楽さとは裏腹に珍しく黙り込む。
そして、何かに決意したのか、口を開いてしゃべり出した。
「みんな聞いてくれ、アタイからみんなに頼みたいことがあるんだ」(葛城)
葛城の頼みとは、一体!!
一方その頃。
ここは、ドコなのか…。真っ暗で、人気もなければ機械音も聞こえない。
ただ聞こえるのは、中に住みつくトカゲやネズミの足音くらいだ。
そんな、見知らぬ不気味な場所に人影が…。
そう、カワウソの面を装備した謎の少女であった。
その隣には、負傷を負ったウナギ怪人も一緒であった。
少女は懐から、何やら蟹の甲羅の様な物を取り出し地面へと置いた。
その甲羅に手を当てると、何やら煙の様なモノが放たれて、甲羅を包み込む。
すると甲羅は、たちまち姿を変えて、やがて1つの体へと姿を変えた。
そう、ザリガニ怪人だ。
「うぅ……ん?おお!体が元に戻ってる。……おお、イカしたサングラスも無事だ」(ザリガニ怪人)
「ご復活されてなによりです、試作品4号」(謎の少女)
「あ…姐様!それにブラザー」(ザリガニ怪人)
2人の姿を確認したザリガニ怪人は、自分がどうなっていたかを思い出した。
ザリガニ怪人は、嬉しさのあまり、サングラス越しに涙を浮かべる。
さらには、深く土下座をしながら少女へ言った。
「ありがとうございます姐様!このご恩はきっと…」(ザリガニ怪人)
「いいえ、すぐに返していただきます」(謎の少女)
「え?……と言いますと…」(ザリガニ怪人)
喜びムードが一気に冷めるザリガニ怪人。
そんなことはお構いなしに、少女は話を続ける。
「はい、半蔵学園と焔紅蓮隊が我々の探索を行っているようです」(謎の少女)
「ニョホホホー、炎の女は吾輩が倒しました。なので、怖い物など…」(ウナギ怪人)
「何を言ってる6号」(???)
近くの岩影から、謎の声が聞こえる。
その声の正体こそ、試作品5号であった。
「消滅しかけていたお前が偉そうな口を聞くな。…俺がいたからあの場は逃れたのだ」(試作品5号)
「ご…5号」(ウナギ怪人)
5号の正論に、ウナギ怪人は若干腰が引けてる。
しかし、愛想のない感じで少女は言った。
「とはいえ5号、アナタも油断は禁物です。先ほどの戦いで、アナタの存在もバレたも同然です。アナタも口の聞き方に気をつけなさい」(謎の少女)
少女の発言にかしこまったのか、5号は岩影へと再び姿を隠した。
ここで少女は、黒づくめの衣装から胸元をさらけ出し、けしからんと言うばかりの爆乳から、タブレットの様な物を取り出した。
電源をつけて、画面をスライドさせる。
そして、あの人物の情報のところで指を止めた。
「では、次のアナタ達にターゲットを言いましょう。この方は、早めに始末しておかなくては………葛城さんを」(謎の少女)
本日は、ここまで。新たな敵の存在が発覚。正体不明の怪人は、どんな能力の持ち主なのか?果たして葛城、そんな敵にどう立ち向かっていくのか!そして、焔のリベンジは果たせられるのか!!
ご愛読ありがとうございます。次回も、よろしくお願いしますm(_ _)m