閃乱カグラ外伝 ヒーローは動く   作:智昭

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 渋谷の廃墟にて復刻作業を行っていた半蔵学園の生徒5人(飛鳥・斑鳩・葛城・柳生・雲雀)。
しかし突如、前回の戦いで倒したはずのレジスター怪人が力を増して再び出現する。
5人がかりで戦いを挑もうとするも、怪人が召喚した猫又軍団によって、飛鳥・斑鳩・柳生・雲雀の4人が足止めされてしまう。
 残った葛城は、駆け付けてきた首領パッチとともに怪人を追い詰めるものの、怪人は白い粉の効果でアメリカンバイクと融合し、逃げられてしまう。
そこで葛城も、首領パッチが変形した姿「パッチバイク」で、怪人の後を追った。
果たして、怪人を無事に倒すことができるのか…。


第10話 ハジケマシーンでGOGOGO 後編

 午前5時30分、渋谷の某廃墟。

ひとつの大きな結界(忍結界)が、その一カ所を囲んでいた。

その結界の中では、4人の忍と2、30近くの猫又軍団が火花を散らしていた。

勝負はそろそろ、終盤を迎えていた。

 

 「秘伝忍法 飛燕鳳閃 壱式」(斑鳩)

「超秘伝忍法 半蔵流乱れ咲き」(飛鳥)

ニャ〰〰〰〰!

ゾンビの様に何度も起き上がる猫又軍団に、一時は苦戦してた4人。

なんとか周りに被害を与えずに、全部の猫又を倒すことに成功した。

「ハァ、ハァ、ハァ…なんとか全部倒したね」(飛鳥)

「しかし、結構多めにチャクラを消費してしまいました……でも、周りに被害が出なくて何よりです」(斑鳩)

「見ろ!忍結界が晴れ上がっていくぞ」(柳生)

 

 猫又軍団が倒された事によって、張られていた忍結界が晴れ上がり、4人は解放された。

しかし、戦いで4人は多くのチャクラを消費してしまった。

秘伝忍法を多く使用した飛鳥・斑鳩・柳生の3人は、特に消費が激しかった。

「葛姉大丈夫かな…今すぐ追いかけなきゃ…痛っ」(飛鳥)

飛鳥は、葛城の様子を見に行こうとしましたが、いつの間にか足に傷を負っており、思うように動けません。

しかし、それでも飛鳥は少しずつ足を動かしながら前へ前へと進んでいきます。

「飛鳥さん、そのまま向かっても逆に傷が広がるだけです。ここは、一旦安静に…」(斑鳩)

斑鳩は、飛鳥を心配した。

「で、でも…ハッ!」(飛鳥)

「斑鳩の言うとおりだ!オマエは安静にするべきだ…飛鳥」(柳生)

斑鳩の助言を無視してまでも葛城を助けに行こうとする飛鳥だが、柳生が傘で行き場を防ぐ。

「でも…葛姉が…」(飛鳥)

 

 その近くでは、斑鳩が携帯を通じて誰かと連絡をとっていた。

相手は、教師の霧夜だ。

斑鳩は、現場の状況を報告し、適切な判断をいただくと携帯をきって胸元にしまった。

「斑鳩さん、どうだった」(雲雀)

「はい、霧夜先生が今からこちらへ向かってくる様子です。多少の時間はかかりますが、皆さんはその間に一般の方に逃げ遅れた人がいかいかの確認を!」(斑鳩)

「でも斑鳩さん、葛姉はどうするの?」(飛鳥)

「先生の指示では、私達の中で一番戦闘可能な方が後を追うようにとのことです」(斑鳩)

 

 4人は、現在の状況を確認した。

斑鳩と柳生は大量のチャクラを消耗。

飛鳥に関しては、チャクラの消耗だけでなく、猫又の攻撃による負傷が原因で思うように走れない。

葛城を助けに行きたい気持は一致しているが、助けに行くにも不完全な状態であった。

そう、1人を除いては…。

「それなら、雲雀が行くよ!」(雲雀)

え!?―

 

自ら立候補したのは、なんと雲雀であった。

雲雀は、戦いの最中に柳生と共に猫又へと立ち向かっていた。

ただ、雲雀を戦わせないようにするために、柳生がとことん身を削り守っていたのである。

そのため今の雲雀は、3人と比べてチャクラの残量が多く、負傷も少ないのだ。

「待て雲雀!それなら俺も…痛っ」(柳生)

柳生は、再び過保護な部分をむき出しにし、自分も同行を試みる。

しかし、猫又との戦いで付けられた負傷が原因で体から痛みが生じる。

「柳生ちゃん大丈夫!?」(飛鳥)

「柳生さん、無理をするのは危険です」(斑鳩)

「しかし…雲雀1人では…」(柳生)

心配した飛鳥と斑鳩は、柳生に肩を貸した。

それでも柳生は、自分も同行すると言うことを聞かない。

そして、それを見ていた雲雀が言った。

「も~柳生ちゃんは心配症なんだから。大丈夫!!正直怖いけど…雲雀はもう子供じゃないよ」(雲雀)

雲雀は葛城の向かった方へと走りだした。

 

柳生は、なんだか寂しそうに雲雀の後ろ姿を見つめていた。

「雲雀…」(柳生)

「心配ないよ柳生ちゃん。雲雀ちゃんを信じるのも仲間としての務めだよ」(飛鳥)

つかさず、飛鳥が柳生を前向きにフォローする。さらに、斑鳩も言った。

「その通りです。雲雀さんを信じて、私達は私達の出来る事をやりましょう」(斑鳩)

「斑鳩……飛鳥………あぁ」(柳生)

2人の助言を聞いて、柳生はコクリと頷いた。2人の肩を借りながら、ゆっくりと歩いた。さらに、心の中でこう思ったのだ。

『葛城……いやっ、セクハラーメンマン…雲雀を頼むぞ』(柳生の心の中)

 

 一方その頃。

一台のモンスターバイクが渋谷の街を猛スピードで暴走していた。

その正体は、白い粉の効果でバイクを吸収して姿形をバイクへと変えたレジスター怪人である。

いやっ、今の現状ではレジスター怪人というよりは、『バイク怪人』である。

「ハッハッハ〰、この体も悪くないでゼニ!さーて、慣れてきたしそろそろ思いっ切り暴れてやるか…」(怪人)

「待ちやがれ〰!」(葛城)

「何!!アイツら…もう追って来やがった」(怪人)

怪人は、後ろから目ん玉を出して後方を確認した。

すると、一台のバイクが自分を追いかけて来るのに気づいた。

それは、セクハラーメンマンに変身した葛城が、バイクに変形した首領パッチにまたがっり、猛スピードで接近していた。

 

 予想外の展開に、怪人は焦りを感じた。

特に、首領パッチがバイクに変形していることは、想像もつかなかった。

「だが、俺の力を見くびるなゼニ!これでもくらえ!!」(怪人)

怪人は、後ろの目ん玉を引っ込めると、そこから一つのガトリングを出した。

そして、波線を描くように走りながら、銃弾を乱射した。

「どわっ!またコレかよ」(葛城)

 

 葛姉は、初めてとは思えない見事なハンドル操作で、銃弾を次々と避けていった。

しかし、避けてばかりでは怪人を倒せない。

そこで葛城は、バイク(首領パッチ)に問いかけた。

「首領パッチさん、何か武器とかないのか?」(葛城)

「それなら、いいのがある。アクセルの所に青いボタンがあるだろ。それを、押すんだ」(首領パッチ)

「ボタン?……コレか!」(葛城)

首領パッチの言うとおり、アクセルには青いボタンが。葛城は、早速押してみると…。

「おお!これは…煙幕か……ん!?うわっ、何だこのニオイ!!」(葛城)

葛城がボタンを押すと、バイクから謎の煙が放出された。

その煙は、臭くもなければ、いい香りでもない謎のニオイがする煙である。

葛城は、首領パッチに聞いた。

「首領パッチさん…なんですかこのニオイ…」(葛城)

「それか?そのボタンは“山田”のニオイを放出するボタンだ!」(首領パッチ)

「山田?………誰?」(葛城)

「鈴木んちの従兄弟の山田知らないのか?オマエ」(首領パッチ)

「鈴木?………山田?………ふざけてる場合かぁ〰!!!」(葛城)

 

 葛城は、全力のトーンでツッコんだ。

ニオイは何の意味もない、ただの首領パッチのおふざけであった。

戦いの最中に、こんなにふざけることが出来る首領パッチも首領パッチであった。

「レアなのに…後で嗅がせてほしいって言っても、もう嗅がせないぞ…ひっ!」(首領パッチ)

「アンタ……次にふざけたらタダじゃおかないからな」(葛城)

葛城は、鬼の形相でアクセルを握り、いつもより低めのトーンで怒りを表す。

こんな感じで怒った葛城も、ある意味貴重である。

「痛だだだだだ、アクセルが潰れる!引きちぎれる!!爆乳忍者に殺される〰!!!」(首領パッチ)

アクセルをすさまじい力で握られた首領パッチは、あまりの痛さで右往左往。

自業自得である。

 

 一方、いつの間にか忘れられている怪人も、黙っている訳にもいかない。

「こらぁ〰、俺を無視するとはいい度胸でゼニ!」

怪人は、再びガトリングを連射した。

葛城も避けながら対策を考える。

「くそ-、ヤツの動きさえ止められれば…といっても雲雀の巻物はないし…何かいい手は……んっ!」(葛城)

葛城は、何かに気づいた様子。

何やらバトルスーツに付いていた、ナルトの飾り物を見て何かを思い付いた。

「よし、一か八かでやってみるか!」(葛城)

そう言って、葛城はナルトの飾り物を一つ外した。

「葛、オマエ何をする気だ」(首領パッチ)

「まぁ見ててください!手裏剣投げで鍛えたアタイの腕前を。……どりゃあ〰!」(葛城)

次の瞬間、葛城は手裏剣を投げるかのごとく、手首のスナップを効かせながらナルトの飾り物を投げつけた。

ナルトは、物凄いスピードで回転しながら怪人の足下に向かい、そのままタイヤへと突き刺さった。

 

 それによりタイヤが破裂し、怪人は思うように舵がとれなくなってきた。

「うわっ!!貴様、なんてことを!バイクの命であるタイヤを……アァ〰舵が…舵がとれない…」(怪人)

アクセルを元に戻しましたが、スピードを出しすぎて思うように止まれず、怪人はそのままスリップした。

 

 葛城は怪人に追いつくと、バイクを停めて、バイクから降りた。

首領パッチも、バイクの姿から元の体へと戻った。

「やっと追い着いたぜ!ゼニ野郎」

 

 スリップした怪人は、全身傷だらけ。

しかし、それでも立ち上がり闘おうとしていた。

「ちくしょー、やってくれたな!……だが、タイヤがパンクしたからといって、闘えないと思うなよ!変形」(怪人)

怪人が叫ぶと、バイクの姿からだんだんトラ●スフ●ーマーのような戦闘ロボットの様な姿へと変形した。

「アイツ…変形した!」(葛城)

「あれじゃまるっきりトラ●スフ●ーマーだな」(首領パッチ)

相手が変形し強化しようと、首領パッチはいつでもマイペースだ。

 

 「呑気な事を言っているのも今のうちでゼニ!」(怪人)

怪人は、何やら肩の辺りに付いてあるパイプ(マフラー)から、茶色の液体放出した。

液体は、2人の体にべったりとかかった。

「うわっ、しまった。何だよコレ?ベタベタしてて気持ち悪い…」(葛城)

「あらやだ!これ以上お肌がスベスベになったら、パチ美困っちゃう」(葛城)

首領パッチはさておき、葛城はこの液体の正体をなんとなく察知したのか、イヤな予感がしてきた。

「へっへっへー、燃え尽きろ!火炎放射」(怪人)

怪人は、もう一つのパイプ(マフラー)から、今度は炎を吹き出した。

その炎は、道にかかった茶色い液体を伝っていき、2人の元へと向かってきた。

「やっぱり!これはガソリンじゃねーか!!」(葛城)

 

 葛城は、炎を避けようとしましたが、常にガソリンがバトルスーツにべっとりと付いていた為、燃え移ってきた。

「うわ〰〰〰〰〰」(葛城)

葛城は、炎を直接くらってしまい、体が炎に包まれていた。

いくらバトルスーツを着ているとはいえ、防御力にも限界がある。

「このままじゃマズイ……大丈夫っすか、首領パッチさ……ん?」

葛城は、心配して首領パッチのいる方向を見てみたが、常に手遅れであった。

『上手に焼けました!』

とある狩りゲームで聞き覚えのあるBGMとナレーションが流れ、首領パッチはこんがりと焼き上がっていた。

「モン●ンの肉みたいになってる〰!何やってるんだよこの人」(葛城)

 

 「おっと、仲間の心配をしてていいのか?このまま燃え尽きろゼニ!」(怪人)

そういえば、葛城の体の炎はまだ消えていない。

このままでは、防御力に限界が来てしまい、葛城自身も燃え尽きてしまう。

「意外と呆気なかったな!このまま燃えて消えて亡くなれ!!そして、消し炭にでもなるゼニ!!!ゼーニ、ゼニゼニゼニ(笑い声)」(怪人)

「誰が燃え尽きるって?」(葛城)

―!?―

 

 葛城は、体中を炎で包まれているにもかかわらず、余裕の表情を浮かべながらその場に仁王立ちしていた。

怪人も、この展開は予想外の様子。

「おい貴様…あまりにも追い詰められたからおかしくなったのか!?このままだと、オマエは消し炭にされちまうぞ!」

「消し炭?…消し炭もなにも、こんな炎で……アタイはやられねーよ。ハァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 葛城は、急に叫びだした。

いいえ、体内のチャクラを溜め始めたのである。

すると、チャクラは葛城の体を包み込み体には纏わり付いた。

「どりゃァァァァァァァァァァァァァ!!!」

「なっ、何!俺の炎を……ば、馬鹿な」

葛城は、なんと自身のチャクラを一気に放出し、体の炎をかき消した。

「信じられない…あんなに燃えていたのに…信じられない」(怪人)

葛城の炎は、見事に全部消えた。

バトルスーツの防御力のおかげで多少の焼けた跡は残っているが、体に大きな致命傷はありません。

葛城は、堂々と胸を張っていた。

「オマエの炎なんて、ウチのクラス委員長の炎に比べたら対したことないんだよ!」(葛城)

 

「嘘だろ!!体どころか髪も燃えていないぞ…忍って、こんなに人間離れしているのか…」

怪人の体は、恐怖で小刻みに震えだしていた。

力を増して戦いに挑んだつもりだが、葛城が自分の予想よりも上をいった行動をとるので、本当に自分が強くなったのか疑心暗鬼になり始めてきた。

「人間離れしているのはどっちの方だよ!さ~て、ここから反撃スタートだ」(葛城)

『オーダー通しマース…キザミ!』(ベルト音声)

葛城は、そう言って双剣を構えた。

「チッ!だが、俺を見くびるなでゼニ!!」(怪人)

怪人は、ダイヤを2つ抜き外し、ハンマーのような形に組み立てた。

 

「忍…殺す…シャー!!」(怪人)

「望むところだ!オリャー!!」(葛城)

葛城と怪人による攻防戦が始まった。

怪人は、ハンマーをとにかく葛城に当たるまで振り回している。

タイヤで作ったハンマーとはいえ、地面に叩きつけるとヒビが出来るほどの威力を持っている。

そんな攻撃に対し、アクロバティックに攻撃をかわす葛城。

 

 怪人の大振りのハンマー攻撃を双剣で受け流しつつ、パターンをどんどん把握している様子であった。

「よし、オマエの攻撃パターンは大体わかった。ここから反撃開始だ!」(葛城)

『切れ味…マシマシ(増し増し)』(ベルト音声)

葛城がベルトを2回開け閉めすると、双剣にチャクラが集まり、ビームサーベルの様な光の双剣へと姿を変えた。

「どんな店のラーメンも…仕込みからの調理スタートだ!ハァァァァァァァ!」

 

 葛城は、正面から怪人へと突っ込み出した。

「そんなにやられたいなら、お望み通りに…」(怪人)

怪人は、ハンマーを大きく縦に振りかざし、葛城を叩きつけようとした。

「アンタの攻撃パターン。…まず一撃目は必ず縦に振りかぶる。だから、腹がガラ空きになる!」(葛城)

葛城は、スピードを上げて接近し、スキの出来た怪人の腹部を斬りかかった。

「何!ぐわぁ〰」(怪人)

 

 葛城の攻撃は、まだ終わりません。

「そして、ハンマーは地面に食い込む程の力で叩きつけている。攻撃の後は、背中がガラ空きだ!」(葛城)

葛城は、そのまま背中にも斬撃をくらわせた。

「ぎゃぁ〰!な、何!?」(怪人)

「そして最後に、攻撃中はヤケにマフラーをキョロキョロ動かしていた。おそらく、スキを付いてガソリンをぶっかける作戦だな。それなら、コイツは邪魔だな!」(葛城)

そのまま双剣を振り回し、マフラーを斬り落とした。

「ぐわ〰〰〰!……ま、マフラーが…ハァ…ハァ…この俺が……こんなヤツに」

「オマエとの戦いは、もうちょっと刺激が欲しかったかな。さ~て、トドメは必殺技で決まりだ!」

 

 そう言って葛城は、ベルトに挿入されていた忍転身の巻物を取り外した。

そして、“秘伝忍法”と書かれた巻物を変わりに挿入し、ベルトを1回開け閉めした。

『オーダー通シマース…オーダー入りマース…秘伝忍法!!』(ベルト音声)

すると、右足の足甲にチャクラが集まりだした。

葛城は、ゆっくりと体の半分をしゃがみ込ませ、怪人へと狙いを定めた。

そして、勢いよく空中へと高く跳び上がった。

「英雄忍法 ヘヴィ〰ドラグナ〰!」(葛城)

空中で体をドリルの様に回転させた葛城は、落下の勢いに乗せて怪人へ右足を向けた。

「ぎゃああああ〰!」(怪人)

攻撃を決めた葛城は、そのまま怪人を踏み台にしながら後ろへ跳びあがり、着地した。

「真夜中のバイクでの暴走は…近所迷惑だから辞めとこうでゼニよ………さらば!」(怪人)

最後に教訓みたいな言葉を残すと、怪人はその場で爆発した。

 

 「ヨッシャー!セクハラーメンマン、今日も格好良く大勝利」

勝利を喜んだ葛城は、巻物を外し変身を解除した。

「あっ、見つけた!葛姉」(雲雀)

後ろから、聞き覚えのある声が聞こえた。

振り返ると、加戦しようと葛城を追いかけてきた雲雀の姿があった。

「お、雲雀!来てくれたのか。あれ、1人か?他の皆は?」(葛城)

「うん。皆は、霧夜先生と逃げ遅れた人がいないか確認している。それより、怪人さんは!」

雲雀は、構えながら辺りをキョロキョロした。しかし、いくら見回しても怪人の姿がありません。

「心配するな、アタイがチョチョイのチョイとやっつけてやったぜ!」

葛城は、ドンと胸を張った。

 

 「えっ!もうやっつけちゃったの!?雲雀も戦おうと、急いできたのに…」(雲雀)

葛城を助けに追いかけてきたのはよかったものの、怪人は倒されたと聞いて雲雀は若干残念そうにする。

葛城もなんだか申し訳なさそうにするが、仲間がこれほど自分の事を心配していることを知って、一瞬笑みがこぼれた。

「ごめんな…でも、心配してくれてありがとな雲雀」(葛城)

 

 そして、忘れてはいけないアノ男も近づいてきた

「今回も、ハジケた戦いになったぜ!」(首領パッチ)

「きゃぁぁぁー、漫画肉のお化け!こっちに来ないで!」(雲雀)

怪人のガソリンと炎によって、モン●ンの肉の様になった首領パッチが、雲雀の後ろに立っていた。

それを知らない雲雀は、もう一体怪人が現れたと勘違いし、怖がりながらポカポカと殴りかかった。

「痛だだだだ!俺は怪人じゃ…痛!ねーから…落ち着け…痛っ!」(首領パッチ)

「おい雲雀、辞めろって!その人は、首領パッチさんだぞ……痛ッ!」(葛城)

 

 葛城は、突然体に痛みを感じ、地面に膝をつけた。

「葛!」(首領パッチ)

「葛姉!!」(雲雀)

これを見た首領パッチと雲雀は、彼女の近くへと寄り添った。

雲雀が、原因はなんなんだろうと思い葛城を見てみると、体の何カ所に火傷の跡を発見した。

「葛姉……凄い火傷。…一体何があったの…」(雲雀)

「オマエ、大丈夫とか言っておいて、めちゃくちゃ無理してるじゃんかよ!」(首領パッチ)

「へへへ…ちょーっと無理しすぎたかな。…でも、怪人も倒したし一件落着だな」(葛城)

終わりよければ全て良し。

葛城は、いつものテンションに戻り、ニッコリと笑ったろ。 

「もー、葛姉は無理しすぎだよ。…フフフ」

雲雀は、頬を膨らませて葛城を怒った。

だが、怪人を倒した安心感もあったからか、笑顔につられて一緒に笑った。

「やっぱりオマエは、かなりハジケているぜ!ハハハハ」(首領パッチ)

 

 勝利を喜び、その場で笑う3人。

負傷はあったものの、犠牲者をだしたり街に被害を与えることもなく、今回の事件も解決した。

ーチャリン!ー

突然の小さい金属の音。

3人は、すぐさま振り返る。

すると、空中にピカッと輝く硬貨が1枚。

その硬貨は、だんだん3人の元へ落ちてくるようにも見えた。

そして、3人から十何メートル近くに来た途端、硬貨は鋭い光を放った。

「葛姉、首領パッチさん、危ない!忍兎!!」(雲雀)

いち早く気づいた雲雀は、口寄せ動物の兎「忍兎」召喚した。

忍兎は、召喚されるやいなや3人の体を、雲の様な体で大きく包み込んだ。

ドカーーーーーーン!!!

その直後、硬貨は物凄い爆発を起こした。

 

 辺りの建物は若干傷つき、ガラスにもヒビが入っていた。3人は、ダメージを受けることもなく無事に爆発を免れた。

「助かったぜ雲雀。…あと1秒でも遅かったら、今頃バラバラだったな」(葛姉)

「それより、今のコインはまさか!」(首領パッチ)

辺りは、爆発時の煙が立っており、前が上手く見えない。

次第に煙は晴れていき、この先にいた犯人の姿が明らかになる。

「ハー、ハー、忍……殺す…ゼニ!」(怪人)

そこにいたのは、ボロボロになりながらも3人に殺意を剥き出しにしていた怪人の姿であった。しかし、バイク怪人ではなく変身前のレジスター怪人の姿へと戻っていた。

「アイツ!まだ生きていやがる」(首領パッチ)

「アノ攻撃をくらっても立ち上がるなんて……なんて執念なんだ」(葛姉)

怪人は、体から血をボトボトと垂らしながらも3人へとゆっくり向かっていた。

「たとえ…この身が朽ち果てようと……忍を殺すことが……俺の指名なん……ゼニ!」(怪人)

 

 怪人と3人の距離は、徐々に近くなる。戦えればいいものの、葛城は先ほどの戦いによる火傷で、思うように動けない。

「痛っ…火傷さえしていなければ…。なっ、雲雀!?」(葛城)

葛城が顔を上げると、正面に雲雀が立っていた。

「葛姉、ここは雲雀に任せて。雲雀だって覚悟を決めて来たから、戦わずに帰る訳にもいかないもん」(雲雀)

雲雀の言うとおりだ。

本来は自分が行きたいのだが、今の葛城は、火傷によって思うように戦えません。

もしも、このまま行ったとしても自分だけでなく、首領パッチや他の仲間も傷つけてしまう危険性が考えられる。

「雲雀……わかった!けして無理はするなよ!」(葛城)

葛城は雲雀を信じ、戦う事を許可することにした。

「うん!」(雲雀)

 

 雲雀は、2つの拳を構えた。

顔には一滴の汗が流れ、表情もぎこちない感じで緊張感が伝わってくる。

でも、葛城や首領パッチ、他の仲間を守るために雲雀は戦うと決めたのである。

「フン!小娘か…オマエを倒して……その2人も後で殺す…ゼニ」(怪人)

怪人の方にも、緊張が走る。

ボロボロになった体は、ゆっくりと揺れていて、いつ攻めればよいかを伺っていた。

 

 静かな間が続くなか、時は来たかの様に近くにいた1羽の鳥が飛びだった途端、2人は動き出した。

先に動いたのは、怪人であった。

「くらえ〰釣銭…」(怪人)

怪人が、攻撃を繰り出そうとした時であった。

「もうそこまでです。試作品3号」(???)

ー!!!!ー

突如、謎の声が。

一同が声のした方を振り返ると、そこには1人の少女の姿があった。黒尽くめの衣装に、紫色の髪にダウン。

顔には、不気味なカワウソの顔のお面を装備している。あと、服でわかりにくいが、葛城に負けないくらいの爆乳でもある。

 

 「あ……姐様……なんで…こちらに」(怪人)

怪人は、その少女を『姐様(あねさま)』と呼んでいた。

さらに、その少女をみて体が先ほどの以上に震えていた。

「なんなんだアイツ」(葛城)

「フラッシュモブの前触れか?」(首領パッチ)

首領パッチはさておき、謎の少女の登場に葛城も動揺を隠せません。

 

 少女は、ゆっくりと怪人へと近づいていった。怪人は、少女が近くに来れば来るほど緊張感が強くなっていく。

「待ってくださひ…姐しゃま……俺は、まだ戦えますでゼニ!」(謎の少女)

緊張のせいで、怪人のしゃべり方もおかしくなっていた。

それほど、この少女は怪人達の間では凄い権力の持ち主であることが伝わってくる。

「そんなボロボロな体で戦っても、アナタは確実に負けます。ここは、一旦退くのが確実でしょう」(謎の少女)

「じょ…冗談じゃありません!俺は、この通り力を上げました。今のまま俺ならコイツらに…」(怪人)

「そうですか。…言うことを聞かない試作品には、お仕置きが必要ですね」(謎の少女)

 

 そう言って謎の少女は、服の中をゴソゴソとし、謎の御札が貼られた壺を取り出した。

「あ……姐様。…い…いやだ…」(怪人)

「永遠に……眠りなさい!」(謎の少女)

少女が壺の蓋を開けると、壺はブラックホールの様な凄まじい吸引力を発揮した。

「ギャァァァァァァ、オレは…オレは…ウわぁぁぁぁぁぁ!」(怪人)

怪人の体は壺の中へと入り、封印された。

壺は蓋を閉めると吸引が止まった。

今のを見て、3人は驚きが隠せません。

 

 「なんだよ…あの壺」(葛城)

「なんだか怖い」(雲雀)

「うひょー、あれが魔封波か!」(首領パッチ)

それぞれが反応を見せる中、謎の女は3人のいる方向をゆっくりと振り向いた。

「半蔵学園三年…葛城さん。1年の雲雀さん。……キングオブハジケリストの首領パッチさん」(謎の少女)

「なっ!なんで、アタイらの名前を知っているんだ!それに何だよ、オマエはあのゼニ野郎の仲間じゃないのかよ!!」(葛城)

葛城は、思っている事を少女に聞いた。

しかし、少女は黙り込んでいた。

「おい!何とか言えよ!!」(葛城)

「今は、アナタ方に答える言葉はありません。まぁ、いずれまた会えますので、答えはその時に……では失礼!」(謎の少女)

「オイ!待て」(葛城)

 

 少女は、紫の煙に包まれてその場から姿を消した。

「消えちゃった!」(雲雀)

「一体何者なんだよ、アイツ!変でダサいお面付けやがってよ…全然ハジけてねーな。なぁ、葛城!……葛城?」(首領パッチ)

葛城は、少女がいた場所をただただ見つめていた。

「…とんでもないことが起こりそうだ…」(葛城)

「葛姉…」(雲雀)

 

 今回の事件は、とりあえず解決した。

しかし、謎の少女の出現により新たな事件のにおいが。果たして、あの謎の少女の正体、そして怪人達との関係は。

そして、少女はの目的は何なのか!

 

 場所は変わり、某路地裏。謎の少女は、怪人を吸収した壺を抱えながら歩いていた。

「安心してください、試作品3号。アナタは、良い働きをしてくざさいました」(謎の少女)

そして、少女はお面を外し、不気味な笑みを浮かべて一言。

「アナタの夢は、夢は私達が潰して差し上げましょう。忍は敵…排除します。ウフフ」(謎の少女)




 今回もなんとか書き終える事が出来ました。皆さんのおかげですm(_ _)m
 新キャラも出てきてますます目が離せない展開となってきました。果たして葛城&首領パッチに次はどんな試練が待ち受けているのか…。
 これからも、よろしくお願いします。ご愛読ありがとうございますm(_ _)m

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