午前五時過ぎ、渋谷の某被害現場。朝早くから、建物の復刻作業に専念する作業員達。そんな作業員の中に、見覚えのある顔が5人。
「ふわぁ~(あくび)……眠い…」(葛城)
破壊されたコンクリートの破片を一輪車で運んでいたのは、葛城であります。朝は、相当早かったのか呑気にあくびをしながら大量のコンクリートを詰め込んだ一輪車をダラけた感じで押し運んでいた。疲れた葛城は、足を止めて座り込んだ。
「朝早くから起こされるやいなや、破壊された建物の復刻活動か……ちょっとだけ一休み」(葛城)
「葛城さん!サボりは行けません!!」(斑鳩)
「ギクッ!い……斑鳩」(葛城)
後方から注意の声を掛けたのは、斑鳩です。クラス委員ならではの勘だろうか、葛城のサボりを察知して注意しました。
「これも任務の一環です。サボりなんて許しませんよ」(斑鳩)
「いいじゃないかよ…ちょっとぐらいさ…なっ」(葛城)
「ダメだよ葛姉!任務なんだからしっかり働かないと」(飛鳥)
斑鳩に続いて、後輩である飛鳥も束ねた鉄パイプを両腕運び歩きながら注意する。そんな2人に対し葛城は、言った。
「わかってるけどよ……じゃあせめて、その大きく実った果実(おっぱい)をもみもみ…もみもみさせてくれれば…」
葛城は、セクハラするき満々であった。小指から親指にかけて器用に指を動かし、口には涎を垂らしてニタニタする。しかし、葛城の頭にすぐさま落ちた1つの衝撃がその行動を辞めさせる。そう、斑鳩のゲンコツであった。葛城の頭からは、くっきりとした形のタンコブが出来た。
「ああ……ぼ…暴力…だろ…」(葛城)
「これは、愛のムチです!しばらくそこで反省しててください。行きましょう、飛鳥さん!」(斑鳩)
「あ、待ってよ斑鳩さん」(飛鳥)
2人は、葛城をほっといて作業へと戻った。
目まいがするほどのゲンコツを喰らった葛城は、ふらふらになりながらも起き上がった。
「ったく、斑鳩もやり過ぎるだろ。いくら何でもあそこまでしなくても」
葛城がブツブツ呟いていると、頭のタンコブから謎の冷感を感じた。
「ひやっ!冷たっ」(葛城)
「葛姉、お疲れさま。これ、現場監督のおじさんからの差し入れだよ」(雲雀)
「な…なんだ、雲雀か。ビックリさせるなよ」
謎の冷感の正体は、雲雀が持っていたキンキンに冷えた水の入ったペットボトルであった。葛城を驚かそうとし、後ろからこっそりと近づいてペットボトルをタンコブにちょこんと付けた様子。雲雀は、葛城のリアクションに、思わず笑いがこぼれる。
「痛っ!くう〰しみる〰。ゴクゴク………プハー!キンキンに冷えてて旨(うめ)ー。やっぱり、コレとセクハラの為に生きているようなもんだぜ!」(葛城)
「もー、葛姉ったら……うふふ」(雲雀)
ペットボトルを受け取った葛城は、まずは水を頭にかけてタンコブを冷やし、残りの水は豪快に飲み干した。
「アタイに優しいのはオマエだけだぜ、雲雀」(葛城)
「葛姉ったら、調子いいんだから」(雲雀)
「あれ?柳生は、どうした?」(葛城)
「ああ、柳生ちゃんなら霧夜先生に呼ばれてお話しているよ」(柳生)
葛城は、さっきのゲンコツからのテンションが嘘だったかのように機嫌を取り戻した。雲雀も安心して、クスクスと笑っていた。
ここで雲雀は、辺りをキョロキョロした。誰も見ていないことを確認すると、葛城の耳元でコソコソと話しかけた。
「葛姉すごいね。この間の怪人さんを首領パッチさんと倒したんだよね」(雲雀)
「まぁな…なかなか手強かったけどな。しかし、倒したと思ったらコレだぜ…アイツ(レジスター怪人)め〰」
雲雀が持ち込んだ話題は、昨日のレジスター怪人との戦いの件であった。雲雀は、セクハラーメンマンが葛城だということを知っている。ただ、葛城は首領パッチと協力して戦ったことをまだ雲雀に話していないが何故わかったのか。それは、仲間とさての付き合いが長いからだ。
「昨日は、首領パッチさんにいろいろ教えられたぜ…あの人には感謝しねーとな」
昨日の戦いで葛城は、首領パッチから『ハジケ』というのを学んだのだ。どんなときでも遊び心を忘れず、たまには馬鹿やることも正義の味方の役割だと。首領パッチは『ハジケ』の意味を答えてはいないが、葛城はそれを理解したからこそ、敵を倒すことができたのだ。
「困ったときには、雲雀にも相談してね。大したことはできないけど、いざとなったら力になるから」(雲雀)
雲雀は、葛城を励ました。葛城がセクハラーメンマンとして戦っている事を知った限り、自分も出来ることをやって彼女(葛城)を助けたいと雲雀は思っています。
「本当か雲雀!それじゃ早速助けてほしいんだが…」(葛城)
葛城は、早速雲雀に相談を持ちかけた。
「え!?一体どうしたの?」(雲雀)
雲雀は、心配しながら葛城の話に耳を傾けた。
「それがさ……あの姿で戦うにはかなりのパワーを消費するんだ」(葛城)
「え!?そうなの!!」(雲雀)
「そこでな…なんつーかその…アタイを満足させるモノっつーか…幸福を満たすっつーか…そのたわわと実った果実を…」(葛城)
「たわわに実った果実?」(雲雀)
雲雀は、葛城の言っている事の意味がわからなかった。さらに、葛城のテンションは話せば話すほどおかしくなり、いつの間にか違うテンションへと変わっていた。
「そう、たわわと実った果実。その丸みを帯びた果実はプルンとした触り心地。一掴みではダメだ、触った直後に親指から小指にかけて波を立て…もみもみ~もみもみ~…まさに禁断の果じ……アベシッ!」(葛城)
欲望丸出しの葛城の頭に、再び1つの衝撃が降りかかる。
「雲雀、コイツの話を素直に聞かない方がいい」(柳生)
「あっ、柳生ちゃん!おかえり」(雲雀)
衝撃の正体は、柳生が振り下ろした傘による打撃であった。霧夜との話を終えて現場に戻ってきた様子だが、葛城が雲雀に何かいけないことをさせようとしているのを見つけて、すぐさま鉄拳制裁…いやっ「和傘制裁」をくらわせたのだ。
「いててて…や…柳生…おまえなー」(葛城)
葛城は、二段重ねになったタンコブを抑えながら、物申す。
「雲雀と何を話してたかは知らんが、変な事をふき込んだら……オマエであろうと許さんぞ」(柳生)
「あ……は…はい…」(葛城)
睨みを効かせて正論を言う柳生。これには、さすがの葛城は何も言い返せなかった。
そして時間は経過し、作業は一段落を終えた。現場監督は、作業を終えた忍達を呼び集めた。
「皆さんのおかげで、無事に一段落作業を終えることができました。本当にありがとうございます」(現場監督)
「いえいえ、お役に立てて光栄です」(斑鳩)
「まぁ、アタイらに掛かればこのくらいどーってことないけどな」(葛城)
「葛城さん!!」(斑鳩)
さっき勝手に休もうとした葛城に、斑鳩はすぐさまツッコむ。そんなやりとりを見た現場監督は、クスクス笑いながら言った。
「ハッハッハ…面白いお友達がいて幸せそうですね」(現場監督)
「えっ…その…友達といいますか…その」(斑鳩)
「何を照れてるんだよ、アタイらは友達以上に家族みてーなもんだろ」(葛城)
「そうだね。私達は、家族だね」(飛鳥)
「うん、家族だね」(雲雀)
「雲雀と俺が………家族」(柳生)
「ハッハッハ、家族ですか。素晴らしいですね」(現場監督)
家族という言葉でそれぞれ盛り上がる一同。
「た、大変です現場監督!」(作業員)
突然1人の作業員が、汗だくになりながら慌てて駆けつけた。
「ん?どうかしましたか」(現場監督)
「何かあったんですか?」(飛鳥)
現場監督と忍達は、作業員の話に耳を傾けた。作業員は、息を整えてしゃべり始めた。
「と…隣の現場で、突如謎の怪人が現れて…今も大暴れしています」(作業員)
「なっ!」(現場監督)
「「「「「え!!!!!」」」」」(半蔵学園の5人)
話の中に“怪人”という言葉ガ出てきた途端、忍達は一斉に興味を示した。その中でも葛城は、誰よりも早く鋭い反応をした。しかし、作業員の話はまだ終わっていません。
「その怪人は、暴れながら『忍出て来い!忍出て来い!』と言っています」(作業員)
「コレってまさか…葛姉!」(飛鳥)
「ああ。おそらくアタイらが目的だな…」(葛城)
場所は、隣の現場へと移る。
「おらおら〰忍出て来い!忍び出て来い!!忍を出せ!!!」(怪人)
1人の怪人が、ガトリングガンを片手に『忍出て来い』と連呼しながら、現場を廃墟と化してた。そして忍5人と現場監督は、現場へとたどり着いた。
「これは!?」(現場監督)
「な…なんてひどい」(斑鳩)
周りを見渡すと、そこには廃墟となった現場と、怪人の攻撃を受けて倒れた作業員が数名いた。その光景を見た現場監督は、膝から崩れた。
「な…皆さんが…そんな」(現場監督)
「ひどい…」(雲雀)
「何もここまでやらなくても…」(飛鳥)
「ちっ!あんにゃろ〰。どこまで卑劣な連中なんだ…」(葛城)
それぞれの思いは、同じであった。忍達は、怪人を許さないことを決意した。
「おっと!獲物のお出ましか」(怪人)
ここで怪人は、忍達に気がついた。片腕がガトリングガンで、もう片方はなんだか見覚えのある変わった形をしていた。それは、忍問わず一般の人も日常的に目にしている様なモノでした。
「アナタがやられたのですか」(斑鳩)
「その通りさ!こいつらは、忍をおびき寄せる為の捨て駒みてーなものさ」(怪人)
「てめ〰よくも〰」(葛城)
すると、葛城は葛城を見て言った。
「おぉ!もうこんな早くに会えるとはな…金髪娘」(怪人)
「はぁ?何言ってるんだよオマエ」(葛城)
「おっと!オレを忘れたとは言わせないでゼニ!」(怪人)
「ゼニ?」(葛城)
葛城に馴れ馴れしい感じで絡んでくる怪人。若干戸惑っていた葛城だが、彼の『ゼニ』という語尾と片腕の“バーコードリーダー”が、葛城の脳内から記憶を呼び起こした。
「お…オマエまさか……あの時のレジ野郎!」(葛城)
怪人の正体は、前回セクハラーメンマン(葛城)とラブハンターY(首領パッチ)が戦ったレジスター怪人だったのです。語尾に『ゼニ』を付けるしゃべり方と、片腕のバーコードリーダーがその証拠です。
「葛姉、あの怪人知ってるの?」(飛鳥)
「ああ、ちょと姿が変わっているが間違いない」(葛城)
「ふん、せっかく会えたんだ。前回の恨みを果たさせてもらうでゼニ」(怪人)
レジスター怪人は、葛城に勝負を申し込んできた。
しかし、個人での戦いはを避けようと斑鳩が割って入ってくる。
「ちょっとまってください!葛城に恨みがあることは知りませんが、ここは私達全員が相手です」(斑鳩)
「そーだよ!私達だけ黙って見てる訳にもいかないしね」(飛鳥)
「うん、葛姉は雲雀達で守る!」(雲雀)
「それとも…集団を相手にするのが怖いのか?……おたんこなす」(柳生)
斑鳩だけでなく飛鳥・雲雀・柳生の3人も葛城を守ろうと怪人に訴えかける。これを聞いた怪人も、黙っていません。
「誰がおたんこなすでゼニ!まぁ、いい。どのみちそこの金髪娘は、俺の相手ゼニ。お前ら(飛鳥・斑鳩・柳生・雲雀)の相手はこいつらで十分でゼニ」(怪人)
怪人は、バーコードリーダーだった腕を元の五本指の腕へと戻し、腹部の引き出しから何かを取り出した。
「皆さん、気をつけてください!何か気来ます」(斑鳩)
怪人の行動に、忍達は一斉に警戒し戦闘態勢にはいった。その間に怪人は、謎の呪符を取り出し回りに投げつけた。風でヒラヒラと舞う呪符は、一斉に地面へと落ちた。まるで自我があるかの様に。
「へっへっへー、凄いの見せてやるゼニ!」
パチッ(指パッチンの音)
怪人が指をパチンと鳴らすと、呪符は真っ直ぐ立ち上がり、謎の光を体に纏はじめた。呪符は、手足と2本の尻尾を生やし、猫の様な顔をした怪人へと姿を変えた。大きな布を体に羽織り、腰には日本刀や槍、鎌といった武器を下げていた。
「斑鳩さん、あれは一体!?」(飛鳥)
「確かですが、前に本で読んだ事があります。2本の尻尾と羽織っている布……おそらく『猫又』です!」
「猫又?」(葛城)
「はい。大昔に出現したと言われていて、山に足を運んだ人々を襲っては食い殺したという妖怪です」(斑鳩)
「妖怪だと!?」(柳生)
「雲雀達…食べられちゃうの(涙)」(雲雀)
一方の猫又軍団は、鋭い歯と爪をむき出しにして5人の忍を威嚇する。その姿は、まるで猫又というよりは悪魔であります。
「さぁ下部達よ、金髪娘は俺が倒す。お前らは残りの忍をズタボロに叩きのめすでゼニ!」(怪人)
「ニャ〰〰〰〰〰!!」(猫又軍団)
2、30匹近くの猫又軍団は、それぞれ武器を構えて一斉に5人に襲いかかった。その中の一匹が、5人と一緒にいた現場監督に襲いかかろうとした。
「うわぁぁぁぁぁ」(現場監督)
「危ない!」(斑鳩)
斑鳩は、飛燕を盾にし現場監督を猫又から守り、そのまま(猫又)斬りかかった。
「ここは、私達が引き止めます。現場監督さんは、皆さんの避難を!」(斑鳩)
「え…は、はい!」(現場監督)
現場監督は、その場にいた係員達と共に現場を離れた。
一方、飛鳥達も忍転身にて戦闘コスチュームを纏い、武器を構えて猫又軍団と接戦を繰り広げていた。猫又軍団も、噛みつこうとするわ、鋭い爪でひっかいてくるわでなかなか手強い。
「秘伝忍法 二刀僚斬!」(飛鳥)
「薙ぎ払う足」(柳生)
ニャ〰〰〰!!
しかし、猫又軍団は倒しても倒しても、ゾンビの様にすぐに起き上がり、襲いかかってきます。
「何この猫さん、倒してもすぐ起き上がる…」(雲雀)
「雲雀!俺から離れるな……お前は俺が守る」(柳生)
「たとえ相手が何度も立ちはだかろうと、私は諦めない!はぁぁぁぁ〰」(飛鳥)
飛鳥は、そう言って再び双剣を構えて猫又軍団へと突っ込んだ。負けじと、斑鳩・柳生・雲雀の3人も一斉に立ち向かった。
「よし下僕共、そいつらは任せたでゼニ」(怪人)
怪人は、その場を猫又軍団に任せてその場から逃げ出した。
「って…おい!待ちやがれ」(葛城)
「葛城さん」(斑鳩)
怪人が逃げた事を察知した葛城は、真っ先に追いかけた。続いて斑鳩も、怪人を追いかけようとしますが、猫又軍団が道を通せんぼするため思うように動けません。
「そこを通してください!」(斑鳩)
ニャ〰〰〰!
すると猫又軍団の一匹が、地面に手のひらを当てた途端、辺り一面に謎の結界が覆わせた。
「これって…忍結界!?」(飛鳥)
「まさか、このような技まで使えるとは…」(斑鳩)
忍結界は、一度張られた限り戦いが終わるまで抜け出せまんせん。本来なら、忍が周りに迷惑を掛けないよう戦うために使われる術だが、まるで閉じこめられたような感覚でありました。
「どうやら、コイツらを倒さない限り俺達は出られないみたいだな」(柳生)
「怖い…でも、早く行かないと葛姉が…」(雲雀)
「皆さん、焦りは禁物です。葛城さんを信じて、私達は私達の出来る事をやりましょう」(斑鳩)
斑鳩は、3人の気を落ち着かせようと声を掛けた。その言葉を聞いた3人は、再び構えた。
「そうだね斑鳩さん。葛城だって、あんな怪人になんか負けたりしないんだから!ハァー」(飛鳥)
場面は変わり、葛城は逃げる怪人を追いかけていた。一方の怪人は捕まらないように、逃げながら腕のガトリングガンを乱射していた。
「オラオラオラ〰!どうした、逃げてばかりじゃ捕まえられないゼニよ!」(怪人)
「逃げてるのはどっちの方だよ」(葛城)
葛城は、怪人の打った弾丸を次々と避けながら、どんどん近づいていった。怪人も、ひたすら銃弾を撃ち続けていたが、ガトリングに異変が現れた。
「しまった!弾切れでゼニ」(怪人)
「もらったー!!」(葛城)
葛城は、スキを突いて怪人に蹴り掛かろうとした。しかし、怪人もしつこく葛城の蹴りをヒヤヒヤしながら避け続けた。その避けてる間に、怪人はもう片方の腕をバーコードリーダーへと変えて、葛城へと向けた。
「コレでどうだ。スキャナレーザー」(怪人)
「おっと!」
バーコードリーダーから、赤い1本の光線が発射された。葛城は、上手い具合に体を後ろへ反らし、光線をかわした。さらにその勢いを利用し、バク転てながら相手との距離を置いた。
「しぶとい怪人め……正々堂々と戦いやがれ!」(葛城)
「やなこった。戦い方は人…いやっ、怪人それぞれだゼニ。ガハハハハー」(怪人)
怪人は、弾を交換すると再びガトリングガンとレーザーの乱射を始めた。次々と襲いかかる銃弾とレーザーに、葛城は思うように攻められません。貫通はしませんが、いつの間にか葛城の体には、何カ所ものかすり傷が出来ていた。
「ちっ………何か一瞬だけでもスキが出来れば…」
「オラオラオラ〰泣き…叫べ、泣き叫べゼニ〰」
完全に勝てると思い、余裕を見せる怪人。しかしその時、その余裕が一気に打ち消される。
「ヒップ!ポップ!!パチー美!!!」
ン!?どわ〰〰〰痛っ!
突如、怪人めがけて謎のヒップアタックが繰り出された。怪人は、バランスを崩してその場に倒れた。
「痛たた…誰ゼニか、オレを邪魔したのは………あ〰貴様は!」(怪人)
怪人は、自身に攻撃した相手を見て、驚きと怒りを合わせたリアクションを見せた。何故ならその相手とは…。
「んっ?誰だオマエ?」(首領パッチ)
「この間のトゲ野郎!!」(怪人)
ヒップアタックを繰り出した犯人は、前回の戦いで葛城といいコンビネーションを見せた、ギャグ漫画『ボボボーボ・ボーボボ』の首領パッチであった。しかし、首領パッチは自身の目の前にいる怪人が、前回自分が戦ったレジスター怪人だと気付いていない。首領パッチは、怪人に再び尋ねた。
「オマエ一体誰なんだよ?オレ、お前のような知り合いいないぞ」
「とぼけても無駄でゼニ!オレの背中によくも鼻クソを擦り付けやがったな!!」
「ゼニ?………鼻クソ………あー、オマエこの前のレジ男か!?」(首領パッチ)
首領パッチは、怪人の正体に気づいた。
「ようやく気づいたか。だったら…オマエもまとめて消え…」(怪人)
「あらま~アンタったら見ない内に大きくなったわね~」(首領パッチ)
「え!?」(怪人)
急に、首領パッチの反応が変わりだした。それはまるで、お盆や正月に実家に集まった時に、大きくなった子供を見てテンションが上がる親戚のオバちゃんみたいだ。しかし、首領パッチの暴走はまだまだ止まらない。
「こんなに大きくなって、ホンマに何食うたらこんなんなれるん?オバちゃんなんかナンボ食べても縦(身長)どころか横(体脂肪)がボーンやさかいに…」(首領パッチ)
首領パッチは、完全にテンションがオバちゃん。というよりは、オバちゃん目線で会話を続けている。しかし、それを聞いてる怪人にとっては、かなりどうでもよかった。
「若いうちに何でも食うときや!オバちゃんは、縦(身長)がガクーッ、横(体脂肪)がドーン!」(首領パッチ)
「さっきから何いってるゼニ〰!(怒)」(怪人)
怪人は、とうとう激怒した。
「何が、横からドーンだよ!そもそも、オレはオマエの親戚か?親戚じゃね〰よ!!」
怪人は、溜まっていた事・不満を次々とはき出していった。しかし、それでも首領パッチは…
「あらやだアンタ、またすぐ怒り出して…牛乳飲んでカルシウム摂りなさい。牛乳駄目なら、オバちゃんのおっぱいでも吸わせたろうか!」(首領)
「だ〰〰〰、うるさい、うるさい、うるさい、うるさいうるさ〰い!もう、我慢の限界でゼニ!お前から先に消えろ〰」(怪人)
怪人は、首領パッチにバーコードリーダーを向けて光を溜め始めた。そして、光線が発射されようとした次の瞬間。
「オバちゃんもいいけど…ピチピチJKは、無視されっぱなしだぜ!」(葛城)
「え!?」(怪人)
「秘伝忍法 クロスパンツァー!!」(葛城)
「何!?ぎゃあぁ〰〰〰〰!」(怪人)
怪人が首領パッチに気をとられているスキに、竜巻を纏った足甲で葛城が怪人の顔面を横から強く蹴り上げた。
「ぐぬぬぬ…き…貴様、この為に俺を騙したのか」(怪人)
「ハッハッハー!馬鹿め、全部作戦通りだぜ」(首領パッチ)
「いやっアンタ、絶対Noプランでやってただろ…」(葛城)
葛城は、冷静にツッコんだ。首領パッチは基本、戦い方を決めずに勝負に挑むタイプなのだ。特に作戦があるわけでも無く、常に自分のやり方を貫いている。改めて言おう…首領パッチは、馬鹿なのだ。しかし葛城は、前回の戦いでもそんな首領パッチの美学に救われたのだ。
「へん!またアンタのマイペースに救われましたな」(葛城)
「おいおい、オレは先輩だぞ。敬語敬語」(首領パッチ)
「ヘヘヘッ。さーてと首領パッチさん、今回もよろしくお願いします」(葛城)
「足引っ張るじゃねーぞ葛!」(首領パッチ)
葛城と首領パッチは、戦闘態勢に入り怪人へと近づいていった。一方の怪人は、また同じ2人と戦うとなると若干怯えていた。そして、小声で呟いた。
「ひぃっ…またこの2人ゼニ……まずい…こうなったら“アノ手段”を使うしかないでゼニ」(怪人)
すると怪人は、急に走って逃げ始めた。
「あ!あいつ逃げやがった!」(首領パッチ)
「首領パッチさん、追いかけましょう」(葛城)
2人は、怪人を追いかけた。
「待ちやがれ〰!」(葛城)
「MCハ●ー通りま~す」(首領パッチ)
走る葛城と、昔懐かしい独特な走り方をみせる首領パッチ…何がともあれ怪人を追いかける2人。一方の怪人は、ただ逃げているのではなくキョロキョロと何かを探している様子であった。
「まずい!このままじゃ追いつかれるゼニ!何かないかな…何か…何か…あっ、アレは!」(怪人)
怪人は、何かを見つけた。それは、たまたま駐車したまま置きっぱなしにされていたアメリカンバイクであった。怪人は、それを見つけて不気味な笑みを浮かべた。
「よし、アレにするとしよう…」(怪人)
怪人は、懐からゴソゴソと小さな袋を取り出した。
「アレは、白い粉!?…まさか、アイツ」(葛城)
正体不明の謎の白い粉。これを口に含んだ怪人は、普段数十倍の力を得ることが出きりるのだ。葛城は、止めようとしましたが遅かった。
「薬物投入~ゴクリッ……か・ら・の~タッチ」(怪人)
白い粉を飲んだ怪人は、全身に謎のオーラを纏いだした。さらに、近くに置いてあったバイクに手を伸ばし触れると、バイクがだんだん怪人の体へと吸収された。
「キタ、キタ、キター……力が漲るでゼニ!」(怪人)
「しまった!遅かったか」(葛城)
「バイクが消えたぞ葛。新しい大道芸か?」(首領パッチ)
「今、ふざけてる場合じゃないでしよ」(葛城)
「もう、遅い!変身!!」(怪人)
怪人は、自身の体を変形させていき、なんとバイクの形へと姿を変えた。それもまた、かなり怖く趣味の悪そうなモンスターカーのようなデザインのバイクでり、吸収したアメリカンバイクの原形がほとんどありません。
「バイクに変身しやがった!」(葛城)
「ブハハハハ〰!この力があればオレは無敵でゼニ!さらば!!」(怪人)
怪人は、アクセスを全開にさせてその場から猛スピードで後ずさった。
「お…おい待て!逃げるなんて卑怯だぞ」(葛城)
「ふん、悔しかったらオレに追いついてみろ…バーカバーカ」(怪人)
最初の頃と比べてスピードが速くなった怪人。葛城と首領パッチは、一旦足を止めた。
「くそー逃げられた…このままじゃまた被害が出ちまう…何か策はないのか…」(葛城)
葛城が考えていると、首領パッチが何かを閃いた。
「任せろ、葛!」(首領パッチ)
「首領パッチさん!?」(葛城)
「相手がバイクなら…バイクで対抗するぜ!トランスフォーム」(首領パッチ)
首領パッチは突然、某ロボットアニメで聞き覚えのあるフレーズを叫び出した。すると首領パッチの体がどんどん形を変えていき、カッコイイオレンジ色のバイクへと姿を変えていった。
「パッチバイク!!」(首領パッチ)
「パッチ……バイク」(葛城)
「おい葛城、時間がないぞ。速く俺に乗れ!アイツを追いかけるぞ」(首領パッチ)
「バイク…」(葛城)
バイクへと姿を変えた首領パッチに、葛城は何やらキョトンとしていた。それも、驚きというよりは何か別の感情が表れていた。
「葛城?…おい葛城!葛!!」(首領パッチ)
「す…す…スゲ-(☆。☆)!」(葛城)
「か…葛?」(首領パッチ)
葛城は、バイク姿の首領パッチを見て目を輝かせていた。
「スゲ-!バイクだ、バイクだ!ヒーローのロマン!ヒーローの醍醐味!こんなことも出来るんっか首領パッチさん。何で、もっと早く言わなかったんですか、むしろ知ってたらもっと早くアンタを誘っていたのに〰」(葛城)
葛城は、相当バイクに乗りたかったのか、テンションがいつも以上に上がり出しおかしくなっていた。さすがの首領パッチも、葛城の思わぬ温度差に若干引いていた。
しかし、敵がどんどん離れているのに気づき、首領パッチは話を切り込んだ。
「おい葛城、今はそれどころじゃないぞ!アイツに逃げられてしまうぞ」(首領パッチ)
首領パッチがそう言うと、葛城は正気に戻り状況を把握した。
「おっと、イケねーイケねー!……よし、首領パッチさん、被害が出る前に早くアイツを追いかけましょう」(葛城)
「おう!おら、早く乗れ」(首領パッチ)
葛城は、パッチバイクへとまたがった。エンジンをかけミラーを合わせて、アクセルを数回ひねり音で威嚇する。
「ところで葛!おまえ免許は持ってるのか?」(首領パッチ)
「持ってません!でも、いざとなったら首領パッチさんが先輩としてどうにかしてくれれば問題ないでしょ」(葛城)
「おいおい、都合のいいときに先輩便りかよ…オマエやっぱりハジケてるなぁ…」(首領パッチ)
そんなこんなでやりとりを終えると、2人は覚悟を決めた。
「行きますよ!首領パッチさん」(葛城)
「おう!ハジケアクセル全開ダゼ」(首領パッチ)
葛城は、前に重心をかけてアクセルを全開に回した。すると、パッチバイクは猛スピードで前進した。葛城は、初めてとは思えない乗りこなしで、パッチバイクの向きを変えながら巧みに乗りこなしていった。さらに、そのまま片手でハンドルを操作し、もう片方の手で変身ベルトを装着した。
「忍・変身!」(葛城)
『オーダー入り…セクハラーメンマン一丁』(ベルト音声)
バイクを操縦しながら、セクハラーメンマンに変身した葛城。ハンドルを握り直し、さらにバイクを加速させた。
「オラオラオラ〰ヒーロー魂をなめるなよ〰!」(葛城)
葛城達は、どんどん怪人との距離を縮めてく。果たして2人は無事に怪人を倒すことが出来るのだろうか。そして、首領パッチとどのようなコンビネーションを見せてくれるのか。2人の運命はいかに…。
そして、ふんな2人の様子を1人の少女が高い位置から様子を伺っていた。
「半蔵学園…葛城………私が消します」
なんとか、今回も無事に書き終えました。お気に入り登録者数が目標を達成しました。これからも、精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
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