コードギアス 二度も死ぬのはお断り   作:磯辺餅太郎

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だからどうしてこうなった。

 ──どうしてこうなった。

 KMFのコクピットは狭い。さらに言えば、身の丈だけはやたらと恵まれてしまった男にとって、そこは棺桶並の狭苦しさである。

「きゃっ」

 瓦礫に大きく揺れた瞬間、可愛らしい悲鳴が上がる。

 そう、ただでさえ狭苦しいそこには、もう一人乗客がいた。

「悪いな嬢ちゃん、ここさえ切り抜ければ先行してる連中と合流できる」

 背中越しの男の言葉に、少女はこくこくと頷き男の背に掴まりなおす。

 目も見えない、足も利かない、その上見知らぬ男に連れ回されている割に落ち着いて見えるのは、案外胆力があるのかもしれない。

 『もう一人』に比べれば。

『いーやーだー!! 戦争反対!! 帰る帰る帰ってお布団入ってプレミアガチャ軽率に回して爆死するーー!!』

「ええいくそ、頭ん中で喚くな!!」

 ほとんど八つ当たり気分で進路に現れたグラスゴーの駆動部をスラッシュハーケンで難なく潰し、男は再度思った。

どうして、こうなった。

 

 

 

 

 

 

 死ぬのは死ぬほどクソ痛い。

 彼が実感したのはその瞬間だった。

 連日の残業で疲れていたからか、歩きスマホが悪かったのか、週末の浮かれ気分の酔漢の横を不用意に通ったのが悪かったのか。

 強いて言うなら全部だろう。

 ふにゃりとよろけた酔っ払いに押されたかたちでたたらを踏んだその先に、あるべき地面が無く、かくして彼はホームに入ったばかりの電車の運転手とまともに目が合い──死ぬのは死ぬほど痛いと、知った。

 痛い、そう、痛みが全てだった。痛い、苦しい、痛い、ひたすら痛い。

 必死で「そこ」からぬけ出ようともがく。どれくらいもがいていたのか、その先で──ふわりと何かが触れ、痛みが、消えた。

 これは、いわゆるお迎えというやつだろうか。笑える体がまだあるならば多分笑っていたであろう彼に、語りかける声が響いた。

「へえ、面白い混ざり方だね」

 意識がその声に向くと、茫洋とした視界に少女の姿が浮かぶ。どことなく現実離れした服装に、セミロングの黒髪は毛先だけほんのりと赤い。その目は全てを見通すように静かだった。

 彼は、その少女の姿に痛みも何もかもを忘れ、驚きをにじませ叫んだ。

『ア、アニメのキャラだーーー!?』

 

 見覚えが、あった。

 映画館にわざわざ見に行って「赤根監督ほんと量子力学ネタ好きなのな……」などとオタク友達と愚痴りあったアニメーションの、その登場人物そのままだった。

 いや、アニメ絵ではないのだ。実写版とでもいうべきなのだろうが、違和感がない。時空の管理者、人ならざる超常の存在、そう「コードギアス」というアニメの、フィクションの、作り事の中の少女が彼の前にいた。

「そう、今までの君のいた世界では物語として存在してる。うん、合ってるよ」

 少女がわずかに笑ったように見えたが、彼には聞き捨てならない言葉にそれどころではなくなっていた。

『今までって、やっぱ俺死んじゃったんだ!!』

 呆然とする頭のどこかで、そりゃそうだと納得する部分がある。電車とまともにこんにちはして無事なはずない。多分あの勢いでは、ミンチだ。

 死んだ、あんなしょうもないことで痛い思いして死んだ。おまけに走馬灯かと思ったらアニメキャラと対談、これはつらい。つらいというかイタい。

「ちょっと違うよ」

 声が、彼の意識を引き上げた。

 そうだね、と少女が少し間を置いて口を開く。

「体は死んだよ、間違いなくね。ただ、たましいが混線してる」

 意味がわからず言葉を失っている彼に、彼女はいたずらっぽくー笑った。

「もう少し先に死ぬはずの、同位体に引っ張られてる。よかったね、がんばればもう少し長生きできるよ。もちろん気を抜いたら、今度こそ本当に死んじゃうけどね」

 笑みを含んだ少女の声が遠のき、視界がぼやけ、今度は急速に落ちていく感覚にとらわれた。

 落ちて、落ちて、どこまでも落ち─────

 

 彼の目は、覚めた。

 

 夢だった。生きてる。

 そりゃそうだ、電車に轢かれてアニメキャラと対談とかアレじゃないか。

 覚醒していく意識が気恥ずかしさを覚える頃、床の冷たさに気づく。

 打ちっ放しのコンクリートのそれに寝袋、この状況に覚えはない。

 ここは、どこだろう。線路なんかじゃないのは確かだ。そう思う一方で無意識に体を起こし立ち上がり、彼は違和感に気づいた。

 視界が、高すぎる。薄闇の中でもなんとなくわかる、明らかに自分の体ではない。

 夢の中の言葉が頭をよぎる。

 

『物語として存在する世界』。

 

 いやいやまさかと首を振りたいところだが、浮かんだ考えは消えてくれない。

 もしかしたらもしかして、物語では「ない」世界も、あると。

 続けてさらにろくでもない方向に思考は走る。

 そう、もしかして、これはいわゆる──ある可能性にたどり着きそうになった瞬間、声が響いた。

「何か、あったのか?」

 男の声だ。落ち着いた渋みのある声には、聞き覚えがあった。面識は全くないが、聞き覚えだけはある声だ。可能性が嫌な確信に変わる。

 薄闇の中でこちらをうかがう姿は影だけでもなんとなくわかる、知っている。

 先ほどの夢と同じだった。平面的なアニメの絵じゃないのに、彼はその男が誰なのかわかってしまった。

 やばい、答えなくちゃ、ぐるぐると混乱する彼を置いて、事態は動いた。

「いえ中佐、急に目が覚めちまって」

 口から勝手に声が出ていた。あまつさえ体もだ。

 驚きで動けない、そのはずなのに、自分は落ちた上着をひっかけすたすた歩き出す。

「ついでに代わりますから、中佐も少しお休みになってください」

 また体は彼の意思とは関係なく喋り、水場へ向かってしまう。

 混乱しながらも彼はある結論にたどり着いていた。

 ある意味、ある意味いわゆる──転生系ってやつだこれは。

 だが。

 バシャバシャと顔を洗い、さっぱりした感覚が伝わる。

 さっきから体は指一本自由にならない。そう、意識だけだ、ここにあるのは。

 顔を拭く体の主が水たまりを見た。水面は月明かりで鏡面になっている。

 薄々予想はついていた。先ほどの男を気の置けない調子で中佐と呼ぶ、背の高い男。

 かなり絞り込まれる。

 駄目押しは水面に映った目つきが悪くて微妙にパッとしない風貌だ。

 彼には心当たりがありすぎた。だが目の当たりにするのは、話が別だ。

 

『これ、卜部じゃねえか!!』

 

「うわぁっ!?」

 元日本解放戦線の卜部巧雪は突如響いた絶叫に思わず声をあげ、さらにバランスを崩して尻餅をついた。瓦礫が地味に痛い。

 尻をさする卜部に気配が近づく。彼の上官である藤堂だ。

「中佐、いっ今の声」

 聞き覚えのない声に慌てて見上げた先で、卜部は上官の怪訝な表情とぶつかった。

「あのう……今、すげえ声が」

 聞こえませんでした?と尻すぼみに小さく尋ねる卜部に、藤堂はどちらかといえば気遣わしげな目になる。

 かなり表情がわかりにくい部類の藤堂だが、四聖剣などと呼び称されるほどに付き合いの長い卜部には、そういう表情の機微はたやすく伝わる。

「卜部、やはりもう少し休め」

 有無を言わさぬ声に、小さくはい、と返す。こういう時に藤堂が決して譲らないのもよく知っていることだった。

 それに確かに疲れているのかもしれない。トウキョウ攻略のための計画が、ユーフェミアという少女の一声で風前の灯火になってしまったのだから。

 もっともそれをいえば、中佐の方がよほど気苦労が多いはずだが、あの調子では言っても聞いてもらえるかどうか怪しい。これも長い付き合いで身に染みている。

 とぼとぼと元いた場所に戻り、卜部はいつの間にか二人分の空間を占拠して眠りこける同僚の朝比奈を蹴飛ばし、隙間を確保してから寝袋に潜る。

 妙に目が冴えているが、眠れるだろうか。

 無理やり目を閉じた卜部に、再び見知らぬ声がした。

『悪い、大声出したのは謝る。声が聞こえると思わなくて』

 やっぱり自分は疲れ切っているんだろうか。

 今度は声を上げることすらできずに卜部は固まっていた。

 

 黒の騎士団は神聖ブリタニア帝国にとって、反政府組織である。であるからその構成員の中でも名の知れているものは所在に気を使う。視覚的な意味でも、社会的な意味でも人目につきにくい死角が唯一のくつろぎの場となる。

 ここもそんな場の一つだ。

 卜部巧雪はひとり階段の踊場で手すりにもたれ、重たいため息をついた。

「つまりなんだ、俺の頭がイカれたんじゃなけりゃ、お前は俺のここにいるってのか」

 トントンと指先で己の頭を叩けば軽い調子の『声』が返ってくる。

『うん、何考えてるかはこっちはわかんないけど、感覚は共有してるみたいだ』

 呑気な調子に少しだけむかっ腹がたつ。結局あれから眠ることなどできなかった。

 生あくびで返事をしかけ、ふと嫌な可能性に突き当たる。

「……待てよ、それじゃお前と話すには延々独り言を」

『だね、いやーまいった。俺もこんなん知らなかったから』

 ズルズルとだらしなく手すりに背中を押し付けて、卜部は座り込み、頭を抱えた。

『とっとにかくさ、命大事っていうか死なないように、お互い頑張ろ!!』

「……俺、そこまで追い詰められてたのか」

『妄想扱いやめて!! とにかく一年後の死亡イベント乗り切れば、きっとなんとかなるって!!』

 一年後という言葉に加え、イベント、という方はともかくとして、死亡という言葉に卜部は眉間に皺を寄せた。

「嫌に具体的だな、おい」

『だって今、特区の式典直前なんでしょ?』

 卜部は虚空を睨む。はじめに『声』がやたらと気にしていたのは、今がいつかということだった。おおよそ伝わったあたりで、『声』はじゃあ間に合う、まだ間に合うなどと喜んでいるようだったのは記憶に新しい。

『確かこれから特区で虐殺が始まって、蜂起して、そんで負けて逃げ回って一年後に』

 早口でまくし立てられた言葉に、卜部はばね仕掛けのように跳ね起きた。

「待て!! 蜂起が失敗って、いやそもそも特区で虐殺って、お前!?」

『えっ、きっかけは本当にしょうもないけど、バタバタ死んですごかったじゃん血染めのユフィ』

 卜部は無邪気な声にぞっするものを覚える。まるで人ごとのように縁起でもないことを軽く口にする『声』。これが己の内面の一部なら吐き気すら覚えるものだ。

 確かに、他人であってほしい。卜部は、ぐっとこみ上げてくる感情を抑え、そもそもの疑問を口にした。

「おい、お前、本当になんなんだ?」

 『声』が息を飲む気配に、卜部は自分が思ったより感情を殺しきれなかったことを悟る。

 まだ、藤堂のようにはいかない。

『……さっき違う世界って言ったけど。もう少し正確には、こっちの世界がアニ……物語だった世界から来た、と思う』

 横道に逸れかけた卜部の意識を、決まり悪そうな『声』が引き戻した。

 その声に卜部はふと思った。

 年齢不詳と思っていた『声』は、もしかしたら相当幼いのでないだろうか。

 あえていうならものの考え方が、だ。

 卜部は疲れ気味に尋ねた。

「で、その物語の俺は?」

 答えは、返ってくるまでに随分と時間がかかった。

『あんたは、それまで地味だったのに急に活躍して、そんで……死ぬ役だった』

 

 

 

 卜部は苛立たしい気分である人物が現れるのを待っていた。

 さっきから『声』は何をする気だと喧しいが、返事をしてやる気は微塵もない。

 暗く、見通しのきかない通路は目的の人物がよく使う。

 もう間も無く姿をあらわすはずだった。

 カツ、カツ、と硬質な音が響く。体格と、その特徴的な影が、卜部に目当ての人物であることを告げる。

『はぁ!? ちょっと何する気!?』

 慌てふためく『声』を無視し、卜部は現れた男の進路を塞ぐ形で向き直った。

「ゼロ、あんたに話がある」

 ゼロ──仮面の男は値踏みするように卜部を見ると、頷きで返した。

 そんな仕草ですら芝居がかっているが、これには慣れつつある。

 示されるままにつき従い進めば見慣れたトレーラーが待っている。

 どこぞの貴族が持っていても不思議ではないそれは、黒の騎士団でのゼロの城だ。

 招き入れられた先にC.C.とかいう女の姿もないことを確認すると、卜部はようやく息を吐いた。

 ゼロはといえば、卜部が中に入っても終始無言だ。無言だが、傲然としたその態度は言いたいことをさっさと言えばどうだと言わんばかりである。

 卜部はぎゅっと拳を握る。これから聞くことには、それなりの覚悟がいる。

『ちょっと!! ゼロと二人きりになるのは絶対まずいって!!』

 声はますますやかましい。そうすれば聞こえなくなる、そんな風に一度目を閉じてから、再びゼロを見る。そして、尋ねた。

「ゼロ、あんたは……ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアなのか」

 

 『声』は焦っていた。うっかり勢いに押されてベラベラ喋るうちゼロの正体を口走ったら、まさかの本人直撃である。思い返して見ると、この頃の卜部がどうしてたかなんて、アニメじゃほとんどわからない。当然ゼロにどういう目を向けていたかもだ。

 実感した。させられた。はっきり言って、友好的には程遠い。

 そしてこの、ゼロにぶっちゃけた質問。やばい、詰んだ。混乱する『声』がオロオロするその視界で、仮面の目が、開いた。

『死ねギアスだけはやめてえ!!』

「その疑惑は、忘れろ!!」

 響いたのは、『声』にとって穏便な内容だった。だが別の驚きで思考はさらなる混乱に陥っていた。

 ゼロの持つ異能の力──ギアスが、『声』には効いていない。

 そう、かつての物語通りならば、ゼロの絶対遵守の力は使用前後を含めて対象の記憶に欠落が生まれる。だが『声』はまったく影響がない。

 とはいえ卜部自身には効いてしまったようだった。

「ああ、忘れる。それでいいんだな」

 平坦な声は確実にギアスに支配された声だった。

 『声』が事態を見守る中、ゼロのつぶやきが漏れた。

「今、藤堂の部下を削るわけにはいかん、だがこいつどこから俺の情報を……」

 ネット配信全話視聴で久々に、などという真実を伝えたら憤死しそうなほど真剣に悩むゼロに『声』はいたたまれなくなる。元々ゼロというかルルーシュというキャラは好きな方だった。変なミスをするとこ含めて。

「あー…ゼロ、何の話だったか」

 不意の卜部の声に『声』は飛び上がる思いだった。ギアスが効いてから正気に返るくらいの時間は過ぎている。

「お前が話があると言っていたんだろう、ちゃんと寝てないんじゃないのか?」

 卜部から、うぐ、という声が一瞬漏れたのは図星でもあったからだろう。

 『声』がおろおろし、ゼロが見守る中、卜部は首をかしげた。

「すまん、本当に思い出せん」

「……本当に寝不足なんじゃないのか卜部」

『ハイ実際寝不足です! おうち帰して!!』

 そう叫びたい気持ちを『声』はぐっと堪えた。さっさとこの場を立ち去りたい。

 後悔しかない。不幸中の幸いは、『ギアス』についてはこれから先に起こるユーフェミアの件も含めてまだ伝えていなかったことだろう。あれを知っていたらはるかにまずい事態になっていたはずだ。

 なにごとか口にしかけて、卜部はかぶりをふった。

「そうかもしれん、悪い、思い出したらまた訊く」

 腰を上げた卜部に、いやそれ思い出せないからと内心でツッコミを入れつつ、『声』は沈黙を守った。

 背中にあたるゼロの視線が、怖すぎたからである。

 

「お前、途中で急に黙ったな」

 一人になるや卜部は声を潜め気味に囁いた。

『………こっちも聞くけど、あんたほんとに何しにゼロに会ったか覚えてないの?』

 卜部は少し眉間に皺を寄せ、歩きながら呟く風に応える。

「わからん、妙だな。確かに訊きたいことがあった気がするんだが、はっきりしない」

『ああうん……やっぱりかあ』

 落胆の含まれた響きに卜部は足を止めた。

『ちょっと今は、言えない』

 雰囲気を察したのか、『声』は先んじて卜部の疑問を封じる。

『次はないし、俺は二度も死にたくないから』

 二度、という声に疑念を口にする。

「俺が死んだら、お前はまた誰かに移るってことか?」

『ないよ、おしまい。今回はボーナスステージってことみたい』

 『声』は軽く言ったが、卜部の耳には取り繕った軽さとして響いた。

 

 

 

 

 

 

 思えばそこで、妙な哀れみなど覚えなければ良かったのだ。

 今更ながら卜部は激しい後悔に襲われていた。

「ナイトポリスがしゃしゃり出る幕じゃねえ!!」

 囲みにかかったブリタニアのKMFを、ランドスピナーで加速した勢いのまま雑に体当たりでひきたおし、走った動揺を見逃さず残りも駆動系を狙ってスラッシュハーケン、ときには回転刃刀で切り捨て走り抜ける。

 エナジー切れにはまだ間がある。合流地点はすぐだった。

「よし、ポイントに近づいた!!」

 ぎゅ、と卜部の背中にしがみつく小さな手に力がこもる。

『これは!! これで!! こここここれは!! これで!!!!』

 さっきまで死ぬ死ぬ喚いていた『声』の、嫌な方向に上がったテンションにくじけそうになりながらも卜部は目を凝らし、目的のトレーラーを見つけて声を張り上げた。

「トレーラーに飛び移るぞ、しっかり掴まってろ!!」

「きゃ『ギャ────!!』

 可愛い悲鳴をかき消す野太い悲鳴を黙殺しながら、コンテナを開けて走るトレーラーの後部に卜部の乗機、月下は着地を決めた。

 手薄な一帯を選んだのが功を奏したのだろう。追撃部隊は卜部たちの前に今のとこは現れる気配はない。

 エナジーフィラーの補給を簡潔に指示してから、ようやく卜部は息をついた。

『い……生きてるって素晴らしい』

 『声』は無視する。これから先、どの程度残存する戦力を拾えるか、拾った先でルートの安全は確保できるのか、問題は山積みだがこの刹那くらいは少し休みたかった。

「さて、とりあえずはこれでしばらく安心だ。ええと……」

 背中にしがみつく少女は卜部に、初対面よりはいくらか柔らかい声で応える。

「ナナリーです。ナナリー・ランペルージ、です」

 ゼロの妹は、にこりと笑った。

 

 ──本当に、どうしてこうなった。

 


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