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昨夜はひどい目にあった。……いや、確かに俺の配慮が足りなかったのは認めよう。だがしかし、裸の一つや二つ見られた所で減るものでもないしそもそも幼女、起伏も色気もない子供の姿に欲情するわけが無いだろうと声を大にして抗議したいものである。俺はロリコンではない。
宮野明美改め、伊吹沙羅と握手を交わした際に伸ばした腕を見て彼女は自身が今の身の丈にあった
シーツで隠れていた身体に視線を落とすとそこには男物の白のYシャツがポンチョの様にだらりと垂れ下がっており寝苦しくないようにと開けておいたボタンの隙間からは白い肌が見えていた。少女は羞恥で顔がトマトの様に染まり悲鳴を上げてシーツを引っ被ってダンゴムシがごとく丸まった。
裸よりはマシだろうと一応気を利かせたつもりで長袖のYシャツを着せておいたのだが、それが余計に彼女を苛立たせたのか『変態』呼ばわりされる始末。
元の服はどこだと問われれば、発信機や盗聴器の類が仕込まれている可能性があったために港に捨て置いたと告げて、そもそも着れないだろうと指摘する。彼女もそう言えばそうだったわねと同意しつつもそれでも理解は出来ても納得したくないと乙女心故にかシーツに包まってうー、うーとベッドの上で転げ回っていた。
今更何を気にしているのやらと肩をすくめて、彼女が起きる前にノートPCで見ていたブラウザの画面を見せるベくシーツを無理やりに引き剥がした。恨みがましげに睨みつけてくるが知ったことではない。
「いつまでもそんな格好でいられないだろう。かと言って俺が買いに行く訳にもいかん。故にこれだ」
「ネットショッピング? 意外ね、ずっと裸Yシャツを強要させられるのかと思っていたわ」
「俺にそんな趣味はねぇ」
「どうだか……あっ、これかわいい。これとこれも」
ノートPCを奪い取るようにして宮野、いや伊吹は次々と好みに合った服をピックアップしていく。一応おかしな真似をしないように見張るべく暫くの間付き合っていたのだが、長い。とてつもなく長い上に俺に意見を求めてくる。
返答がおざなりだなんだと文句を言われること二時間。カートには厳選されてなお、かなりの量となった衣類品がずらりと並んでいた。
これ本当に全部買うのか? と問えば当然でしょと即答され、渋々購入するハメになり、爆買してようやく機嫌が治まったのか手を口元に当てつつ大きくあくびをして「もう寝るわ」と再びベッドの中へと消えていったのであった。姉妹とはやはり似るものなのだろうか。あまりの自由奔放ぶりにため息すら出ては来なかった。
と、まぁ大体こんなことが昨夜起きたわけである。一応、念のため昨夜使用したノートPCや俺のスマホにはロックをかけておいた。固定電話は元より引いていないから問題ない。宮野明美の所持品はすべて港に置いてきたも同然だからこれもまた問題ない。下手に外部と連絡を取られると困る。
「おはよう、ジン」
「ああ。起きたか、もう少し待て今焼き上がる」
手にはフライパン。その上には朝食の定番だろう目玉焼きが出来つつあった。頃合いを見計らって
と同時、トーストが焼ける音が鳴り響き時間調整が上手くいったことに、良しと内心笑みを浮かべる。
二人分の皿を持って伊吹の元へと近づくとその顔は心底驚いた表情だった。
「あなたってホント……いえ、いいわ。何故かドンドンとイメージが壊れていく気がするわ」
「(あー、なるほど。
「はいはい。わかったから食べましょ。いただきます」
両手を合わせて小さくお辞儀するようにしてトーストに