今話、次話共に語り部がジン(オリ主)ではなく別の人物になります。
ご注意ください。
また、原作(2巻FILE.4-5)をご存知であれば今回の話は読まなくても然程問題はありません。
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オレは高校生探偵、工藤新一。幼馴染で同級生の毛利蘭と遊園地に遊びに行った際、黒ずくめの男の怪しげな取り引き現場を目撃した。取り引きを見るのに夢中になっていたオレは、音もなく背後から近付いて来るもう一人の仲間に気が付かなかった。オレはその男に毒薬を飲まされ、目が覚めたら身体が縮んでしまっていた!
工藤新一が生きていると奴らにバレたら、また命を狙われ、まわりの人間にも危害が及ぶ。
知人である阿笠博士の助言で正体を隠すことにしたオレは、蘭に名前を聞かれてとっさに江戸川コナンと名のり、奴らの情報をつかむために、父親が探偵をやっている蘭の家に転がり込んだ。
ところがこの親父はとんだヘボ探偵だった。オレは小五郎のおっちゃんを名探偵に仕立て上げるべく、時計型麻酔銃でおっちゃんを眠らせ、蝶ネクタイ型変声機を使っておっちゃんの声で代わりに事件を解いている。
この二つのメカは、阿笠博士の発明品だ。博士は他にもターボエンジン付きスケートボードや、キック力増強シューズなど次々とユニークなメカを作り出し、小さくなったオレが動きやすくサポートしてくれている。
蘭もおっちゃんも、オレの正体には気付いていない。知っているのは阿笠博士ただ一人。
「小さくなっても頭脳は同じ! 迷宮なしの名探偵! 真実はいつもひとつ!!」
「何言ってるの、コナン君? 大丈夫?」
小首をかしげてこちらを見る蘭の姿は少々物憂げな様子に見える。一体どうしたというのだろうか?
「あ、蘭ねえちゃん。えへへ~何でもないよ。それより電話どうだったの、繋がった?」
子供らしい演技をするのにも大分慣れてきた。まさか『蘭ねえちゃん』だなんて呼ぶ日が来るとは夢にも思わなかったが……。それはそうとして、さっきから何度も電話をかけていたはずの蘭はオレに対してゆっくりと頭を振って口を開いた。
「駄目みたい。何度かけても繋がらないのよ……大丈夫かな、あの子」
「あの子?」
「ほら、この前お父さんを探して欲しいって依頼に来た広田雅美さんのことよ!」
嗚呼、なるほど彼女のことか。確か、わざわざ山形から父親探しをおっちゃんに依頼しに来たのだ。……そう言えばちょっとした手違いで彼女の腕時計に博士が新開発した発信機を取り付けてしまい外せていなかった筈だ。今度あった時にこっそりと回収させてもらおう。
確か、飼い猫の名前から競馬場に出向き、親父さんを見つけると彼の跡を付けて彼女にアパートの場所を教えることで感動の再会とはいかなかったものの無事再会することが出来たのだ。あっ、もしかして。
「また、あのお父さんどこかへ行っちゃってたりして」
え、と蘭は困惑気味に表情を曇らせる。小五郎のおっちゃんは思案顔になり、あの男ならあり得ると珍しく同意してきた。
「ちょっと、悪い冗談はやめてよ! ……私、やっぱりあのアパートまで行ってくる!」
「あ、おい待て、蘭!」
おっちゃんの制止を無視して蘭は外へと鉄砲玉の如く飛び出していった。しゃーねぇなぁとおっちゃんも渋々と蘭の後を追うように歩きだす。ボクも行くー! と
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アパートに辿り着き、ちょうど外に出ていた大家さんに話を聞くと広田雅美の父親である広田健三氏は昨晩亡くなったと腹立たしげに口火を切った。それも首を吊っての自殺だと言う話だ。
おっちゃんが健三氏のことを聞くと不自然なことに入居する際に家賃を一年分前払いで支払うからと無理を言ってアパートに住んでいたことや、担当した刑事の話によると殺人の可能性がかなり高いと言っていたこと等すんなりと教えてくれた。
アパートで得られる情報がなくなったために大家さんにお礼を言って別れ、今度は事件の担当刑事がいる警察署へとお邪魔することになった。
どうやら担当したのは目暮警部だったらしく、小五郎のおっちゃんが事情を説明しつつ尋ねると彼は確信を持って殺人事件だと断言した。
現場検証をした結果、首を
また、現場の近くで広田雅美が身につけていたメガネが発見されており、行方がわからないことから彼女の身にも危険が迫っているだろうことが予測される。
もしかすれば、もう既に殺されているかもしれない。最悪の事態を予想し、はたと思い出す。
(……彼女の腕時計に誤って貼ってしまった発信機を辿れば、探すことが出来るかもしれない)
すぐさま追跡メガネのスイッチを入れる。メガネに映し出された対象は…………動いている! まだ、生きている筈だ。
(まだ、間に合う。急げ! 間に合ってくれ!)