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工藤新一にAPTX4869を飲ませてから数日が経過した。新聞やテレビでは連日『眠りの小五郎』が難事件を解決したと大きく取り上げられており、俺は工藤新一が幼児化し無事江戸川コナンとして生存することが出来たのだ。と一安心していた。
組織の仕事は不定期らしく取引を終えると待機となり、その間俺はこれからどうするべきかを拠点として生活しているマンションの一室のベッドに寝転がりながら考えていた。
先ず、大前提として俺は組織を脱退したい。しかし、組織に関わった以上(それも幹部クラスの人間を)そう簡単に「はいどうぞ」と素直に抜けさせてくれるだろうか? いいや、ありえない。もし抜けようとするものなら口止めに殺されること請け合いだ。今は耐えるべきである。
次に、俺の知識の中にある
例を上げると、
では、どうすればいい。知識にある通りに行動していればそれでいいのか? 確かにそれも良いだろう。ジンの行動を可能な限りトレースしていれば直に組織は江戸川コナンや公安、FBI等の手によって壊滅するだろう。下手に動いて状況を悪化させる必要はない。なんならFBIや公安に擦り寄って証人保護プログラムを受けるのも手だろう。
(いや、……待てよ。そう言えば、何か忘れているような。…………そうだ、宮野明美だ! 彼女はFBI捜査官の赤井秀一の恋人であり、組織に赤井を引き入れたことから怒りを買って終いにはジンに殺されることになるはずだ)
FBI切っての切れ者、それもあのベルモットをして
(宮野明美を助ける、あるいは見逃す。となるとどうなる? いいや、そもそもとして組織は最初から彼女を始末するつもりだったはずだ。仮に盗んだ一〇億円を組織に
新しく降ってわいた問題に頭を悩ませる。次から次へと問題が出て来るせいで組織が壊滅する頃にはストレスでどうにかなってしまうのではないかと憂鬱な気分になって来た。
一先ず、彼女を助けた場合と殺したあるいは助けられなかった場合を考えることにしよう。
では、助けることが出来た場合。赤井秀一や宮野姉妹に恩が売れる。とはいえ、問題は山積みである。組織を誤魔化すための嘘が通じるかどうか。相手の信用は底辺な上、信じてくれるか分からない点。それに俺が助けたと組織にバレた場合幹部とは言え俺の身も危ないこと。等、不安要素が多い。
次に、殺したor助けられなかった場合。これは言うまでもなく赤井秀一や宮野志保だけではなく江戸川コナンにまでも恨みを買い、後々まで遺恨を残すことになるだろうこと。
しかし、
どちらも一応のメリットはある。これらを上手くまとめ、江戸川コナンに組織の危険性を知らしめつつ宮野明美を助けるそんな上手い方法を考えたい、がそんなものあるわけ………………あった。
(一種の賭けに近いが、
となれば準備が必要だ。忙しくなるな、これは。