麦わら帽子の英雄譚   作:もりも

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これまではワンピースのキャラが多くでてきましたが、ここからはヒロアカのキャラ主導でいきたいと思います。
ここ数話はオリジナル設定とこれからの話に繋がる前置きだったので、皆さん退屈してたかも?
下の彼もまだかまだかと苛立っていますので、できるだけサクサクいきたいです。


爆豪「早く俺を出せや!!このクソゴム!」BOMB!BOMB!




優勝するのはおれだから

入学から1ヶ月が経ち、新入生にも学校生活の慣れが見られる。今は昼休み、あるものは友達とだべり、あるものは早くも異性と仲良くなりイチャコラしている。

みな和気あいあいとしている中、D組を覗くとルフィが蒸気機関車のような湯気を吹き出している。

どうやら相澤から出された条件を満たすため苦手な勉強に励んでいるようだ。コビーに勉強を教えてもらいながら悪戦苦闘しているが、この一ヶ月間なんとか頑張っている。

しかし限界に近いご様子。

 

「ぶんすう・・ルート・・えんしゅうりつ・・・」

 

特に数学に関してはかなり目を回しているようだ。

この様子にコビーもどうしたもんかと苦笑する。

 

「とりあえずこの昼休みはここまでにしようか」

 

机に突っ伏してダレるルフィはホントか!?っと飛び起きた。

彼が静かにしているのは頭が追いついていない勉強をしている時なので、クラスが一気に騒がしくなる。

毎日している昼休みの20分の勉強を終え、ルフィとコビーが談笑している。

このひと月で分かち合ったようだ。

話の途中コビーは今日学内で騒がれている話題をルフィに振った。

 

「そうそうルフィ君 あの話は聞いたかい?」

 

「なんの話だ?」

 

「昨日学校が休校になったじゃない?その理由というのがA組が災害訓練中に敵に襲われたらしいんだよ」

 

「何!?」

 

「生徒に目立ったケガもなかったらしいんだけど、相澤先生は重症だったみたいで・・」

 

コビーが心配した様子で一昨日にあった敵襲撃事件のことをルフィに話す。

 

一年A組はヒーロー科の特別訓練である災害時の救出訓練を受けている際、多数の敵に襲われた。

元はこの訓練に参加するはずのオールマイトは諸事情で欠席しており、他の二人イレイザーヘッドこと相澤とレスキューヒーロー13号が立ち向かった。

しかし敵主戦力は恐るべき力を持っており、13号は背中の裂傷と相澤は腕の破損・眼窩損傷と奮闘するも戦闘不能に追い込まれた。

絶体絶命なピンチになるも、生徒の活躍と襲撃の知らせを聞いたオールマイトの登場により辛くも敵を追い返すことに成功した。

しかし敵の個性が自由に空間を行き来できるワープ能力があるとはいえ、頑強なセキュリティを誇る雄英が敵の侵入を許した今回の事件はメディアからも問題視された。

そしてこれは秘密裏にされているが、敵の目論見がこれまで不可侵とされてきた平和の象徴オールマイトを殺害することであったことを雄英上層部・警察は重く見た。

 

「・・・で気になって俺たちのところへ話を聞きにきたというわけか?」

 

コビーの話を聞き、駆け足でルフィはA組へ訪れたルフィは真っ先に飯田へそのことを訪ねた。

 

「だってよー気になるじゃんか!ヒーローとしては活躍するチャンスだったんだろ?」

 

「何を!?そんな悠長な状況ではない!!死んでもおかしくなかったのだ!そんな嬉々として話せることではない!」

 

あたかも祭りに参加しそこなったようにルフィが聞いたのに対し、飯田は腕をシュバッと振り上げて無神経だと切り捨てた。

結果無事だったとはいえ、殺される恐怖を味わった者からすれば当然だ。

しかし犯罪都市で育ったルフィには半ば日常的にあることだったため、敵に襲われることに対し日本人と認識の違いがあった。

 

「まぁいいじゃん飯田、ヒーロー科に転科狙ってるルフィにしたら気になるとこだろ?相澤先生も無事復帰してんだしさ」

 

軽めの口調で話しに入ってきたのはA組・上鳴電気。

よくヒーロー科に顔を出し騒ぐルフィと会って数分で仲良くなり、たまに放課後にも遊ぶチャラ男だ。

彼に続けて肌が紫色の毒々しい見た目の元気っ子、芦戸三奈が加わる。

 

「別に私も気にしないよ!あの時は怖かったけど!オールマイトがすごかったよ!すごい頼もしかった!!」

 

「ほんとか!?さっすがオールマイトだなー!!」

 

「ほんと電光石火!トップヒーローの凄さをまざまざと見せつけられたね!」

 

この二人はアホさ加減がルフィとマッチングしてにわかに三馬鹿と揶揄されている。

そんな三人に飯田はもはや口を挟む気力はなく、好きにしてくれと身振りをして諦めた目をしている。

上鳴は化け物のような強さだった敵を吹き飛ばすオールマイトの動きの素振りをして、戦いの実況をする。

それに興奮するルフィと一緒にとびきりいいリアクションをする芦戸がいいぞー、とノリノリだ。

 

その後方ではオールマイトオタクである緑谷出久が輪に加わりたそうな顔をして聞き耳を立てていた。内気な彼はこういう明るげな空気にたじろいでしまうシャイボーイなのだ。

その反対にルフィたちの前方で態度悪く座っている爆豪勝己が不機嫌な顔をしており、ルフィが座っている椅子を前後に揺らしてガチャガチャと鳴らす音についにキレた。

 

「ぅるせぇんだよ!!このクソゴム!!!テメェ普通科のクソザコのくせに何人のクラスで騒いどんだ!アァン!?」

 

恐ろしく短気な彼は毎度毎度ルフィにキレている。回を重ねるごとにボルテージが上がっているようだ。

 

「またバクゴーか!なにカリカリしてんだ?肉を食え 肉を!」

 

どんなにキレても罵倒しても何も応えないルフィはわけのわからない返しをする。もはや様式美だ。

こいついつかシバき回してやると殺意に近い感情を爆豪は包み隠さず表している。

それを見事にスルーするルフィは尋ねた。

 

「上鳴たちは敵とは戦ったのか?」

 

「ああ!10人以上に囲まれたけどなんとか善戦したぜ!かなりやばかったけどな!」

 

「私は戦わなかったー!でも次にこういうことあったら皆みたいに戦いたいな!」

 

実際はもっと切迫していた状況なのだが、二人が言うとどうしても軽く聞こえてしまう。

爆豪に怒鳴られたにもかかわらず、まだまだ騒がしく話している3人の後方に小汚い黒い影が現れる。

 

「おい・・・・予鈴はすでになっている。いつまで馬鹿騒ぎしているつもりだ?」

 

先日の怪我により包帯に巻かれた相澤がドスを聞いた声で3人に睨みつける。

 

「「ヒェッ・・・」」

 

あからさまにビビる上鳴と芦戸は黙り込んだ。普段からの成果からかよく調教されている。

 

「うわ!すげえ怪我してるじゃねえか!?大丈夫なのか 相澤!」

 

「・・・先生をつけろと毎度言ってるだろうが・・」

 

二人とは違い、ルフィはなんともまぁフレンドリーな声をかける。

基本的に言葉で敬うと言うことを知らないルフィに相澤は半ば諦めかけている。頭が痛そうだ。

そんなルフィにA組一同は怖い者知らずの勇者だと思った。

 

「人の心配してないで、自分の心配したらどうだ?体育祭まであとひと月・・お前の進退はそこで決まるんだぜ?」

 

「このクラスは悪と会敵したことでさらに一段ステージを上がったぞ」

 

ノーテンキそうなルフィに相澤は少し嫌味を含めて警告した。

自分たちは成長しているぞ、お前はどうだ、と。

その口ぶりに口角を上げたルフィは自信満々に答えた。

 

「もちろんおれだって遊んでるわけではねえさ!新しい技だって考えてんだ!」

 

「・・ふん。息を吐くのはいいが、まずは勉強に励むことだな」

「遅刻は大きく評価に響くぞ」

 

威勢がよかった顔をしたルフィはやべえ、と言い急いで自分の教室に戻っていた。

チャイムが鳴る前に授業始めるぞ、と言葉に飯田が号令をかける。

 

先ほどのシャイボーイ、緑谷はルフィのことを考えている。体育祭の時は強敵だぞ、と。

飯田からルフィの実力は聞いていたようで、オールマイトオタクもといヒーローオタクの彼は少し謎の存在のルフィに注目していた。

 

 

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放課後になるとコビーはいつもどおりルフィと下校をする。

ルフィの自宅、ヒーロー事務所AUAUに向かうからだ。

入学式の日にルフィに転科推薦の意志を伝えた翌日から彼は放課後と休日に事務所に通い詰めている。

ルフィに勉強を教える代わりに、コビーはガープとボガードに戦闘訓練をつけてもらっているようだ。

 

ルフィに特訓につけてもらっても教え方がド下手で全く向上する気配がなかったため、ルフィの提案で事務所にお世話になっている。ルフィも自分が幼い時二人に鍛えてもらったためそっちの方がいいと思ったからだ。

自分が死にかけていた経験があるため、あまりオススメはしなかったが。

しかしコビーの意志は固く、そんなすごい人たちに教えてもらうのならと提案にありがたく乗った。ただ特訓はかなり厳しいのか疲れた様子が傍目から見てとれた。

 

事務所についた二人は早速雄英の体操服に着替え、特訓を始める。

今日はコビーにはボガード、ルフィにはガープが師事している。

 

主にコビーは筋トレなどの基礎トレーニングと対人格闘を行ない、ルフィは完全に対人格闘に特化して新しい技の訓練を行なっている。

 

 

 

特訓を3時間ほど済まし、すっかり日も沈んで最後にボガード主導のミーティングが始まる。

 

「コビー君は無個性という最大のディスアドバンテージを抱えてくる分、どれだけ周りの環境や状況、相手の情報を把握することが必須条件になる。」

 

「今の基礎トレーニングはあくまで動ける体にしているだけで、決して他に勝る身体能力ではないことは自覚してくれ」

 

「はい!それは絶対に勘違いしません!」

 

「君は聡い、考える力を磨くようにしてくれ」

 

主にコビーを指導しているボガードは熱を入れて教え込む。

運動神経も良くなく無個性ではあるが、素直で真面目なコビーを可愛がっているようだ。

コビーも自分に足りないものを自覚して教えに従っている。

 

「ところでルフィ君もどうだい?新技は良好か?」

 

「ああ!だいぶ完成に近いぞ!ただじいちゃんにはまだ勝ててないんだよな〜」

 

「ばかたれ!わしに勝とうなんて100年早いわい!」

 

対人格闘ばかりを行なっているルフィは順調のようだ。

 

「さて、明日からは大型連休だ。予定どうり合宿を行うが親御さんの許可は取れたか?」

 

「はい 説得するのは骨が折れましたけど」

 

翌日からはゴールデンウィークが始まる。この機会を生かして合宿を行うようだ。

しかしせっかくの合宿なので、特別な訓練を行いたいがまだ具体的に何をするか決まってない。

そこでガープが昔ルフィにやらせた悪魔の訓練を提案した。

 

「「却下!!」」

 

しかしルフィとボガードが即座に切り捨てた。

 

「なぜじゃ!?あれは体力と精神力を向上させるのに一番合っておるぞ!!」

 

「あんなもんコビーにやらしたらぜってえ死ぬぞ!!」

 

「それにたかが数日の連休で行って帰って来れるわけないでしょうが!」

 

ガープの無茶ぶりにルフィでさえも猛烈に無茶だと反対したが、ガープはしつこくこれを勧めてくる。

ルフィのこんな焦った顔を初めて見たコビーは何事かと尋ね、その内容を聞き白目をむいて黙りこくった。そしてどうかその案を引っ込めてくれと願った。

 

結局日程の問題で無理だと悪魔のアマゾン縦断は却下された。

しかし考え込んでいたガープがこれだとばかりの表情をして、代替案を言い出した。

 

「日本には一度迷うと出られない樹海があるとこの前TVで行っておった!そこならすぐ行けるし、日程は問題ないはずじゃ!」

 

「そんなところがあるんですか?樹海といっても日本の広さじゃ大したことないか?」

 

「日本は水が綺麗じゃし、ブラジルに比べたら暑くもないんじゃ。歩いて戻ってくるだけコビーでも十分なんとかなるじゃろ!」

 

「んじゃ別に反対することもねえな」

 

富士の樹海がその森の深さと磁場の異常さで自殺の名スポットであることを知らない二人はガープの代替案に特に断る理由もなく、じゃあそれでと納得した。

慌ててコビーが樹海について説明したが、飲み水もなく猛獣・毒虫がいるアマゾンを経験したことのある二人の危険度の基準はおかしいほど高いため全く危険さが伝わらなかった。

コビーは死ぬかもしれないと虚ろな目で立ち尽くした。

 

 

 

 

 

 

そして時は早くも6月。

鍛えに鍛えたルフィたちはついに決戦の日、雄英体育祭を迎える。

 

 

 

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いつかのオリンピックを思い起こされるほどに熱気を纏い詰めかけた観客たちが向かうのは、雄英高校が所有する大競技場だ。

毎年この時期に開催される雄英体育祭は日本国内で凄まじい人気を誇る祭典で、個性の発達によりもはや形骸化しているオリンピックに替わるスポーツ祭という認識にまでなっている。

そして観客を惹きつけるのは、例えるならば高校野球のような完成されていない煌びやかな才能を楽しむ感覚と同じで、プロのような熟練された技に酔いしれるのではなく、未熟ゆえに何が起こるかわからないハラハラドキドキ感と、将来性というロマンを楽しめるところにある。

日本中から才能が集まった雄英はまさにうってつけな学校だ。

 

そして今回の体育祭はいつもと違った意味で注目されている。

それは一ヶ月前ヒーロー科の一年生が敵の襲撃を受けた事件があったからだ。

トップヒーローが多く在籍し、そしてまた優秀な生徒がいる雄英に襲撃をかけるなど前代未聞でメディアは大きく取り上げた。

そのこともあり話題性は瞬く間に肥大化。それに伴って1ーAには注目が集まった。

 

 

「ちょ!?いつまで食べてるの!?入場始まっちゃうよ!」

 

「ぼうどっとばってくで!だこやきだぺ!!」

 

開会式のため競技場の入場を控える一年生はみんな一様に緊張の糸を張っている。

その中には上鳴、芦戸、飯田、緑谷、拳藤とヒーロー科の面々も見られる。

それもそうで彼らもまた体育祭で活躍することで将来の進路が決まってくるのだからだ。

 

普通科の方をのぞいてみるとルフィたちの姿が見れない。

それもそのはず。

ルフィは競技場外にある出店で食い倒れているからである。

彼にとっても大切な戦いなのだが、目先の食欲には勝てない。大丈夫か?

コビーが連れ戻しているのを見て上鳴たちはブレねーな、と苦笑する。

 

すでに入場前のプレゼントマイクの実況が聞こえているのにもかかわらず、まだ食い物をほう張っているルフィに見た目そのままに相澤が怒髪天をあげている。

さすがにやべえと思ったルフィは一気に飲み込んだ。

 

「おい、ちゃんと口周り拭いて身なりしっかりしろ。TVカメラに撮られるんだからな」

 

相沢は常識的なことをルフィに注意するが、あんたに言われたくないと周りの生徒に心の中で思われていた。

そして相澤は元々ルフィに用があったのか、怒気を抑えて言葉を続けた。

 

「どうやらこの2ヶ月間できないなりに勉強もやってきたようだな、認めてやるよ。あとはこれに優勝という条件だけだな」

 

改めて転科推薦を受けられる条件をルフィに確認をする。

すると、ルフィはニカッと自信ありありとした表情を浮かべた。

 

「ここでもう一ついっておくことがある」

 

相沢はこれが本命だと言わんとばかり語気を強めてそういった。

 

「なんだ?」

 

 

「お前 優勝できなかったら退学だからな」

 

 

「・・・・・・・・・」

 

「「はああああああああ!!!????」

 

いきなり言われた唐突な言葉にルフィと、一緒に聞いていたコビーは一瞬間が空いた後に驚愕の言葉をはいた。

嘘だろと言わんばかり顔にする二人。

 

「い、今更そんなルールをつけるなんてひどすきますよ!!?」

 

この体育祭直前に放たれた理不尽にコビーは当然の抗議をする。

 

「これは元より決まっていたことだ。ただ俺がこのタイミングで言おうと考えていただけさ」

 

「な、なんでですか!?」

 

「退学とわかってりゃ嫌でも限界まで努力できるだろうが」

 

「うちの校訓はプルスウルトラ。より上へ・・・退路が断たれなければ己を磨けないやつはうちには不要だ」

 

あまりにも嫌らしいやり口だが、相澤のいう言葉は全くの正論であり雄英における心構えそのものである。

その言葉にコビーは黙り込んでしまう。

 

「なるほど、そりゃそうだ」

 

ルフィは驚くほど軽くあっさりと納得した。

それに相澤は素直じゃないか、と言う。

 

 

「別に関係ねぇし、おれにはそんなこと」

 

 

 

「優勝するのはおれだから」DON!!!!!!

 

 

優勝することを当然かのように言い放つルフィの言葉に、相澤は笑みを浮かべ、コビーは拳を握りこみ心震えた。

 

 

 




はい、雄英体育祭が始まりました。

ようやく入試以降の原作イベントに合流。

ルフィの立ち位置的にシガラキたちとの会敵はできなかったです。
原作キャラもここからはしっかり出ます。悪しからず。

ルフィとオールマイトの絡みがなかったので番外編としてどこかで書きます。
と言うか本編で書くべきだった!後悔!

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